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平成15年3月25日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
 
平成14年(ハ)第15837号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成15年3月4日
          主    文
1 被告は,原告に対し,10万円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを9分し,その8を原告の負担とし,その余を被告の負担とす
る。
          事実及び理由
第1 請   求
  被告は,原告に対し,90万円を支払え。
第2 事案の概要
 1 請求原因の要旨
  (1)被告は,平成13年2月頃から平成13年11月末日頃までの間,原告の
夫であるAと,Aに妻子のあることを知りなが   ら,不倫関係をもった。
  (2)原告にこの件が発覚してから,原告とAとの家庭生活はぎくしゃくしたも
のになり,その結果,原告とAは一時家庭内別   居の状態になり,平成14年
2月15日には離婚の話まで進んだ。現在でも,原告はショックで夜も眠れず精神
安定剤を服   用する日々が続いており,ときにはAと大喧嘩になり,つらい思
いをしている。
  (3)原告の精神的苦痛を慰謝するには90万円が相当である。
 2 被告の主張
  (1)被告がAと交際を始めたのは,平成13年の6月中頃か末頃,○○委員と
しての職務上の相談のために,会長であったA   に会って食事をしながら話を
聞いてもらったときからである。
  (2)被告とAの交際の内容は,食事やお茶を共にしたり映画を観たりというも
のであり,不倫関係ではない。
  (3)被告が,Aへの手紙に思わせぶりな文章を書いたことについては,申し訳
なく思っている。
第3 当裁判所の判断
 1 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めることができる。
  (1)原告は昭和10年生まれの女性であり,Aは昭和4年生まれの男性であっ
て,原告とAは昭和31年に婚姻し3人の子供   をもうけた。
    Aは原告との婚姻当初から自宅で印刷関係の事業を営み,20年前に次男
にその事業を引き継いでからはその補助的な仕   事をしつつ○○委員となっ
た。
    被告は昭和18年生まれの女性であって,昭和40年に婚姻して3人の子
供をもうけたが,平成5年に夫と死別し,10   年前から○○委員となり,5
年くらい前からパート的に老人会館の管理人をしている。
  (2)被告は,平成13年6月21日頃ころ,Aに○○委員としての仕事の関係
の相談をした。
   被告とAは,平成13年10月6日頃,池袋のカラオケに行った。
    Aは,平成13年10月7日,横浜のCという店で被告に3万円程度のネ
ックレスを買い与えた(被告は,原告にAとの   交際が発覚した後,そのネッ
クレスをAに返した)。
    被告とAは,平成13年10月18日,原告には内緒で,大阪のDに日帰
りで遊びに行った。
    被告とAは,Aの誕生日の前日である平成13年11月22日,池袋のデ
パートの中にある料理屋で昼の食事をした。
   そのころ,被告はAに,合わせて2万円程度の手袋とアスコット・タイをプ
レゼントした。
   原告に,被告とAとの交際が発覚した後,被告とAは,いずれも○○委員を
辞任した。
  (3)原告は,平成13年8月頃から,Aのポケットにあった領収証が2人分で
あることや,Aが毎月1回水曜日に開かれる○   ○委員の会合の夜に自宅で夕
食を取らなくなったことから被告との関係に疑いを持つようになっていたが,平成
13年11   月25日,Aのワイシャツのポケットに被告の手紙を発見して,
被告とAとが不倫関係にあると考えるようになった。
   その後,原告と被告は一時家庭内別居の状態にあり,原告は離婚を考えたこ
ともあったが,現在では,外形上は通常の夫婦   生活に戻っている。
  (4)被告は,Aに対して,「黙って話を聞いてくれていい方だ」という印象を
持っていたが,一緒に映画を見た後には,夫を   癌で亡くしたあとであったこ
ともあって,恋愛感情の吐露と見られても已むを得ない手紙を書いた。
 2  ところで,第三者が婚姻当事者の一方と緊密な関係になったことによっ
て,他方の配偶者が精神的苦痛を被った場合につ   いて,次の最高裁判所の判
例がある。「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は,故意又は過失があ
る限り,右配   偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか,
両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわら   ず,他方の配偶
者の夫又は妻としての権利を侵害し,その行為は違法性を帯び,右他方の配偶者の
被った精神上の苦痛を慰   謝すべき義務があるというべきである。」(最判昭
和54年3月30日民集33巻2号303頁)。
 3  そこで,この判例にしたがって考察すると,被告とAとの間に肉体関係が
あったことを認めるに足りる証拠はないが,被   告とAとの交際の程度は,数
万円もするプレゼントを交換するとか,2人だけで大阪まで旅行するなど,思慮分
別の十分で   あるべき年齢及び社会的地位にある男女の交際としては,明らか
に社会的妥当性の範囲を逸脱するものであると言わざるを   得ず,恋愛感情の
吐露と見られる手紙を読んだ原告が,被告とAとの不倫を疑ったことは無理からぬ
ところである。被告の   これらの行為が,原告とAとの夫婦生活の平穏を害し
原告に精神的苦痛を与えたことは明白であるから,被告は原告に対し   不法行
為責任を免れるものではない。
    しかしながら,本来,夫婦は互いに独立した人格であって,平穏な夫婦生
活は夫婦相互の自発的な意思と協力によって維   持されるべきものであるか
ら,不倫の問題も,基本的には原告とAとの夫婦間の問題として処理すべきものと
考えられる。    したがって,被告とAとの交際が上記の程度であって,その
期間も約半年に過ぎないこと,被告もAも○○委員を辞任す   るという一種の
社会的制裁を受けていること,原告とAとの婚姻関係は最終的には破綻することな
く維持されていること等   の事情を勘案すると,本件において,被告の行為に
よって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては,10万円が相   当と
考えられる。
    東京簡易裁判所民事第2室
         裁 判 官大 山涼一郎

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