弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 一審被告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
1 一審原告の平成一〇年一一月一一日付け文書公開請求に対し、一審被告が同月
二五日にした非公開決定処分のうち、原判決別表番号7、19ないし21、23、
32、40、41、46、50、52、65及び66の非公開とした部分を取り消
す。
2 一審原告のその余の請求を棄却する。
二 一審原告の控訴を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを四分し、その三を一審原告の、その余
を一審被告の各負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 一審原告の控訴の趣旨
1 原判決中一審原告敗訴部分を取り消す。
2 一審原告の平成一〇年一一月一一日付け文書公開請求に対し、一審被告が同月
二五日にした非公開決定処分のうち、以下の部分を取り消す。
(一) 原判決別表番号1、4ないし6、14、15、17、33ないし35、4
3、45、53、64の非公開部分
(二) 同2、8ないし13、16、18、22、24ないし31、36ないし3
9、42、44、47ないし49、51、54、56ないし63、67ないし6
9、71及び72のうち、非公開とされた個人名及び団体名の部分
3 訴訟費用は第一、二審を通じ一審被告の負担とする。
二 一審原告の控訴の趣旨に対する一審被告の答弁
 一審原告の本件控訴を棄却する。
三 一審被告の控訴の趣旨
1 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。
2 右取消にかかる部分の一審原告の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審を通じ一審原告の負担とする。
四 一審被告の控訴の趣旨に対する一審原告の答弁
 一審被告の本件控訴を棄却する。
第二 事案の概要
一 本件は、千葉県公文書公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき、一審
原告が平成一〇年度六ないし八月分の一審被告の交際費に関する文書の公開請求を
したところ、一審被告が右文書の一部を非公開とする旨の本件処分をしたので、そ
の取消を求めた事案である。
 第一審は、右処分のうち、交際費支出の相手方の個人名及び団体名(購読料支払
先を除く。)を非公開とした部分は是認できるが、その他の部分を非公開としたこ
とは是認できないとして、一審原告の請求を一部認容したのに対し、双方が控訴し
たものである。
二 事案の概要は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の第二
に記載のとおりである
から、これを引用する。
1 原判決一九頁六行目の「いわゆるポスト指定団体の会費の支出がある」を「右
支出について、知事の職務と関連して開催された会(おそらく選挙資金集めのため
のパーティーのようなものであろう。)の会費である」に改める。
2 同二三頁七行目の「スポーツ大会への激励金」の次に「、香典、仏前、生花
代、見舞」を加える。
第三 当裁判所の判断
一 本件係争部分の記載について
 争いのない事実に、甲一ないし三、乙九、一七によれば、本件公開請求の対象文
書は、本件文書であること、本件文書のうち公開されたのは、「年月日」欄記載の
月日、受領金額欄、支払金額欄、残高金額欄に記載されているすべての数字(金
額)及び「摘要」欄の使途目的の部分(御祝、激励金、香典及び仏前、生花代、見
舞、賛助、遺児育英資金、懇談費、会費及び購読料の一〇項目)であるが、「摘
要」欄のうち、本件係争部分が非公開とされ、その部分には、原判決別表の「摘要
欄の記載内容」中の[ ]内の事項が記載されていることが認められる。
二 本件条例の規定
 本件条例は(乙一)は、その一条で、「県民の公文書の公開を請求する権利を明
らかにするとともに、公文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県民の
県政に対する理解と信頼を深め、県政の公正な運営の確保と県民参加による行政の
一層の推進を図ることを目的とする。」と定め、三条で、「実施機関は、県民の公
文書の公開を請求する権利を十分尊重してこの条例を解釈し、運用するものとす
る。」と規定し、五条で請求権者を、七条で請求方法を、八条で公開請求に対する
決定方法を、一一条で非公開とできる場合を、一三条で不服申立方法を、それぞれ
具体的に定めている。
三 本件条例一一条二号該当性について
1 同号の規定の趣旨について
(一) 甲一〇ないし一二、乙三及び六によれば、次の事実が認められる。
(1) 千葉県においては、昭和五八年四月に千葉県情報公開研究委員会が設置さ
れ、総務部長及び各主管課長等関係二四課長を委員として、昭和六一年三月まで、
情報公開制度全般にわたる問題点を整理、研究し、昭和五九年三月に中間報告を発
表した。その中で、プライバシー保護に関しては、県が有する文書の中には個人に
関するものも極めて多く、その運用を誤れば、プライバシー侵害のおそれもあり、
県民への情報開示を原則とするこの制度の中で、プライバシー保護の要請
とどう調和をとるのかが検討されなければならない、情報公開制度を実施するに当
たっては、県民の人権を侵害することのないよう、プライバシーに関する情報は非
公開を原則として最大限に保護されなければならない、本来、プライバシーの保護
は、情報公開とは別の目的があり、情報公開制度の中にプライバシーの権利を具体
的に明記することは困難であって、プライバシー保護は別途多面的に検討すること
が望ましいと提言している。
(2) そして、千葉県は、昭和六一年一一月に、副知事や関係部局長を委員とす
る千葉県情報公開準備委員会を設置し、情報公開の制度化に向けて実務的な検討を
加えた結果、昭和六二年四月に千葉県における公文書公開制度素案(以下「素案」
という。)が発表された。そこでは、公文書公開制度の基本原則として、公開の原
則とともに、個人のプライバシーは最大限に保護するとした上で、「個人に関する
情報で、特定個人が識別され、又は識別され得るものについては、プライバシーの
保護に万全を期すべきである。しかしながら、個人情報のうちには、次のように明
らかにプライバシーの侵害に当たらないものや、公益上の必要性から公開すべきも
のもあり、この場合には公開するものとする。」として、本件条例一一条二号ただ
し書イないしハと同じ内容を挙げている。
 その後、この素案をもとに、千葉県公文書公開懇話会において、六か月にわた
り、公文書公開制度の基本的なあり方、制度化に当たっての主要な問題点等につい
ての検討を重ね、昭和六二年一一月、千葉県における公文書公開制度についてと題
する提言を行った。この中では、非公開文書の範囲については、原則公開の趣旨に
沿って必要最小限のものとし、可能な限り具体的かつ明確に定めることが適当であ
るとし、非公開の対象となる個人情報については、個人のプライバシーは最大限に
保護されなければならないこと、プライバシーの概念は、その内容・範囲が必ずし
も明確でないため、プライバシーを「特定個人が識別され、又は識別され得る個人
に関する情報」として捉え、これを原則として非公開とするが、明らかに個人的法
益の侵害にあたらないものや、公益上の必要性から公開すべき場合もあるので、そ
の場合には、公開することが適当であると提言された。
(3) こうした準備、検討作業を経て、本件条例が成立し、昭和六三年一〇月一
日に施行されたが、昭和六三年九月に、本
件条例の解釈基準として千葉県公文書公開の手引(以下「手引」といい、平成一〇
年三月の右改訂版を「改訂手引」という。)がまとめられた。手引及び改訂手引で
は、本件条例三条が「個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大
限の配慮をしなければならない。」とすることについて、公開を原則とする公文書
公開制度の下においても、個人のプライバシーは最大限に保護されるべきであり、
これが正当な理由なく公にされることがあってはならないことを明らかにしたもの
であり、プライバシーの保護は、個人の尊厳に係る基本的人権の一つとして認めら
れたものであると解説し、一一条二号の趣旨についても、基本的人権を尊重し、個
人の尊厳を守る立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定めたも
のであること、プライバシーに関する情報の範囲は明確になっていない状況である
ため、二号では、広く個人に関する情報について、特定個人が識別され、又は識別
され得る情報を公開しないことができることとしたこと、二号ただし書において
は、明らかにプライバシーの侵害に当たらないもの及び公益的理由のあるもののう
ち特定のものについては公開しなければならないとしたこと、二号の解釈及び運用
に当たっては、三条の規定の趣旨を十分尊重し、特に慎重に取り扱わなければなら
ないこととし、「個人に関する情報」の解釈については、①思想、信条、信仰、意
識、趣味等個人の内心の秘密に関する情報、②職業、資格、学歴、犯罪歴、所属団
体等個人の経歴、社会活動に関する情報、③収入、資産等個人の財産状況に関する
情報、④健康状態、病歴等個人の心身の状況に関する情報、⑤家族関係、生活記録
等個人の家庭、生活関係に関する情報など、個人に関するすべての情報をいうと説
明している。
(二) 以上の事実を総合すれば、本件条例一一条二号が、プライバシーの保護を
最終的な保護法益としていることは明らかであるところ、情報公開制度の下でこれ
を実現するためには、プライバシーの内容・範囲が必ずしも明確でないために、比
較的基準の明確な個人識別可能性を公開非公開のメルクマールとして採用したもの
であり、それが大量に行われる公開請求に対する迅速な対応という要請にも合致す
ると考えられているものということができる。
(三) 一方、知事の交際は、それが知事の職務としてなされるものであっても、
私人である相手方にとって
は、私的な出来事といわなければならず、知事の交際の相手方となった私人として
は、懇談の場合であると、慶弔等の場合であるとを問わず、その具体的な費用、金
額等までは一般に他人に知られたくないと望むものであり、そうするとこのような
交際に関する情報は、その交際の性質、内容等から、交際内容等が、一般に公表、
披露されることがもともと予定されているものを除いては、同号に該当するという
べきである(最高裁判所第一小法廷判決平成六年一月二七日民集四八巻一号五三頁
参照)。
 したがって、本件文書のうち、私人である相手方に係るものは、相手方が識別で
きるようなものであれば、原則として、同号により公開してはならない文書に該当
するというべきである。
2 同号該当性について
(一) そこで、本件係争部分の本件条例一一条二号の該当性について判断する。
 前示一の事実、乙九、一七及び証人aによれば、以下の事実が認められる。
(1) 本件文書中、個人を交際の相手方とする支出は、御祝八件、香典及び仏前
五件、生花代一八件、見舞七件、遺児育英資金一件、会費が二件である。
(2) そのうち、個人の氏名は、個人そのものの情報(物故者を別異に取り扱う
べき理由はない。)であり、その氏名が公開されれば、当該個人を識別し得ること
はいうまでもない。
 役職名については、本件の場合、A市議会議長、B代表取締役社長等として、具
体的な市の名前や法人名が記載されていて、当該記載内容だけで、あるいはこれと
公表されている名簿やその他の情報と合わせることにより特定個人が識別されるよ
うな記載となっている。さらに、続柄については、これが記載されている支出は、
いずれも葬儀に際し、弔意の趣旨で支出された香典及び生花代であるが、その交際
の相手方の個人名及び役職名とともに相手方と故人との続柄が一体のものとして記
載されている。
(二) そうすると、本件文書中、個人名はもとより、役職名及び続柄について
も、これらは一体のものとして、本件条例一一条二号に該当するというべきであ
り、この部分を非公開とした本件処分は正当である。
四 本件条例一一条八号該当性について
1 同号の規定の趣旨について
(一) 同号の規定は、実施機関が行う事務事業の中で、その性質上、文書を公開
することにより、関係者との信頼関係が損なわれる場合、事務事業の実施の目的に
沿った成果が得られず、実施する意味を喪失する
場合及び事務事業の公正もしくは円滑な執行の確保に支障が生じると認められる場
合について、その危険の有無、程度等を客観的に検討したうえで、公開しないこと
ができることとしたものと解される。
(二) 一方、千葉県の保有する公文書は、本件条例一一条各号に規定する非公開
事由に該当しない限り公開しなければならないとの原則からすれば、右にいう当該
公文書を公開することにより、関係者との信頼関係が損なわれ、あるいは将来の事
務事業の円滑な執行に支障が生じるかどうかは、当該情報及び当該事務事業の具体
的内容、当該事務事業の執行における当該情報の意味合い等の諸般の事情を総合し
て、個別具体的に判断されるべきであり、また、右支障が生じるおそれは、単に実
施機関の主観においてそのおそれがあると判断されるだけでなく、そのようなおそ
れが具体的客観的に存在することが必要というべきである。
 しかるところ、知事等の交際事務、交際費の性質や内容、本件公文書のうち、す
でに公開されている部分の内容等に照らすと、相手方の氏名等の公表、披露がもと
もと予定されているものは別として、本件非公開部分を公開することによって交際
費の各支出の相手方を具体的に識別することが可能になれば、その支出金額や内容
等から相手方との交際の要否や濃淡、軽重といった事柄に関する知事等の認識、判
断の内容が明らかになり、相手方のみならず、相手方とされなかった者らに、不
快、不信の感情を抱かせ、信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれのあることは
容易に認められるところであり、そうなれば交際それ自体の目的に反し、ひいては
交際事務の目的が達成できなくなることも考えられる。その結果、知事等において
そのような事態の生じることを回避するために、必要な交際費の支出を差し控えた
り、支出を画一的にせざるを得なくなるといったことも考えられ、知事等による交
際事務の公正かつ円滑な遂行に著しい支障が生じるおそれがあるということもでき
る。ただ、相手方の氏名等の公表、披露がもともと予定されている場合にあって
は、これを非公開とする意味のないことは明らかであるので、仮にそれによって相
手方との信頼関係を損なうおそれがあったとしても、それを考慮する必要はないと
いうべきである。
 したがって、本件非公開部分のうち、その公開によって交際費支出の相手方が具
体的に識別でき、あるいは他の情報と合わせて識別が可
能となる事項については、右のように相手方の氏名等の公開、披露されることがも
ともと予定されている場合を除き、本件条例一一条八号に該当するものというべき
である。
2 同号該当性について
(一) 前示一の事実、乙九、一七、証人aによれば、以下の事実が認められる。
(1) 香典及び仏前、生花代、見舞及び賛助(遺児育英資金)
 香典及び仏前(五件)、生花代(一八件)、見舞(七件)及び賛助のうち遺児育
英資金(一件)は、葬儀や通夜、病気見舞、遺児育英に関し、支出されたところ、
これらは、いずれも前示のとおり、個人に対するものとして、個人識別情報に該当
するとともに、いずれも儀礼として行われるもので、前述のような性質上からも、
公開することは相当でなく、公表することが予定されていない。
(2) 御祝、激励金
 御祝(二一件)は、交際の相手方との信頼、友好等の関係の維持、向上を願う趣
旨で、激励金(二件)は、本件についてはスポーツ選手を激励し、スポーツ界の一
層の振興を図る目的で支出されたものということができるところ、これらは、いず
れも、儀礼的交際としてなされたもので、前述のような性質上、公開しないことに
合理性もあり、公表が予定されていない。
 なお、御祝のうちの原判決別表番号16、18、24、38、39、44、5
4、55、71及び72中の「行事名」あるいは「祝賀要因」についても、これに
よって相手方を特定することができる場合のあることを含め、相手方の名称等と一
体のものとして、これを公開することが相当でなく、公表が予定されていない。
 また、同70中の[碑名]についても、その支出先は団体であるが、そこには人
物名が記載されていることからして、それを公開することが相当でなく、公表が予
定されてはいないものというべきである。
(3) 賛助(遺児育英目的のものは除く。)
 賛助金(二件)は、補助金以外に、社会的弱者を支援する団体やボランティア団
体等の非営利的な活動をする各種団体等から協力要請などがあった場合、県政と関
係ある活動を行い、交際することが県にとって有益である団体に対し、その活動の
趣旨に賛同していることを示す意味で支出されたものであり、特定の事業等の遂行
を経済的に育成、助成するために交付する補助金のような財政補助の意味でなされ
るものではない。そして、その額も、法令要綱等に基づく補助金に比べれば、一万
円から三万円と極め
て少額で、その性質上、これが公開しないことに合理性があり、公表が予定されて
いない。
 このことは、原判決別表番号42及び47中の「行事名」についても、同様で、
相手方の名称等と一体のものとして、これを公開することは相当でなく、公表が予
定されていない。
(4) 懇談費
 懇談費(一件)は、知事等が県政の推進に必要な各方面の理解と協力を得るため
意見交換の場を設けるために支出されるものであるところ、その接遇の程度は様々
で、このような事情及び右懇談が儀礼的な交際としてなされることの性質上、公開
しないことに合理性があり、公表が予定されていない。
 そして、原判決別表番号3中の「行事名」についても同様で、相手方の名称等と
一体のものとして、これを公開することは相当でなく、公表が予定されていない。
(5) 会費
 会費(三件)は、個人、団体の祝賀会、会合等に出席した際の会費及び知事等が
会員となっている団体の年会費として支出したものであり、知事等のこれら団体等
との交際の程度や会合への出席は、日程や予算上の都合に左右され、このような性
質上、これが公開しないことに合理性があり、公表が予定されていない。
 そして、このことは、原判決別表番号51中の「祝賀要因」についても同様で、
相手方の名称等と一体のものとして、これを公開することは相当でなく、公表が予
定されていない。
 なお、右支出が、一審原告が主張するように、知事の職務と関連して開催された
選挙資金集めのためのパーティー等のためのものであったと認めるに足りる証拠は
ない。
(二) 以上の事実によれば、香典及び仏前、生花代、見舞、賛助(遺児育英資金
を含む。)、御祝、激励金、懇談費、会費については、その支出金額につき、交際
の程度、活動内容により多寡があることは容易に推認することができ、その支出先
が支出金額とともに公開された場合、将来の交際事務の円滑な執行に著しい支障が
生ずるおそれのあることが認められるから、公開しないことに合理性があり、公表
することが予定されていないものである。
 したがって、これら支出先の記載された部分は、本件条例一一条八号に該当し、
公開しないことが是認される。
(三) 購読料について
 一審被告は、購読料について、交際の相手方団体等が新聞、機関紙等を発行して
いる場合に、交際の一環として購読の必要があるため支出するものである旨主張す
る。
 しかし、証人aに
よっても、県政にとって必要な情報の収集に関しては、需用費で賄われるとする一
方、交際費から購読料として支出されるものについても、県政上相手方との友好関
係を維持する手段として謝礼的意味で支払うことが有用であるという以外、購読の
必要性についての具体的な理由を挙げることはなく、結局は、知事の裁量によると
するのみで、右需用費で賄われるものと、交際費によって賄われるべきものとの区
別についての明確な基準は見出し難い。加えて、本来、新聞、雑誌、機関誌等につ
いては、多数の者に閲読されることを目的として発行されるものであること等を考
慮すれば、右購読料に関する情報が、公開されたとしても、知事等の将来の交際事
務の円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれのあるとは認め難く、他に、これを認
めるに足りる証拠はない。
五 以上によれば、本件処分は、本件係争部分の記載について、御祝、激励金、香
典及び仏前、生花代、見舞、賛助、遺児育英資金、懇談費及び会費に関し、非公開
とした部分は適法であり、購読料に関しこれを非公開とした部分は不適法である。
 そうすると、一審原告の本訴請求中、右購読料に関して公開を求める部分の請求
は理由があるが、その余の部分の請求は理由がないことに帰する。
 したがって、原判決中、一審原告の本訴請求のうち、(一)右購読料に関する請
求を認容した部分並びに(二)原判決別表番号2、8ないし13、16、18、2
2、24ないし31、36ないし39、42、44、47ないし49、51、5
4、56ないし63、67ないし69、71及び72のうちの個人名及び団体名に
関する請求を棄却した部分は相当であるが、(三)その余の部分の請求を認容した
部分は不当である。
 よって、一審被告の控訴に基づいて原判決をその旨変更し、右(三)の部分の一
審原告の請求を棄却し、一審原告の控訴は理由がないから棄却し、主文のとおり判
決する。
東京高等裁判所第一六民事部
裁判長裁判官 鬼頭季郎
裁判官 慶田康男
裁判官 梅津和宏

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