弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     原判決中、上告人の本訴請求に係る部分につき本件を大阪高等裁判所に
差し戻す。
     原判決中、被上告人B1の参加請求に係る部分につき本件を京都地方裁
判所に移送する。
         理    由
 上告代理人藤平芳雄の上告理由第三点について
一 記録によれば、本件訴訟の経過は次のとおりである。
 1 上告人は、被上告人B2に対し、昭和五〇年五月二二日、売買契約に基づく
本件土地(一)、(二)の所有権移転登記手続及び不法行為に基づく損害賠償を求める
本訴を提起した。その主張の骨子は、(1) 上告人は、被上告人B2から、昭和四
二年一二月九日、本件土地(一)、(二)及び本件土地(一)の上に存する本件建物を代
金合計一七〇万円で買い受けた(以下、この売買を「本件売買契約」という。)、
(2) 上告人は、昭和四五年ころ、本件土地(二)の上に建物を建築する目的で三〇
〇万円相当の木材を購入したが、被上告人B2が建築を妨害したため、建築に着手
することができず、右木材が朽廃し、三〇〇万円の損害を被った、というものであ
る。
 2 第一審裁判所は、本件売買契約の成否などの争点につき審理を遂げた上、昭
和六〇年一二月一三日、本件売買契約の成立が認められるとして、本件土地(一)、
(二)につき上告人の所有権移転登記手続請求を認容したが、被上告人B2の建築妨
害の事実は認めるに足りないとして、上告人の損害賠償請求を棄却する旨の判決を
した。
 3 被上告人B2が控訴の申立てをして、原審係属中の平成二年三月一日、被上
告人B1は、被上告人B2に対し本件土地(一)、(二)につき所有権移転請求権保全
の仮登記に基づく本登記手続を、上告人に対し右本登記手続の承諾をそれぞれ求め
て、民訴法七一条による参加の申出(以下「本件参加の申出」という。)をした。
その主張の骨子は、次のとおりである。(1) D信用組合は、被上告人B2に対し、
昭和四一年四月五日、五〇〇万円を貸し付け、その担保として本件土地(一)につき
代物弁済予約をして、同月一三日、所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。(
2) 被上告人B1は、D信用組合に対し、昭和五〇年六月二五日、被上告人B2
の残債務相当額を支払って、D信用組合から貸金債権及び仮登記担保権の譲渡を受
け、同年八月一四日、右仮登記の移転付記登記を経由した。(3) 被上告人B1は、
被上告人B2との間で、昭和四二年一〇月二六日、本件土地(一)、(二)を代金一六
〇万円で買い受けることとする旨の売買の一方の予約をし、同四九年一一月一三日、
本件土地(二)につき所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。(4) 被上告人B
1は、被上告人B2に対し、昭和五六年六月二四日、本件土地(一)につき代物弁済
の予約完結の意思表示をし、本件土地(二)につき売買の予約完結の意思表示をした。
(5) 被上告人B1は、上告人及び被上告人B2に対し、平成二年三月二日、本件
参加の申出書によって本件土地(一)につき清算金がない旨の通知をした。(6) 上
告人は、昭和五一年三月二三日、本件土地(一)、(二)につき処分禁止の仮処分登記
を経由した。
 4 上告人は、本件参加の申出につき民訴法七一条の要件を欠くものであるとし
て争い、また、右3の(3)の売買の一方の予約は通謀虚偽表示であるなどとして被
上告人B1の主張事実を争った。
二 原審は、まず、本件参加の申出は民訴法七一条後段の要件を満たすものである
とし、さらに、右一の3の被上告人B1の主張事実は認めることができ、同4の上
告人の通謀虚偽表示の主張事実は認めるに足りないから、被上告人B1の請求をい
ずれも認容すべきであるとした上、本件参加の申出は、本件土地(一)、(二)の所有
権をめぐる紛争を上告人と被上告人B2との間及び被上告人B1と上告人、被上告
人B2との間で同時に矛盾なく解決するためのものであるところ、上告人の被上告
人B2に対する所有権移転登記手続請求は民訴法七一条に基づく参加訴訟の形態及
び目的からの制約を受け、被上告人B1に対して所有権を主張できない立場にある
上告人は、被上告人B2に対しても所有権を前提とする請求をすることができなく
なるものと解すべきであるとして、上告人の主張事実について判断するまでもなく、
上告人の請求を棄却すべきものであるとした。
三 しかしながら、上告人の被上告人B2に対する売買契約に基づく所有権移転登
記手続を求める本訴につき、被上告人B1が、被上告人B2に対し代物弁済の予約
又は売買の一方の予約による各予約完結の意思表示をしたことを理由とする所有権
移転請求権保全の仮登記に基づく本登記手続を求め、かつ、右仮登記後にされた処
分禁止の仮処分登記の名義人である上告人に対し右本登記手続の承諾を求めてした
本件参加の申出は、民訴法七一条の要件を満たすものと解することはできない。け
だし、同条の参加の制度は、同一の権利関係について、原告、被告及び参加人の三
者が互いに相争う紛争を一の訴訟手続によって、一挙に矛盾なく解決しようとする
訴訟形態であって、一の判決により訴訟の目的となった権利関係を全員につき合一
に確定することを目的とするものであるところ(最高裁昭和三九年(オ)第七九七
号同四二年九月二七日大法廷判決・民集二一巻七号一九二五頁)、被上告人B1の
本件参加の申出は、本件土地(一)、(二)の所有権の所在の確定を求める申立てを含
むものではないので、上告人、被上告人B2及び被上告人B1の間において右各所
有権の帰属が一の判決によって合一に確定されることはなく、また、他に合一に確
定されるべき権利関係が訴訟の目的とはなっていないからである。
四 以上の次第で、本件参加の申出は、民訴法七一条の参加の申出ではなく、その
実質は新訴の提起と解すべきであるから、原審としては、被上告人B1の参加請求
に係る部分を管轄を有することが明らかな京都地方裁判所に移送し、被上告人B2
の控訴に基づき第一審判決の当否について審理判断すべきであったのである。そう
すると、これと異なる原審の前記二の判断には、民訴法七一条の解釈適用を誤った
違法及び理由不備の違法があり、右違法が判決に影響することは明らかである。以
上の趣旨をいうものとして論旨は理由があり、その余の上告理由について判断する
までもなく、原判決は破棄を免れない。したがって、原判決を破棄した上、原判決
中、上告人の本訴請求に係る部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻すこととし、
被上告人B1の参加請求に係る部分につき本件を京都地方裁判所に移送することと
する。
 よって、民訴法四〇七条一項、四〇八条、三〇条一項に従い、裁判官全員一致の
意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    千   種   秀   夫

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