弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1原判決を次のとおり変更する。
(1)被控訴人は,控訴人に対し,221万2370円及びこれに対
する平成17年6月14日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
(2)控訴人のその余の請求を棄却する。
2訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を控訴人
の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。
3この判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,545万7370円及びこれに対する平成17
年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
4仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,平成15年5月下旬ころ,左大腿部に熱傷を負った控訴人が,その
被害は当時使用していた携帯電話機の欠陥により生じたものであるとして,そ
の製造業者である被控訴人に対し,製造物責任法3条又は民法709条に基づ
き,損害金545万7370円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成
17年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求めた事案である。
原審が控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が不服を申し立てた。
2前提となる事実
(1)当事者
ア控訴人は,昭和30年4月30日生まれの男性である。
イ被控訴人は,情報・通信機器等の製造,販売等を目的とする株式会社で
あり,平成○○年○月○日に旧商号から現商号に商号変更した。
(2)本件携帯電話と本件リチウムイオン電池
ア被控訴人は,平成13年9月,携帯電話機「C」(製造番号○○○○)
を製造し(以下「本件携帯電話」という。),これを出荷した。
イ本件携帯電話には,被控訴人が同年8月に製造したリチウムイオン電池
の電池パック(製造番号○○○)(以下「本件リチウムイオン電池」とい
う。)が装備されていた。
(3)控訴人による本件携帯電話の使用
控訴人は,平成14年1月6日,株式会社Dから本件携帯電話を購入し,
平成15年5月下旬ころも,これを使用していた。
(4)控訴人の被害
控訴人は,平成15年5月下旬ころ,その左大腿部に熱傷を負い,これに
より同年6月5日,EクリニックのF医師から,病名「熱傷2度」,摘要「左
大腿部に携帯電話の形に一致した熱傷による紅斑を認めます。」との診断を
受けた(以下「本件熱傷」という。)。
3争点と当事者の主張
(1)控訴人の本件熱傷は,本件携帯電話に起因するか(争点1)
ア控訴人の主張
(ア)本件熱傷の受傷時期及びその原因等について
控訴人は,平成15年5月20日午後8時30分から午後11時まで
の間(以下「本件時間帯」という。),本件携帯電話をズボン前面左側
ポケット内に携帯してコタツで飲食していた。
控訴人は,翌21日午前1時から2時ころ,左大腿部の痛みで目を覚
まし,そこにやけど跡(本件熱傷)を確認した。受傷状況の写真,やけ
ど跡寸法を記載した図面,F医師の診断に係る各診断書及び照会に対す
る回答書によれば,本件熱傷がその形状,位置などから本件携帯電話に
よるものであることは明らかである。
(イ)本件熱傷は,低温熱傷であること
本件熱傷は,受傷状況の写真,F医師の診断に係る各診断書及び照会
に対する回答書,診断時は熱傷による紅斑が認められる状況からみて低
温熱傷というべきである。
(ウ)本件携帯電話は低温熱傷をもたらす程度に発熱することはあり得
ること
低温熱傷は,圧迫が存すれば42度の熱源でも生じ得るのであるから,
被控訴人の実証実験を前提とした場合でも,一般に携帯電話機が低温熱
傷をもたらすほどに発熱することがあり得るというべきである。また,
リチウムイオン電池は,本来的に発熱の危険性を内包していることから,
本件携帯電話に装備されている本件リチウムイオン電池が発熱したこと
も十分に考えられる。何よりも,携帯電話機について,現実に発熱事故
が多数発生していることが明らかになってきていることから,本件携帯
電話が低温熱傷をもたらすほどに発熱することは,十分にあり得るとい
うべきである。なお,控訴人による温度実験調査では,本件携帯電話は,
最高50.9度,51.0度,53.4度もの温度上昇を示した。
(エ)本件熱傷の原因が本件携帯電話のほかにはあり得ないこと
控訴人には,本件熱傷のほかにアレルギー等の皮膚症状はみられず,
また,受傷の前後を通じて取り立てて熱源に接していないのであるから,
本件熱傷の原因は,本件携帯電話のほかにはあり得ない。
(オ)まとめ
以上のように,控訴人は,本件時間帯にズボン前面左側ポケット内に
本件携帯電話を入れており,本件時間帯に本件熱傷を負ったものである
こと,本件熱傷が低温熱傷であること,本件携帯電話が一般に低温熱傷
をもたらすほどに発熱すること(異常発熱)があること,本件では,ほ
かに本件熱傷の原因となる事由がないことを総合考慮すれば,控訴人が
本件携帯電話に起因して本件熱傷を負ったことは明らかである。
イ被控訴人の主張
(ア)本件熱傷の時期,原因は不明であること
そもそも,受傷時期に関する控訴人の主張は変遷を重ねており,信用
性に乏しい。すなわち,控訴人は,平成15年9月24日付け被控訴人
宛て「ご通知」と題する書面では,受傷時期について「同年5月19日
午前7時50分ころから午後8時20分ころまでの間,」と記載してい
るところ,平成17年6月2日提訴に係る本件訴状では,「平成15年
5月20日午前7時50分ころから午後8時20分ころまでの間,」と
主張し,原審係属中の平成18年ころに至って,本件時間帯に主張を変
更するようになったものである。
また,控訴人は,本件熱傷の受傷状況についての記憶も最初からあい
まいであり,かつ,熱傷跡に気付いたときも,その原因について思い当
たるところがなかったという。本件熱傷跡の写真も平成15年6月5日
になってから撮影されたものであるし,Eクリニックを受診したのも同
日であることから,受傷に気が付いてから相当期間が経過しているとい
うことができる。
本件熱傷の跡は,本件携帯電話の形状や構造,材質などからして,こ
れを熱源とするものとは重要な点で異なっている。特に,本件携帯電話
のアンテナ取付部分は,構造上空洞となっており,かつ,材質も樹脂で
あることから,その部分が熱傷被害を及ぼすほど加熱することは考えら
れない。
また,控訴人が受傷後何時間も気がつかないとは考え難いし,熱傷を
負いながら入浴しても気付かないということも考え難い。
結局のところ,控訴人の本件受傷の時期はもちろん,その原因につい
ても不明というべきである。
(イ)本件熱傷について,低温熱傷であることの立証はないこと
F医師の診断に係る上記各診断書及び回答書にはこれが低温熱傷であ
るとの記載はなく,ほかに本件熱傷が低温熱傷であることを裏付ける証
拠はない。
(ウ)本件携帯電話が低温熱傷をもたらすほどに発熱することはあり得
ないこと
被控訴人は,本件携帯電話と同機種の複数の携帯電話機を用いて,そ
の使用時における温度上昇の程度,部位を確認するための実証実験を行
ったが,音声通話状態の最大送信出力時に41.8度程度に至る場合は
あったものの,42度を上回ることはなく,この程度では異常発熱とま
ではいえないし,低温熱傷をもたらすほどに発熱することはなかったも
のである。低温熱傷が発生するためには,少なくとも44度程度の熱源
が長時間にわたって皮膚に触れる状況が必要であるところ,控訴人は,
上記状況の存在について立証していないというべきである。
加えて,異常発熱した携帯電話機ならば,その後,使用不能になるは
ずのところ,本件携帯電話は,本件熱傷事故発生の前後を通じて,控訴
人によって通話等に利用されていたことは控訴人も認めるところであり,
正常に機能していたことが通話料記録などからも認められるから,その
期間中に異常発熱の事実が介在していないことは明らかである。
(エ)本件熱傷の発生源が,本件携帯電話のほかにもあり得ること
仮に,控訴人が本件時間帯に本件熱傷を負い,かつ,それが低温熱傷
であったとしても,本件熱傷の跡は,本件携帯電話の形状や構造,材質
などからして,これを熱源とするものとは重要な点で異なっている。ま
た,控訴人が本件時間帯に利用していたコタツの熱量等の事情を考慮す
ると,コタツの発熱のみによって熱傷を負ったなど,本件熱傷の原因が
ほかにも考え得るところである。
(オ)まとめ
上記のとおり,控訴人の本件受傷の経緯は極めてあいまいであり,本
件携帯電話が本件熱傷発生後も控訴人によって正常に使用されていたこ
とからもわかるように,本件時間帯に本件携帯電話の電話機本体であれ,
本件リチウムイオン電池であれ,異常発熱した形跡はなく,本件熱傷は,
本件携帯電話又は本件リチウムイオン電池の発熱を原因として生じたも
のではないし,本件熱傷の発生源が本件携帯電話であるとは断定できな
いから,本件熱傷は,本件携帯電話又は本件リチウムイオン電池の発熱
を原因として生じたものではない。
(2)被控訴人の製造に係る本件携帯電話に欠陥ないし過失はあるか(争点2)
ア控訴人の主張
控訴人は,本件携帯電話をポケット内に収納して携帯するという通常の
方法で使用していたにもかかわらず,本件携帯電話が携帯使用中に異常発
熱したことにより,本件熱傷を負ったものであるから,本件携帯電話には,
携帯使用中に異常発熱するという設計上又は製造上の欠陥があることは明
らかである。なお,本件時間帯に本件携帯電話の電話機本体又は本件リチ
ウムイオン電池が異常発熱したものと考えられるが,製造物責任法におい
ては,控訴人がその欠陥の部位,具体的原因を主張・立証するまでの責任
はない。
イ被控訴人の主張
本件携帯電話の異常発熱の事実が認められない以上,本件携帯電話に本
件熱傷を生じさせる設計上又は製造上の欠陥はない。そして,本件携帯電
話に何ら欠陥がない以上,被控訴人がこれを製造,出荷したことについて
不法行為法上の過失もない。
(3)本件携帯電話に警告表示上の欠陥はあるか(争点3)
ア控訴人の主張
仮に,本件熱傷がコタツの輻射熱又は対流熱の影響により本件携帯電話
のきょう体が加熱されて生じたものならば,製造者としては,本件携帯電
話の使用に際してポケット内に収納したままコタツに入れば熱傷被害を生
じ得ることを製品の使用者に対し警告する義務を負っていたと解すべきと
ころ,本件携帯電話及びその取扱説明書には,特にズボンのポケット内に
携帯する用法を注意・禁止する旨の記載がなく,購入時にもその旨の説明
はなかったから,警告表示上の欠陥があるというべきである。
イ被控訴人の主張
本件携帯電話の異常発熱の事実が認められない以上,本件携帯電話をポ
ケット内に携帯する用法について注意・禁止する説明などがなかったとし
ても,警告表示上の欠陥はない。また,仮に,コタツの輻射熱又は対流熱
の影響により本件携帯電話のきょう体が加熱されて低温熱傷が生じ得ると
しても,待ち受け状態の携帯電話機は,他の同様の形状の物体と変わると
ころがないから,このような物体すべてについてポケットに収納してコタ
ツに入ってはならない旨の警告表示が必要とは解されない。さらに,本件
携帯電話の取扱説明書には,本件携帯電話を高温の熱源に近づけないよう
にという警告表示があるところ,コタツの熱源は,まさに高温の熱源であ
るから,同警告表示は,単体としてであれ,ポケットに入れた状態であれ,
コタツの熱源に近づけないようにとの趣旨も含むものであって,通常人の
理解が一般的に可能であるところから,警告表示上の欠陥はないというべ
きである。
(4)控訴人の損害(争点4)
ア控訴人の主張
本件事故によって控訴人が被った損害は,治療費1万2370円,調査
費用150万円,慰謝料300万円及び弁護士費用94万5000円の合
計545万7370円である。
イ被控訴人の主張
争う。
第3当裁判所の判断
1本件に関する事実関係
前記前提となる事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,本件に関する事
実関係として,以下の事実を認めることができる。
(1)控訴人の職業等
ア控訴人は,地方公務員であり,平成15年5月当時,K課に所属し,設
計業務やその業者への発注と現場立会監督業務などを担当していた。
イ控訴人は,肩書住居地から上記勤務先まで自動車を運転して通勤し,帰
宅後,居間のコタツで晩酌をしながら約2時間くらい夕食を取ることにし
ていたが,時折そのままうたた寝をすることもあった。
(2)本件携帯電話
ア本件携帯電話は,平成13年9月に被控訴人が製造(製造番号○○○○)
したC型折りたたみ式携帯電話機で,引出式のアンテナが付いており,こ
れに被控訴人が同年8月に製造(製造番号○○)したリチウムイオン電池
の電池パック(本件リチウムイオン電池)が装備されている。
イ本件携帯電話は,被控訴人から携帯電話に係る電気通信事業者である株
式会社Lに出荷され,その系列会社である株式会社Dで販売された。
ウ控訴人は,平成14年1月6日,株式会社Dから本件携帯電話を購入し,
併せてその取扱説明書を受け取った。
(3)控訴人による本件携帯電話の使用状況
ア控訴人は,平成15年5月当時,本件携帯電話について,私用のほか,
職務上,現場立会監督業務などのため現場に赴くこともあったことから,
その際の連絡用に使用することもあった。なお,当時,控訴人が使用して
いた携帯電話機は,本件携帯電話のみである。
イ本件携帯電話の使用状況は,原判決9頁4行目から同10頁3行目まで
に記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。
ウ本件携帯電話の使用に伴う利用料金のうち,平成15年2月利用分から
平成16年3月利用分に係るダイヤル通話料及びパケット通信料の課金状
況については,前記認定のとおりであるところ,平成15年2月利用分か
ら同年8月利用分にかけて,毎月2460円から6000円のダイヤル通
話料が課せられているが,他方,パケット通信料については,平成15年
2月利用分,同年6月利用分は0円となっているほか,多い月でも179
1円にとどまっている。また,同年9月以降の利用状況を見ると,ダイヤ
ル通話料については同年9月,10月利用分がいずれも0円だが,同年1
1月以降平成16年3月利用分まで,毎月276円から1836円が課せ
られ,翌4月以降平成18年5月利用分に至るまで,いずれも0円となっ
ている。パケット通信料については,平成15年9月利用分以降平成18
年5月利用分に至るまで,いずれも0円となっている。
エ控訴人は,平成16年3月7日,新しく携帯電話機を購入し,その後は
本件携帯電話について日常の使用をしなくなったものの,契約は継続して
いる。
(4)平成15年5月20日の控訴人の行動
ア控訴人は,平成15年5月20日午前7時50分ころ,肩書住所地を出
て自動車で勤務先に向かったが,その際に本件携帯電話をズボン前面左側
ポケットに入れた。
イ控訴人は,同日午前8時30分ころ,○○○に出勤し,その後現場立会
監督業務などのため2か所の現場に赴いた後,設計業務に従事した。平成
15年5月当時は,翌月4日締切の設計業務など設計及び設計変更業務に
も従事し,多忙であった。
ウ控訴人は,5月20日の業務中,現場への連絡用のため2,3回程度本
件携帯電話を使用したが,支障なく連絡は済ませたし,現場作業や運転中,
事務所でデスクワークをしている間においても,本件携帯電話をズボン前
面左側ポケットに入れたままにしていたが,特に異変は感じなかった。
エ控訴人は,同日午後7時30分ころ,勤務を終え,午後8時過ぎに帰宅
し,仕事用の服装のままコタツに入り,午後8時30分から午後11時こ
ろまでの間(本件時間帯),居間のコタツで晩酌(焼酎400cc程度を
ロックで飲酒)をしながら夕食を取った。この間,控訴人は,コタツの中
で足を伸ばしたり,胡座をかくなどしていたが,疲れていたこともあって
コタツを出ることはなかったし,酔って居眠りをしてしまったときもあっ
た。その間,控訴人は本件携帯電話を同ポケットに入れたままであった。
オ控訴人は,その後,入浴の上,同日午後11時10分ころ就寝した。そ
の際,本件携帯電話は,机の上に置いたACアダプタで充電中で,控訴人
の身体には接触した状態ではなかった。
(5)控訴人の被害発見状況
ア控訴人は,平成15年5月21日午前1時ないし2時ころ,就寝中,ひ
りひりして痛い感じがして目が覚めた。見ると控訴人の左大腿部にみみず
腫れがあり,これを妻と確認し,本件熱傷に気が付いた。翌朝になってか
ら見ると,水ぶくれになっていた。昨日着用していた作業ズボンには支障
はなかった。
イ控訴人は,ほかにみみず腫れや水ぶくれの原因として思い当たることが
なく,熱傷の熱傷部分が携帯電話機程度の大きさで,左大腿部がズボン前
面左側ポケットに対応することから,同ポケットに入れていた本件携帯電
話と関係があることを疑ったが,当時,前記のとおり納期の迫る設計業務
を抱えていたこともあって,医療機関を受診するなどの特段の対応を取ら
なかった。
(6)低温熱傷の概念及び発症条件
ア低温熱傷の概念及び発症条件については,原判決4頁26行目から同8
頁5行目までに記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。
イ上記認定事実によれば,人間の場合,皮膚に熱傷を起こす最低表面温度
は44度程度であり,接触時間,接触圧や皮膚の血流状態等によっては,
より低温の42度程度でも低温熱傷を発症し得るものであり,熱傷の程度
が軽傷にみえても,その治癒,治療には長時間を要することがあることが
認められる。
(7)控訴人による問合わせ
ア控訴人は,平成15年5月31日,本件携帯電話を持参して株式会社D
の岩沼店を訪れ,調査を依頼した。控訴人の申告内容は,「先週(5月1
9日の週),本件携帯電話をズボンの前ポケットに入れていたら低温やけ
どをした。熱いという感じはなかったが,携帯の形でやけどの痕が残った。
夜中に足(腿)が痛くなり目が覚めた。なぜこうなったかを知りたい。」
などというものであった。株式会社Dは,控訴人から本件携帯電話を預か
り,代替機を渡した。
イ株式会社Dの宮城支店のM主査は,平成15年6月3日,電話で控訴人
から事情を聴いたところ,控訴人は,発生日時は「5月19日の週」とい
うことで日時は特定しなかったものの,被害発見時の状況については,5
月31日の説明時と同様の事実を具体的に話し,本件熱傷の現状について
は,「直りかけてきている。水ぶくれが乾いてきて,現在かさかさ状態。」,
原因については,「昼間の現場作業中や運転中,事務所にいる間,ズボン
の前ポケットに入れ使っているが,なんともなかった。ポケットには車の
キーと一緒に入れている場合があるがそれが原因とは思えない。」と前回
と同様の内容を答えた。
ウMは,同年6月5日,控訴人の勤務先を訪れ,控訴人からやけど跡(本
件熱傷)を写した写真をACアダプタと共に受け取り,状況を尋ねた。M
は,控訴人から本件熱傷の現状について,「直りかけてきてかさぶたが取
れ始めてきた。痛みは特にない。」との回答を得るとともに,調査を行う
必要があることから,診断書を提出するよう依頼した。
(8)診断結果
ア控訴人は,平成15年6月5日,Eクリニックで本件熱傷について診察
を受け,F医師から,病名「熱傷2度」,摘要「左大腿部に携帯電話の形
に一致した熱傷による紅斑を認めます。」との診断を受けた。その際の治
療費は,診断書料2000円を含めて7670円である。
イMは,同月9日,控訴人の勤務先を訪問し,上記診断書を受領した。
(9)本件携帯電話の解析
ア宮城支店から報告を受けた株式会社DのPL対策責任者は,株式会社L
に対し,本件携帯電話,本件リチウムイオン電池,ACアダプタを「PL
お客様情報シート」と共に送付して,調査を依頼した。なお,上記シート
の「想定される事故原因等」欄には,「株式会社DS受付時低温やけどと
言う申告ですが,低温やけど以外に液体による皮膚かぶれの可能性につい
ても,検証をお願いいたします。」との記載がある。
イ株式会社Lは,同年6月上旬ころ,被控訴人に対し,本件携帯電話等の
解析を依頼した。
ウ被控訴人は,そのN製品審査グループ部品審査チームに本件携帯電話の
解析を行わせた。同部署は,被控訴人において,市場に出荷された製品に
ついて,品質に関わるクレームがあった場合に,それに対処することも担
当していた。
エ本件携帯電話の解析結果は,原判決8頁7行目から同9頁3行目までに
記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。
オ解析結果は,要するに,本件携帯電話,本件リチウムイオン電池,AC
アダプタのいずれも正常に動作し,また,温度上昇確認において通常品と
差異がなく,異常発熱の痕跡は見られないというものであった。もっとも,
本件リチウムイオン電池に係る電池パック下部のコネクタカバーが喪失し
ているため,接点部付近に多量のホコリが付着していた。
カ被控訴人は,株式会社Lに対し,平成15年6月16日付け「C発熱
・火傷申告品解析報告」と題する書面により,上記の解析結果を報告し,
株式会社Lは,株式会社Dに対し,同月17日付け「CPL調査報告書」
により,調査結果を報告した。なお,上記「C発熱・火傷申告品解析報
告」の「3.原因」欄には,「今回の不具合は当該携帯機が原因ではなく
何らかの別原因で火傷と考えられる皮膚疾患に至ったものと推定します。」,
控訴人が行った使用状況の申告から「昼間の使用中に異常な熱感は無かっ
たものと考えられます。このことから,当該携帯機の異常発熱は無かった
ものと判断します。」,「送付された写真から,火傷の皮膚疾患部位以外
にお客様の手の甲,親指も赤色に変色しているように見えることから,単
純な局部火傷ではなく,アレルギー等の別原因による可能性も考えられま
すが,皮膚の特徴は個々人に違いがあるため,原因の特定は不可能と判断
します。」との記載がある。
(10)控訴人に対する報告
ア株式会社DのMは,平成15年6月23日,上司のO課長と共に控訴人
をその勤務先に尋ね,株式会社D宮城支店長名の控訴人宛て同日付け「C
の調査報告について」と題する書面を交付した上,上記「C発熱・火傷
申告品解析報告」の写真部分を示しながら説明し,調査・解析の結果,本
件携帯電話に温度上昇等の異常が確認されなかったので携帯電話機が原因
のやけどではない,別の原因だと思われる旨を伝えるとともに,診断書作
成代金を支払うので診断書に係る領収書の用意を依頼した。その際,控訴
人から,本件熱傷の現状について,「今,傷は大分治りかけてきているよ。」
とのその後の経過を聞くとともに,ズボンを脱いで左内股を見せられたと
ころ,かさぶたは取れていた。
イ控訴人は,同年7月8日,株式会社D岩沼店を訪れ,代替機を返却し,
本件携帯電話を受け取った。
(11)その後の交渉経過
控訴人は,Mらとの間で,本件熱傷の原因について話し合いを重ねたが,
納得のいく回答を得られなかった。また,控訴人は,控訴人代理人弁護士に
委任して,被控訴人に対し,本件熱傷の原因分析,報告を求めたが,被控訴
人からは,本件携帯電話が本件熱傷の原因とは考えられないとの回答がなさ
れた。
(12)本件熱傷のその後の状況
ア控訴人は,平成16年1月14日,F医師から,病名「熱傷後色素沈着」,
摘要「左大腿に熱傷治ゆ後の色素沈着を認めます。」との診断を受けた(甲
4)。その際の治療費は,診断書料2000円を含めて4700円であっ
た。
イF医師は,控訴人代理人からの弁護士会照会に対し,平成17年1月1
1日,本件熱傷について,受診時は紅斑とりんせつ(鱗屑)となっており,
熱傷2度・浅層が治癒してきている状態と判断した,患者(控訴人)の携
帯電話機が当たってひりひりしたという話と,携帯電話機に一致した紅斑
であることから,携帯電話機が原因の熱傷と診断した,受診時には今回の
症状以外の皮膚症状はみられなかった,他のアレルギー等の症状はみられ
なかった,今回の症状は境界鮮明な症状で携帯電話機の形に一致している
ことから,原因として携帯電話機が最も考えられる,上記診断書にいう色
素沈着は症状治癒後の色素沈着のことで,固定された状態であり,徐々に
改善すると思うが,特に治療は必要なく,年単位でみていけば薄くなって
くると思う旨回答した。
(13)被控訴人による実証実験
ア被控訴人は,本訴提起後の平成17年8月5日,平成18年2月20日,
同年6月27日及び同年7月10日,本件携帯電話機と同機種の正常に作
動する携帯電話機を用いて実証実験を行った。
イこの本件携帯電話と同機種の携帯電話機に係る正常作動時における温度
上昇に関する実証実験の概要及び結果については,原判決13頁15行目
から同21頁末尾までに記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。
(14)独立行政法人国民生活センターにおける本件携帯電話操作時の状況
ア控訴人代理人は,原審において,平成18年1月13日付け調査嘱託申
立書により,独立行政法人国民生活センター(商品テスト部)に対し,本
件携帯電話の発熱状況に関する調査の嘱託を申し立てるとともに,同年2
月3日,その準備のために本件携帯電話を当時控訴人が着用していたズボ
ンと共に同センターに預けた。
イ同センターの担当者が本件携帯電話を操作しようとしたところ,同年2
月3日には充電可能だったものの,充電完了後,充電用ACアダプタを取
り外してもなお,充電ランプが赤色に点灯せず充電作用を継続する,上記
赤色ランプ点滅時にキー操作を受け付けない,バッテリーを外すと上記赤
色ランプがようやく消灯する,という事象を確認した。本件携帯電話は,
同月6日及び7日もキー操作を受け付けず,同月8日及び同月13日には,
電源も入らなかった。その後,電源が入り,キー操作を受け付けるように
なったが,同月15日,サブディスプレイの表示が消えていて,キー操作
も受け付けず,電源も入らない状態になった。
ウそこで,同センターでは,本件携帯電話を用いて温度調査を行うことは
不可能と判断し,同月28日,本件携帯電話等を控訴人代理人に返還した。
2争点1(本件熱傷は本件携帯電話に起因するか)について
(1)本件熱傷の受傷時期及びその原因等について
ア前記認定の事実によれば,控訴人は,平成15年5月20日の日中には
大腿部の異変は感じておらず,同年6月3日に電話で事情を聴取した株式
会社DのMに対しても,「昼間の現場作業中や運転中,事務所にいる間,
ズボンの前ポケットに入れ使っているが,なんともなかった。」旨を伝え
ている。ところが,上記認定のとおり,20日の夜,就寝後に,ひりひり
して痛い感じがして目が覚め,左大腿部にみみず腫れを確認し,翌朝,水
ぶくれを発見したというものであるところ,控訴人が自動車を運転して帰
宅したのが同日午後8時過ぎであること,控訴人が入浴の上就寝したのが
同日午後11時10分過ぎころであること,入浴及び就寝中に熱傷の原因
となり得る事象が存在した形跡がないことからみて,控訴人が本件熱傷を
負ったのは,同日帰宅後,入浴前のことと推認するのが相当である。そう
すると,本件熱傷の受傷時期は,控訴人所論のとおり,平成15年5月2
0日午後8時30分から午後11時ころまでの間(本件時間帯)であると
認められる。
イまた,受傷状況の写真,やけど跡の寸法を記載した図面によれば,本件
熱傷の位置,形状が控訴人の主張する本件時間帯に本件携帯電話を収納し
ていた場所にほぼ一致すること,前記認定のとおり,F医師の診断に係る
各診断書及び照会に対する回答書によれば,控訴人を診断した医師が,本
件熱傷の症状は,境界鮮明な症状で携帯電話機の形に一致していることか
ら,原因としては,携帯電話機が最も考えられるとしていること(診断時
に,控訴人が医師に対し,ことさら虚偽の説明をしたことをうかがわせる
証拠はない。)などによれば,本件熱傷は,本件時間帯に,本件携帯電話
に関連して生じたものと推認するのが自然である。
ウこれに対し,被控訴人は,受傷時期に関する控訴人の主張が変遷を重ね
たことを理由に,その主張の信用性に疑いがあると主張するが,後記のと
おり,本件熱傷が低温熱傷であることからすれば,その受傷に係る事象(熱
傷事故)が被傷者に直ちに明確に意識される形で出現するとはいい難く,
また,このことから,控訴人が受傷時期について明確な記憶を有しないこ
ともまた,当然というべきであるから,上記主張の変遷もまた,その結果
ということもできるのであって,そのことをもって控訴人の主張が信用性
を欠くとまでは断定することはできない。
エまた,被控訴人は,受傷後の最初に株式会社Dにおいて事情を説明した
際にも,その内容が「5月19日の週」であったなどとあいまいなものに
終始し,時間帯はもちろん,日にちさえ特定しなかったこと,やけど跡に
気付いたときに直ちに診察に行かなかったことから,控訴人の供述に信用
性が乏しく,結局のところ受傷時期は不明というべきであると主張する。
しかしながら,控訴人にとっては,就寝中に本件熱傷に気付いたことと
その原因として本件携帯電話のほか思い当たる節がないことが重要な事柄
として記憶され,これを株式会社Dに申告したものと推察されるのである
から,受傷日についてややあいまいであったとしても,さほど説明内容の
信用性に疑問を抱かせる事情とはならないものというべきである。
また,控訴人が熱傷跡に気付いた直後に医療機関を受診しなかった事実
は認められるものの,本件熱傷の状況や痛みの程度が至急診察に赴くこと
を必要と感じさせるほどのものでなかったと思われることや,控訴人が当
時,同年6月4日締切の設計業務など設計及び設計変更業務にも従事し,
多忙であったことなどから,直ちに医療機関へ受診に赴くことができなか
ったものと推察される上,控訴人は,同年5月31日には株式会社Dに被
害を申告し,調査のため本件携帯電話を預けた上,同年6月5日にはF医
師の診察を受けているのであるから,直後に医療機関を受診しなかったこ
とをもって,控訴人の供述に信用性が乏しいということはできない。むし
ろ,控訴人が株式会社DのMに本件熱傷の現状についてその都度説明した
「直りかけてきている。水ぶくれが乾いてきて,現在かさかさ状態。」(同
年6月3日),「直りかけてきてかさぶたが取れ始めてきた。痛みは特に
ない。」(同月5日),「今,傷は大分治りかけてきているよ。」(同月
23日)との各回答の内容及び同日,ズボンを脱いで見せた左大腿部では,
かさぶたが取れた状況になっていたこと等の事情を総合考慮すると,控訴
人が本件熱傷を受傷したのが同年5月20日であるとの推定がこれによっ
ても裏付けられるものというべきである。
オさらに,被控訴人は,本件熱傷の痕跡が本件携帯電話の形状や構造,材
質,特にアンテナ取付部分は構造上熱傷被害を起こし得ないことなどから
して,これを熱源とするものではないと主張する。
しかしながら,被控訴人の実験においても,アンテナ取付部分は環境温
度に対して約10度の温度上昇が認められること,同部分にも熱伝導物質
である金属は内蔵されており,熱伝導は十分あり得ること,実際,アンテ
ナの形に低温熱傷を負ったという報告もあることなどが認められるのであ
るから,本件熱傷の痕跡が本件携帯電話によるものであることと矛盾する
ものではない。
また,被控訴人は,控訴人が受傷後何時間も気付かないことや,熱傷を
負いながら入浴しても気付かないことはあり得ないと主張する。しかし,
低温熱傷のケースであれば,熱源から離れてから数時間後に水疱が生じた
り,被害者がはじめて被害に気がつくこともあり得るとの知見がある上,
控訴人は当時,飲酒して酔って居眠りをしてしまったこともあったのであ
るから,このような事態が存在したとしても,あながち不自然ではない。
(2)本件熱傷は,低温熱傷か
低温熱傷の概念及び発症条件については前記認定のとおりであるところ,
本件熱傷について,受傷状況の写真,やけど跡寸法を記載した図面,F医師
作成に係る各診断書及び弁護士会照会に対する回答書及び控訴人本人尋問の
結果によれば,控訴人は,就寝中にひりひりして痛い感じがして目が覚め,
見るとみみず腫れを確認し,翌朝水ぶくれを発見したこと,F医師が診察し
た際には,控訴人の左大腿部に熱傷による紅斑が認められ,その程度は熱傷
2度であること,控訴人にとって受傷の前後を通じて取り立てて熱源に接し
た自覚がないという状況,就寝前には風呂に入ったという状況(高温熱傷で
あれば,その段階で気付くはずである。)及び控訴人が株式会社DのMに交
渉の都度伝えた熱傷跡の治癒状況等の事情からみて,本件熱傷は,低温熱傷
と認められる。
(3)本件携帯電話は低温熱傷をもたらす程度に発熱することはあり得るか
ア携帯電話とは,無線通信を利用した電話機端末を携帯する形の移動型の
電気通信システムのことをいい,基地局と呼ばれる有線ネットワークとの
中継点と電話機が無線で通信し,さまざまな通信サービスを移動しながら
にして受けられるものである。上記電話機端末(携帯電話機)は,アンテ
ナ,スピーカー,マイクとこれらを制御する電子回路,入力のためのボタ
ン及び電源(電池)から成っているところ,小さな容量の中にこれら部品
を積み込んだ上,電子回路で結び,外部の電話機等と受信・発信するとこ
ろから,携帯電話機が正常に作動している場合であっても,その動作状態
に応じて機能を発揮するために電力を消費することにより発熱することや,
電池内の内部抵抗によっても発熱することから,機器本体の温度が上昇す
ることがあるのは,被控訴人も認めるところである。
前記認定事実によれば,被控訴人が行った本件各実証実験の結果におい
ても,本件携帯電話と同機種の正常な携帯電話機について,自由空間にお
いて周囲温度に比しての温度上昇は,連続通話状態で8.0度,待ち受け
状態で0.2度,アプリケーションソフト動作状態で3.9度であり,ズ
ボン収納時においては,連続通話状態で4.2度ないし5.3度,待ち受
け状態で0.1度,アプリケーションソフト動作状態で1.4度となって
いる。
そして,本件各実証実験は,基本的に常温と考えられる25度を周囲温
度として試みられているところ,周囲温度がより高い環境であれば,当該
周囲温度に上記温度上昇分が加算されることになる。
イ上記のとおり,携帯電話機は,一般に温度上昇しやすい性質を有してい
る上,その構造上,電池を除いた電話機本体の内部でも回線の短絡(ショ
ート)による不具合が起こることによって発熱する可能性もあり,また,
電池自体にも構成部材が損傷することや外部から微粒子が入ることにより
短絡することによって発熱する可能性もあり,電話機本体と電池との関係
による不具合によって発熱する可能性もあるのであって,発熱の可能性を
本来的に有する製品と認められる。
ウまた,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,製造業者である被控訴人は,
上記の理由等による発熱の危険を防ぐため,携帯電話機の内部にヒューズ
等の安全装置を具備していること,電池には外部短絡等による過電流や過
放電を防止するための保護回路を設けていること,リチウムイオン電池の
特性から外部短絡等により過度に電流が流れることによる発熱を防ぐため,
温度を感知して電流を遮断するPTCという電流制限素子を内蔵している
ことが認められるところ,他方,PTC素子が作動するのは,大体3.6
アンペア以上の電流が流れた場合として設計してあり,電話機本体が,常
温と考えられる25度の環境で,60度くらい又は90度くらいに温度が
上昇した場合を想定していることから,低温熱傷が問題となるような44
度程度では上記PTCは作動しないことが認められる。
エ他方,携帯電話機ないし携帯電話機用電池については,それが被控訴人
の製造に係るものであるかはともかくとして,使用者から独立行政法人国
民生活センターや独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)及び経
済産業省などに対し,携帯電話機使用中に異常発熱したという申告が多数
みられるほか,海外においても同様の事故事例が多数報告されているとこ
ろである。また,被控訴人が納入したリチウムイオン電池で破裂やひび割
れ,異常発熱などの事故事例も生じている。
オそこで,本件携帯電話について検討すると,前記のとおり,本件携帯電
話は,被控訴人が平成13年9月(本件リチウム電池については同年8月)
に製造し,控訴人が平成14年1月6日に購入して以後使用していたもの
であるところ,本件熱傷が発生した平成15年5月30日まで,製造から
約1年8か月(本件リチウム電池については約1年9か月),購入から約
1年5か月経過していることが認められる。購入後の使用状況については,
詳細は不明であるが,前記認定に係る利用料金及び使用状況からみて,通
常の使用程度・態様であったことが推認され,取り立てて異常な使用態様
をもって使用された形跡はない。
本件熱傷発生後の申告に基づいて,被控訴人が本件携帯電話を解析した
際には,本件携帯電話,本件リチウムイオン電池,ACアダプタのいずれ
も正常に動作し,また,温度上昇確認において通常品と差異がなく,異常
発熱の痕跡は見られなかったことは前記認定のとおりであるが,他方,本
件リチウムイオン電池に係る電池パック下部のコネクタカバーが何らかの
理由により喪失していたため,その接点部付近に多量のホコリが付着して
いた事実が認められるところ,上記コネクタカバーの喪失によって,電池
パック下部がむき出しになっていたことから,ホコリがその表面の接点部
付近に止まらず,電池パック内部に混入した可能性も否定できないところ
である。
電池の内部に微少な物質が混入することによって,電池内部の電流が短
絡(ショート)し,原因物質が融解して消滅するまで温度が上昇して,発
熱する可能性も指摘されているところであるから,上記のようにホコリが
電池内部に混入した場合でも,電池が発熱する可能性があるというべきで
ある。
カ他方,前記認定のとおり,本件各実証実験によれば,自由空間において
周囲温度に比しての温度上昇は,本件携帯電話と同機種の正常な携帯電話
機について行った場合でも,連続通話状態では8.0度の上昇を示す事実
が認められるところ,実証実験は,基本的に常温と考えられる25度を周
囲温度として試みられているところ,周囲温度がより高い環境であれば,
当該周囲温度に上記温度上昇分が加算されることになることから,コタツ
内の温度が37度であるならば,37度に上記温度上昇分8度が加算され
て,45度前後になるのであるから,本件携帯電話と同機種の正常な携帯
電話機をコタツ内において連続通話状態にした場合には,本件携帯電話と
同機種の正常な携帯電話機の温度が45度前後に達する可能性もまた,否
定できないものというべきである。
キまた,加熱により電池が短絡状態を惹起して発火したとも考えられる携
帯電話機の爆発事故や何らかの外部熱源の接近又は接触により電池破裂に
至ったものと考えられる携帯電話機の発煙事故も報告されているところで
ある。
クそこで,本件時間帯における本件携帯電話の状況についてみるに,前記
認定事実によれば,控訴人は,本件携帯電話をズボンの前面左側ポケット
に入れたままコタツに入り,そのまま約2時間30分の間,過ごしたもの
であるところ,コタツ内では,コタツによる熱が加えられるところから,
これが外部熱源となって本件リチウムイオン電池に作用し,熱暴走を引き
起こし異常発熱につながった可能性もまた,否定できない。
ケそして,本件携帯電話が何らかの原因により温度上昇を来した結果,約
44度かそれを上回る程度に達し,それが相当時間持続したことは十分に
あり得るものというべきである。
コ被控訴人は,本件携帯電話が本件熱傷発生後も控訴人によって正常に使
用されており,また,解析の結果においても,本件携帯電話の電話機本体
であれ,本件リチウムイオン電池であれ,異常発熱した形跡はない旨主張
するが,携帯電話機の温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,
それが相当時間持続する事象が発生したとしても,これにより当該携帯電
話機がその後に必然的に使用不能になることを認めるに足りる証拠はなく,
かえって,携帯電話機が50度ないし70度になっても電話機本体の機能
が損傷することはなく,電池に何らかの短絡があっても,それがソフトシ
ョートに止まる場合はその後の使用が可能なこともあるところから,上記
温度上昇の可能性の指摘は,本件携帯電話が,その後においても使用可能
であった事実と矛盾するものではないというべきである。
サ以上に検討した結果によれば,本件携帯電話が低温熱傷をもたらす程度
に発熱することは,控訴人所論のとおり,合理的に考えて十分あり得るも
のと認められる。
(4)本件熱傷の発生源が本件携帯電話のほかにもあり得るか
ア控訴人が最初に受診した際に,本件熱傷以外の皮膚症状はみられなかっ
たこと及び他のアレルギー症状もみられなかったことは,前記認定のとお
りである。そして,本件熱傷の発生源が本件携帯電話のほかに存したこと
をうかがわせる証拠はない。
イこれに対し,被控訴人は,仮に,控訴人が本件時間帯に本件熱傷を負い,
かつ,それが低温熱傷であったとしても,控訴人が本件時間帯に利用して
いたコタツの熱量等の事情を考慮すると,コタツの発熱のみによって熱傷
を負ったなど,本件熱傷の原因がほかにも考え得る旨主張する。
ウそこで,検討するに,証拠及び弁論の全趣旨によれば,控訴人が本件時
間帯に利用していたコタツは,その本体部分は15年以上前に購入したも
ので,その熱源部分は平成7年ころに交換したものであること,熱源部分
は,温度調節の方式が可変式(低,中,高の3段階),定格電圧100V,
定格表消費電力500w,温度ヒューズ172℃であること,控訴人方で
は,毎年冬期間にはコタツに加えてファンヒータや石油ストーブも併用し
て暖を取り,4月から梅雨にかけての時期にはコタツのみを使用し,夕食
はコタツで取ることが日常化していたこと,控訴人が平成18年9月10
日にコタツ内に本件携帯電話を置いて温度を実験したところによると,室
温31度に対し,体温36.3度,コタツ内温度37度であったこと,以
上の事実が認められる。他方,コタツに何らかの異常が存在していたこと
はうかがえず,また,これまで,コタツ自体の熱によって控訴人又はその
妻が熱傷を負う事故が発生した形跡はない。
エ本件時間帯における温度調節の段階は明確ではないものの,当時は5月
下旬であるところから,相当に高温にする必要性は一般的には乏しく,控
訴人が推定するように,「中」程度の段階であったものと思われる。また,
本件時間帯に夕食を取りながら暖を取るためにコタツを使用したのである
から,本件時間帯におけるコタツ内温度は,上記実験結果の37度より高
温度であったことも考えられるものの,冬期間よりもコタツの熱量が大き
いとは考えにくいところである。
オそうすると,これまで熱傷を負う事故もなく推移してきたにもかかわら
ず,本件時間帯に限り,コタツの発熱により控訴人が熱傷を負ったとは考
え難いところである上,コタツ自体の熱源が本件熱傷の原因と仮定すると,
その傷痕の位置が大腿部のやや内側にあるのは不自然であるし,その形態
も熱源であるヒーター部分と必ずしも符合せず,その大きさも控訴人の熱
傷跡程度に止まるものかは,はなはだ疑問であることなどを併せ考慮する
と,被控訴人所論のように,控訴人がコタツの発熱のみによって熱傷を負
ったものと推認することはできないものというほかない。
カほかに本件熱傷の原因となる事由(他原因)について,被控訴人の具体
的な主張はなく,また,これをうかがわせるに足りる事情も認め難い。し
たがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
(5)まとめ
控訴人が平成15年6月5日時点において本件熱傷を負っていたことは,
動かし難い事実であるところ,以上認定の事実によれば,控訴人は平成15
年5月20日午後8時30分から午後11時ころまでの間(本件時間帯)に
おいて,そのズボン前面左側ポケットに本件携帯電話を入れ,被害部位であ
る控訴人の左大腿部と接触する状況にあったこと,本件携帯電話の位置,形
状と本件熱傷の位置,形状はほぼ一致すること,本件熱傷は低温熱傷である
こと,本件携帯電話の温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,そ
れが相当時間持続すること,すなわち低温熱傷をもたらす程度に発熱する状
態(異常発熱)になることは十分あり得ること,ほかに本件熱傷の原因とな
り得る事由は見当たらないことなどの諸事情が認められ,これらを総合考慮
すれば,本件熱傷は,本件時間帯において,本件携帯電話が低温熱傷をもら
たす程度に異常発熱したために生じたもの(本件熱傷が本件携帯電話に起因
すること)と推認することができる。
3争点2(欠陥ないし過失の有無)について
(1)本件は,控訴人がその左大腿部に熱傷を負い,その原因は当時使用してい
た本件携帯電話の欠陥にあるとして,本件携帯電話の製造業者である被控訴
人に対し,製造物責任法3条又は民法709条に基づき,損害賠償を請求す
るものであるところ,被控訴人は,控訴人の熱傷が本件携帯電話から発生し
たという製品起因性について否認するとともに,本件携帯電話の欠陥の存在
についてもこれを否認している。
このような場合には,製造物責任法の趣旨,本件で問題とされる製造物で
ある携帯電話機の特性及びその通常予見される使用形態からして,製造物責
任を追及する控訴人としては,本件携帯電話について通常の用法に従って使
用していたにもかかわらず,身体・財産に被害を及ぼす異常が発生したこと
を主張・立証することで,欠陥の主張・立証としては足りるというべきであ
り,それ以上に,具体的欠陥等を特定した上で,欠陥を生じた原因,欠陥の
科学的機序まで主張立証責任を負うものではないと解すべきである。すなわ
ち,本件では,欠陥の箇所,欠陥を生じた原因,その科学的機序については
いまだ解明されないものであっても,本件携帯電話が本件熱傷の発生源であ
り,本件携帯電話が通常予定される方法により使用されていた間に本件熱傷
が生じたことさえ,控訴人が立証すれば,携帯電話機使用中に使用者に熱傷
を負わせるような携帯電話機は,通信手段として通常有すべき安全性を欠い
ており,明らかに欠陥があるということができるから,欠陥に関する具体化
の要請も十分に満たすものといえる。
(2)これを本件についてみるに,携帯電話は,前記のとおり,無線通信を利用
した電話機端末(携帯電話機)を携帯する形の移動型の電気通信システムの
ことをいい,その特性から,携帯電話機を衣服等に収納した上,身辺におい
て所持しつつ移動でき,至る所で,居ながらにして電気通信システムを利用
できることにその利便性や利用価値があるのであるから,これをズボンのポ
ケットに収納することは当然通常の利用方法であるし,その状態のままコタ
ツで暖を取ることも,その通常予想される使用形態というべきである。ちな
みに,被控訴人も,ズボンのポケットに収納したままコタツで暖を取ること
を取扱説明書において禁止したり,危険を警告する表示をしてないところで
ある。
なお,被控訴人は,取扱説明書の本件携帯電話を高温の熱源に近づけない
ようにという警告表示がこれに当たるかのような主張をするが,コタツがそ
こにいう「高温の熱源」に当たるとは直ちにはいい難いし,上記警告表示が,
携帯電話機をことさらコタツの熱源に接触させるような行為はともかくとし
て,これをズボンのポケットに収納した状態のままコタツで暖を取るという
日常的行為を対象にしているとは到底解されない(仮に,そのような日常的
行為の禁止をも含む趣旨であるとしたならば,表示内容としては極めて不十
分な記載であり,警告表示上の欠陥があるというべきである。)。
(3)そうすると,控訴人は,本件携帯電話をズボンのポケット内に収納して携
帯するという,携帯電話機の性質上,通常の方法で使用していたにもかかわ
らず,その温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,それが相当時
間持続する事象が発生し,これにより本件熱傷という被害を被ったのである
から,本件携帯電話は,当該製造物が通常有すべき安全性を欠いているとい
わざるを得ず,本件携帯電話には,携帯使用中に温度が約44度かそれを上
回る程度の温度に達し,それが相当時間持続する(異常発熱する)という設
計上又は製造上の欠陥があることが認められる。
(4)その原因として,具体的には,①前記のとおり,本件リチウムイオン電池
に係る電池パック下部のコネクタカバーが喪失していたため,電池パック下
部がむき出しになっていたことから,ホコリが電池パック内部に混入し,電
池の内部に微少な物質が混入することによって,電池内部の電流が短絡(シ
ョート)し,原因物質が融解して消滅するまで温度が上昇して,異常発熱し
た可能性が考えられるところ,ほかにも,②何らかの理由で本件リチウムイ
オン電池に外部から力が加わった結果,電池内部に微細な損傷が生じ,その
後の充放電の繰り返しにおいて損傷が拡大して電池の内部で短絡(ショート)
が発生し,これにより本件リチウムイオン電池が異常発熱した可能性(独立
行政法人製品評価技術基盤機構に対する平成21年1月20日付け調査嘱託
の結果に類似と考えられる事例が報告されている。),③本件携帯電話が何
らかの理由により,本件時間帯において待ち受け状態から通話状態に切り替
わり,それが持続したことに加えて,コタツ内にあったことから周囲温度が
37度以上となり,これに連続通話状態における8.0度程度の温度上昇が
加わった結果,本件携帯電話の温度が45度前後に達し,これが本件時間帯
において持続した可能性(本件携帯電話を独立行政法人国民生活センターで
調査した際,キー操作の異常があり,温度調査を行うことができなかったこ
とは前記認定のとおりであり,控訴人によれば,本件以前から,待ち受け状
態の本件携帯電話が着信していないのに,かすかに振動するなどの誤作動を
したと思われる経験が何度かあったようである。),④コタツの熱による加
熱が外部熱源となって本件リチウムイオン電池に作用し,熱暴走を引き起こ
し異常発熱につながった可能性などを指摘し得るところである。そして,前
記のとおり,低温熱傷が問題となるような約44度かそれを上回る程度の温
度上昇では上記PTCは作動しない事実が認められ,ほかにこのような事態
が発生し,温度上昇が44度程度で持続した場合の対応策が本件携帯電話(本
件リチウム電池を含む。)に施されていた形跡はない。
しかしながら,いずれにしても,また,ほかの原因が考えられるとしても,
製造物責任法においては,控訴人がその欠陥の部位,具体的原因,異常発生
の科学的機序等を主張・立証することまでは必要でないことは,前記のとお
りである。
(5)以上によれば,本件携帯電話には製造物責任法2条2項にいう欠陥があっ
たことが認められる。
なお,製造物責任法は,その4条で,製造業者等が,当該製造物をその製
造業者等が引き渡したときにおける科学又は技術に関する知見によっては,
当該製造物にその欠陥があったことを認識することができなかったこと(同
条1号)等を証明したときは,同法3条に規定する賠償の責めに任じない旨
規定するところ,本件において,被控訴人は,上記同法4条の免責の主張は
していない。
4争点4(損害額)について
(1)治療費等1万2370円
ア控訴人は,本件熱傷を負った結果,平成15年6月5日,Eクリニック
でF医師の診察を受け,治療費5670円,診断書料2000円の合計7
670円を支払った。
イ控訴人は,同様に,平成16年1月14日,F医師の診察を受け,治療
費2700円,診断書料2000円の合計4700円を支払った(甲5)。
(2)調査費用150万円
ア証拠によれば,控訴人は,本件熱傷後,代理人弁護士を介して,被控訴
人に対し,控訴人が本件熱傷を負ったことを告げ,今後の同種被害防止の
ために,原因等の調査・分析を行った上,控訴人に報告するよう申し入れ
たところ,被控訴人は,代理人弁護士を介して,控訴人に対し,被控訴人
が,本件熱傷に係るのと当該同種同機能の携帯電話機で,本件熱傷が惹起
され得るものかにつき,徹底的に調査・分析をした結果,前記携帯電話機
で控訴人が負わされたと言われる熱傷が惹起されうる可能性は,皆無であ
ることが判明した旨通知した事実,別途送付された上記調査・分析結果の
資料の記載は,被控訴人のN部門において本件携帯電話と本件リチウムイ
オン電池の解析と温度実験を行ったが異常がなかったことから,本件携帯
電話が本件熱傷の原因とは考えられない旨の結論のみを簡単に要約したも
のにすぎなかった事実が認められるところ,上記調査・分析は,控訴人が
株式会社Dに被害を申告した際に,株式会社Lの依頼により被控訴人が実
施した解析のことを指し,上記控訴人代理人の申入れ後に改めて調査・分
析を行った形跡はなく,仮に,被控訴人において,当該同種同機能の携帯
電話機で本件熱傷が惹起され得るものかにつき,調査・分析を行ったこと
があるとしても,その内容を開示,報告したものではない。
イ本件熱傷及び被控訴人の上記対応の結果,控訴人は,自ら独自に専門家
に依頼して調査をすることを余儀なくされたことが認められ,その費用と
して150万円を上回る金額を負担した事実が認められる。
ウ以上の事実に,本件訴訟の性質,訴訟経過,相手方の応訴態度等を考慮
すれば,本件製造物の欠陥により生じた損害として,調査費用のうち15
0万円を被控訴人に負担させるのが相当である。
(3)慰謝料50万円
控訴人は,本件熱傷により左大腿部に熱傷2度の傷害を負い,治療を余儀
なくされ,熱傷後色素沈着の状況を残したほか,被控訴人の上記対応等によ
っても精神的苦痛を被ったものと認められる。本件熱傷に関し,株式会社D
から控訴人指定の口座に3万2000円の振込送金があった事実を考慮して
も,控訴人の精神的苦痛を慰謝するには50万円の慰謝料をもって相当と思
料する。
(4)弁護士費用20万円
控訴人は,本件訴訟の提起・追行を余儀なくされ,そのため弁護士を代理
人として委任する必要性があったものと認められるところ,その内20万円
をもって,相当因果関係のある損害と認める。
(5)以上によれば,本件において,製造物責任法3条により認められる損害額
は,合計221万2370円となる。
5よって,控訴人の本件請求は,被控訴人に対し,221万2370円及びこ
れに対する訴状送達日の翌日である平成17年6月14日から支払済みまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから
これを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却べきである。
6以上の次第であるから,当裁判所の上記判断と一部異なる原判決を変更する
こととし,主文のとおり判決する。
仙台高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官小磯武男
裁判官山口均
裁判官岡田伸太は,転補につき,署名押印することができない。
裁判長裁判官小磯武男

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛