弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人谷村直雄の上告趣意第一点について。
  原判決の挙示する証拠によれば、原判示の事実、即ち被告人が単独で判示強盗
殺人、死体遺棄の各所為を敢行した事実を認めることができ、右認定に実験則に違
背する点があるとは認められない。そしてその判示にも不備の点は認められない。
従つて、原判決には審理不尽の違法はなく、所論は結局独自の見解を以て原判決の
事実認定を攻撃論難するもので当裁判所に対する上告の理由としては採用すること
ができない。
第二点について。
  憲法第三六条にいわゆる「残虐な刑罰」が、不必要な精神的、肉体的苦痛を内
容とする人道上残酷と認められる刑罰を意味し、事実審の裁判所が、普通の刑を法
律において許された範囲内で量定した場合において、それが被告人の側からみて過
重の刑であるとしても、直ちにこれを「残虐な刑罰」ということができないこと及
び現行刑法の規定する死刑が、右憲法第三六条にいわゆる「残虐な刑罰」にあたら
ないことは、いずれも当裁判所の判例とするところであつて(昭和二三年六月二三
日言渡同二二年(れ)第三二三号大法廷判決及び昭和二三年三月一二日言渡同二二
年(れ)第一二九号大法廷判決参照)、今これを変更する理由は認められない。所
論は、刑罰制度としての死刑の存置を是認する前提に立つても、具体的事件たる本
件について原審が死刑を量定したのは、憲法第三六条の「残虐な刑罰」にあたると
主張するのであるが、本件において原判決が認定したごとき強盗殺人、死体遺棄の
事案に対し、原審がその法定刑に準つて、被告人を死刑に処したことを以て、「残
虐な刑罰」にあたるものとすることのできないことは、前顕大法廷判決の趣旨に徴
して明瞭である。論旨は理由がない。第三点について、
  刑法第四五条は併合罪の意義を定めた規定にすぎないから、同条前段の併合罪
であることを明示した上適用すべき罰条を適用して処断した以上は、同条の適用を
些か前後して記載したきらいがあつても法律の適用を誤つた違法があるということ
はできない。本件においては、同条を所論の順序に適用しても、原判決掲記のとお
りに適用しても、刑法第四六条第一項を適用して処断すべきことには差異はないの
である。論旨は理由がない。
被告人の上告趣意について。
  「ジヨシンシヨ」及び「ジヨウコクシンシヨウ」と題する各書面は、原判決の
事実認定の誤つていることを論難し、ひいてその量刑の不当なことをうつたえるも
ので、すべて当裁判所に対する上告の理由としては採用することができない。
 よつて刑事訴訟法施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条に則り、主文のとおり
判決する。
 右は全裁判官一致の意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二四年四月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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