弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
一 被告が原告に対し平成八年九月一九日付けでした別紙物件目録記載の土地に係
る平成八年度分の特別土地保有税の納税義務を免除しない旨の決定を取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
 主文同旨
第二 事案の概要
 原告は、被告に対し、原告が本社建築のために購入した別紙物件目録記載の土地
(以下「本件土地」という。)について、地方税法六〇三条の二第一項及び東京都
都税条例一五三条の二第一項に基づいて、平成八年度分の特別土地保有税の納税義
務の免除の認定を申請したが、被告は、右免除を不許可とする決定をした。
 本件は、原告が、被告に対し、被告の右決定を不服として、その取消しを求めて
いる事案である。
一 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨から認定できる
事実である。)
1 原告
 原告は、電子機器の設計及び製造並びに販売等を目的とする株式会社である。
2 原告による本件土地の取得
 原告は、平成六年一二月二七日、フジクラ開発株式会社から、本件土地を代金六
九億一五〇〇万円で買い受ける旨の契約を締結し、同七年三月三一日、右代金債務
を完済するとともに所有権移転登記を経由した。
3 原告の納税義務免除申請
(一) 原告は、右2の本件土地の取得により、平成八年一月一日現在において、
東京都江東区内に九九一七.三五平方メートルの土地を保有することになり、特別
土地保有税の免税点を超えるに至った。
(二) 原告は、被告に対し、平成八年五月三一日、地方税法五八五条以下、同法
七三七条二項、東京都都税条例四条の三に基づき、本件土地に係る特別土地保有税
の申告書を提出するとともに、地方税法六〇三条の二第一項及び東京都都税条例一
五三条の二第一項に基づき、右特別土地保有税の納税義務の免除の認定を申請し
た。本件土地について、右免除の対象土地であるかどうかを判定すべき日(以下
「基準日」という。)は、平成八年一月一日である。
4 被告の決定
 被告は、原告の右3(二)の申請について、東京都特別土地保有税審議会の答申
を受け、本件土地については地方税法六〇三条の二第一項及び東京都都税条例一五
三条の二第一項の要件に該当しないとして、平成八年九月一九日付けで、原告の本
件土地に係る特別土地保有税の納税義務を免除しないとの決定(以下「本件処分」
という。)をした。
5 原告の審査請
求及び本訴提起
(一) 原告は、東京都知事に対し、平成八年一一月一四日、本件処分を不服とし
て、本件処分の取消しを求める審査請求(東京都八総法不審第五二一号)をした。
(二) 東京都知事は、平成一一年一月一九日付けで、原告の右(一)の審査請求
を棄却する旨の裁決をし、右裁決は、平成一一年一月二〇日、原告に送達された。
6 通達
(一) 地方税法六〇三条の二は特別土地保有税の納税義務の免除の要件として、
当該土地が「事務所、店舗その他の建物又は構築物で、その構造、利用状況等が恒
久的な利用に供される建物又は構築物に係る基準として政令で定める基準に適合す
るものの敷地の用に供する土地」であることを定めている。この要件の解釈につい
て、昭和五三年四月一四日付け自治省税務局長通達「恒久的な建物、施設等の用に
供する土地に係る特別土地保有税の納税義務の免除の取扱いについて」(自治固第
三八号。以下「本件税務局長通達」という。)は、この要件の認定は、基準日現在
の一時的な現況のみによるべきではなく、「当該基準日を中心とする一定の期間に
おける土地の利用状況等を勘案して行うべきものである。」とした上、基準日現在
において、既に恒久的な建物又は構築物の建設に着手されており、かつ、その後の
工事の進捗状況からみて恒久的な建物、施設等の用に供されることが確実であると
認められる土地は、免除対象土地として差し支えないとしている。
(二) これらを受けて、東京都においては、平成八年五月二二日付け主税局長通
達「特別土地保有税課税事務の取扱いについて」(八主資固第一八号。以下「本件
主税局長通達」という。)により、次のような運用方針を定めている。
(1) 「既に恒久的な建物又は構築物の建設に着手されている」とは、次の場合
である。
(ア) 工程表、事業計画書等において予定されている工程のうち、建築確認通知
を受けた後における全工程のおおむね一割程度まで工事が進捗している場合
(イ) (ア)にかかわらず、次の場合は、既に恒久的な建物又は構築物の建設に
着手されているものとする。
a 木造及び軽量鉄骨造の建築物にあっては、基礎工事の段階に達している場合
b 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨・鉄筋コンクリート造の建築物にあって
は、根切り工事の段階に達している場合
c 連続地中壁工事を伴う建築物にあっては、当該山留め壁の全部又は一部が完成
している場合
 ただ
し、右bの「根切り工事」とは建物の基礎底面まで、土を掘り下げる工事のことで
あり、「根切り工事の段階に達している」とは、根切り工事が完了していることを
要せず、当該根切り工事が開始されていることが外形的に確認できる場合をいうも
のである。
(2) 「その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、施設等の用に供される
ことが確実であると認められる」とは、工事が中断されることなく、かつ、工程
表、事業計画書等において予定されている工程からみて大幅に遅れているものでな
い場合をいう。
7 原告本社社屋の建築工事
 原告は、平成七年一二月一二日、本件土地上の本社社屋(以下「本件建物」とい
う。)の建築について建築確認を取得し、本件建物の建築工事(以下「本件工事」
という。)は平成一〇年九月一五日に完了した。原告の本社組織は、同年一一月一
日には本件建物内に移転し、原告は、右同日付けで本店移転登記を行った。
二 争点
 本件の争点は、本件土地が、地方税法六〇三条の二第一項一号に該当するかどう
かであり、具体的には、基準日である平成八年一月一日の時点で、本件工事におい
て、本件主税局長通達にいう「根切り工事」が開始されているなどして既に恒久的
な建物の建設に着手されていたと認められるか否かである。
三 争点に対する当事者の主張
(原告の主張)
1 本件土地は運河を埋め立てた造成地であって軟弱地盤であり、本件建物の支持
地盤は地表より五一メートルの深さにあるから、右支持地盤の深さに達する杭工事
が必要である。また、本件建物は地下階を有する大規模な建築物である。そのた
め、本件工事においては、通常よりも根切り工事を慎重に行っている。
2 本件工事は、概略次のとおりの順で行われた。
(一) 現場設営工事
(二) 土工事
(1) 一次掘削工事
(2) 地中障害物撤去工事
(3) 地盤改良工事(表層部)
(4) 地盤改良工事(深層部)
(5) 山留め壁構築工事
(6) 杭工事
(7) 二次掘削工事
(8) 三次掘削工事
 (根切り工事完了)
(三) コンクリート工事(基礎部のみ)
(四) 鉄骨工事
(五) コンクリート工事
(六) 仕上工事
(七) 外装工事
(八) 設備工事(右工事と並行して適時に行われる。)
3 本件工事においては、平成七年一二月二五日から一次掘削工事が開始された。
 一次掘削工事は、地盤改良工事及び山留め壁構築工事がなくてもできる程度の深
さまで掘削する
工事であり、この工事により地盤が水平になり、この地盤が以後の工事の作業地盤
となる。一次掘削工事を行うと、外形的にも掘削面が崩れない範囲で掘り下がって
いるのが確認できる。本件工事では、切梁を使用した四次掘削工事を行わずに根切
り工事を完了することができるようにするため、さらに、土地を水平にし、その後
の地盤改良・掘削を行う重機を入れるために、一次掘削工事が行われた。
 本件工事において一次掘削工事を開始したところ、事前には予測できない地中障
害物が発見され、この障害物に地盤改良用重機のドリルが当たって地盤改良ができ
ない状況となったので、当初の計画になかった地中障害物撤去工事が発生し、工程
の遅れを生じた。右撤去工事は、本件土地のうち本件建物が建築される部分につい
て、一次掘削工事と一部並行して行われた。
4 本件工事においては、基準日である平成八年一月一日より前の同七年一二月二
五日から行われた一次掘削工事によって、根切り工事が開始されたのであり、その
後、右2(二)の経過を経て、平成八年六月ころに三次掘削工事が終了するに至る
までを一連の根切り工事というべきである。
5 被告は、一次掘削工事の後に障害物撤去工事や地盤改良工事を行っていること
から、一次掘削工事は根切り工事の一部とはいえない旨主張するが、そもそも、本
件税務局長通達では、既に恒久的な建物の建築に着手されており、かつ、その後の
工事の進捗状況からみて恒久的な建物施設の用に供されることが確実であると認め
られる土地については免除対象として差し支えないとしている。本件工事の経過を
考慮した上で一次掘削工事が根切り工事の一部といえないとすると、軟弱地盤にお
ける大規模建築においては、土地取得後一年以内に恒久的な建物の建築に着手する
ことができないことになり、通達の解釈として不合理である。
6 右のとおり、本件工事においては、平成七年一二月二五日の一次掘削工事の開
始をもって根切り工事の開始とみるべきであり、本件工事においては、基準日であ
る同八年一月一日の時点では、既に根切り工事が開始されていたというべきであ
る。
(被告の主張)
1 特別土地保有税の免除要件の一つである根切り工事に着手したといえるために
は、基準日以前において、外形的に根切り工事と認められる工事が行われているこ
とが前提となる。
 根切り工事とは、「建物の基礎的底面まで土を掘り下げる工事」であ
り、掘削が行われても、その後地中障害物工事や地盤改良工事が行われる場合に
は、右掘削は地中障害物撤去工事や地盤改良工事のためのものと判断すべきであ
る。その後最終的に「建物の基礎的底面まで土地を掘り下げる工事」が行われたと
しても、当初の掘削は根切り工事の一環として行われたことになるのではなく、外
形的にはあくまでも地中障害物撤去工事や地盤改良工事のための掘削と判断される
のである。
2 本件工事においては、基準日である平成八年一月一日の時点で、一次掘削工事
が行われ、地中障害物撤去工事が行われていた状態であった。右地中障害物撤去工
事の完了後、地盤改良工事(表層部)、同(深層部)、山留め壁構築工事及び杭工
事を経て、二次掘削工事、三次掘削工事が行われたというのであるから、本件工事
における一次掘削工事は、その後の地中障害物撤去工事、地盤改良工事のための掘
削工事であったというべきである。
3 本件工事における地盤改良工事は、第一に深層部分の土を硬くして山留め壁の
足元を固めるため、第二に一〇〇トンを超える深層改良工事用機械の転倒防止のた
めに行われたものであり、右地盤改良工事と根切り工事とは性質も目的も異なる。
そして、一次掘削工事は、地盤を水平にするとともに、掘削するときの山留めの負
担を小さくするために行われたものである。したがって、一次掘削工事は、根切り
工事の準備のために行われた地盤改良工事のための掘削であるとともに、根切り工
事に必要な山留め壁構築工事の準備工事として行われた掘削であり、根切り工事自
体には当たらない。
4 また、本件土地については、本件工事に先立って大規模な土壌改良工事が行わ
れており、その全面に地中障害物が存在することは予想できたこと、及び、一次掘
削工事の初日である平成七年一二月二五日には既に地中障害物の撤去を一部開始し
ていることから、一次掘削工事は地中障害物の撤去を目的として行われたものであ
って、その手順として、ある程度地面を掘り下げると同時に地面を平らにし、重機
で地中障害物の撤去工事を実施したとみることもできる。
5 以上によると、本件工事においては、基準日である平成八年一月一日の時点で
行われていた一次掘削工事を根切り工事とみることはできず、右基準日時点で、い
まだ根切り工事が開始されていたということはできない。
第三 当裁判所の判断
一 特別土地保有税の納税義務の免除要件
1 地
方税法五八五条以下に規定する特別土地保有税は、土地保有に伴う費用を増大させ
ることにより、土地の投機的な取引を抑制するとともに、土地の供給を促進するこ
とを目的として創設されたものであるが、投機目的で保有されている土地か否かの
判断が困難であることなどから、当初、当該土地の利用の有無を問わず一律に課税
されることになっていた。しかし、その後既に社会通念上相当程度の水準の利用が
され、最終的な需要に供されていると認められるような土地についてまで特別土地
保有税を課するのは適当でないという考慮から、このような場合には、いったん発
生した納税義務を免除することとしたものであり(同法六〇三条の二)、免除対象
土地の認定に関しては、前記第二(事案の概要)一(前提となる事実)6のとお
り、同条が定めているところであり、本件に即していうと、本件土地が基準日であ
る平成八年一月一日の現況において、恒久的な利用に供される建物の敷地の用に供
されていることが必要となる。
 このように地方税法の文言のみからすると、基準日において既に土地上に建物が
存在していることが免除の要件であるかのように理解する余地がないでもないが、
右に述べた納税義務免除制度の趣旨からすると、このように限定的に解するのは相
当でなく、社会通念上、基準日に建物の敷地と同視し得る状況であれば、免除の要
件を満たすものと解するのが相当である。このような観点からすると、本件税務局
長通達が右要件の認定に当たり、「基準日において、既に工事に着手しており、か
つ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、施設の用に供されることが確
実な土地は、免除対象土地として差し支えないものである」としているのは、社会
通念上建物の敷地と同視し得る場合の一つを指摘するものとして、正しい法解釈を
示しているものと考えられる。
2 本件主税局長通達は、本件税務局長通達の趣旨を具体化するために発出された
ものであり、同通達にいう「建物の建設に着手されている」というためには、本件
のような建物については根切り工事が開始されていることが外形的に確認できるこ
とを要するものとしている。
 確かに、根切り工事が外形的にみて開始されていれば、建物の建設に着手されて
いると認めるべきであるから、その限度では、本件主税局長通達は本件税務局長通
達に沿うものと考えられるが、これをあまり厳格に解釈することには疑問があ
る。すなわち、前記のように、社会通念上、基準日に建物の敷地と同視し得る状況
をもって免除の要件と解することを前提とすると、本件主税局長通達も右解釈に沿
って解釈運用を行うべきであり、例えば、厳密な意味で根切り工事の開始と認めら
れるか否かに疑問があったとしても、これに必要不可欠な工事が開始され、それに
よって、外形的にみて建物の建設に着手されているものと社会通念上評価できる場
合には、基準日において既に敷地と同視し得る状況が生じているものと認めるのが
相当である。
3 一般に、建築工事における「根切り」とは、「建造物の基礎または地下室部分
を築造するために、地盤面以下の土を掘削して所要の空間を造ること」をいう(建
築大辞典第二版〈普及版〉一二七三頁)から、外形的に根切り工事が開始されてい
るといえるためには、①地盤面以下が掘削されており、②右掘削によって所要の空
間が造られつつあることが必要であり、かつ、右の外形が備わっていれば足りると
いうべきである。
 根切り工事においては、地盤の強度、建物又は構築物の規模や構造によって、掘
削を数次に分けて行うことがあり得る(甲一六、証人A)ところ、根切り工事が一
度の掘削により行われる場合と、数次に分けて行われる場合とで、根切り工事が開
始されているというために必要な右の外形が異なるものではない。
 また、根切り工事が、掘削を数次に分けて行うものである場合には、当初の掘削
と最終的な掘削との間に、地盤改良工事、山留め工事等の別の工事が行われる場合
が多いが、当初の掘削において、既に根切り工事としての外形が生じている以上、
別の工事が介入していたとしても、「根切り工事が開始されていることが外形的に
確認できる場合」に当たるというべきである。
二 本件工事について
1 本件土地の地盤
 本件土地は、運河を埋め立てて造成した土地であり、地盤が非常に軟らかく、支
持地盤は地表から五一メートルの深さに位置していた(甲一〇、一二、一六、証人
A)。
2 本件建物の概要
 本件建物は、鉄骨・鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)の地下一階、地上八階の
建物であり、一八、四一〇.六四平方メートルの延べ面積を有する(甲一〇)。
3 本件工事の計画
 本件工事は平成七年一二月七日ころ着工し、同九年八月一五日ころ竣工の予定で
計画され、各工事の概略は次のとおりであった(甲一〇、一一)。なお、次の各工
事は一部並行して
行われることが予定されている。
(一) 現場設営工事 (平成七年一二月七日ころから同八年一月一五日ころま
で)
(二) 土工事 (平成七年一二月二三日ころから同八年一〇月末ころまで)
(1) 一時掘削工事 (平成七年一二月二三日ころから同月末ころまで)
(2) 地盤改良工事 (平成七年一二月二三日ころから同八年二月一五日ころま
で)
(3) 山留め壁構築工事 (平成八年二月七日ころから同年三月一五日ころま
で)
(4) 杭工事 (平成八年三月七日ころから同年四月一五日ころまで)
(5) 二次掘削工事 (平成八年四月一五日ころから同月末ころまで)
(6) 切梁・構台工事 (平成八年五月一日ころから同月一五日ころまで)
(7) 三次掘削工事 (平成八年五月一五日ころから同月末ころまで)
(8) 切梁払工事 (平成八年八月一日ころから同月一五日ころまで)
(9) 構台払工事 (平成八年一〇月二三日ころから同月末ころまで)
(三) コンクリートエ事(基礎のみ) (平成八年六月一日ころから同年七月末
ころまで)
(四) 鉄骨工事 (平成八年八月一五日ころから同月末ころまで、及び同年一一
月一日ころから同年一二月一五日ころまで)
(五) コンクリート工事 (各階ごとに順次、平成八年九月一日ころから同九年
三月末ころまで)
(六) 外装工事 (平成九年二月一日ころから同年七月一五日ころまで)
(七) 仕上工事 (平成九年三月一日ころから同年七月末ころまで)
(八) 設備工事 (平成八年八月一日ころから同九年七月末の完成検査までの間
に適宜行う。)
4 本件工事における土工事の計画
 本件工事の土工事が、右3(二)(1)ないし(9)のとおり計画された理由
は、次のとおりであると認められる。
(一) 右1、2によると、本件工事は、軟弱地盤の上に地階を有する大規模な建
物を建築する工事であったといえる。そのため、本件工事においては、根切りを深
く行わなければならず、床付け面が持ち上って山留め壁が崩壊するヒービング現象
を防ぐため、大型重機を使用して地中深くまで地盤改良工事を行う必要があった
(甲一四、一六、証人A)。そこで、このような大型重機を使用することができる
ようにするために、深層部の地盤改良に先立って表層部の地盤改良を行うこととし
た。また、軟弱地盤において地下一階の深さまで掘削するため、山留め壁を構築す
る必要があったところ、右山留め壁を支える
切梁が格子状に配設されることになるので、大型重機を使用する杭工事は、一部の
掘削工事に先行して行うこととした(甲一〇、一三、一六、一七、一九、証人
A)。
(二) 本件工事における一次掘削工事は、右(一)の一連の土工事の当初段階の
工事である。一次掘削工事によって、表層部地盤改良工事のための作業面が平坦に
なるとともに、建物が建築される部分の外側約一メートルの範囲内を掘削するた
め、山留め壁への負担を軽減し、山留め壁の長さを短くすることができる(基礎底
面までの掘削距離を短くすることができる)ので、山留め壁を支持する切梁の段数
を減少させ、掘削を三次掘削工事までで終わらせる計画を立てることができた(甲
一〇、一六、証人A)。
5 基準日に至るまでの本件工事の状況
(一) 本件工事に先立って、平成七年五月ころから同年八月ころにかけて、鹿島
建設株式会社によって、本件土地の一部について土壌改良工事が行われた(甲三の
一ないし七、甲四の一、二、甲五、六、弁論の全趣旨)。さらに、同年九月末ころ
までの間に、株式会社東京ソイルリサーチによってボーリング調査による地盤調査
が行われた(甲七、一二)。
(二) 本件工事を請け負った株式会社大林組(以下「大林組」という。)は、平
成七年一二月一一日には、建築確認通知を受領するとともに、建設工事計画書を労
働基準監督署に提出し、翌一二日に本件工事に着工した(甲一〇、一一)。また、
右(一)の土壌改良工事の結果から、本件土地のうち本件工事の敷地内に排水溝が
埋まっていることが分かっており、大林組も試掘によってこれを確認していたが、
その他の地中障害物の有無等については、本件工事の着工時点では判明していなか
った(甲一〇、一六、証人A)。
(三) 大林組は、平成七年一二月二五日、一次掘削工事を開始した。一次掘削工
事は、地表から約五〇センチメートルの深さまで掘削を行う工事であり、掘削土量
は約一〇〇〇立方メートルであった(甲一〇、証人A)。右工事開始直後に、右
(二)のとおり事前に埋設を確認していた排水溝とは別に、運河護岸のアンカーや
巨大なコンクリート塊が地中に埋まっていることが発見されたため、急遽一次掘削
工事と並行して地中障害物撤去工事が行われることになった(証人A)。
(四) 一次掘削工事は平成七年一二月二八日に終了したが、この時点で地中障害
物撤去工事は継続して行われており、地中障害物を
掘り起こして破壊するとともに、地中障害物が埋まっていた穴を埋め戻すという作
業が繰り返されていた(証人A)。また、当初から一次掘削工事と同時に行われる
ことになっていた地盤改良工事も一部行われていた(証人A)。そして、右の状況
は、基準日である平成八年一月一日の時点においても同様であり、本件土地のう
ち、本件建物が建築される部分については、その外側約一メートルよりも内側の範
囲で全体に約五〇センチメートルの深さで掘削が行われ、その一部において、地中
障害物の撤去及び地盤改良工事が行われていた(甲一、甲二の一、二、乙二、証人
A)。
6 基準日以後の本件工事の進捗状況
 本件工事のうち土工事については、右5のとおり、事前に予測していなかった地
中障害物撤去工事が行われたことから、工事計画から概ね一か月以内の遅れで進行
したが、平成八年六月中には三次掘削工事が終わり、掘削工事が完了している(甲
一〇、一一、証人A)。
三 基準日における状況
1 基準日現在の外形
 右二5(四)の事実及び証拠(甲二の一、二、乙二、証人A)によると、本件土
地については、基準日である平成八年一月一日の時点で、一次掘削工事が.完了し
た後、地中障害物撤去工事及び地盤改良工事が行われていたところ、地中障害物撤
去工事に伴う撤去済み障害物、埋め戻し用の土砂が存在する部分を除き、本件建物
の建築される範囲(外側約一メートル以内)の地盤面以下の掘削が行われた状態で
あり、右掘削によって地盤面から約五〇センチメートルの深さまで空間が造られて
いたということができる。
2 基準日後の工事の進捗状況
 右二6とおり、本件工事の土工事は、工事計画より若干遅れながらも、中断する
ことなく行われ、平成八年六月ころには、掘削工事が完了しており、前記第二(事
案の概要)一(前提となる事実)7及び前記二2によると、現に地下一階、地上八
階、鉄骨・鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)である原告の本社社屋が完成してい
る。
3 以上の事実によると、一次掘削工事自体が厳密な意味で根切り工事に含まれる
ものか否かについては疑問が生じないでもないが、一次掘削工事はもとより、その
後行われた地中障害物撤去工事及び地盤改良工事は、いずれも根切り工事を行うの
に必要不可欠の工事であり、少なくとも根切り工事と密接不可分の関係にあるとい
うべきであるから、基準日以前において、これらの工事が外形的に明らか
な形で行われている以上、外形的にみて建物の建設に着手されているものと社会通
念上評価することができるし、基準日以後の工事の進捗状況からみて、恒久的な建
物の用に供されることが確実であると認められる土地であったというべきである。
四 本件土地の(特別土地保有税の納税義務)免除対象土地該当性
 右三のとおり、本件土地は、基準日現在において、既に恒久的な建物の建設に着
手されており、かつ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物の用に供され
ることが確実であると認められる土地であったというべきであり、社会通念上既に
恒久的な建物の敷地と同視し得る状況にあったと認められるから、本件土地は、地
方税法六〇三条の二第一項一号の特別土地保有税の納税義務免除対象土地に該当す
る。
五 結論
 弁論の全趣旨によると、本件処分は、専ら本件土地が特別土地保有税の納税義務
免除対象土地に該当しないことを理由として行われたと認められるところ、右四の
とおり、本件土地は右免除対象土地に該当するから、本件処分は本件土地について
の右免除対象土地該当性の判断を誤ったものであり、違法というべきである。
 したがって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につい
て、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第三部
裁判長裁判官 藤山雅行
裁判官 谷口豊
裁判官 杜下弘記
(別紙)
 物件目録
所在 江東区α
地番 六二四番一〇
地目 宅地
地積 九、九一七.三五平方メートル

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勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛