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平成15年(ネ)第3257号不正競争防止法に基づく差止等請求控訴事件(原
審・千葉地方裁判所木更津支部平成14年(ワ)第111号)
口頭弁論終結日 平成15年10月27日
判    決
控訴人         A  
被控訴人        トータルエネルギー株式会社
同訴訟代理人弁護士清 水 保 彦
同           土 橋 博 孝
主    文
     1 本件控訴を棄却する。
     2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 上記取消しに係る部分の被控訴人の請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨
第2 事案の概要
1 本件は,液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の販売等を目的とする
被控訴人会社が,元従業員である控訴人に対し,控訴人は,被控訴人とLPガス供
給契約を締結している顧客等に対し,「被控訴人会社は,契約して数か月経つと,
必ず料金を値上げする。」,「被控訴人会社は,不祥事を起こしている会社で,信
用できない会社である。」旨の虚偽の事実を告知流布し,それにより被控訴人の顧
客を他社とのLPガス供給契約に切り替えさせ,211万5000円の利益を得て
いる旨主張して,不正競争防止法2条1項14号,3条,4条に基づき,上記事実
の宣伝陳述の差止めを求めるとともに,損害金211万5000円及びこれに対す
る不正競争行為後である平成14年8月21日から支払済みまで民法所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原判決は,控訴人が「被控訴人会社は,契約して数か月経つと,必ず料金を
値上げする。」旨をLPガス需要者に対し宣伝陳述することの差止め,損害金31
万円及びこれに対する遅延損害金の支払の限度で,本訴請求を認容し,その余の請
求を棄却したのに対し,控訴人はその敗訴部分の取消しを求めて本件控訴を提起し
た。
2 争点の前提となる事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第二 争点の前
提となる事実」記載のとおりであるから,これを引用する。
3 被控訴人の請求原因
(1) 控訴人は,被控訴人会社を退職後,同社と営業上の競争関係にある堀川産
業株式会社(以下「堀川産業」という。)及び株式会社昭和瓦斯実業(以下「昭和
瓦斯」という。)との間で,LPガス需要者との間の供給契約を1件獲得するごと
に一定額の報酬を得るという代理店類似の契約を締結した。
(2) その後,控訴人は,被控訴人とLPガス供給契約を締結している顧客を訪
問し,「被控訴人会社は,契約して数か月経つと,必ず料金を値上げする。」,
「被控訴人会社は,不祥事を起こしており,信用できない会社である。」旨の虚偽
の事実を述べて,LPガス供給契約の相手方を被控訴人から上記競業会社に変更す
るように勧誘した。
(3) 控訴人は,上記虚偽事実の告知流布により,47名の被控訴人の顧客を上
記競業会社との契約に切り替えさせ,同社らから1件当たり4万5000円の報酬
を得たから,その合計額は211万5000円になり,これが被控訴人の損害額と
推定される。
4 請求原因に対する控訴人の認否
(1) 請求原因(1)の事実は否認する。控訴人は,堀川産業や昭和瓦斯との間で
被控訴人主張のような契約を締結したことはなく,また,同社らからお礼をもらっ
たことはあるが,報酬をもらったことはない。
(2) 同(2)の事実のうち,控訴人が,被控訴人とLPガス供給契約を締結して
いる顧客を訪問し,「被控訴人会社は,契約して数か月経つと,必ず料金を値上げ
する。」,「被控訴人会社は,不祥事を起こしており,信用できない会社であ
る。」旨を述べたことは認めるが,その余の事実は否認する。上記内容は,いずれ
も虚偽ではなく真実である。また,特定のガス会社との契約を勧誘したことはな
く,「きちんとした他の会社から供給を受けた方がいい。」旨述べたにすぎない。
 当時の不況下において,企業はいつ経済的危機に陥るかも知れないから,
契約成立後数か月しても料金を値上げしないと断言することはできない。
(3) 同(3)の事実は否認する。
 被控訴人の主張する上記顧客は,不正競争防止法に抵触する営業活動によ
り獲得した顧客ではないから,上記金額が被控訴人の損害額ということはできな
い。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も,被控訴人の控訴人に対する本訴請求は,原判決が認容した限度で
理由があると判断する。その理由は,次のとおり付加するほかは,原判決の「事実
及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから,これを引用
する(ただし,原判決3頁2行目の「あった」を「成立した」と,同6行目の「契
約のとれた」を「契約が成立した」と,同4頁8行目の「平成13年」を「平成1
2年」と,同11行目の「弁論の全趣旨」を「原審における被控訴人会社代表者本
人」とそれぞれ改め,同20行目の「をする」を削除する。)。
1 控訴人は,「当時の不況下において,企業はいつ経済的危機に陥るかも知れ
ないから,契約成立後数か月しても料金を値上げしないと断言することはできず,
したがって,控訴人が述べた「被控訴人会社は,契約して数か月経つと,必ず料金
を値上げする。」という事実は,真実であって,虚偽の事実ではない。」旨主張す
る。しかしながら,被控訴人会社が契約成立後数か月以内に料金を必ず値上げする
といえるような状況にあることを認めるに足りる的確な証拠はない。また,「料金
を値上げしないと断言することはできない。」ことと「必ず料金を値上げする。」
こととは異なる事実であるから,仮に,控訴人が主張するように,被控訴人が契約
成立から数か月後に料金を値上げしないと断言することができないとしても,それ
故に直ちに「契約成立から数か月後に,必ず料金を値上げする。」旨の事実が虚偽
ではないということはできない。したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
2 また,控訴人は,「特定のガス会社との契約を勧誘したことはなく,「きち
んとした他の会社から供給を受けた方がいい。」旨述べたにすぎない。」,「被控
訴人が問題とする顧客は,不正競争防止法に抵触する営業活動により獲得した顧客
ではないから,上記金額が被控訴人の損害額ということはできない。」旨主張す
る。しかしながら,証拠(甲9,11,12の1・2,13の1ないし18,14
の1・2,15の1ないし9,16,被控訴人会社代表者本人(原審))によれ
ば,控訴人が顧客に対し,被控訴人との間の契約を昭和瓦斯との間の契約に変更す
るように勧誘し,その結果,34件の顧客が被控訴人から昭和瓦斯へLPガス供給
契約を切り替えたことが認められる(控訴人自身,原審で,「昭和瓦斯に切り替え
ておいた方が間違いないよと言いました。」と供述している。)。したがって,控
訴人の上記主張はいずれも理由がない。
3 以上によれば,被控訴人の控訴人に対する本訴請求は,原判決が認容した限
度で理由があり,これと同旨の原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由が
ないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第3民事部
  裁判長裁判官 北  山  元  章
 裁判官  清  水     節
 裁判官  沖  中  康  人

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