弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。
     被告人Aを懲役一年二月に処する。
     被告人Aに対し原審における未決勾留日数中四〇日を右本刑に算入す
る。
     被告人Aに対する公訴事実中昭和四六年五月二五日付起訴状記載第一の
賭博開張図利の点は無罪。
     被告人加藤勝の本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人細野良久の提出にかかる各控訴趣意書に記載されてい
るとおりであるから、これを引用し、これに対し当裁判所は、次のとおり判断す
る。
 被告人Aの弁護人細野良久の控訴趣意第一点について。
 所論は、原判決は、原判示第五の事実において、被告人Aを常習賭博罪に該当す
るとして有罪の認定をしているが、同被告人に対する本位的訴因は、被告人Aは、
昭和四六年三月二七日に江戸川区a町b丁目c番地B荘内C方において、賭場を開
張し、寺銭を徴して利を図つたものであるというのに対し、昭和四六年八月二五日
付で予備的に追加された訴因により常習賭博罪を認定したものである。本件の元の
公訴事実は、被告人Aが賭場を開張し、寺銭を徴して利を図つたものであり、予備
的に追加された訴因は、同被告人が常習として賭博をしたものであつて、日時、場
所は同一であつたとしても、賭場を開張した事実と賭博をなした行為とは同一性が
ない。したがつて、右予備的訴因の追加を許すべき場合ではないのであるから、こ
れを許したうえ、これにもとづき有罪の認定をしたのは、公訴の提起のない常習賭
博罪について有罪の判決をしたものであつて、原判決には、審判の請求を受けない
事件について判決をした違法があるという旨の主張である。
 <要旨>そこで、記録によると、被告人Aに対する昭和四六年五月二五日付起訴状
記載第一の公訴事実(本位的訴因)は、「被告人A、同Cは藤原捷と共謀の
うえ、昭和四六年三月二七日ころの午後一〇時ころから翌日午前零時ころまでの聞
東京都江戸川区a町b丁目c番地所在B荘二階の被告人C方屋室において、賭場を
開張し、賭客のDらをして、花札を使用し、金銭を賭けて、俗に「バツタ撒きと称
する賭博をさせ、その際、寺銭として金銭を徴し、もつて賭博場を開張して利を図
つたものである。」というにあるところ、原裁判所は、第二回公判期日において、
検察官が書面で、右本位的訴因に、「被告人Aは、賭博常習者であるが、昭和四六
年三月二七日ころ、東京都江戸川区a町b丁目c番地B荘二階Cの居宅において、
Eらと共に花札を使用し、金銭を賭けて、俗に「バツタ撒き」と称する賭博をなし
たものである。」との事実(常習賭博罪)を予備的訴因として追加を請求したのに
対して、これを許可したうえ、原判決は、右予備的訴因たる事実について、有罪の
認定をなし、右本位的訴因たる事実を認めるに足る証拠はない、との説示をしてい
ることが明らかである。しかし、右本位的訴因である賭博開張図利罪と予備的訴因
として追加された常習賭博罪は、いずれも賭博に関する犯罪ではあるが、前者は犯
人が、みずから主宰者となり、その支配下に賭博をさせる場所を開設し、寺銭、入
場料などの名目で利益の収得を企図することによつて成立するもの、すなわち、犯
人みずからが賭博を行なうことは、その犯罪の構成要件の要素とされていないのに
対し、後者は、反覆して賭博をする習癖を有する者が、偶然の勝敗によつて、財物
その他財産上の利益の得喪を争うこと、すなわち、犯人がみずから賭博を行なうこ
とにより成立するものてあつて、両者は基本的事実関係を異にしていることが明ら
かであり、かつ、両者の罪は、併合罪の関係にあると解するのが相当である。した
がつて、右両者の間には、公訴事実の同一性がないから、前記のような予備的訴因
の追加は、許容することができないものといわなければならない。そして、原判決
は、前示のように前記本位的訴因たる事実は、これを認めるに足る証拠はないとし
ており、当裁判所も原裁判所において取り調べた証拠によつては、右事実を認める
ことができない。してみると、原審は前記予備的訴因の追加を許容することなく、
前記本位的訴因たる事実について、無罪の言渡をすべきであつたのに、かかる措置
に出でなかつたのは、訴訟手続に法令の違反があつて、その違反が判決に影響を及
ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れず、論旨は理由がある。
 よつて、その余の控訴趣意(量刑不当の主張)に対する判断を省略し、刑事訴訟
法第三九七条第一項、第三七九条により原判決中被告人Aに関する部分を破棄し、
同法第四〇〇条但書により同被告人に対する被告事件について、さらに判決をす
る。
 原判決の確定した事実に法令を適用すると、被告人Aの原判示第一の所為は、刑
法第一八六条第二項に、原判示第三の所為は、同法第六二条第一項、第一八六条第
二項にそれぞれ該当するところ、原判示の前科があるので、同法第五九条、第五六
条第一項、第五七条により右各罪の刑に累犯の加重をし、原判示第三の罪は従犯で
あるから、同法第六三条、第六八条第三号により右罪の刑に法律上の減軽をし、以
上は同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により重
い原判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において、被告人Aを懲役一
年二月に処し、同法第二一条により原審における未決勾留日数中四〇日を右本刑に
算入する。
 なお、前記被告人Aに対する昭和四六年五月二五日付起訴状記載第一の公訴事実
(本位的訴因)は、前示のとおり犯罪の証明がないから、刑事訴訟法第三三六条に
より無罪の言渡をする。
 (裁判長判事 真野英一 判事 吉川由己夫 判事 瀧川叡一)

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