弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件各訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
中野区α×地区における建築物の制限に関する条例(平成21年中野区条例
第32号。平成23年中野区条例第53号による改正後の現行のもの。特に断
らない限り,上記改正の前後を問わず,以下「本件条例」という。また,特に
上記改正前の本件条例を指して「改正前条例」といい,上記改正後の現行の本
件条例を指して「現行の本件条例」という。)を取り消す。
第2事案の概要等
1事案の要旨
本件は,東京都が平成21年6月22日付けで告示した東京都市計画地区計
画α×地区地区計画の変更の決定(以下「平成21年地区計画変更決定」とい
う。)及び平成23年8月19日付けで告示した同地区計画の変更の決定(以
下「本件地区計画変更決定」という。)に係る地区計画(後記3(2)の東京都
市計画地区計画の決定に係るものを含めて,以下「本件地区計画」という。)
の区域(以下「本件地区計画区域」という。)と区画道路を挟んだ西側に位置
する場所に居住する原告らが,被告が制定した建築基準法68条の2第1項の
規定に基づく条例(以下「建築制限条例」という。)である本件条例の制定行
為が行政事件訴訟法3条2項に規定する処分の取消しの訴えの対象に当たるこ
とを前提として,その取消しを求める事案である。
なお,原告であったAに係る訴えは,同人が平成▲年▲月▲日に死亡したこ
とにより終了した。
2法令の定め
別紙「法令の定め」に記載したとおりである(なお,同別紙において定める
略称は,以下においても用いることとする。)。
3前提事実
(1)原告らは,いずれも,本件地区計画区域の区画道路を挟んだ西側に位置す
る東京都杉並区β×の区域(以下「β×区域」という。)内に居住している
(甲2)。
(2)東京都は,次のア~エのとおりの概要で東京都市計画地区計画の決定(以
下「本件地区計画決定」という。)をし,平成19年4月6日付けでその旨
の告示(東京都告示第596号。乙1)をした(争いがない)。
ア種類東京都市計画地区計画
イ名称α×地区地区計画
ウ位置中野区α×,γ×及びδ×各地内
エ面積約18ha
(3)東京都は,本件地区計画につき,変更する部分を「中野区α×地内」とす
る平成21年地区計画変更決定をし,平成21年6月22日付けでその旨の
告示(東京都告示第954号。乙2)をした(争いがない)。
(4)被告は,本件条例をその公布の日から施行するものとして制定し,平成2
1年10月23日,これの公布をした(争いがない)。
(5)原告らは,平成22年4月21日,本件各訴えを提起した(当裁判所に顕
著な事実)。
(6)東京都は,本件地区計画変更決定をし,平成23年8月19日付けでその
旨の告示(東京都告示第1246号)をした(乙5~7,弁論の全趣旨)。
(7)被告は,本件条例(改正前条例)の一部を改正する旨の「中野区α×地区
における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(平成23年中
野区条例第53号。乙7)をその公布の日から施行するものとして制定し,
同年11月1日,これの公布をした。
4争点
(1)本件条例の制定行為の処分性(争点1)
(2)原告適格の有無(争点2)
(3)訴えの利益の有無(争点3)
(4)本件条例の制定行為の違法性(争点3)
5争点に関する当事者の主張の要点
(1)本件条例の制定行為の処分性(争点1)について
ア原告らの主張の要点
本件条例の制定行為は,特定個人の権利義務に直接的変動を及ぼす具体
的な制約であり,抗告訴訟の対象となる処分に当たるものというべきであ
る。
(ア)改正前条例は,平成21年地区計画変更決定に係る本件地区計画区域
のうち区域1-1,区域1-2,区域4及び区域5に適用されるもので
あるところ(同条例3条),区域1-1は学校法人B大学(以下「B大
学」という。)が,区域1-2は学校法人C大学(以下「C大学」とい
う。)が,区域4及び区域5はいずれもα駅前開発特定目的会社が,そ
れぞれ所有する一敷地又は一団の土地である。また,改正前条例は,こ
れらの区域に建築される建築物につき,建築基準法68条の2第1項の
規定に基づき定められた建築制限条例であってその規定が同法6条1項
の建築基準関係規定に当たるものとして,平成21年地区計画変更決定
に係る本件地区計画において定められたのと同じ内容の容積率,敷地面
積,壁面位置及び高さの各制限を定めるとともに(同条例5条~8条),
これに違反した者に行政罰を定めたもの(同条例11条)で,法的拘束
力を有するものである。そして,上記のような条例の基本的な構造は,
現行の本件条例においても同様である。
(イ)ある条例が特定の者への適用を目的にしているかは,その規定の文言
だけでなく,当該条例の制定経緯にも着目して判断する必要がある。本
件条例の制定以前において,その適用対象である上記(ア)の各区域を含
む区域内は,国が所有する土地であり,その後,第三者に売却されたも
のであるところ,この売却の際,落札者(土地取得者)には,計画建築
物の高さの最高限度,被告において策定した「α駅周辺まちづくりガイ
ドライン2007」(甲1,乙4。以下「ガイドライン」という。)の
遵守等が開発条件として定められていたものであり(甲3),土地取得
者が本件条例が適用される各区域内の土地上に建築行為をすることが当
初から予定されていた。このような経緯や,本件条例の適用区域が細分
化され(改正前条例3条,現行の本件条例3条。以下,これらを併せて
「本件条例3条」ともいう。改正前条例及び現行の本件条例の他の規定
についても,以下,同様に略称することがある。),その区域ごとに制
限内容が異なっていること(本件条例5条~8条)等にも鑑みると,本
件条例の適用対象は,限られた区域の土地所有者(建築主)であること
が明らかである。
また,本件地区計画においては再開発等促進区が定められているとこ
ろ,「東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準」(甲4。以下
「運用基準」という。)によれば,個々のいわゆる地権者は,東京都に
対し,具体的な建築計画を記載した企画提案書(甲6及び7参照)を作
成,提出しなければならず,東京都は,これにより提案された計画内容
について,都市計画上の妥当性や計画の優良性などの評価を行い,適当
と判断される場合に限り,地区計画に関する都市計画の原案作成手続を
進めることとされ,「再開発等促進区を定める地区計画運用基準実施細
目」(甲5。以下「運用基準実施細目」という。)では,再開発等促進
区を定める地区計画の決定がされた後,地権者が企画評価書と異なる建
築計画にしようとする場合には,被告と協議した上で,見直し報告をし
なければならないとされているのであって,再開発等促進区を定める地
区計画は,特定の地権者を対象に,特定の建築計画を前提として作成さ
れるものである(この点で,土地所有者等の希望を都市計画の作成に反
映させる手続の一環にすぎない都市計画法21条の2ないし5の都市計
画の決定等の提案の制度とは全く異なっている。)。そして,被告にお
いて区域1-1の事業者がB大学であり,区域1-2の事業者がC大学
であることを公表していること(甲8),本件地区計画では区域1の土
地利用に関する基本方針が「大学等教育機関」と限定されていること
(乙2)からすれば,地権者の変動は今後も想定し難く,本件条例の名
宛人が抽象的で不確定であるとはいえない。
(ウ)いわゆる建築確認の取消しを求める審査請求においては,本件地区計
画を前提とする本件条例に定められた建築物の制限に適合しているか否
かによりその適法性の審査がされるのみであるから,建築確認の取消訴
訟においては,原告らが問題としている本件地区計画において緩衝帯型
オープンスペースが設置されることとされていないことの違法性を争う
ことができない。また,建築確認の取消訴訟においては,単なる一営利
企業であるいわゆる民間確認機関がした建築確認を争うことになるとこ
ろ,このような民間確認機関は,本件条例や本件地区計画の策定に関与
しておらず,これらについての資料も有していないから,原告らが建築
確認の取消訴訟を提起しても,何ら実質的な主張,反論を期待できない
という点で,紛争解決を期待できない。したがって,建築確認以前の段
階において,原告らに本件条例の違法性を争わせる必要がある。
(エ)以上からすれば,建築制限条例として本件地区計画において定められ
たのと同じ内容の容積率,敷地面積,壁面位置及び高さの各制限を定め
るなどした本件条例は,B大学,C大学といった土地取得者という特定
人を名宛人として,これらの者に同条例の定める建築制限又は規制の緩
和を課すなどして,これらの者の権利義務に対して直接的変動を及ぼす
ものというべきであるから,その制定行為は,抗告訴訟の対象となる処
分に当たる。
イ被告の主張の要点
(ア)本件条例は,本件地区計画区域のうち同条例が適用される区域内に建
築物を建築しようとする者(本件条例4条参照)という,一定のカテゴ
リーに属する不特定多数の者を対象とするものであって(土地所有者で
なくとも建築主とはなり得るのであり,また,現在の所有者が土地を転
売することも想定されるから,将来,いかなる者が上記の各区域に建築
物を建築するかは不明である。),限られた特定の者に対してのみ適用
されるものではない。そして,このような不特定多数の者が本件条例の
規定により受けることとなる種々の制約は,本件条例が適用される区域
の現況が更地であることからしても,抽象的,観念的な自由の制約であ
って,既存の建築物を直ちに除却しなければならないなどという具体的
現実的な法状態の変動を生ぜしめるものではなく,本件条例の制定行為
をもって,行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視し得るとい
う事情も全くない。
(イ)a原告らは,本件条例の処分性につき,①処分性の有無の判断には,
その制定経緯に着目する必要があるところ,同条例の対象地が「建築
物の最高限度」等についての条件付きで国から現在の所有者に譲渡
(競落)されたという経緯があり,しかも,条例の内容として,適用
区分が細分化され,その細分化された区域ごとに制限内容が異なって
いること等から,本件条例は限られた特定の者に適用されるものであ
る,②本件地区計画のような再開発等促進区を定める地区計画におい
ては,地区計画の策定される前に地権者から企画提案書が提出され,
その段階で具体的な建築物の建築計画が策定されており,これを基に
してそれに適合する形で地区計画が定められるから,本件地区計画を
前提とする本件条例は,特定の地権者を適用対象としたものである,
③本件条例は,そこに定められている制限を超えた建築ができなくな
るという意味において,具体的現実的な法状態の変動を生ずるもので
あるなどと主張する。
bしかし,一般に建築制限条例には処分性はないと解されているとい
うべきところ(東京高等裁判所平成17年12月19日判決・判例時
報1927号27頁,東京高等裁判所平成21年11月26日判決・
最高裁ホームページ),処分性があるかどうかは,性質決定の問題で
あり,本来一律かつ画一的に定まっているはずであるから,建築制限
条例の制定経緯のいかんによって,これに処分性が認められたり,否
定されたりすることは,理論上あり得ない。また,区域1-1,区域
1-2及び区域2-1については,随意契約により国から現在の所有
者に対していわゆる払下げがされたものであるところ,原告らが主張
するような条項がその売却条件として契約書等に記載された事実はな
い。したがって,原告らの前記a①の主張は,失当である。
cまた,都市計画法は,土地所有者等による都市計画の決定等の提案
制度を定めているところ(同法21条の2~21条の5),運用基準
の定めるところも,同法の上記規定による制度の運用と特段変わるも
のではなく,再開発等促進区を定める地区計画に関して原告らがるる
指摘するところは,何ら特殊なものではない。したがって,原告らの
前記a②の主張も,失当である。
dさらに,前記(ア)において述べたとおり,本件条例の規定による
種々の制約は,抽象的,観念的な自由の制約にすぎないというべきで
あって,原告らの前記a③の主張も,失当である。
(ウ)原告らは,建築確認以前において本件条例の違法性を争わせる必要が
あるなどとも主張する。この主張は,最高裁平成21年(行ヒ)第75
号同年11月26日第一小法廷判決・民集63巻9号2124頁の判示
を意識してのものであると思われるが,同判決は,そこで問題とされた
条例の制定行為が行政庁の処分と実質的に同視し得るとの判断がまずあ
って,その上で争いの成熟性ないし紛争解決手段の相当性について言及
しているものであって,前記(ア)及び(イ)において述べたとおり,行政庁
の処分と実質的に同視し得る事情のない本件条例については,同判決が
言及した争いの成熟性等について議論する意味がない。したがって,原
告らの上記主張は,失当である。
(2)原告適格の有無(争点2)について
ア原告らの主張の要点
(ア)都市計画法13条1項14号ロは,再開発等促進区を定める地区計画
を定める場合には,「第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用
地域については,再開発等促進区の周辺の低層住宅に係る良好な住居の
環境の保護に支障がないように定めること」と規定しており,地区計画
の区域の周辺の低層住宅を所有し,又はそこに居住する者に対して,
「良好な住居の環境」の利益を保護すべきものとされている。同法が再
開発等促進区を定める地区計画に限り上記のような規定を置いた趣旨は,
再開発等促進区を定める地区計画は,建築物の容積率を緩和することで,
特別に高容積の高層建築物の建築を可能にする地区計画であるから,必
然的に周辺の低層住宅における日照その他の環境悪化が見込まれるため
に,それに対する特別の手当てを地区計画の中で設けたものであると解
される。そして,同号ロにおいて考慮されるべき住民の利益は,地区計
画(それも,再開発等促進区という,周辺環境への影響を及ぼすことが
類型的に予定されている計画)の影響を直接に受ける客体を想定してお
り,その客体は,「第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地
域」における「周辺の低層住宅」という形で限定されていることからす
れば,同号ロにおいて保護されるべき「良好な住居の環境」は,一般的
公益の保護による反射的利益を超えた個々人の個別的利益として保護さ
れているものというべきである。
したがって,再開発等促進区の低層住宅に係る「良好な住居の環境」
を享受する利益は,行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益」に
該当し,その主体である「周辺の低層住宅」の所有者ないし居住者には,
地区計画の決定及びこれを前提とする建築制限条例の取消訴訟の原告適
格が認められるものというべきである。
(イ)本件地区計画区域は,原告らが居住するβ×区域と区画道路を挟んで
隣接する部分においては再開発等促進区でもあり,また,β×区域は,
第一種低層住居専用地域に指定されている。そして,原告らは,その居
住地(前記3(1))からすれば,本件地区計画のとおり,ガイドライン
において設置するものとされた「緩衝帯型オープンスペース」が設置さ
れない場合には,①本件地区計画区域内の大規模建築物から圧迫感を受
け,②いわゆる日照被害を受け,③通風が阻害され,④隣地からの騒音
により生活が妨害され,⑤隣地において大火災等の災害が発生した場合
に生命・身体に被害を受けるおそれがあるなど,前記(ア)の「良好な居
住の環境」に対して,反復・継続した著しい影響を直接的に受け得る。
したがって,原告らが「周辺の低層住宅」(都市計画法13条1項14
号ロ)の所有者ないし居住者であり,「良好な住居の環境」として上記
①~⑤の被害を受けない利益を個々人の利益として保護されるべき者で
あることは明らかであり,本件地区計画の決定又はその変更の決定の違
法を主張する原告適格が認められ,そうである以上,本件条例の制定行
為の取消しを求める本件各訴えの原告適格を有するものというべきであ
る。
(ウ)被告は,最高裁昭和54年(行ツ)第7号同57年4月22日第一小
法廷判決・裁判集民事135号749頁を引用して,原告らに本件各訴
えの原告適格がない旨主張するが,同判決は,高度利用地区(都市計画
法8条1項3号)内の土地所有者等の原告適格につき判示したものであ
って,本件とは事案を異にする。すなわち,同号における高度利用地区
内の土地所有者等の利益は,「地域」という広がりを持つため,飽くま
でも一般的公益といわざるを得ないが,前記(ア)において述べたとおり,
同法13条1項14号ロの規定の意味するところは,これとは全く異な
る。
イ被告の主張の要点
(ア)前記(1)イ(ア)のとおり,本件条例による制約は,抽象的,観念的な自
由の制約であって,具体的な権利の制限ではないから,原告らのように
本件条例が適用される区域内に居住ないし所有地を有していない第三者
はもとより,当該区域内に所有地等を有する者であったとしても,本件
条例の取消しを求める法律上の利益を観念することはできず,原告らに
本件各訴えに係る原告適格がないことは明らかというべきである。
(イ)原告らは,都市計画法13条1項14号ロの規定を根拠に,同法は,
再開発等促進区を定める地区計画の周辺の低層住宅の「良好な住居の環
境」を個別的な利益として保護しており,本件地区計画の区域の周辺の
第一種低層住宅専用地域内の住宅の所有者ないし居住者であり,前記ア
(イ)①~⑤の被害を受けない利益を有するというべき原告らは,原告適
格を有する旨主張する。
しかし,第一種低層住居専用地域を始めとする用途地域の指定は,一
定範囲のエリアを対象とし,地域を面としてとらえて規制を行うもので
あり,かかる規制は,当該地域内の不特定多数の者に対する一般的,抽
象的なものにすぎないところ(前掲最高裁昭和57年4月22日第一小
法廷判決参照),用途地域,高度地区等の都市計画と地区計画の違いは,
専ら,その対象となる地区の範囲が広いか狭いかであって,これらの間
に本質的な違いはない。したがって,原告らが引用する同号ロの規定も,
再開発等促進区の低層住宅に係る「良好な居住の環境」を専ら一般的公
益の中に吸収解消させるにとどめる趣旨のものであると解するのが自然
かつ合理的である。したがって,原告らの上記主張は,失当である。
(3)訴えの利益の有無(争点3)について
ア原告らの主張の要点
本件各訴えに係る判決において,本件地区計画の内容(「緩衝帯型オー
プンスペース」設置の不備)に都市計画法13条1項14号ロに違反する
違法があるものとして本件条例の制定行為が取り消されれば,判決の拘束
力(行政事件訴訟法33条1項)により,当該判決の理由に沿って行政に
よる再度の判断(本件地区計画の見直しによる「緩衝帯型オープンスペー
ス」の設置)がされることになるから,前記(2)アにおいて述べた原告ら
の利益が回復することになる。また,前記(1)ア(ウ)において述べたとおり,
建築確認以前の段階において,原告らに本件条例の違法性を争わせる必要
がある。したがって,本件各訴えには,訴えの利益がある。
イ被告の主張の要点
抗告訴訟における訴えの利益の有無は,処分がその公定力によって有効
なものとして存しているために生じている法的効果を除去することによっ
て,回復すべき権利又は法律上の利益が存在しているか否かという観点か
ら検討すべきものであるところ,原告らがその設置ないし回復を求めてい
るガイドラインの定める「緩衝帯型オープンスペース」は,建築物の容積
率等の最高限度等の制約を定めたものにすぎない本件条例の制定行為の取
消しによって,設置ないし回復し得るものではないから,本件各訴えには,
訴えの利益がない。
(4)本件条例の制定行為の違法性(争点4)
ア原告らの主張の要点
(ア)単なる地区計画を定める際においてさえ,当該地区計画の区域の各街
区の防災・安全・衛生等に関する機能が保全され,かつ,当該区域の特
性にふさわしい良好な環境の形成・保持のための土地利用が図られる必
要がある(都市計画法13条1項14号のいわゆる柱書)のであるから,
法文上明確に「周辺の低層住宅の良好な住居の環境の保護」と規定され
ている再開発等促進区を定める地区計画(同号ロ)においては,周辺住
民の良好な住居環境への配慮がより一層要求され,行政裁量が限定され
ていると解する必要がある。具体的には,再開発等促進区を定める地区
計画が「良好な住居の環境の保護に支障がない」(同号ロ)か否かは,
①地区計画の決定に至るまでのいわゆる住民運動に対する地区計画の決
定権者の対応,②当該決定権者によって定型的な環境に関する調査が適
切にされたか否か,③当該地区計画に周辺住民の意見が反映されるよう
な手続保障がされたか否か,④当該決定権者が作成した企画評価書等か
ら周辺住民の良好な住居環境への配慮の形跡が認められるか否か等によ
り判断される。
(イ)前記(ア)①について
本件地区計画区域の西側境界付近(β×区域との境界付近)に関して
は,中野区,杉並区及び住民の間で複数回にわたって話し合いがされ,
その結果,ガイドラインにおいて,β×区域と本件地区計画区域との間
に「緩衝帯型オープンスペース」(「既存居住区との緩衝帯及びコミュ
ニティ活動に資するオープンスペース」。これは,都市計画法12条の
5第2項に規定する「地区施設」に含まれるものである。)を設置する
ことが明記された(甲1及び乙4・43頁及び45頁)。ガイドライン
の上記オープンスペースに関する部分は,同法13条1項14号ロの規
定の具体化として定められたもの(又は同号ロの具体化として尊重され
るべきもの)であり,ガイドラインにおいて計画されている上記オープ
ンスペースは,行政計画による単なる要請ではなく,同法に基づく法律
上の要請であるものというべきである。
しかし,被告は,ガイドラインを始め,住民及び杉並区の意向も無視
してきたものである(甲11~14)。そして,東京都がこのような被
告と住民ないし杉並区の話し合いの経緯を知らないはずがない(知らな
かったとすれば,本件地区計画決定の決定過程が違法である。都市計画
法15条の2第2項,18条1項)。東京都は,「緩衝帯型オープンス
ペース」設置に関する住民や杉並区の要請を知りながら無視してきたも
のである。
(ウ)前記(ア)②について
運用基準において考慮されるべき事項は,植栽,日照,風環境,景観,
電波障害等とされているところ(甲4),植栽及び風環境については,
具体的なデータが存在せず,これまで証拠として提出されていない。こ
のことは,景観環境についても同様である。
また,本件地区計画区域内の土地は,かつてはD学校の跡地として緑
豊かな土地であり,季節を通じて周辺住民に安らぎを運ぶ場であって,
これが「当該地区の特性」(都市計画法13条1項14号のいわゆる柱
書)でもあったところ,本件において景観に関する調査がされた形跡は
なく,「当該地域の特性にふさわしい良好な環境の形成・保持のための
土地利用」(同号のいわゆる柱書)がされているとはいえない。
(エ)前記(ア)③について
東京都は,平成21年地区計画変更決定に際し,都市計画法21条2
項及び17条2項に基づいて提出された住民等の意見書に対し,不適当
又は虚偽の見解を作成するなどした上で都市計画審議会に付議したため,
住民の意見が平成21年地区計画変更決定に反映されるべき手続の実効
性を奪っている。
すなわち,東京都は,同法21条2項及び18条2項に基づき都市計
画審議会に提出した意見書の要旨(甲15)において,①前記(イ)の
「緩衝帯型オープンスペース」設置に関する住民側の疑問に対し,「地
区計画で壁面後退距離を定めている。加えて,事業者がみどり豊かなオ
ープンスペース等を検討しているので,緩衝帯機能は確保される。」旨
回答し,②風害対策の前提として風環境調査に関する資料の不存在を指
摘されたことに対し,「植栽等の対策を講じることにより,現況の風環
境を改善する結果にもなっている。説明会でもその資料を配付してい
る。」旨回答している。しかし,上記①については,事業者との間で協
定を締結した等がない限り,事業者が計画を変更する可能性もあるから,
「緩衝帯機能は確保される。」と断言できないはずであるし,ここで前
提とされている「みどり豊かなオープンスペース」の内容自体不明確で,
それが緩衝帯型オープンスペースとしての機能を果たすかにつき被告が
確認をしたかも不明であるにもかかわらず,「緩衝帯機能は確保され
る。」と断定している。また,上記②については,風環境についての調
査資料は,極めて不十分なものでしかなく,被告が東京都とともに配付
したと主張する資料(甲8)を見ても,その結果がいかなる信用に値す
るシミュレーションに基づくものであるか明らかでないのに,東京都に
よって十分な検討がされたかのような回答がされている。このような東
京都による虚偽説明の結果,都市計画審議会において,これらの事項に
つき質問等は全くされなかったものであって(甲16),本件地区計画
変更決定に係る地区計画の決定過程において,東京都が,周辺住民の意
見を真しに検討した形跡はない。
(オ)前記(ア)④について
運用基準によれば,事業者等が提出する「企画提案書」に対し,地区
計画の決定権者が住民等の意見を反映させて「企画評価書」を作成する
ことを通じて「計画協議」を行い,土地利用の規制緩和と都市機能の増
進のバランスを図る仕組みがとられているところ,再開発等促進区を定
める地区計画の決定には,「計画協議」が不可欠であり,上記「企画評
価書」は,事業者に対する土地利用の規制緩和を正当化し得る理由(計
画内容の優良性,地区計画の区域に対する貢献度,都市基盤施設等との
バランス,地域環境への貢献度,景観に対する配慮,周辺市街地との調
和など)が明らかとなるものでなければならない(甲4)。しかし,平
成21年地区計画変更決定に係る「企画評価書」(甲18,19)から
は,建築物の容積率が100%増加したことは分かるものの,何がどの
ように評価されたかや,地域環境への貢献度,景観に対する配慮,周辺
市街地との調和などが評価項目とされたのかは不明であって,土地利用
規制が緩和された理由が全く分からない。
(カ)以上のとおり,本件地区計画につき,東京都による原告ら周辺住民の
良好な住居環境に対する配慮は全く見られない。すなわち,東京都は,
本件地区計画において,本来考慮すべき周辺住民の良好な住居環境(都
市計画法13条1項14号ロ)を全く考慮していないから,本件地区計
画及び本件地区計画変更決定は,裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを
濫用したものであって,明らかに違法なものである。そして,このよう
な違法な本件地区計画を前提とした被告の制定に係る本件条例もまた違
法なものというべきである。
なお,原告らは,本件地区計画変更決定に処分性が認められない場合
を念頭に置いて本件各訴えを提起しているから,被告が懸念するいわゆ
る違法性の承継の問題は生じない。
イ被告の主張の要点
被告の制定に係る本件条例が違法であるとの原告らの主張は,争う。な
お,原告らは,東京地方裁判所平成○年(行ウ)第○号事件においては,
本件地区計画変更決定に処分性がある旨主張しており,その主張を前提と
すれば,本件条例の違法事由として,本件地区計画の違法は主張し得ない
はずである。
第3当裁判所の判断
1本件条例の制定行為の処分性(争点1)について
(1)行政事件訴訟法3条2項は,同法において,処分の取消しの訴えとは,
「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(同条3項の裁決に当た
るものを除く。以下「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう旨を規
定しているところ,ここにいう処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体
が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその
範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される(最高裁
昭和28年(オ)第1362号同30年2月24日第一小法廷判決・民集9
巻2号217頁,最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日
第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。
そして,条例の制定行為は,普通地方公共団体又は東京都の特別区の議会
が行う一般的,抽象的な法規範を定める立法作用に属し,一般的には,処分
の取消しの訴えの対象となる処分に当たるものでないことはいうまでもない
が,他に行政庁の法令の執行行為という処分を待つことなく,その施行によ
り特定の個人の権利義務や法的地位に直接影響を及ぼし,行政庁の処分と実
質的に同視し得ることができるような例外的な場合には,処分の取消しの訴
えの対象となる処分に含まれるものと解するのを相当とすることもあり得る
ものというべきである(前掲最高裁平成21年11月26日第一小法廷判決
参照)。
(2)本件条例は,それが建築制限条例として定められたものであることや,そ
の規定の文言及び内容に照らせば,法律の委任に基づき,本件地区計画区域
のうち同条例が適用される区域(本件条例3条)内において建築される建築
物の敷地,構造,用途等に関する制限等(本件条例4条1項,5条~8条)
について,一般的,抽象的な法規範を定めたものであり,同条例の規定は,
ある特定の時点における同条例が適用される区域内の土地の所有者等といっ
たような特定の者についてのみ適用されてそれらの者につき一回的に効果が
生ずる性格のものではなく,法的には,同条例が施行された後に上記区域内
において建築物の建築等をしようとする者の全てに適用され,建築基準法6
条1項の建築基準関係規定に当たるものとして同法による行政庁等の執行行
為に供される性格のものであることが明らかであって,このような本件条例
の制定行為をもって,前記(1)に述べたような例外的な場合に当たるものと
いうことはできない。したがって,本件条例の制定行為をもって,処分の取
消しの訴えの対象となる処分に該当するものということはできないものとい
うべきである。
(3)アこの点,原告らは,①本件条例の適用対象となる区域内の土地等が国か
ら第三者に売却された際,開発条件が定められていたことからすれば,土
地取得者が本件条例が適用される各区域内の土地上に建築行為をすること
が予定されていたというべきであり,②本件条例において,その適用区域
が細分化され,各区域ごとに制限内容が異なっていることなどからすれば,
本件条例の適用対象が特定の土地所有者に限定されている旨主張するが,
実際に制定された同条例の規定を客観的に評価すれば前記(2)において述
べたとおりであって,原告らの上記主張は,採用することができない。
イ(ア)原告らは,①運用基準及び運用基準実施細目に従って行われる東京都
における再開発等促進区を定める地区計画の策定手続の内容に照らせば,
本件地区計画のような再開発等促進区を定める地区計画は,特定の地権
者を対象に,特定の建築計画を前提として作成されるものというべきで
あり,②また,被告において区域1-1の事業者がB大学であり,区域
1-2の事業者がC大学であることを公表しており,本件地区計画では
区域1の土地利用に関する基本方針が「大学等教育機関」と限定されて
いることからすれば,地権者の変動は今後も想定し難いなどとして,本
件地区計画を基礎として制定された本件条例は,B大学及びC大学のみ
を名宛人とするものであるとも主張する。
(イ)しかし,①原告らが指摘する再開発等促進区を定める地区計画の策定
に係る取扱いは,法令ではない運用基準及び運用基準実施細目に従って
行われているいわゆる事実上の運用にすぎないものである上,②都道府
県又は市町村は,都市計画を変更する必要が生じたときは,当該都市計
画を変更することができるものであり(都市計画法21条1項),その
変更の時期や範囲については,法令上,何の制約も設けられていないこ
と,③前記(2)において述べたような本件条例の規定の客観的な意味内
容に照らせば,前記(ア)の原告らの主張も採用し難いものというべきで
ある。
2結論
以上の次第であって,その余の点について判断するまでもなく,本件各訴え
は,いずれも不適法であるからこれらを却下することとし,主文のとおり判決
する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官田中一彦
裁判官塚原洋一
(別紙)
法令の定め
1都市計画法(平成23年法律第105号による改正前のもの。以下同じ。)
の定め
(1)ア都市計画法12条の4第1項は,都市計画区域については,都市計画に,
次の(ア)及び(イ)に掲げる計画で必要なものを定めるものとする旨を定めて
いる。
(ア)1号地区計画
(イ)2号~5号(省略)
イ都市計画法12条の4第2項は,地区計画等(同条1項各号に掲げる計
画をいう。同法4条9項。以下同じ。)については,地区計画等の種類,
名称,位置及び区域その他政令で定める事項を都市計画に定めるものとす
る旨を定めている。
(2)ア都市計画法12条の5第1項は,地区計画は,建築物の建築形態,公共
施設その他の施設の配置等からみて,一体としてそれぞれの区域の特性に
ふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し,開発し,及び保全
するための計画とし,次の(ア)~(ウ)のいずれかに該当する土地の区域につ
いて定めるものとする旨を定めている。
(ア)1号用途地域が定められている土地の区域
(イ)2号用途地域が定められていない土地の区域のうち,①住宅市街地
の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われる,
又は行われた土地の区域(同号イ),②建築物の建築又はその敷地の造
成が無秩序に行われ,又は行われると見込まれる一定の土地の区域で,
公共施設の整備の状況,土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が
形成されるおそれがあるもの(同号ロ),③健全な住宅市街地における
良好な居住環境その他優れた街区の環境が形成されている土地の区域
(同号ハ)のいずれかに該当するもの
イ都市計画法12条の5第2項は,地区計画については,同法12条の
4第2項に定めるもののほか,次の(ア)及び(イ)に掲げる事項を都市計画
に定めるものとする旨を定めている。
(ア)1号及び2号(省略)
(イ)3号主として街区内の居住者等の利用に供される道路,公園その
他の政令で定める施設(以下「地区施設」という。)及び建築物等の
整備並びに土地の利用に関する計画(以下「地区整備計画」とい
う。)
ウ都市計画法12条の5第3項は,次の(ア)~(エ)に掲げる条件に該当す
る土地の区域における地区計画については,土地の合理的かつ健全な高
度利用と都市機能の増進とを図るため,一体的かつ総合的な市街地の再
開発又は開発整備を実施すべき区域(以下「再開発等促進区」とい
う。)を都市計画に定めることができる旨を定めている。
(ア)1号現に土地の利用状況が著しく変化しつつあり,又は著しく変
化することが確実であると見込まれる土地の区域であること。
(イ)2号土地の合理的かつ健全な高度利用を図るため,適正な配置及
び規模の公共施設を整備する必要がある土地の区域であること。
(ウ)3号当該区域内の土地の高度利用を図ることが,当該都市の機能
の増進に貢献することとなる土地の区域であること。
(エ)4号用途地域が定められている土地の区域であること。
(3)都市計画法13条1項は,都市計画区域について定められる都市計画(区
域外都市施設に関するものを含む。)は,国土形成計画,首都圏整備計画等
の国土計画又は地方計画に関する法律に基づく計画(当該都市について公害
防止計画が定められているときは,当該公害防止計画を含む。)及び道路,
河川,鉄道,港湾,空港等の施設に関する国の計画に適合するとともに,当
該都市の特質を考慮して,次のア~ウに掲げるところに従って,土地利用,
都市施設の整備及び市街地開発事業に関する事項で当該都市の健全な発展と
秩序ある整備を図るため必要なものを,一体的かつ総合的に定めなければな
らず(前段),この場合においては,当該都市における自然的環境の整備又
は保全に配慮しなければならない(後段)旨を定めている。
ア1号~13号(省略)
イ14号地区計画は,公共施設の整備,建築物の建築その他の土地利用
の現状及び将来の見通しを勘案し,当該区域の各街区における防災,安全,
衛生等に関する機能が確保され,かつ,その良好な環境の形成又は保持の
ためその区域の特性に応じて合理的な土地利用が行われることを目途とし
て,当該計画に従って秩序ある開発行為,建築又は施設の整備が行われる
こととなるように定めること。この場合において,次の(ア)~(ウ)に掲げる
地区計画については,当該(ア)~(ウ)に定めるところによること。
(ア)14号イ(省略)
(イ)14号ロ再開発等促進区を定める地区計画土地の合理的かつ健全
な高度利用と都市機能の増進とが図られることを目途として,一体的か
つ総合的な市街地の再開発又は開発整備が実施されることとなるように
定めること。この場合において,第一種低層住居専用地域及び第二種低
層住居専用地域については,再開発等促進区の周辺の低層住宅に係る良
好な住居の環境の保護に支障がないように定めること。
(ウ)14号ハ(省略)
ウ15号~19号(省略)
(4)都市計画法15条1項は,同項1号~7号に掲げる都市計画は都道府県が,
その他の都市計画は市町村が定める旨を定めている。
(5)都市計画法87条の4第1項は,特別区の存する区域においては,同法1
5条の規定により市町村が定めるべき都市計画のうち政令で定めるものは,
都が定める旨を定めている。
2都市計画法施行令の定め
都市計画法施行令46条(平成23年政令第363号による改正前のもの)
は,都市計画法87条の4第1項の政令で定める都市計画は,同法15条の規
定により市町村が定めるべき都市計画のうち,次の(1)~(3)に掲げるものに関
する都市計画とする旨を定めている。
(1)1号(省略)
(2)2号(省略)
(3)3号再開発等促進区を定める地区計画又は沿道再開発等促進区を定める
沿道地区計画で,それぞれ再開発等促進区又は沿道再開発等促進区の面積が
3haを超えるもの
3建築基準法の定め
建築基準法68条の2第1項は,市町村は,地区計画等の区域(地区整備計
画,特定建築物地区整備計画,防災街区整備地区整備計画,歴史的風致維持向
上地区整備計画,沿道地区整備計画又は集落地区整備計画〔以下「地区整備計
画等」という。〕が定められている区域に限る。)内において,建築物の敷地,
構造,建築設備又は用途に関する事項で当該地区計画等の内容として定められ
たものを,条例で,これらに関する制限として定めることができる旨を定めて
いる。
4改正前条例の定め
(1)改正前条例3条は,同条例の規定は,平成21年東京都告示第954号に
より告示された変更(平成21年地区計画変更決定に係るもの)後の本件地
区計画に定める地区整備計画(以下4において単に「地区整備計画」とい
う。)の区域のうち,その地区の区分が区域1-1,区域1-2,区域4及
び区域5に該当する区域(以下単に「区域1-1」のようにいう。)に適用
する旨を定めている。
(2)改正前条例4条1項は,次のア~ウに掲げる地区整備計画の区域内におい
ては,当該地区整備計画の地区の区分に応じて当該各号に掲げる建築物は,
建築してはならない旨を定めている。
ア1号区域1-1及び区域1-2風俗営業等の規制及び業務の適正化
等に関する法律2条6号に規定する店舗型性風俗特殊営業(以下単に「店
舗型性風俗特殊営業」という。)の用に供する建築物
イ2号区域4店舗型性風俗特殊営業の用に供する建築物及び建築基準
法別表第2(り)項に掲げる建築物
ウ3号区域5店舗型性風俗特殊営業の用に供する建築物及び建築基準
法別表第2(ち)項に掲げる建築物
(3)改正前条例5条1項は,建築物の容積率は,①区域1-1及び区域1-2
については10分の35以下,②区域4については10分の56(当該建築
物に中水道施設を設ける場合にあっては,10分の56に当該中水道施設の
用途に供する部分の床面積〔200㎡を限度とする。〕の敷地面積に対する
割合を加えて得た数値)以下,③区域5については,10分の56(当該建
築物に中水道施設,防災備蓄倉庫又は地域冷暖房施設を設ける場合にあって
は,10分の56に当該中水道施設,防災備蓄倉庫又は地域冷暖房施設の用
途に供する部分の床面積〔1700㎡を限度とする。〕の敷地面積に対する
割合を加えて得た数値)以下でなければならない旨を定めている。
(4)改正前条例6条1項は,建築物の敷地面積は,①区域1-1及び区域1-
2については1.0ha以上,②区域4については0.4ha以上,③区域
3については1.5ha以上でなければならない旨を定めている。
(5)改正前条例7条は,建築物の外壁又はこれに代わる柱は,前記(1)の本件
地区計画の計画図に壁面の位置の制限として定められた限度の線を越えて建
築してはならないが(本文),同条各号のいずれかに該当する建築物の部分
についてはこの限りではない(ただし書)旨を定めている。
(6)改正前条例8条1項は,建築物の高さは,①区域1-1については70m
以下,②区域1-2及び区域4については55m以下,③区域5については
110m以下でなければならない旨を定めている。
5現行の本件条例の定め
(1)現行の本件条例3条は,同条例の規定は、平成23年東京都告示第124
6号により告示された変更(本件地区計画変更決定に係るもの)後の本件地
区計画に定める地区整備計画(以下5において単に「地区整備計画」とい
う。)の区域のうち,その地区の区分が区域1-1,区域1-2,区域2-
1,区域3-1,区域3-2,区域4及び区域5に該当する区域に適用する
旨を定めている。
(2)現行の本件条例4条1項は,次のア~ウに掲げる地区整備計画の区域内に
おいては,当該地区整備計画の地区の区分に応じて当該各号に掲げる建築物
は,建築してはならない旨を定めている。
ア1号区域1-1,区域1-2,区域2-1,区域3-1及び区域3-
2店舗型性風俗特殊営業の用に供する建築物
イ2号区域4店舗型性風俗特殊営業の用に供する建築物及び建築基準
法別表第2(り)項に掲げる建築物
ウ3号区域5店舗型性風俗特殊営業の用に供する建築物及び建築基準
法別表第2(ち)項に掲げる建築物
(3)現行の本件条例5条1項は,建築物の容積率は,①区域1-1及び区域1
-2については10分の35以下,②区域2-1については10分の37以
下,③区域4については10分の56(当該建築物に中水道施設を設ける場
合にあっては,10分の56に当該中水道施設の用途に供する部分の床面積
〔200㎡を限度とする。〕の敷地面積に対する割合を加えて得た数値)以
下,④区域5については,10分の56(当該建築物に中水道施設,防災備
蓄倉庫又は地域冷暖房施設を設ける場合にあっては,10分の56に当該中
水道施設,防災備蓄倉庫又は地域冷暖房施設の用途に供する部分の床面積
〔1700㎡を限度とする。〕の敷地面積に対する割合を加えて得た数値)
以下でなければならない旨を定めている。
(4)現行の本件条例6条1項は,建築物の敷地面積は,①区域1-1及び区域
1-2については1.0ha以上,②区域2-1及び区域3-2については
0.6ha以上,③区域3-1については0.3ha以上,④区域4につい
ては0.4ha以上,③区域5については1.5ha以上でなければならな
い旨を定めている。
(5)現行の本件条例7条は,建築物の外壁又はこれに代わる柱は,前記(1)の
本件地区計画の計画図に壁面の位置の制限として定められた限度の線を越え
て建築してはならないが(本文),同条各号のいずれかに該当する建築物の
部分についてはこの限りではない(ただし書)旨を定めている(平成23年
中野区条例第53号により同条2号が改正された。)。
(6)現行の本件条例8条1項は,建築物の高さは,①区域1-1については7
0m以下,②区域1-2及び地域4については55m以下,③区域2-1に
ついては45m以下,④区域3-1については37m以下,⑤区域3-2に
ついては30m以下,⑥区域6については110m以下でなければならない
旨を定めている。
以上

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