弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成31年(受)第619号特許権侵害による損害賠償債務不存在確認等
請求事件
令和2年9月7日第二小法廷判決
主文
1原判決中,上告人が被上告補助参加人に対して損害
賠償請求権を有しないことの確認請求に関する部分
を破棄し,同部分につき被上告人の控訴を棄却する。
2上告人のその余の上告を棄却する。
3第1項に関する訴訟の総費用は被上告人の負担とし,
前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人平野惠稔,同黒田佑輝,同手代木啓の上告受理申立て理由(ただし,
排除された部分を除く。)について
1本件は,被上告人が,第1審判決別紙3特許権目録記載の各特許権(以下
「本件各特許権」という。)の特許権者であった上告人を被告として,上告人の被
上告補助参加人(以下「参加人」という。)に対する本件各特許権の侵害を理由と
する不法行為に基づく損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)が
存在しないことの確認等を求める事案である。
2原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)本件各特許権の特許権者であった上告人は,平成5年,被上告人に対し,
本件各特許権について独占的通常実施権を許諾した(以下,この許諾に係る契約を
「本件実施許諾契約」という。)。
(2)被上告人は,上記許諾を受けた後,第1審判決別紙1機械装置目録記載の
各機械装置(以下「本件各機械装置」という。)を製造し,平成17年3月頃から
平成20年2月頃までの間,上告人の競合会社である参加人の前身である外国法人
に対して本件各機械装置を販売した。そして,参加人は,同年4月頃以降,韓国内
において本件各機械装置を使用して第1審判決別紙2製品目録記載の各製品(以下
「本件各製品」という。)を製造し,これを日本及び米国に輸出するなどした。
被上告人と参加人は,参加人が本件各機械装置を使用することに関して,第三者
からの特許権の行使により損害を被った場合には,被上告人がその損害を補償する
旨の合意(以下「本件補償合意」という。)をしている。
(3)上告人は,平成22年,本件実施許諾契約には被上告人が前記通常実施権
に基づいて製造した機械装置を上告人の競合会社に販売することを禁止する特約が
付されていたから,参加人による本件各製品の製造販売は第1審判決別紙3特許権
目録記載2の米国特許権を侵害する旨主張して,参加人に対し損害賠償を求める訴
訟(以下「別件米国訴訟」という。)を米国において提起した。別件米国訴訟の第
1審では,平成29年5月,参加人による本件各製品の製造販売は上記米国特許権
を侵害するものであるなどとして,参加人に対して損害賠償を命ずる判決が言い渡
された。
3原審は,本件訴えのうち本件損害賠償請求権の不存在確認請求(以下「本件
確認請求」という。)に係る部分につき,要旨次のとおり判断して確認の利益を認
め,第1審判決のうち同部分を確認の利益がないとして却下した部分を取り消し,
同部分につき本件を第1審に差し戻した。
上告人の参加人に対する本件損害賠償請求権の行使により参加人が損害を被った
場合には,被上告人は,参加人に対し本件補償合意に基づきその損害を補償しなけ
ればならず,その補償額について上告人に対し本件実施許諾契約の債務不履行に基
づく損害賠償請求をすることになる。この請求権の存否を導き出すに当たっては,
本件損害賠償請求権の存否の判断に要する主要事実に係る認定及び法律判断と同様
の認定判断が必要になるから,本件損害賠償請求権が存在しないことの確認を求め
ることは,被上告人の上告人に対する権利ないし法律関係を明らかにし,その不安
を除去するために有効適切なものといえる。また,上告人が参加人に対し別件米国
訴訟を提起し,その第1審において参加人に対して損害賠償を命ずる判決が言い渡
されたこと等に照らすと,被上告人の上告人に対する上記損害賠償請求に係る権利
又は法的地位について現実の不安が生じている。したがって,本件確認請求に係る
訴えには確認の利益がある。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
本件確認請求に係る訴えは,被上告人が,第三者である参加人の上告人に対する
債務の不存在の確認を求める訴えであって,被上告人自身の権利義務又は法的地位
を確認の対象とするものではなく,たとえ本件確認請求を認容する判決が確定した
としても,その判決の効力は参加人と上告人との間には及ばず,上告人が参加人に
対して本件損害賠償請求権を行使することは妨げられない。
そして,上告人の参加人に対する本件損害賠償請求権の行使により参加人が損害
を被った場合に,被上告人が参加人に対し本件補償合意に基づきその損害を補償
し,その補償額について上告人に対し本件実施許諾契約の債務不履行に基づく損害
賠償請求をすることがあるとしても,実際に参加人の損害に対する補償を通じて被
上告人に損害が発生するか否かは不確実であるし,被上告人は,現実に同損害が発
生したときに,上告人に対して本件実施許諾契約の債務不履行に基づく損害賠償請
求訴訟を提起することができるのであるから,本件損害賠償請求権が存在しない旨
の確認判決を得ることが,被上告人の権利又は法的地位への危険又は不安を除去す
るために必要かつ適切であるということはできない。なお,上記債務不履行に基づ
く損害賠償請求と本件確認請求の主要事実に係る認定判断が一部重なるからといっ
て,同損害賠償請求訴訟に先立ち,その認定判断を本件訴訟においてあらかじめし
ておくことが必要かつ適切であるということもできない。
以上によれば,本件確認請求に係る訴えは,確認の利益を欠くものというべきで
ある。
5これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中本件確認請求に
関する部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,本件訴えの
うち本件確認請求に係る部分は不適法であり,これを却下した第1審判決は正当で
あるから,同部分につき被上告人の控訴を棄却すべきである。
なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の
決定において排除されたので,棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官岡村和美裁判官菅野博之裁判官三浦守裁判官
草野耕一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛