弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中50日を原判決の刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人土屋眞一作成の控訴趣意書に記載されたとおり
であるから,これを引用する。
1法令適用の誤りの主張について
論旨は,要するに,原判決は,原判示第3及び第4の各事実について,被
告人が出入口のガラスを割って店舗内に侵入し財物を窃取したことをもっ
て,盗犯等の防止及び処分に関する法律2条3号所定の,鎖鑰を開いて人の
看守する建造物に侵入して窃盗の罪を犯したことに該当すると判断している
,,,が被告人は身体が出入りすることができるほどの大きさにガラスを割り
その間から店内に侵入したのであり,出入口の錠や鍵等の装置には触れてい
ないのであるから,鎖鑰を開いて建造物に侵入したことには該当せず,原判
決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というの
である。
,,そこで記録を調査し当審における事実取調べの結果を併せて検討すると
被告人は,原判示第3及び第4の犯行の際,錠の掛けてあった店舗の出入口
のガラスを身体が出入りすることができる大きさに割り,その割れ間から店
舗内に侵入したものである。
ところで,盗犯等の防止及び処分に関する法律2条3号所定の鎖鑰を開く
の意義は,通常の方法では戸や扉を開閉することができないようにした装置
の効用を失わせることをいうものと解される。そして,同号には,住居ない
し建造物の侵入方法として,鎖鑰を開く,という態様のほか,門戸牆壁等を
踰越損壊する,という態様をも別に定めている。これらを併せて考えると,
出入口に付けられた錠等の装置には触れずに,出入口そのものを損壊して住
居ないし建造物に侵入した場合には,門戸牆壁等を踰越損壊して侵入したこ
とになると解するのが相当である。
そうであるならば,被告人の原判示第3及び第4に係る建造物侵入行為を
鎖鑰を開いて侵入したものと判断した原判決には,法令の適用に誤りがある
ことになる。しかし,その各侵入行為は,趣旨を同じくする同じ条号の別の
侵入類型に該当し,法定刑にも何らの違いが生じないのであるから,原判決
には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用の誤りがあるとはいえな
い。
論旨は理由がない。
2量刑不当の主張について
論旨は,要するに,被告人を懲役5年に処した原判決の量刑は重すぎて不
当である,というのである。
,,そこで記録を調査し当審における事実取調べの結果を併せて検討すると
本件は,被告人が,常習として,4回にわたり,うち2回は窓ガラスを割っ
てその施錠を解いた上で他人の住居に侵入し,うち2回は出入口のガラスを
身体が入ることができる大きさに割った上で人の看守する店舗に侵入し,腕
時計,バッグ等の物品を窃取した,という常習特殊窃盗の事案である。
被告人は,前刑出所後,ほとんど仕事をせず,母親に金の無心をして遊興
等に費消するといった生活をするうち,金目の物を盗んで金銭に換えようと
考えて,原判示の各犯行に及んだものである。犯行に至る経緯に酌むべきと
ころはない。被告人は,人の住居又は人の看守する建造物に侵入し,金品を
盗むために,予め必要な準備をした上で,原判示の各犯行に及んでいる。盗
んだ物は,質入れ処分するなどしている。犯行の態様は悪質である。被害額
も,有価証券の額面合計が578万円,物品の時価合計が約228万円に及
んでおり,少ないとはいえない。それにもかかわらず,被告人は何ら被害弁
償をしていない。さらに,被告人は,窃盗,常習累犯窃盗罪ないしそれらの
罪を含むものにより9回服役し,原判示の累犯前科もありながら,その刑の
執行終了後1年足らずで原判示第1の犯行に及んでいる。法を守るという意
識に欠けている。常習性も顕著であるといわざるをえない。被告人の刑事責
任を軽くみることはできない。
そうすると,被害品の一部は被害者の元に戻っていること,原判示の各犯
行が被告人によるものであることが判明した経緯としては,被告人の捜査官
に対する供述が寄与していること,被告人が事実を認めて反省している旨述
べていることなど,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,原判決の量
刑が重すぎて不当であるとはいえない。
なお,所論は,被告人には原判示第1ないし第4の各事実について刑法上
の自首が成立している,そして,被告人が原判示第1の犯行後に自首をした
にもかかわらず,それに対する警察官の対応が悪かったために,その後に新
たな犯行をするに至ったという経緯は,被告人のために十分に斟酌するべき
である,という。
そこで検討するに,関係証拠によれば,以下の各事実が認められる。被告
人は,平成17年4月群馬県甲警察署に暴行罪で逮捕され,罰金刑に処せら
,,,れたことをきっかけとして同警察署のA警部補と顔見知りとなりその後
しばしば,A警部補に接触するようになった。そのような接触の過程におい
て,被告人は,同年8月末に,A警部補に対し,原判示第2の事実に関し,
窓ガラスを割って居宅に侵入し,金庫やブランドのかばん等を盗んだ上,金
庫についてはバールで扉を壊して中身を見たが,現金がなかったため,捨て
てしまい,ブランドのかばんについては乙質店に入質したなどと述べたもの
の,犯行場所についての具体的な供述は拒み,調書作成にも応じなかった。
また,同年10月ころに,A警部補に対し,以前に盗みをした場所を案内す
る旨述べて,自動車内から原判示第1の犯行場所が存在するアパートを示し
たが,犯行の日時や盗んだ物等については全く述べず,調書も作成されなか
った。その後,原判示第3の事実の当日である平成18年9月8日,飲食店
,,,,においてA警部補に対し古着屋に入ってかばんを盗んだ旨を述べたが
,。,犯行場所等についての具体的な話はせず調書も作成されなかったさらに
原判示第4の事実の当日である同年10月2日,A警部補に対し,今朝,高
崎で盗みをしてきたが,酒を飲んでいたためにガラスを割った時に手を切っ
た旨述べたが,犯行の具体的場所は供述せず,調書も作成されなかった。同
月5日になって被告人に対する逮捕状が発付されたが,それを知った被告人
は,逃走して所在をくらまし,同年11月9日,立ち回り先の居酒屋にいる
ところを発見され,甲警察署において通常逮捕された。
以上の各事実によれば,被告人がA警部補に述べた内容は,犯罪事実の特
定が十分でない上,捜査機関に対し,自らの処分を委ねているとは認められ
ないから,刑法上の自首には当たらない。なお,被告人も,自首は好きでは
なく,通常逮捕をしてほしいという気持ちであった旨述べている。
また,犯罪事実に関する被告人の供述を聞いたA警部補の対応に不適切な
ところがあったにしても,その対応によって,被告人が新たな犯罪をする動
機が形成されたものとは認められない。被告人が原判示各事実についてA警
部補に述べたことがきっかけとなって,被告人が犯人であることが判明した
という限りにおいて,被告人のために酌むべき点があるにすぎないというべ
きである。
論旨は理由がない。
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,当審における未決勾留
日数の算入につき刑法21条を,当審における訴訟費用を被告人に負担させ
ないことにつき刑訴法181条1項ただし書をそれぞれ適用して,主文のと
おり判決する。
(裁判長裁判官阿部文洋裁判官吉村典晃裁判官堀田眞哉)

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