弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人松本正一及び寺浦英太郎上告理由第一について。
 原判決は、所論税金、水道料、電気代等の諸掛り立替金については、本件契約に
包含せられるものと認めらるべき資料がないとし、その不払に基く上告会社の本件
契約解除の主張を排斥して居る。右原判示は、これに対する証拠上首肯し得られる
のであつて、右立替金が、所論の如く、本件契約と不可分の関係に在るものとは解
せられない。
 また、論旨が本件契約解除の理由として居る、上告会社が所論催告状を以つて被
上告人に対し所論持株引渡義務の履行を求めたにも拘らず、被上告人がこれに応じ
なかつたとの点は、原審に於て、上告会社はこれを主張して居らない。したがつて、
原審が所論契約解除の主張を排斥するにあたり、その点を判断しなかつたのは、当
然である。
 原判決に、所論の如く、本件契約解釈の誤りがあり、また理由不備もしくは理由
齟齬の違法のあることは認められない。
 論旨は理由がない。
 同第二について。
 原審は、その挙示する証拠により、所論業者組合加入と所論資材の割当とは別箇
の問題であつて、右組合に加入しても直ちに右資材の割当を受け得られるものでな
かつたことおよび本件契約の主たる目的とを認定した上、これらの事実から、該契
約中に、被上告人が「独立自営をなすに至つたとき」とある意味を、被上告人が所
論業者組合に加入の上、商工省より所論資材の割当を受け、所論事業を経営し得る
に至つたときと解すべきものなる旨判示して居り、右原判示は、これを是認し得ら
れる。所論資材は、当時商工省の割当によつてのみ入手すべきものとなつて居つた
以上、仮に所論の如く、当時公定価格以下の闇値にてこれを入手し得る情況に在つ
たとしても、その故を以つて、右業者組合に加入したときが即ち、前示「独立自営
をなすに至つたとき」であると解すべきものとすることができない。
 原判決に、所論の如く、本件契約解釈の誤りがあり、また審理不尽の違法がある
とは認められない。
 論旨は理由がない。
 同第三について。
 原審は、その挙示の証拠により、上告会社が配給担当機関より所論資材の引渡を
受け、更に被上告人が、約定の比率にしたがつて上告会社よりその一部の引継を受
けた上、直ちにその代金諸掛費用を上告会社に支払う約旨であつたことを認定して
居り、その認定は是認し得られる。
 原判決に、所論の如く、理由齟齬審理不尽の違法あることは認められない。その
余の論旨も、結局、独自の見解に立つて、原審の事実認定を非難するに帰するので
あつて、上告適法の理由とはならない。
 論旨は理由がない。
 同第四について。
 被上告人と上告会社との間に於ける事業合体分離の経緯、その分離の一策として、
本件契約成立後に於ても、被上告人の独立自営に至る時まで、分離前と同様、上告
会社の名に於て所論資材の割当を受け、両者の間にて一定の比率によりこれを分配
する方法をとつたこと等原判示より考察するときは、上告会社が右資材の割当を受
けることは、即ち実質上、上告会社と被上告人との共同にて所論資材の割当を受け
ることであるとして、その分配は、臨時物資需給調整法に定める「譲渡」に当らな
いとした原審の判断は、是認すべきものである。
 原判決に同法の解釈を誤つた違法があるとする主張は当らない。
 論旨は理由がない。
 上告会社代表者D上告理由について。
 論旨中には、上告代理人松本正一及び寺浦英太郎の上告理由と同趣旨に帰する部
分があり、その採用し得ないことは、右上告代理人の上告理由に対する説明により
これを諒解すべきである。その余の論旨は、すべて独自の見解に立つて、原審の事
実認定を非難するに帰するのであつて、上告適法の理由ではない。
 論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己

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