弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 職権をもつて按ずるに、原判決(その引用にかかる第一審判決を含む。)の確定
した事実によれば、上告人は、昭和三二年七月一一日、その所有の福島県安達都a
町大字b字cd番のe山林五〇、六一四平方メートル(以下「本件山林」という。)
中東南隅五四、五四メートルに一〇八、〇八メートルの矩形面積外一箇所の黒御影
石材の採掘権を被上告人に与え、その対価を二〇万円、採石期間同年七月一一日か
ら同四二年七月一〇日までと定め、被上告人は、即日右二〇万円を上告人に支払つ
た。しかるところ、上告人は、同三二年七月下旬本件山林全部を訴外Dに売り渡し
て了つたというのであり、原審は、右事実を確定のうえ、上告人が本件山林の全部
を右訴外人に譲渡したことにより被上告人の採石は不能になつたとして、それによ
り被上告人の蒙つた損害の賠償を上告人に命じている。
 しかし、原審の右に確定した事実によれば、上告人は、被上告人に対し採石法の
適用を受ける採石権を設定したものと解しうる余地があり、そうだとすれば、採石
権は物権として地上権に関する規定が準用されるから、採石権の設定については、
民法一七七条、不動産登記法一条、昭和三五年法律一四号による改正前の不動産登
記法一二七条ノ二(右法律による改正後の同法一三三条)により設定登記を経てい
れば、その取得をもつて第三者に対抗しうるところであると共に、右採石権が設定
された本件山林自体の所有権の得喪変更についても、登記による対抗要件を経なけ
ればその所有権取得をもつて採石権者として正当な取引関係に立つ第三者たる被上
告人に対抗することができないところである。したがつて、本件山林が訴外Dに譲
渡されることによつて被上告人の採石権の行使が不能となつたとするためには、前
記各登記の有無について確定しなければならないところ、原審がこの点についてな
んら審理判断することなく(本件記録によれば、被上告人に対する採石権の設定登
記も、上告人より訴外Dに対する所有権移転登記もなされていない事実がうかがわ
れる。)、前記確定の事実をもつてただちに被上告人の採石が不能になつたとした
のは、採石法四条、民法一七七条の解釈を誤るものであり、右解釈の誤りは判決に
影響を及ぼすこと明らかであり、論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄
を免れない。そして、さらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す必要が
ある。
 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    石   田   和   外
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

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