弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成14年(行ケ)第18号 審決取消請求事件(平成14年5月15日口頭弁論
終結)
          判         決
   原      告   株式会社オースリー
訴訟代理人弁護士佐   藤   恒   雄
       被      告   特許庁長官 太 田 信一郎
指定代理人   前   山   る り 子
同          宮   川   久   成
          主         文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   特許庁が不服2000-19473号事件について平成13年11月20日
にした審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
  原告は、平成11年7月12日、別添審決謄本写しの別掲本願商標記載の商
標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を商標法施行令別表の区分に
よる第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電
池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械
器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器
具,レコード,電子応用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,ロケッ
ト,遊園地用機械器具,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運
転技能訓練用シミュレーター,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカ
ーラー,電気ブザー,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は
機械式の道路標識,火災報知機,ガス漏れ警報器,事故防護用手袋,消化器,消火
栓,消火ホース用ノズル,消防車,消防艇,スプリンクラー消火装置,盗難警報
器,保安用ヘルメット,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,磁心,自動車用シ
ガーライター,抵抗線,電極,溶接マスク,映写フィルム,スライドフィルム,ス
ライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリン
ステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,計算
尺、硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機、写真複写機,手動計算機,製図
用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パン
チカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェッ
ク装置,ウエイトベルト、ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,潜
水用機械器具,レギュレーター,アーク溶接機,家庭用テレビゲームおもちゃ,金
属溶断機,検卵器,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置,メトロノーム」として
商標登録出願(商願平11-61408号)をしたが、平成12年10月6日、拒
絶査定を受けたので、同年11月2日、これに対する不服の審判の請求をした。特
許庁は、同請求を不服2000-19473号事件として審理した結果、平成13
年11月20日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本
は、同年12月12日、原告に送達された。
2 審決の理由
  審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、原査定において、本願商標の拒絶
理由に引用した、「SILK」の欧文字と「シルク」の片仮名文字を上下2段に書して
なり、指定商品を大正10年農商務省令第36号商品類別による第50類「紙及他
類に属せざる其の製品」とし、現に有効に存続している登録第524498号商標
(昭和32年11月8日登録出願、昭和33年7月29日設定登録。以下「登録第
524498号引用商標」という。)、「SHILC」の欧文字を書してなり、指定商品
を商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前のもの)別表(以下「旧別
表」という。)の区分による第26類「印刷物、書画、彫刻、写真、これらの附属
品」とし、現に有効に存続している登録第1951791号商標(昭和60年3月
25日登録出願、昭和62年5月29日設定登録。以下「登録第1951791号
引用商標」という。)、「SILK」の欧文字と「シルク」の片仮名文字を上下2段に
書してなり、指定商品を旧別表の区分による第11類「民生用電気機械器具,電気
通信機械器具,電子応用機械器具」をとし、現に有効に存続している登録第262
6726号商標(昭和62年4月15日登録出願、平成6年2月28日設定登録。
以下「登録第2626726号引用商標」という。)、「SILK」の欧文字を書して
なり、指定商品を旧別表の区分による第10類「写真材料、その他本類に属する商
品、但し、印画紙を除く」とし、現に有効に存続している登録第2709199号
商標(昭和60年1月29日登録出願、平成7年7月31日設定登録。以下「登録
第2709199号引用商標」という。)、「SILK」の欧文字と「シルク」の片仮
名文字を上下2段に書してなり、指定商品を商標法施行令別表の区分による第2類
「ラッカー,ワニス,その他の塗料」及び第17類「絶縁塗料」とし、現に有効に
存続している登録第4397151号商標(平成10年12月1日登録出願、平成
12年7月7日設定登録。以下「登録第4397151号引用商標」といい、これ
らを「引用各商標」という。)について、いずれも「シルク」の称呼を生じ、本願
商標も「シルク」の称呼を生ずる点で相紛らわしく、かつ、指定商品についても、
引用各商標のそれぞれの指定商品中には、本願商標の指定商品「理化学機械器具,
測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケ
ーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応
用機械器具及びその部品,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラ
ー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライ
ドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,計算尺」を含
むものであるから、外観及び観念の点を考慮してもなお、両者は商品の出所混同を
生ずるおそれのある類似の商標というべきであるとして、本願商標は、商標法4条
1項11号に掲げる商標に該当するから、本願商標の登録出願は拒絶されるべきも
のとした。
第3 原告主張の審決取消事由
1 審決は、本願商標が引用各商標に類似するとの誤った判断をした(取消事
由)結果、本願商標が商標法4条1項11号に掲げる商標に該当するとの誤った判
断をしたものであるから、違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(類否判断の誤り)
  (1) 本願商標の一体性
    本願商標は、文字とデザインが全体としてまとまりよく一体的に表示さ
れ、文字の大きさや形態にも大きな差異はなく、全体としてことさら冗長ではな
く、一連に称呼される。需要者が本願商標から「シルク」の文字のみを切り離して
認識することはあり得ない。
    被告は、「シルク」の文字部分と下段の「100円ショップ」の文字部分
とは、視覚上おのずと分離して看取されると主張するが、視覚上分離して看取され
ることがあっても「シルク」の称呼が生じないことは、特許庁が第4類で本願商標
と同一の構成の商標と「SILKROOM」を非類似と判断して登録査定をしたことからも
明らかである。また、「タウンアンドカントリーサーフデザインズ」から一連の称
呼を生ずると判断する裁判例があり、本願商標全体から生ずる「シルクヒャクエン
ショップ」の称呼が冗長であるとはいえない。
  (2) 100円ショップの著名性
    本願商標は、「シルク」及び「100円ショップ」からなり、「シルク」
という名称の100円ショップを指し、また、本願商標の付された商品が100円
ショップの「シルク」で売られていることを示す。100円ショップとは、日用雑
貨から食品まで、様々なものをすべて100円という均一価格で販売する店のこと
であり、従前の単に均一価格商品を扱う店と異なり、100円では買えない商品を
幅広く100円で扱うというもので、ここ10年で急速に成長してきた独自性を有
する業態である。100円ショップは、チェーン展開する企業が国内に20社以上
あり、既に、全国各地に4万店以上存在し、流通、小売業の中で一つの業態として
広く消費者に認識されている。原告も、他の100円ショップ企業も、直営店又は
フランチャイズ店を通じて100円ショップを経営し、どの店舗もその全体が10
0円ショップである。
    上記100円ショップの業態に加え、原告の店舗が直営店及びフランチャ
イズ店を合計すると全国で128店を数え、その店舗数及び来店者数が多数である
こと、テレビコマーシャルを含む原告の宣伝広告がされていること等を総合考慮す
るならば、「100円ショップ」は、指定商品の取引者、需要者に著名というべき
である。
    一般に、著名な標章と識別力の弱い標章からなる商標においては、識別力
の弱い標章は、著名な標章に引きずられて両者一体のものと認識されるため、識別
力の弱い標章のみが単独で認識されることはない。本件において、「100円ショ
ップ」の標章は、その言葉自体も業態も極めて特徴的で、看者に強烈な印象を与え
る。他方、「シルク」はありふれた普通名詞であり、識別力の弱い語であるから、
本願商標に接する者は、「100円ショップ」の部分を強烈に認識し、「シルク」
のみを取り出して認識することはあり得ない。
    審決は、「100円ショップ」は業種を示す言葉であるから識別標識とは
なり得ず、「シルク」のみが識別標識になると判断するが、識別力の強い語である
「100円ショップ」は、「シルク」と一体的に用いられることにより、「シルク
ヒャクエンショップ」又は「100円ショップのシルク」と認識され、識別標識と
なり得る。
  (3) 取引の実情
    現在、100円ショップで販売されている商品の多くは、100円ショッ
プ用に製造されたものであり、この傾向は、ますます顕著になりつつある。100
円ショップで販売される商品は、製造業者から直接仕入れられ、他の業態で販売さ
れる商品とは販売経路を異にし、他の業態においても、他の100円ショップにお
いても販売されることはない。本願商標の付された商品は、元々100円ショップ
用に製造されたものであり、他の商品と流通過程で競合することはあり得ない。ま
た、原告の店舗がショッピングセンター内にある場合であっても、他の店舗との境
界は明確であり、商品の販売場所の競合もあり得ない。
    このような取引の実情を考慮するならば、本願商標と引用各商標がその商
品出所につき混同を生ずるおそれはない。
  (4) 審査例及び拒絶理由通知
    本願商標と構成を同一にする商標が、第4類において、指定商品が類似
し「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」など「シルク」又は「SILK」を構成要
素とする商標が多数存在するにもかかわらず、登録されている。このことは、本願
商標が「シルク」の称呼を生ずることがないため、「シルク」又は「SILK」を構成
要素とし「シルク」の称呼を生ずる他の商標と類似しないことを示している。ま
た、特許庁は、商標登録出願を拒絶する場合には、拒絶理由のすべてを出願人に通
知するが、本願商標と構成を同一にする商標で登録を拒絶されたもののうち、指定
商品が類似し「シルク」又は「SILK」を構成に含む商標が登録されているにもかか
わらず、拒絶理由がこれらの商標に言及していないものがある。このこともまた、
本願商標が「シルク」の称呼を生ずることがないため、「シルク」又は「SILK」を
構成要素とする商標と類似しないことを示すものである。
  (5) 全体的考察の必要性
    商標の類否判断において、外観、観念及び称呼の各要素は、飽くまで全体
的考察の1要素にすぎず、1要素が近似するからといって、直ちに、商標が類似す
るとの判断に至ることは許されない。
第4 被告の反論
 1 本願商標と引用各商標が類似するとの審決の判断は正当であり、原告主張の
審決取消事由は理由がない。
2 取消事由(類否判断の誤り)について
  (1) 本願商標の一体性
    本願商標は、横長矩形輪郭内の上部に「シルク」の片仮名文字を書し、そ
の下段に黒塗りの横長矩形内から、「100円」の文字及びその上に重ねるように
「ショップ」の片仮名文字を白抜きしてなるものであるから、「シルク」の文字部
分と下段の「100円ショップ」の文字部分とは、視覚上おのずと分離して看取さ
れる。また、本願商標全体から生ずる「シルクヒャクエンショップ」の称呼は冗長
であり、「シルク」の文字部分が「絹」の観念を想起する親しまれている語である
ことからすれば、取引者、需要者は、親しまれた「シルク」の文字部分により原告
商品の出所識別をする。
    原告の経営する100円ショップチェーン店の住所録に「シルク直営店」
と記載されていること、原告店舗の包装袋には「SILK」又は「シルク」の文字が顕
著に表示されていること、原告の社長が新聞のインタビューにおいて自ら「シル
ク」と称したり、原告を単に「シルク」として紹介する新聞記事が存在することに
照らすと、原告の店舗が単に「シルク」と称されていることは明らかであり、そう
すると、本願商標についても、「シルク」の文字部分が自他商品の識別標識という
べきである。
  (2) 100円ショップの著名性
    原告は、「100円ショップ」の語は、その言葉自体も業態も極めて特徴
的で、看者に強烈な印象を与えると主張するが、「100円ショップ」という語
は、商品の販売方法又は販売場所を示す普通名称として認識されているのであっ
て、需要者に強い印象を与えるものではない。
  (3) 取引の実情
    100円ショップでは、最初から100円ショップ用に製造されたものだ
けでなく、製造業者との直接取引で余剰品を安く買いたたいて仕入れた商品なども
販売されており、100円ショップ用に製造された商品以外のものも販売されてい
ることは、インターネットのホームページに掲載された原告の記事からも明らかで
ある。原告の店舗は、他の店舗も入っているショッピングセンター等にもあり、同
一施設内にある他の店舗との境界が明確でない場合もあると推認されるほか、スー
パーマーケットの店舗内にも原告の販売コーナーがあり、そのような場合には、商
品の販売場所の競合があり得る。そうすると、本願商標と引用各商標がその商品出
所を混同するおそれがあるというべきである。
  (4) 審査例及び拒絶理由通知
    原告は、本願商標と構成を同一にする商標が、第4類において、指定商品
が類似し「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」など「シルク」又は「SILK」を
構成要素とする商標が多数存在するにもかかわらず登録されていることを主張する
が、「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」などは、本件の引用各商標であ
る「SILK/シルク」「SHILC」及び「SILK」とは構成が異なる。また、原告は、本願
商標と構成を同一にする商標で登録を拒絶されたもののうち、指定商品が類似し
「シルク」又は「SILK」を構成に含む商標が登録されているにもかかわらず、拒絶
理由がこれらの商標に言及していないものがあると主張するが、他の事件の審査例
が本件審決の判断に影響を及ぼすものではない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由(類否判断の誤り)について
  (1) 本願商標の構成
    当事者間に争いのない本願商標の構成によれば、本願商標は、横長矩形輪
郭内の上部に「シルク」の片仮名文字を書し、その下段に黒塗りの横長矩形内か
ら、「100円」の文字及びその上に重ねるように「ショップ」の片仮名文字を白
抜きしてなるものである。そうすると、本願商標は、横長矩形輪郭と黒塗りの横長
矩形を組み合わせた図形部分(以下「図形部分」という。)、横長矩形輪郭内上部
の「シルク」の片仮名文字部分及び黒塗りの横長矩形内に白抜きされた「100円
ショップ」の文字部分からなるものである。
  (2) 「100円ショップ」の文字部分の自他商品識別機能
   ア 原告は、100円ショップとは、日用雑貨から食品まで、様々なものを
すべて100円という均一価格で販売する店のことであり、従前の単に均一価格商
品を扱う店と異なり、100円では買えない商品を幅広く100円で扱うというも
ので、ここ10年で急速に成長してきた独自性を有する業態であると主張する。
     そこで、証拠を検討するに、平成6年5月24日付け読売新聞(東京
版)(乙第9号証)には「百円均一ショップ 雑貨、加工食品お任せ 流通コスト
省き高回転率で大量販売」の見出しの下に「百円均一商品コーナーは昭和三十年代
に東京でお目見えした。その後四十年代後半から、百貨店やスーパーの催し物で、
催事業者が店先などを数日間借りて、日用雑貨を中心に売る形で登場した。それが
常設の百円ショップとして独立、加工食品などが加わり品ぞろえも豊富になる。今
は百円ショップのチェーン店も登場している」との、平成5年9月21日付け日刊
スポーツ(乙第10号証)には「100円ショップは、1991年(平3)ごろに
全国に広がった、低価格で仕入れた商品を扱うディスカウントストアの一種。商品
すべてが100円という気軽さが人気を呼び全国で約200社がチェーン店展開を
しているという」との、平成14年3月6日付け日本経済新聞(甲第25号証)に
は「百円ショップ各社の品ぞろえが広がり・・・消費者を驚かすような商品が次々
と登場してきた」「推理小説を売り出したのは百円ショップ最大手の大創産業」と
の、平成12年1月11日付け流通サービス新聞の原告代表者に対するインタビュ
ー記事(乙第3号証)には「100円均一の催事販売を始める。81年(昭56)
衣笠商店を設立して独立、86年オースリーを設立。91年100円ショップ『シ
ルク』1号店を開設、催事販売から店舗販売に移行し、業績を伸ばす」との、平成
14年1月4日の原告ウェブページ(甲第7号証)には「長期化する経済不況の影
響で、特に百貨店やスーパーマーケットなどの小売業の業績が低迷する中にあっ
て、当社の属する『100円ショップ』といわれる新しい業態が注目されていま
す」との、原告取締役Aの陳述書(甲第26号証)には「当社は、いわゆる『10
0円ショップ』、つまりすべての商品を100円均一価格で販売する業務を行って
おり」との各記載がある。
   イ 上記各証拠の記載に加え、原告の上記主張など弁論の全趣旨を総合する
ならば、「100円ショップ」の語は、すべての商品を100円均一価格で販売す
るという、独特な小売業の業態を意味する普通名詞として認識、理解されるもので
あり、その業態は、平成3年ころから、一般消費者の間で広く知られるに至ったも
のであって、原告もこの業態により業績を伸ばしてきたことが認められる。そうす
ると、本願商標における「100円ショップ」の文字部分は、本願商標の使用され
た商品が100円ショップという業態の店において販売されることを示すものであ
り、自他商品識別機能の希薄な部分であるというべきである。
   ウ 原告は、100円ショップが流通、小売業の中で一つの業態として広く
消費者に認識されていると主張するが、小売業の一業態として広く知られていると
いうことは、むしろ、自他商品識別機能が希薄であることを意味するものにほかな
らないから、原告の主張は、本願商標における「100円ショップ」の文字部分の
自他商品識別機能が希薄であることと何ら矛盾するものではない。
  (3) 本願商標の要部
   ア 上記のとおり、本願商標における「100円ショップ」の文字部分は自
他商品識別機能が希薄であり、また、図形部分は、横長矩形輪郭と黒塗りの横長矩
形を組み合わせたものにすぎず、ありふれた図形であるから、この部分も自他商品
識別機能は希薄である。これに対し、「シルク」の文字部分については、指定商品
の普通名称であるとか、指定商品の品質等を記述するものであるなど、その自他商
品識別機能が希薄であるというべき事情はうかがわれない。原告は、「シルク」が
ありふれた普通名詞であり識別力が弱い旨主張するところ、確かに、「シルク」が
「生糸。絹糸。絹布。」(広辞苑第5版)の普通名詞であることから、それ自体と
しては、それほど強い自他商品識別機能を有するとはいえないとしても、「100
円ショップ」の文字部分及び図形部分のように、自他商品識別機能が希薄であると
までいうことはできない。そうすると、本願商標の要部は「シルク」の文字部分で
あるというべきである。
   イ 原告は、本願商標が全体としてまとまりよく一体的に表示され、全体と
してことさら冗長ではなく一連に称呼されることから、需要者が本願商標から「シ
ルク」の文字部分のみを切り離して認識することはあり得ないと主張する。しかし
ながら、本願商標は、一体的に表示されているとはいえ、上記のとおり、「シル
ク」の文字部分、「100円ショップ」の文字部分及び図形部分の3部分からなる
構成であることは一見して明らかであり、これら3部分のうち、「100円ショッ
プ」の文字部分及び図形部分の自他商品識別機能が希薄である以上、これらを除い
た「シルク」の文字部分が本願商標の要部であることは、否定することができな
い。原告は、「シルクヒャクエンショップ」が冗長でないことも主張するが、この
ように一連に称呼されるのは、「100円ショップ」の文字部分が「シルク」の文
字部分と同程度の自他商品識別機能を有する場合であって、本件はその前提を欠
く。
   ウ 原告は、また、著名な標章と識別力の弱い標章からなる商標において、
識別力の弱い標章が著名な標章に引きずられて両者一体のものと認識される旨主張
するが、そのような場合には、むしろ、著名な標章が商標の要部として看者の注意
をひき、識別力の弱い標章とは独立して認識されることが通常であるというべきで
あるから、原告の主張は失当である。
     原告は、本件において、本願商標に接する者が「100円ショップ」の
文字部分を強烈に認識し、「シルク」の文字部分のみを取り出して認識することは
あり得ないと主張するが、「100円ショップ」の文字部分が特徴的な業態を表す
ものであっても、業態を表す語である以上、自他商品識別機能が希薄であるから、
原告の主張は、採用することができない。
     原告は、他方で、「100円ショップ」の文字部分は業種を表す言葉で
あるから識別標識とはなり得ず、「シルク」の文字部分のみが識別標識になるとす
る審決の判断を非難し、識別力の強い語である「100円ショップ」が「シルク」
と一体的に用いられることにより、「シルクヒャクエンショップ」又は「100円
ショップのシルク」と認識され識別標識となり得るとも主張する。しかしながら、
「100円ショップ」が業態を表す語であり自他商品識別機能が希薄であることは
上記のとおりであるから、原告の主張は、その前提を欠く。
  (4) 取引の実情
    原告は、100円ショップで販売されている商品の多くが100円ショッ
プ用に製造されたものであること、100円ショップで販売される商品が他の業態
で販売される商品とは販売経路を異にすることなど、取引の実情において本願商標
と引用各商標がその商品出所につき混同を生ずるおそれはないと主張する。しかし
ながら、本願商標の指定商品は、100円ショップだけでなく、他の業態の流通、
小売業の業者によっても販売されていることは明らかであるから、その指定商品に
本願商標が使用された場合において、本願商標と引用各商標がその商品出所につき
混同を生ずるおそれがあるというべきである。原告が100円ショップの業態によ
り本願商標の指定商品を販売していても、原告が通常の仕入先とは異なる業者から
余剰品を仕入れることはあり得ることであり、現に、インターネット情報「100
円SHOPグッズ」(乙第12号証の1)には、原告が他社と同一の商品を販売し
ている旨の記載がある。
  (5) 類否の判断
    本願商標の要部は「シルク」の文字部分であり、この部分から「シルク」
の称呼を生じ、これは引用各商標から生ずる「シルク」の称呼と同一である。そし
て、本願商標の「シルク」の文字部分と登録第524498号引用商標、登録第2
626726号引用商標、登録第2709199号引用商標及び登録第43971
51号引用商標は、観念においても、上記「生糸。絹糸。絹布。」という同一の観
念を想起させ、他方、外観においては、本願商標の「シルク」の文字部分とこれら
引用商標の間に、称呼及び観念の同一をしのぐような顕著な差異はなく、取引の実
情においても、類否の判断を左右するような特段の事情はうかがわれない。また、
本願商標の「シルク」の文字部分と造語である登録第1951791号引用商標と
は、観念において対比することができず、外観において称呼の同一をしのぐような
顕著な差異はなく、取引の実情においても、類否の判断を左右するような特段の事
情はうかがわれない。そうすると、本願商標の要部である「シルク」の文字部分
は、引用各商標と同一ないし類似であり、全体的に観察して、本願商標と引用各商
標は類似するというべきである。
  (6) 審査例及び拒絶理由通知
    原告は、さらに、審査例等を主張するが、本願商標に係る審決が他の商標
の審査例に拘束されるものではないことはいうまでもない。また、原告の主張す
る「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」などの商標は、確かに「シルク」又
は「SILK」を構成要素とするが、「ROOM」「COAT/コート」の文字部分は、本願商標
における「100円ショップ」の文字部分と異なり、一定の自他商品識別機能を有
する場合が多く、「SILK」「SILK/シルク」の部分と一体のものとして「シルクルー
ム」「シルクコート」の称呼を生ずることは自然である。そうすると、これらの商
標が登録を受けていることは、本願商標が登録を受け得ないことと何ら矛盾するも
のではないし、拒絶理由通知に係る原告の主張も、同様に、本願商標が登録を受け
得ないことと何ら矛盾するものではない。原告の主張は、失当である。
  (7) 全体的考察の必要性
    原告は、商標の類否判断において、外観、観念及び称呼の各要素は、飽く
まで全体的考察の1要素にすぎず、1要素が近似するからといって、直ちに、商標
が類似するとの判断に至ることは許されないと主張し、この主張それ自体として
は、商標の類否判断の一般的手法として正当なものであるが、本件においては、上
記のとおり、全体的考察も行った結果、本願商標は引用各商標と類似するというべ
きであるから、原告の主張は本件の結論に影響を及ぼさない。
 2 以上によれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消す
べき瑕疵は見当たらない。
 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の
負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決
する。
   東京高等裁判所第13民事部
       裁判長裁判官  篠  原  勝  美
          裁判官   岡  本     岳
裁判官    長  沢  幸  男

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛