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裁判例


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       主   文
一、本件各控訴ならびに控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の
当審における参加請求はいずれもこれを棄却する。
二、原判決を次のとおり変更する。
(一) 被控訴人が控訴人東京労働金庫に対し本判決別紙預金債権一覧表記載の預
金債権を有することを確認する。
(二) 控訴人東京労働金庫は被控訴人に対し金四、六三六万五、四八七円を支払
え。
(三) 訴訟費用は第一、二審とも控訴人東京労働金庫および控訴人兼当事者参加
人日産自動車プリンス部門労働組合の負担とする。
       事   実
 控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合訴訟代理人は、昭和四五
年(ネ)第三、四一五号事件に関する当事者参加の請求の趣旨ならびに同年(ネ)
第三、四二〇号事件に関する控訴の趣旨として、「一、原判決を取り消す。二、被
控訴人の請求を棄却する。三、(一)、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス
部門労働組合と被控訴人および控訴人東京労働金庫との間において、控訴人兼当事
者参加人日産自動車プリンス部門労働組合が控訴人東京労働金庫に対し本判決別紙
預金債権一覧表記載の預金債権を有することを確認する。(二)、控訴人東京労働
金庫は控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合に対し金四、六三六
万五、四八七円ならびに内金二、三八六万六、一一〇円に対する昭和四二年一一月
一九日から支払ずみまで同金庫所定の六ケ月定期預金の金利による金員、内金六〇
万八、五八三円に対する昭和四二年一一月一九日から支払ずみまで同金庫所定の普
通預金金利による金員、および内金二、二四九万九、三七七円に対する昭和五一年
四月一日から支払ずみまで同金庫所定の普通預金金利による金員をそれぞれ支払
え。四、予備的に、(一)、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組
合と被控訴人および控訴人東京労働金庫との間において、控訴人兼当事者参加人日
産自動車プリンス部門労働組合が控訴人東京労働金庫に対し本判決別紙預金債権一
覧表記載の預金債権について、七、六五六分の七、五〇四の割合による持分を有す
ることを確認する。(二)、控訴人東京労働金庫は控訴人兼当事者参加人日産自動
車プリンス部門労働組合に対し金四、五四四万四、九六〇円を支払え。五、訴訟費
用は第一、二審とも被控訴人および控訴人東京労働金庫の負担とする。」との判決
ならびに右第三、第四項の各(二)につき仮執行の宣言を求め、なお被控訴人が当
審において拡張した請求につき請求棄却の判決を求めた。
 控訴人東京労働金庫訴訟代理人は、昭和四六年(ネ)第二二号事件につき「原判
決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の
負担とする。」との判決を求め、なお被控訴人が当審において拡張した請求につき
請求棄却の判決を求め、昭和四五年(ネ)第三、四一五号事件につき「控訴人兼当
事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の請求を棄却する。訴訟費用は第一、
二審とも控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の負担とする。」
との判決を求めた。
 被控訴人訴訟代理人は、昭和四五年(ネ)第三、四二〇号事件および昭和四六年
(ネ)第二二号事件につき各控訴棄却の判決を求め、なおその請求の趣旨を拡張し
本判決主文第二項中(一)、(二)および(三)記載と同旨の判決ならびに同
(二)につき仮執行の宣言を求め、昭和四五年(ネ)第三、四一五号事件につき請
求棄却の判決を求めた。
当事者双方の主張および証拠の関係は、左記のほか原判決事実摘示のとおりである
からこれを引用する。
第一、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合(以下、単に「控訴
人組合」という)の陳述
一、昭和四一年二月二四日の中央委員会以降同年四月二日の組合員全員投票に至る
一連の手続はすべて、従前より存した支部組合(日本労働組合総評議会全国金属労
働組合東京地方本部プリンス自動車工業支部)の正規の手続といい得るものであつ
て、それ故、控訴人組合が右従前の支部組合(以下これを単に「支部組合」とい
う)と組織的同一性のある組合というべきであり、被控訴人(以下「被控訴人組
合」という)こそが、同年四月三日「全金プリンス自工支部組織強化確立準備大
会」なる会合に参集した少数者(一一九名)によつて支部組合即ち控訴人組合とは
別個に新たに発足するに至つた第二組合(支部組合と同一の名称をとなえてはいる
ものの)にほかならないのである。このことは、原審において控訴人組合が主張し
た点のほか左の諸点に徴しても明らかである。
(一) 支部組合の構成員であつた組合員の一部が右組合員全員投票に至る一連の
手続に参加することによつて支部組合から離脱し第二組合(控訴人組合)を結成す
るに至つたものであるとする被控訴人組合の主張は失当である。けだし、右の一連
の手続に参加した者のうちには、その後右「全金プリンス自工支部組織強化確立準
備大会」に参集し現在被控訴人組合に所属している者があるのであつて(尤も、右
「準備大会」の参集者の全員ないし現在の被控訴人組合員全員が曽つては右一連の
手続に参加したというのではなく、支部組合の中央執行委員のうちA以下六名の
者、その他数名の者は右一連の手続に参加しなかつた。)、これらの者をも、曽つ
て右一連の手続に参加したことの故に支部組合から一旦離脱したものと取扱わざる
を得なくなるからである。また右一連の手続中に含まれる同年二月二八日開催の臨
時大会の直後の三月二日、A以下六名の当時の中央執行委員が東京地方裁判所に地
位保全の仮処分申請をなしたことは、この時点で支部組合において組合員の離脱と
いう状況が存しなかつたことを物語るものである。
(二) 同年二月二四日の中央委員会および同月二八日の臨時大会がいずれも支部
組合の正規の会合といえるかについて仮りに疑義を免れず従つてまた臨時大会で選
出された執行部代行者が正規の権限を有するかについても疑義を免れないものであ
るとしても、これに続く同年三月二四日の役員選挙は、右執行部代行者とは無関係
に、支部組合の規約および選挙規定に基づき適法に構成された選挙管理委員会の下
に、規約および選挙規定に則つて何ら瑕疵なく実施されたものであるから、支部組
合の役員選挙として適法有効なものであり、従つて右選挙により新たに選出された
新執行部の下で実施された同月三〇日の臨時大会およびそこでの全金脱退等の決
議、同年四月二日の組合員全員投票はいずれも支部組合の正規の組合運営と認め得
るのである。つまり、右役員選挙以降の手続はすべて支部組合の正規の手続といい
得るのであつて、それ以前の右疑義ある諸手続もその瑕疵は右役員選挙が有効に行
なわれて適法に執行部が選出された以上すべて治癒されたものというべきである。
(三) 支部組合は、上部団体たる全金(日本労働組合総評議会全国金属労働組
合)に、独立性ある単位組合として組織加盟していたものであつて、全金は個人加
盟の形式をとる単一組合とされてはいるが、その実体は支部組合など単位組合の連
合体のごとき性格を有するにすぎない組合である。従つて、右一連の手続中に含ま
れる同年三月三〇日の臨時大会において全金からの脱退を決議し且つ同年四月二日
の組合員全員投票において圧倒的多数の賛成投票を得たことによつて、支部組合は
全金から有効に単位組合の組織体として脱退したものといえるのであつて(脱退に
反対する組合員に対して所謂ひきさらいの効果を及ぼすか否かはともかくとし
て)、脱退に反対する者即ち全金に残留する者が存在する限り支部単位の全金脱退
はあり得ずむしろ支部組合は全金所属のままで存続し右全金脱退者が支部組合から
集団的に離脱したものと見るべきであるとの論は、明らかに失当である。そして、
右のとおり単位組合の組織体として有効に全金から脱退した支部組合が即ち控訴人
組合であつて、同年四月三日全金脱退反対者一一九名において控訴人組合から離脱
し(なお、前示ひきさらいの効果を肯定する見解よりすれば、この際全金への再加
盟を要することになろう)、「全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会」なる
会合に参集して第二組合たる被控訴人組合を新たに結成するに至つたのである。
(四) 同年二月二四日の中央委員会から同年四月二日の組合員全員投票に至る一
連の手続が全て被控訴人組合主張のごとく支部組合の正規の組合運営とは認められ
ないものと仮定しても、しからば他方被控訴人組合による同年四月三日の「全金プ
リンス自工支部組織強化確立準備大会」、これに続く同月一〇日の「全金プリンス
自工支部組織強化確立臨時全員大会」は支部組合の規約に従つた正規の組合運営と
認め得るかというに、いずれもそうは認められないのであるから、被控訴人組合も
やはり支部組合とは別個に新組合として設立されたものと見るべきであつて、支部
組合と組織的同一性のある組合ということができない。そしてこのように、控訴人
組合と被控訴人組合とが共に支部組合との同一性がなくいずれも新たに結成された
組合であるにすぎないものと判断される場合においては、控訴人組合としては、本
件預金債権の帰属に関し後記三、(二)記載の予備的請求におけると同様の主張を
なすものである。
二、支部組合の最高決議機関たる大会が執行機関の解任権を有しなくては支部組合
の民主的運営を期しがたいところであり、被控訴人組合主張のような組合員全員に
よる中執解任の無記名投票を定める規定もないのであつて、昭和四〇年一二月二二
日の大会が決議した中央執行委員全員の不信任(規約第二一条第一三号に基づく)
は、その解任としての意義を有すること明らかである。
三、参加請求の原因
(一) 主位的請求について
1 控訴人東京労働金庫(以下単に「控訴人金庫」という)には昭和五一年三月三
一日現在、本判決別紙預金債権一覧表記載の預金が存在する。
2 右預金は支部組合が控訴人金庫に預け入れた元金およびその利息である。
3 支部組合との組織的同一性を有するのは、被控訴人組合ではなくて控訴人組合
である。
4 しかるに控訴人金庫および被控訴人組合は控訴人組合が右預金の債権者である
ことを争うので、控訴人組合は、前示参加の趣旨第三項(一)、(二)に記載のと
おり、右両名に対しこれが確認を求めると共に控訴人金庫に対し右預金の元利金の
支払を求める(なお右預金のうち、定期預金二口については元金に対して満期日の
翌日から支払ずみまで控訴人金庫所定の六ケ月定期預金の金利を附し且つ各満期日
支払の利息金に対し各満期日の翌日から支払ずみまで同金庫所定の普通預金金利を
附してそれぞれ支払う旨の合意がなされており、従つて控訴人金庫は右元金のほか
右合意の趣旨に則つた利息金の支払義務を負担しているのであり、その余の普通預
金六口についても右同様控訴人金庫は昭和五一年四月一日から支払ずみまで同金庫
所定の普通預金金利を附して支払う義務を負うものである。)。
(二) 予備的請求について
 控訴人組合としては、本件は組合分裂の場合に当らないと思料するが、もしも組
合分裂の場合に当るものと判断されるのならば、それを前提として控訴人組合は次
のとおり主張する。
 組合分裂の際の組合財産は分裂後の各組合が共有し、その持分の割合は各組合に
それぞれ帰属すべき組合員の出資額の各合計額に応じた割合であり、当事者間に分
割の協議が調わないときは裁判所に対してその分割の請求をなしうるものというべ
きである。そして、昭和四一年二月当時在籍の支部組合の組合員総数は七、六五六
名であり、そのうちの一五二名が被控訴人組合の結成に参加したので、支部組合の
財産たる本件預金債権は結局その七、六五六分の七、五〇四を控訴人組合に、七、
六五六分の一五二を被控訴人組合に各分割すべきところ、当事者間に協議が調わな
いので、控訴人組合は右割合による分割を得たく、前示参加請求の趣旨第四項
(一)、(二)に記載のとおり、控訴人金庫および被控訴人組合に対し控訴人組合
が本判決別紙預金債権一覧表記載の預金債権について右割合による持分を有するこ
との確認を求めると共に、控訴人金庫に対し右持分に相当する金員の支払を求め
る。
第二、被控訴人組合の陳述
一、昭和四一年二月二四日の「中央委員会」以降同年四月二日の「組合員全員投
票」に至る一連の手続はすべて支部組合の正規の組合運営とは到底認められないも
のであつて、支部組合の方針に反対し全金からの脱退を標榜する一部組合員(多数
ではあるが)が右一連の手続に参加することによつて支部組合とは別個の活動をな
し支部組合から集団的に離脱するに至つたものであり、控訴人組合は右離脱者によ
つて結成された第二組合であるにすぎない。それ故、控訴人組合は支部組合と同一
性のある組織ではなく、支部組合は被控訴人組合として終始同一性を失うことなく
存続しているのである。
(一) 右一連の手続に参加した者の中にその後同年四月三日の全金プリンス自工
支部組織強化確立準備大会に参集し現在被控訴人組合に所属する者のあることは控
訴人組合の指摘するとおりであるが、右一連の手続に参加した右該当者は、そのう
ちの大部分がむしろ右離脱者集団の企図(全金脱退等の)に反対しこれを阻止する
ためのいわば戦略的な目的から右手続に参加したものであり、その余の右該当者も
集団的離脱現象の進行途上における一時的な混乱の中で去就に迷いつつ右手続に参
加したものにすぎず、その後の行動自体に徴しても、右離脱者の集団に組する確定
的意思はなかつたものと評価し得るところであるから、右該当者については右一連
の手続に参加したことの故に支部組合から離脱したものと認められるべきであると
の論は、当らない。仮りにそうは言えないとしても、支部組合は、終始右一連の手
続には関与しなかつた中央執行委員長Aほか中央執行委員五名を中心として存続
し、右全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会およびこれに続く同年四月一〇
日の組織強化確立臨時全員大会に至つたのであつて、右準備大会ないし全員大会に
参集した者のうちに右両大会に至る過程において一旦は支部組合から離脱したと見
ざるを得ない者がいるとしても、支部組合はその間においても少なくとも右六名の
者をもつて団結を維持し、終始組織的同一性を保持して右両大会に至つたのであ
る。けだし、権利能力のない社団たる支部組合において、組合員の大多数が離脱し
たとしても、支部組合に残留する意思を有する複数の組合員が存続する以上、社団
としての支部組合は存続すること明らかだからである。
 なお、A以下六名の者が控訴人組合主張のように地位保全の仮処分申請をしたこ
とは争わないが、そのことが直ちに控訴人組合主張のような事態を物語るものとは
いえない。
(二) 控訴人組合は、昭和四一年三月二四日の役員選挙は執行部代行者とは無関
係に適法に構成された選挙管理委員会の下に瑕疵なく実施された旨主張するけれど
も、支部組合の規約および慣行によれば、支部組合における正規の選挙は中央執行
委員会が選挙の実施およびその日程等を決定し中央委員会の承認を経て選挙管理委
員会が発足することにより行なわれるのであるから、正規の選挙が執行権と無関係
に行なわれ得るものでないことは勿論であるところ、昭和四一年三月二四日の役員
選挙は、支部組合の業務執行権を有しない執行部代行者(けだし、この者は支部組
合の正規の大会とはいえない同年二月二八日の臨時大会において選出されたのみな
らず、そもそも執行部代行者という機関は規約上認められた存在ではないからであ
る。)によつて実施されるに至つたものであるから、選挙管理委員会も適法に構成
されたものとはいえず、支部組合の適法有効な選挙ということはできない。
(三) 支部組合と組織的同一性ある組合は控訴人組合であるのか或いは被控訴人
組合であるのかを判断するにあたつて、控訴人組合主張のような支部組合と全金と
の関係如何という問題は、右判断に影響を及ぼす事柄ではない。要するに、支部組
合に残留する意思を有する複数の組合員が存続したものである以上、支部組合は右
残留者による被控訴人組合として終始同一性を失うことなく存続しているのであつ
て、このことは支部組合からの離脱者による控訴人組合が全金脱退を決議したか否
かに影響されることはないのである。
(四) 支部組合(即ち被控訴人組合)は、第二組合(控訴人組合)の存在が同年
四月二日の「組合員全員投票」によりもはや否定しがたいものとなつたので、支部
組合の残留組合員全員と確認された一五二名を招集して同月一〇日組織強化確立臨
時大会を開催し、右全員大会の決議に基づいて以後正常な組織活動を再開したもの
で、右全員大会にはその時点における支部組合員全員の意思が反映しているのであ
るから、右大会の開催および決議は組合員全員の意思決定として規約の定めに優越
し、支部組合の組合運営として瑕疵なきものである。
二、昭和四〇年一二月二二日の支部組合大会が決議した中央執行委員全員の不信任
は、直ちにその解任を意味するものではないと解すべきである。けだし、支部組合
において、中央執行委員の選任は規約上組合員の一人一票の無記名投票によるので
あるから、その解任も、規約の明文にはないが、社団における民主主義の原理を貫
徹する趣旨から右と同様の方法によることを要するものと解すべきであつて、そう
すると、代議員制の支部組合大会における中執不信任の決議は、組合員全員による
中執解任の無記名投票を発議する意義を有するにすぎないというべきだからであ
る。
三、支部組合が控訴人金庫に預け入れた元金および利息の預金債権は、従前主張の
とおり被控訴人組合に帰属するというべきところ、右金員の合計額は、原審以来の
日時の経過によつて増額し、昭和五一年三月三一日現在、本判決別紙預金債権一覧
表記載のとおり金四、六三六万五、四八七円となつた。そこで被控訴人組合は、当
審において請求の趣旨を拡張した本判決主文第二項中(一)ないし(三)記載と同
旨の判決を求める。
四、控訴人組合主張の参加請求の原因(前記第一、三、記載)について
(一) その主位的請求原因について
控訴人組合主張の1および2の事実は認めるが、3は争う。
(二) 予備的請求原因について
 被控訴人組合としても本件は組合分裂の場合に当らないと思料するものであつ
て、組合分裂に当るものと判断された場合の控訴人組合の仮定的主張は理由がな
い。
第三、控訴人金庫の陳述
控訴人金庫に昭和五一年三月三一日現在、本判決別紙預金債権一覧表記載の預金の
元利金があることは認める。
 なお、控訴人組合が主張するように右預金のうち、定期預金の元金に対して満期
日の翌日以降支払ずみまで控訴人金庫所定の六ケ月定期預金の金利を附し、また普
通預金について普通預金の金利を附して各支払う旨の合意があつたことは認める
が、定期預金の各期末の利息金に対して同金庫所定の普通預金金利を附して支払う
旨の合意があつたという点は否認する。
第四、証拠関係(省略)
       理   由
 当裁判所は、被控訴人の本訴請求は当審における拡張部分をも含めて正当として
これを認容すべく、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の当審
における参加請求は失当としてこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、左
記のとおり訂正、附加するほか、原判決の理由説示のとおりであるからこれを引用
する。
一、原判決一五枚目裏七行目ないし九行目の「昭和四五年八月一〇日(本件口頭弁
論終結の日)現在において、被告金庫に別紙預金債権一覧表記載の預金が存在する
こと、」を「昭和五一年三月三一日現在、控訴人東京労働金庫に本判決別紙預金債
権一覧表記載の預金が存在することは当事者間に争がない。また、」と、同二七枚
目裏四行目の「各課を選出区とし原則として」を「原則として各課を選出区と
し、」と、同二九枚目表七行目の「各係を選出区とし、原則として」を「原則とし
て各係を選出区とし、」とそれぞれ改め、同三〇枚目裏一一行目ないし三一枚目表
七行目の「ばかりでなく、議決機関として、総会、大会、代議員会を設け、執行機
関としては、常任委員会およびこれを補佐する執行委員会、業務組織および各種専
門委員会、職場組織を置き、役員の種類を組合長、副組合長、書記長等を含む常任
委員、執行委員会議長、副議長を含む執行委員、大会代議員、代議員とするなど、
特に組合の組織面において大巾な変更をしている」を削除し、同三四枚目表一一行
目の「照らして採用し難く、」の次に「いずれも成立に争のない甲第七二号証およ
び乙第六九号証ならびに当審証人Bの証言をもつてしても右認定を動かすに足り
ず、」を加え、同三七枚目裏九行目の「重要な部分」の次に「(但し、上級団体に
関する規定の存否等)」を加える。
二、右引用にかかる原判決理由に詳説されてあるとおり、昭和四一年二月二四日の
「中央委員会」以降同年四月二日の「組合員全員投票」に至る一連の手続(右の中
間に行なわれた同年二月二八日の「臨時組合大会」、同年三月二四日の「役員選
挙」、同月三〇日の「臨時組合大会」およびそこでの全金脱退、規約変更の各決議
等を含めて)は、支部組合(従前より存した日本労働組合総評議会全国金属労働組
合東京地方本部プリンス自動車工業支部)の正規の組合運営とは認め得ないもので
あつて、支部組合の構成員たる組合員の一部(組合員の大多数に当るが全部ではな
い)が右一連の手続に参加することによつて支部組合から集団的に離脱(脱退)す
るに至つたものというべく、右参加者の組織集団たる控訴人組合(控訴人日産自動
車プリンス部門労働組合およびその名称変更前のプリンス自動車工業労働組合)は
支部組合とは同一性の認められない別個の組合であり、かえつて、支部組合の残留
者の組織集団たる被控訴人組合が支部組合との同一性を保持する組合であると認め
られる。
(一) 控訴人組合が主張するように、右一連の手続に参加した者の中にその後同
年四月三日の全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会に参集し現に被控訴人組
合に所属する者のあることは明らかであるが、これら該当者のとつた行動(去就)
の意義如何はともかくとして、前示(引用にかかる原判決の認定説示)のとおり少
なくとも支部組合の中央執行委員長Aほか中央執行委員五名の計六名は終始右一連
の手続に関与せず右手続が規約違反で無効である旨を主張し続け団結を維持したの
であつて、これら残留者は少数組合員であるとはいえなお労働組合としての団体性
を保持し得るに十分な人員であるから、支部組合は少なくともこれら残留者をもつ
て終始組織的同一性を保持し被控訴人組合となつたものであり、他方控訴人組合は
支部組合からの離脱者による組織集団であるというに妨げはないのである。よつ
て、この点に関する控訴人組合の主張は採用の限りでない。
 なお、右A以下六名の者が控訴人組合主張のように地位保全の仮処分申請をした
ことは被控訴人組合の争わないところであるが、右仮処分申請をしたことが直ちに
控訴人組合主張のような事態を物語るものとは認めがたい。
(二) 控訴人組合は、少なくとも昭和四一年三月二四日の役員選挙は支部組合の
正規の選挙と認め得る旨主張する。よつて按ずるに、前顕甲第二号証、控訴人組合
主張のような写真である(但し、撮影者および撮影年月日の点は除く)ことにつき
争いのない乙第七号証、いずれも成立に争のない乙第九号証の一ないし四、弁論の
全趣旨ならびにそれによつて成立を認め得る乙第六六号証を総合すれば、支部組合
における正規の役員選挙の手続は、規約(選挙規定、分会運営規定等を含む)およ
び慣行(その慣行には合理性があると認められる)により、中央執行委員長の召集
する中央委員会において選挙管理委員会の発足が付議決定されることによつて開始
されるべきものであつて、組合業務の正当な執行権限と無関係には行なわれ得ない
ことが明らかである。しかるところ、前示(引用にかかる原判決の認定説示)のと
おり、昭和四一年三月二四日の役員選挙は、同年二月二八日の臨時大会での選出に
かかる執行部代行者の下において(即ち、前顕乙第六六号証によつて明らかなよう
に右執行部代行者の召集した同年三月一七日の中央委員会で選挙管理委員会の発足
が付議されて)、同年三月一八日発足した選挙管理委員会が選挙の日程等を公示し
選挙を実施したものであるが、前示(引用にかかる原判示説示)のとおり、そもそ
も右二月二八日の臨時大会は支部組合の正規の大会とはいうことができず、従つて
その集会において選出された執行部代行者も支部組合の正当な執行権限を有すると
はいえないのであるから、ひつきよう右選挙は支部組合の正当な業務執行権限に基
づかないで実施されたものであつて、支部組合の正規の選挙とは認め得ないもので
ある。のみならず、一般投票による場合、投票の結果当然に当選者が役員に就任す
る旨の規定があればともかく、支部組合の規約上このような規定は存しないので、
当選者は改めて組合大会において就任の決定がなされることにより初めて役員に就
任するものと解すべきであり、同年三月二四日の役員選挙に関しても、その当選者
は同月三〇日の臨時大会において就任の決定(当審証人Bの証言により成立を認め
得る乙第六八号証によつて明らかな右大会における選挙結果の承認がこれに当るも
のと解される。)がなされて初めて役員に就任したものというべきであつて、右乙
第六八号証および弁論の全趣旨により成立を認め得る乙第六七号証によつて明らか
なとおり右臨時大会は前示執行部代行者の召集にかかるものであるから、支部組合
の正規の大会とは認め得ないものであり、従つてその集会においてなされた全金脱
退等の決議も支部組合の正規の決議とは認め得ないものである。
 よつて、右役員選挙以降の手続がすべて支部組合の正規の手続といい得る旨の控
訴人組合の主張は採用できない。
(三) 支部組合が独立の単位組合であり、上級団体たる全金から、単位組合の組
織体として脱退することが許されるものであることは、前顕甲第二号証、いずれも
成立に争いのない乙第三九号証ないし第四三号証に照らし肯認し得るところであ
る。しかし、同年三月三〇日の臨時大会における全金脱退の決議が支部組合の正規
の決議としての効果を持ち得ないものであること前示のとおりであつて、支部組合
が右決議により全金から有効に単位組合の組織体として脱退したとの控訴人組合の
主張は採用の限りでない。要するに本件において、単位組合たる支部組合がそれ自
体として、少数組合員たる残留者をもつて終始組織的同一性を保持しつつ被控訴人
組合として存続するものといえるのであつて、上級団体たる全金と支部組合との関
聯如何は必ずしもこの判断に直接不可欠な影響を持つ事柄ではないというべきであ
る。
(四) 被控訴人組合の同年四月三日以降の組合運営について控訴人組合主張のよ
うに若干の疑義がないとはいえないとしても、それは、既に支部組合との組織的同
一性を保持し得た存在たる被控訴人組合の機関運営上の瑕疵にすぎないとみるべき
ものであつて、右瑕疵の故に支部組合と被控訴人組合との組織的同一性までが遡つ
て否定されるべきものとはいえないから、この点の控訴人組合の主張も採用できな
い。
三、昭和四〇年一二月二二日の大会が決議した中央執行委員全員の不信任(規約第
二一条第一三号に基づく)はその解任としての意義を有するものと解すべきであ
る。このような支部組合規約の解釈が、直ちに労働組合の本質的原理に反し許され
ないというのは当らず、この点に関する被控訴人組合の主張は採用できない。
四、本件の場合には、その事実関係に照らし、組合分裂の法理を導入すべき場合に
当らないと認められる。
五、そうすると、支部組合に属した財産たる本件預金債権は、支部組合と組織的同
一性を有する被控訴人組合にそのまま帰属するというべきであつて、控訴人組合に
帰属するとはいえないことが明らかであるから、控訴人組合および控訴人金庫に対
して右預金債権を有することの確認を、控訴人金庫に対して右預金の支払をそれぞ
れ求める被控訴人組合の請求は当審における拡張部分をも含めて正当としてこれを
認容すべく、被控訴人組合および控訴人金庫に対して右預金債権を有することの確
認を、控訴人金庫に対して右預金の支払をそれぞれ求める控訴人組合の当審におけ
る参加請求を失当として棄却すべきである。
 よつて、本件各控訴ならびに控訴人組合の当審における参加請求をいずれも棄却
し、主文第二項記載のように原判決を変更し、第一、二審の訴訟費用の負担につき
民訴法九六条、八九条、九三条一項を適用し、仮執行の宣言を付するのは相当でな
いと認められるのでこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。
(裁判官 江尻美雄一 滝田薫 桜井敏聖)
(別紙省略)

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