弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成一〇年(ワ)第二六六三八号 損害賠償請求事件
(口頭弁論終結日 平成一一年六月一一日)
         判         決
          原       告    竹井機器工業株式会社
          右代表者代表取締役    【A】
          右訴訟代理人弁護士    武田仁宏
          右補佐人弁理士    【B】
          被       告    コダック株式会社
          右代表者代表取締役    【C】
          右訴訟代理人弁護士    鈴木 修
          同            大平 茂
          右補佐人弁理士    【D】
         主         文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第一 請求
 被告は、原告に対し、金七五五七万円及び内金六七二〇万円に対する平成一〇年
九月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件は、被告が後記標章を付したレンズ付フィルムを製造、販売する行為が、原
告の商標権を侵害すると主張して、原告が被告に対し、損害賠償を請求した事案で
ある。
一 前提となる事実(証拠を示した事実以外は、当事者間に争いがない。)
1 原告の商標権
 原告は、次の商標権(以下「本件商標権」といい、その登録商標を「本件登録商
標」という。)を有している(甲一、二、五)。
登録番号 第二二三七七九六号 
出願日 昭和六三年二月二四日
登録日 平成二年六月二八日
指定商品 旧第一〇類 理化学機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)
光学機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)写真機械器具、映画機械器
具、測定機械器具(電子応用機械器具に属するものおよび電気磁気測定器を除く)
医療機械器具、これらの部品および附属品(他の類に属するものを除く)写真材料
登録商標 別紙商標目録記載のとおり
2 被告の行為
 被告は、別紙被告標章目録記載のとおりの標章(以下「被告標章」という。)を
付したレンズ付フィルム(以下「被告商品」という。)を製造、販売している。
二 争点
1 被告標章は、本件登録商標と類似しているか。
(原告の主張)
 本件登録商標からは「キューティ」の称呼が生じ、被告標章からも「キューテ
ィ」の称呼が生じる。被告標章は、本件登録商標と称呼が同一であるから、本件登
録商標と類似する。
(被告の反論)
 被告標章から、「キューティ」の称呼が生じることは認める。
 被告標章を構成する「Q」及び「t」の欧文字二文字の組合せは、識別力を有す
るとはいえない。被告標章は、その称呼においては、識別力を有し得ず、専らデザ
イン化された外観において識別力を有する。また、本件登録商標は「かわいい女の
子」という観念を有するのに対し、被告標章からは何らの観念も生じない。
 被告標章と本件登録商標とは、外観を異にすることは明らかであり、観念も異な
り、被告標章は本件登録商標と類似しない。
2 損害はいくらか。
(原告の主張)
(一) 逸失利益
 原告は、本件登録商標の使用を許諾するについては、販売額の四パーセントを使
用料としている。本件のような無断使用についての使用料は、販売額の八パーセン
トを下らない。
 平成九年五月から平成一〇年四月までの間における被告のレンズ付フィルム(一
〇機種)の販売数量は、全体で七〇〇万個であり、このうち、被告商品の販売数量
は三五〇万個を下らないと推測される。被告商品の販売価格は、一個一二〇〇円と
推認できる。
 販売個数を、その一部の七〇万個として算定すると、原告が受けた使用料相当の
損害金は、次のとおり、六七二〇万円である。
1,200×700,000×0.08=67,200,000
(二) 弁護士費用
 原告は、本件訴訟につき、原告代理人に訴訟遂行を委任し、勝訴時に着手金及び
報酬合計八三七万円を支払う旨約した。
(被告の反論)
 原告の主張は争う。
 原告は、本件登録商標をその指定商品中のカメラに使用していない(被告は、原
告が本件登録商標を使用していないことを理由として一部取消審判請求をしてい
る。)ので、被告の行為と原告の損害との間には相当因果関係がなく、原告に損害
は発生しない。したがって、原告は損害賠償請求権を有しない。
第三 争点に対する判断
一 争点1(被告標章と本件登録商標との類否)について判断する。
1 本件登録商標は、欧文字の「Cutie」を、丸みを帯び、右に傾けた字体を
用いて横書きしたものである。本件登録商標からは、「キューティ」ないし「キュ
ーティエ」の称呼を生じ、また、「かわいい」ないし「かわいい娘」等の観念を生
ずる場合がある。
 なお、原告は、本件登録商標を原告の販売に係る三脚の外箱に使用していると主
張し、本件登録商標のシールを張り付けた三脚用の外箱を証拠として提出するが、
取引の実情に照らして不自然な点が多く、本件登録商標の使用状況の詳細について
は、必ずしも明らかでない(甲六、検甲一)。
2 被告は、包装袋上に数箇所、被告標章を付した上、被告商品を販売している
(甲三)。
 被告標章の形状は、別紙被告標章目録記載のとおりである。被告標章は、以下の
各図形から構成される。①一つは、長方形の長辺一側のみを三角形(三個)で切り
欠き、右四五度だけ下方に傾け、小さい水玉の模様を配置した図形部分を、右下方
を切り欠いた太い輪状の図形部分にはめ込んだ図形である。右図形を一体的にみる
と、欧文字(大文字)の「Q」であるとの印象を与える。②他は、右図形の右側
に、右図形よりやや小さく、欧文字(小文字)の「t」を太く描いたとの印象を与
える形状で、縞模様が施された図形である。
 なお、被告商品の包装袋上には、被告標章が付されている他に、「Koda
k」、「スナップキッズ」、「ADVANTIX」、包装袋の中央にデザイン化し
た「Q」の図形の標章等が付されている(甲三)。また、被告がインターネット上
で行った被告商品の広告においては、被告標章の他に、「クールなフェイスの、キ
ュートなQt。」「おしゃれ心いっぱい!ちょっぴり大人のキュートなQt」、
「FUN COLORS、APS対応レンズ付きフィルムQt」等の表示がされた
り、「Qtははずせない」等の台詞が流されたりしている(甲一〇、一二ないし一
五)。
3 右認定した事実を基礎に、被告標章と本件登録商標の類否について検討する。
 被告標章は、前記のとおり、欧文字の「Q」及び「t」との印象を与える図形か
ら構成されるが、それぞれの図形は、一部に奇抜な形状を用いたり、水玉や縞模様
による装飾を施したりして、全体としては、やや統一性に欠け、多様性を重視した
ような図柄が選択され、そのために、「にぎやか」、「はなかや」あるいは「雑然
とした」印象を与え、主に若者に対し、強い訴求力を持つものとなっている。
 そうすると、本件登録商標が、さほど特徴があるとはいえない欧文字の「Cut
ie」からなるのに対し、被告標章は、前記のような特徴を備えた特有の図形から
なるものであり、両者は、その外観において著しく異なり、前記取引、広告等の状
況等を考慮すると、一般消費者が、商品の出所について、誤認混同する恐れはない
と解される。したがって、被告標章は本件登録商標と類似しない。
 確かに、被告標章からは「キューティ」の称呼が生じ、被告標章と原告登録商標
とは称呼において類似するといえるが、両者の外観における相違点が著しい点に照
らすならば、称呼が類似する点を考慮してもなお商品の出所の誤認混同を来すこと
はないと解され、したがって、前記の判断を左右するものとはいえない。
 また、被告は、被告商品の広告において、装飾を施さない欧文字「Qt」を用い
たりした例があるが、この点も、格別、前記の判断を左右するものではない。さら
に、被告は、被告商品の広告において、「キュートな」との点を強調している例が
あるが、そのような修飾語が付加されたとしても、被告標章に「キュートな」との
観念が生ずるとまではいえない。したがって、このような事情も、前記の判断を左
右するものとはいえない。
二 以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の本
件請求は理由がないので、主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第二九部
       裁 判 長 裁 判 官   飯村敏明
             裁 判 官   八木貴美子
             裁 判 官   石村 智

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛