弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原審判を取り消す。
     抗告人の名「A」を「B」に変更することを許可する。
         理    由
 本件抗告の要旨は
 (一)、 抗告人は、その父の友人から「B」なる名の使用をすすめられ、昭和
二十四年頃から約十一年間にわたり「B」なる通称名を使用してきた。そして右通
称名は、小学校の通信票、卒業証書に抗告人の名として記載されているばかりでな
く、近隣の者、友人すら抗告人の名は「B」であると信じている等、社会的にも抗
告人の名として通用しているのである。従つて、抗告人の名「A」を「B」に変更
することが認められない場合には、社会の秩序を混乱に陥れる虞れがあるほか、抗
告人の蒙る精神的苦痛は甚大であり、かかる事実は名の変更について必要とされる
正当な事由に該当する。
 (二)、 また、岡山家庭裁判所倉敷支部においては、従来から多年通称を使用
してきた者に対し、すべてその動機、理由の如何を問わず正当な事由ありとして改
名を許可していた。然るに、これと同じ事情にある抗告人の名の変更を許可しなか
つたのは、法の下に平等であることを定める憲法第十四条の規定及び判例に反して
違法である。
 よつて、原審判を取り消し、更に相当の裁判を求めるため、本件抗告に及んだ。
 というにある。
 <要旨>よつて按ずるに、名は個人に対する同一性認識の基準であるから、その変
更は個人の同一性に対する認識を害し、惹いては社会一般にも支障を与える
ことになるので、みだりにこれが変更を許すべきものではないが、多年通称を用い
てきたため、俄に戸籍上の氏名を使用することが却つて、恰も名を変更したかの如
き観を呈する場合には、むしろその通称を以つて戸籍上の名とする方がその者に対
する認識を確実にするのみならず、本名と通称との併用によつてその社会生活上受
くべき諸種の不便・不利益を除くこととなるわけであるから、名の変更につき正当
な事由あるものと解するのが相当である。
 そこで、本件についてこれをみるに、原審における被審人C、同Dの各審問の結
果によると、抗告人は、小学校四年生当時通信票に「A」なる戸籍名を記載された
ことを除き、三才頃から現在に至るまで約十二年間「B」なる通称を使用してきた
事実を認めることができる。
 そうすると、抗告人が、通称の使用を止め戸籍上の名を使用することは、恰も名
も変更したかの如き観を呈することになるから、抗告人の名「A」を「B」に変更
するにつき、戸籍法第百七条第二項にいわゆる「正当な事由」ありというべきであ
る。もつとも、右各尋問の結果によると、抗告人は三才の頃から病気勝ちであつた
が、抗告人の父C、母Dは、病弱者でも名を変えることにより健康になると信じた
ため、その頃、抗告人の本来の名「A」の使用を止め、これに代えて「B」なる通
称を用いるに至つたことが認められ、右の事実によると、抗告人の父母は名の何た
るかを忘れて単なる迷信により檀に子の名を変更したとの譏りを免れないであろう
か、抗告人が相当長期間通称を用いてきたこと、前認定のとおりである以上、右通
称を用いた動機如何の如きは、本件名の変更につき正当な事由を否定すべき理由に
該らない。また、右各審問の結果を綜合すると、抗告人は現に中学校三年生にして
特に資産・収入もなく、その社会生活も家庭・学校を中心とした近隣、友人等の交
友関係に過ぎない狭い範囲のものであることか認められ、従つて、抗告人が「A」
なる戸籍上の名を使用することによつて社会生活上支障も存しないのではないか、
との考えがあるかも知れないけれども、たとえ狭い範囲に限られるとはいえ、永年
用い慣れた通称の廃止または本名との併用により、抗告人の現在及び将来の社会生
活に相当の影響を生ずることが予想されるので、本件名の変更については、正当の
事由ありとせざるを得ない。(なお、本件においては、前記各審問の結果によれ
ば、抗告人は従来用いて来た「B」なる通称を以つて引続き自己の名とすることを
切望しているところ、抗告人が今春入学する予定である高等学校においては、通称
の使用が許されないこととなることも予想されるところから、その両親もまた心を
痛めていることが認められる。しかしてこのような状況の下で、強いて従来用い慣
れた名を廃し、またはこれと併行して戸籍名を使用せしめることは抗告人の少年時
代における微妙な心理に混乱を生ずる等の悪影響がないとはいい切れない事情もあ
る。)
 それならば、本件名の変更申立は、理由あるものとして認容するのが相当である
から、特別家事審判規則第一条、家事審判規則第十九条に従い、主文のとおり決定
する。
 (裁判長裁判官 柴原八一 裁判官 柚木淳 裁判官 長久保武)

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