弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     第一、二審における上告人敗訴部分につき、原判決を破棄し、第一審判
決を取り消す。
     前項の破棄・取消部分に関する被上告人の請求を棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人川島一郎、同青木康、同村田良郎、同福山正衛、同柴崎堆および同徳
永輝夫名義の上告理由について
 原審の引用する第一審判決の確定するところによれば、被上告会社は、金融業そ
の他を営業目的とする株式会社で、昭和二六年頃からいわゆる株主相互金融の方式
による金融業を営むようになつたが、その具体的内容は次のようなものであつたと
いうのである。
 被上告会社は、貸付金の資金調達の方法として新株式を発行し、これを同会社の
役員等の縁故者に引き受けさせ、その払込金は、主として、同会社より引受人に対
する貸付金によつて充当された。かくして縁故者の取得した株式の譲渡を被上告会
社が斡旋し、同会社名義で買受希望者を募集したが、その際、株式の買受代金の支
払については、均等割による日払、月払の方法を認め、この場合には、被上告会社
が買受代金を一時立て替えるという形式がとられた。そして、株式の買受人が代金
を完済したときは、被上告会社からその株式の額面金額の三倍の融資を受けること
ができるものとされた。しかして、買受代金を完済して株主となつた者が右の融資
を希望しないときは、被上告会社は、(一)株主の希望により株式の転売を斡旋し、
転買人が決まるまで同会社において転売代金を立て替えて支払い、その際、右に付
加して、前記の日払または月払の期間に応じて、年九分ないし一割の奨励金名義の
金員を支払い、(二)株主が株式の転売を希望しないで六カ月または一年間株主であ
ることを持続するときは、優待金等の名義で、年一割ないし一割三分の金員を支払
つた。以上の場合に、譲渡の斡旋は一〇〇株または二〇〇株単位で行なわれ、譲渡
価額はつねに額面金額によるものとされた。なお、新株の引受は、被上告会社の役
員等の縁故者が主として同会社からの借入金によつて払い込むため、新株の引受に
よつては、実質的に会社資金は調達されず、株式買受人の支払う株式代金によつて、
被上告会社が右の縁故者(引受人)から貸付金の返済を受けたときに、はじめて資
金調達の目的を達し得る関係にあつた。
 以上のような確定事実に基づいて、原審は、前記の株主相互金融方式による株式
の売買代金を実質的に取得する者は被上告会社であり、その株式取得者は、株主と
なると同時に、被上告会社によつて株式の再譲渡による株式売買代金(券面額)の
回収と株式所有持続期間に応じた株主優待金の支払とが約束されるのであるから、
実質的にみれば、被上告会社が、株式を譲渡担保として、消費貸借ないし消費寄託
により株式取得者から株式代金相当額を取得する場合と異らず、代金が元本に、株
主優待金が利息に該当するものということができるとし(原審引用の第一審判決は、
この関係を、経済的・実質的に見るかぎり、株主優待金は金融機関の預金利子と異
ならない、と表現する)、右消費貸借ないし消費寄託の場合においても、債権者即
株主であり、右利息が株主たる地位について支払われるのではなく、債権者たる地
位について支払われるものであることが明らかであるとして、本件株主優待金は、
被上告会社の所得の計算上その全部を損金として取り扱うべきものとするのである。
 しかし、かりに経済的・実質的にみれば、本件株主優待金が原審説示のような性
質を有するとしても、その関係を法律的にみれば、前記の株主が被上告会社に支払
うのは株式買受代金にほかならず、しかも、これのみに限られるのであつて、右の
株式買受代金が、同時に、被上告会社に対する消費貸借ないし消費寄託の目的とな
ることはあり得ない。たとえ、被上告会社の新株発行に特異のものが認められるに
もせよ、新株の買受人による買受代金の払込みにより、株金相当額が受け入れられ
て被上告会社は自己資本を増加し、増資の方法による資金調達の目的が達成される
のであつて、かかる新株の発行を当然無効のものということはできず、株式買受人
が取得するのは株主の地位以外のものではない。したがつて、原判決が、実質的に
みれば、株式買受代金が買受人と被上告会社との間の消費貸借ないし消費寄託にお
ける元本に、株主優待金がその利息に該当するというのは、前記の新株発行により
有効に成立した法律状態を無視するものといわなければならない。
 これを要するに、株式買受人が被上告会社から融資を受けるのも、また、株主優
待金の支払を受けるのも、すべて、同会社の株主として享受しうるところであつて、
このように、被上告会社から株主たる地位にある者に対し、株主たる地位に基づい
てなされる金銭的給付は、たとえ、被上告会社に利益がなく、かつ、株主総会の決
議を経ていない違法があるとしても、法人税法上、その性質は配当以外のものでは
あり得ず、これを被上告会社の損金に算入することは許されない。この理は、すで
に、当裁判所昭和三六年(オ)第九四四号同四三年一一月一三日大法廷判決(民集
二二巻一二号二四四九頁)の判示するところである。したがつて、被上告会社の所
得計算上、株主優待金を損金に算入すべきものとした第一審判決およびこれを維持
した原判決は、法人税法(昭和二二年法律第二八号)九条一項の解釈適用を誤つた
違法あるものというべく、論旨は理由がある。
 よつて、第一、二審における上告人敗訴部分につき、原判決を破棄し、第一審判
決を取り消すべきものとし、右の破棄・取消部分においては、係争の各事業年度の
更正処分に関する審査決定について、本件株主優待金の損金算入の許否以外には、
金額その他に関し争いはないものと認められるので、行政事件訴訟法七条、民訴法
四〇八条により、右の破棄・取消部分に関する被上告会社の請求を棄却することと
し、訴訟費用の負担につき同法九六条、八九条を適用して、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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