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裁判例


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平成21年3月6日決定
平成20年(む)第2563号,平成21年(む)第176号
主文
本件各請求をいずれも棄却する。
理由
第1請求の趣旨及び理由
1平成20年12月19目付け証拠開示命令請求について
上記請求の趣旨及び理由は,弁護人作成の同日付け「証拠開示に関する裁
定の申立∼証拠開示請求(4)に対する検察官の回答について∼」と題する書面及
び平成21年2月13日付け「証拠開示裁定申立に対する検察官の意見について∼
証拠開示請求(4)関係∼」と題する書面に各記載のとおりであるから,これらを引
用する。その要旨は,弁護人が,平成20年11月14日付け「刑訴法に基づく証拠開
示請求(4)」と題する書面により,刑事訴訟法316条の20第1項に基づき,①A協
会前事務局長Bほか6名に対する本件捜査段階の取調べに係る取調官作成の録
取メモ又はノート,②警察官が,A協会関係者の取調べに備えて作成し,取調べ時
に用いた取調事項マニュアルの開示を求めたところ,検察官は,Bに係る取調べ
状況報告書1通を開示しただけで,その余の証拠について開示していないから,
上記①②の各証拠の開示を命じる旨の裁定を求めるというものである。
2平成21年1月27日付け証拠開示命令請求について
上記請求の趣旨及び理由は,弁護人作成の同日付け「証拠開示に関する裁
定の申立2∼証拠開示請求(6)に対する検察官の回答について∼」と題する書面
及び同年2月26日付け「証拠開示裁定申立に対する検察官の意見について∼証
拠開示請求(6)関係∼」と題する書面に各記載のとおりであるから,これらを引用
する。その要旨は,弁護人が,平成20年12月19日付け「刑訴法に基づく証拠開示
請求(6)」と題する書面により,刑事訴訟法316条の20第1項に基づき,「本件の
平成19年8月22日付け捜索差押許可状請求(被疑者Cほか2名分)で,『理事長
C・Dと審査統括部長Eが,共謀の上,審査員をして,わいせつ図画の頒布を容易に
させた』という被疑事実の嫌疑を明らかにすべく添付された供述調書,捜査報
告書等の根拠資料一式(わいせつ性や販売事実等,上記の嫌疑事実に結び付かな
いものを除く)(以下「捜索差押許可状請求における根拠資料一式」という)」の開
示を求めたところ,検察官は,開示に応じていないから,上記証拠の開示を命じる
旨の裁定を求めるというものである。
第2当裁判所の判断
1平成20年12月19日付け証拠開示命令請求について
この請求に対し,検察官は,平成21年1月29日付け意見書において,「弁護人から
の開示請求を受けて,検察官保管の事件記録等の精査のほか,手法を変えて,複数
回にわたり,請求に係る各証拠を作成し又は保管している可能性のある捜査関係
者全員に確認するなどしてその存否を調査した結果」に基づき,請求に係る上記
①②の各証拠は存在しない旨回答しているところ,かかる説明に特段不自然,不
合理な点はない。
また,検察官は,上記証拠開示請求に対し,請求に係る証拠には当たらないものの,
Bに対する取調べに係る取調べ状況報告書1通を任意に開示しているほか,上記
証拠開示請求に先立つ弁護人からの複数回にわたる類型証拠開示請求に対して
も,検察官において刑事訴訟法316条の15第1項6号の要件該当性に疑義がある
と考えた供述調書を含めて任意に開示し(第2回,第3回公判前整理手続調書参
照),結局類型証拠開示に関しては裁判所による裁定を必要とする状況は生じて
いないのであって,このような証拠開示請求への検察官の従前からの対応状況を
も併せ考慮すれば,検察官の上記説明が虚偽であると疑わせるような事情はうか
がえない。そうすると,上記①②の各証拠について,刑事訴訟法316条の26第1項
にいう「検察官が開示をすべき証拠を開示していない」と認めることはできず,弁
護人の請求には理由がない。
2平成21年1月27日付け証拠開示命令請求について
(1)本件は,アダルト映像ソフトの販売等を行う被告人Fらがわいせつ図画で
あるDVDを販売するに際し,A協会の審査員である被告人Eらが市場で販売す
ることが許される旨判定するなどして,Fらによるわいせつ図画販売を容易にし
たなどとされる,わいせつ周画販売,同封助等の事案である。
弁護人は,公判前整理手続の中で,刑法175条の違憲論のほか,自主審査機関で
あるA協会の審査は尊重されるべきであることを含め,本件DVDのわいせつ性
を争うなどするとともに,本件は,捜査機関による予断と偏見に基づき捜査が開
始・継続され,嫌疑の具体的根拠の不存在が確認されたにもかかわらず起訴がな
されたものである上,本件捜査の端緒には根拠なき「通報」や保安警察と一部業界
の不正な動機が介在した疑いがあるなどと述べ,本件起訴は公訴権濫用であり公
訴棄却されるべきである旨主張し,この主張に関連する証拠として本件証拠開示
請求をしている。
なお,検察官は,同年2月24日付け意見書の中で,この請求についても,「捜索差
押許可状請求における根拠資料一式のうち,弁護人が主張する被疑事実の嫌疑に
関する部分の証拠は存在しない」旨回答するものの,それは検察官の評価に基づ
く判断に過ぎず,この検察官の回答のみによって直ちに不存在であると認めるこ
とはできない。
(2)そこで,刑事訴訟法316条の20第1項に規定する証拠開示の要件について
検討する。
まず,「被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性」について検
討すると,弁護人は公訴権濫用をも主張するが,わいせつ図画とされる本件DVD
のわいせつ性が高ければ,それは捜査・公訴提起の許容性を一般的に広く認める
方向に作用する一方,わいせつ性に疑いがあれば,多くの場合,公訴提起の有効性
を問題とするまでもなく無罪の判断となるのであって,本件の公判審理の重点
は,刑法175条の合憲を前提に,A協会における審査の状況を含めた本件DVDの
わいせつ性にあると考えられる。加えて,この証拠開示命令請求に至るまでの間
に,問題の捜索差押許可状請求より前に作成されたものを含め,相当数のA協会
関係者等の供述調書が,検察官から任意に開示されている(弁護人作成の平成20
年12月19日付け「証拠開示に関する裁定の申立∼証拠開示請求(4)に対する検
察官の回答について∼」と題する書面添付の「開示証拠の内訳」参照)ところ,それ
らを含め,既に開示された証拠は,被告人の防御の準備に一定程度資するものを
含むと思われる..そうしてみると,弁護人が開示を請求している証拠について,
「被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度」は低いとい
うべきである。
他方,検察官が上記意見書の中で主張するように,令状請求の疎明資料には,一
般的にいって,情報提供者の通報内容等の捜査の端緒を記載したものや種々の捜
査手法等を記載したものが含まれることがあり,これらについて情報源の秘匿や
捜査の密行性の確保が要請されるところ,これを開示すると,将来の犯罪捜査に
悪影響を与える現実的な可能性は高く,「当該開示によって生じるおそれのある
弊害」は相当程度あるものと認められる。
(3)したがって,捜索差押許可状請求における根拠資料一式は,弁護人に開示
することが相当とは認められず,刑事訴訟法316条の26第1項にいう「検察官が
316条の20第1項の規定による開示をすべき証拠」には該当せず,弁護人の請求
には理由がない。
3結論
以上のとおり,本件各請求は理由がないから,これらをいずれも棄却する
こととし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・秋吉淳一郎,裁判官・西連寺義和,裁判官・冨田環志)

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