弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人福田力之助上告趣意第一点について。
 所論Aに対する検事聴取書を見ると所論指摘のとおりの記載が為されている。し
かし共謀の点については右記載自体によつて十分に之を認めることができるから此
点の論旨は理由がない。次に数量の点については、原審が証拠に採つた被告人の原
審公判廷における自供には此点につき明白な供述があり、所論Aの検事聴取書はそ
の補強証拠として採証したのであつて、従つて同聴取書に何斗何升との具体的な数
量の供述記載はないけれども、数量の幾何であるかと言うことは本件犯罪の成立要
件ではないのであるから、結局所論Aの聴取書は被告人に対する本件犯罪構成要件
たる事実に関する限りは原判示同旨のものであることが認められるから、原判決が
同聴取書をもつて「判示同趣旨の供述記載」と判示したことは「数量の点を除き判
示同趣旨の供述記載」と判示したことに優るものはないのであるけれども、原判示
其儘としても妥当を欠くものではないのである。されば結局原判決には所論の違法
はなく、論旨は採用するを得ない。
 同第二点について。
 検事聴取書の作成については旧刑訴法上別段の規定はなく、従つて官公吏の作成
する書類に関する同法第七一条第七二条第七四条の適用があるに止まるものと解す
べきである。そこで所論Aに対する検事聴取書を見るとその作成年月日及び作成場
所等特別な明記のないことは所論指摘のとおりであるが、しかし作成年月日につい
ては、その前文に「右ノ者昭和二十三年十月十四日本職ニ対シ左ノ通陳述シタリ」
と記載され、その後文に「右直ぐに書取り読聞かせた処………」と記載されておる。
しからば同聴取書は右前文記載の日の作成であることは右記載自体に照して明らか
であるから、所論年月日の証載を欠くものとは云うことができない。次に作成場所
については、前示旧刑訴法各条によるもその記載要件ではなく又所論は検事が立会
人なくして供述者の氏名を代書し云々と主張するけれども、旧刑訴第七四条は立会
人のあることを要求してはいないのである。以上のとおり所論聴取書には何等の瑕
疵がないから、論旨は何れも採るを得ない。
 同第三点について。
 勾留状の記載要件に瑕疵があり仍つて当該勾留の適否が問題の場合には、之に関
する別途の救済方法(例えば旧刑訴第四五七条第二項、人身保護法等)に依るべき
であつて、此事のため本件公訴が無効となる根拠はないのである。論旨は理由がな
い。
 仍つて刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条に従い、主文のとおり判決する。
 此判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二五年五月一二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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