弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 被告人の上告趣意について。
 論旨は結局において採証法則の違背、事実誤認又は審理不尽の主張に帰し、いず
れの点も適法な上告理由とならない。
 弁護人加藤晃の上告趣意第一点について。
 原判決が所論三斗入甕一箇を没収するにあたり原判示の時の酒税法六〇条三項の
外に刑法一九条二項を適用したことは所論のとおりである。しかし所論引用の当裁
判所の判例は、「本件の没収については酒税法六〇条三項及び六四条二項だけを適
用すればよかつたのであり、刑法一九条二項の引用は蛇足というべきだが、本件の
没収物件は被告人以外の者に属しないと原判決も判示している次第であつて、刑法
一九条二項の趣旨にも反せず、いずれにせよ原判決を破棄すべき程の法律適用の誤
とは言えない。」と判示しているのであるから、この判例に従う限り原判決を破棄
すべき理由はない。次に所論援用の大審院の判例は基礎となる法令を異にするもの
であつて本件に適切でない。論旨はまた憲法違反の語をも用いているが、名を憲法
違反に藉るだけの主張に過ぎないから、採用できない。論旨はすべて理由がない。
 同第二点について。
 原判決は、第一審判決を破棄したが、それは事実の確定に影響を及ぼすことなき
法令適用の誤りを理由としてなされたのであつた。このような場合に自判するに当
つては、第一審判決の認定した事実を基礎としてこれに法令を適用することが正当
であること、当裁判所の判例(昭和二六年(あ)二九四三号同二八年八月七日第二
小法廷決定)の示すとおりであつて、原判決には所論(一)のような違法はない。
 第二審判決が第一審判決の確定した事実を前提としてこれに法令を適用する結果
として、所論(三)のように上告申立ての理由の範囲が狭くなるとしても、それは
現行刑事訴訟法の建前がそうなつているのであるからやむを得ないのであつて、そ
のために所論のような憲法違反の問題を生ずる余地はない。けだし上告理由を如何
なる範囲まで認めるかについては、憲法はみずからこれを定めず、これを立法に委
ねていること、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)五六号同二三年二月六日大法廷
判決)の示すとおりだからである。
 原判決は第一審判決が認定した事実を前提としてこれに法令を適用したものとす
れば、所論(二)のような第一審の事実を認定するために採用された証拠に関する
非難は上告適法の理由とならない。のみならず記録(九〇丁裏)を調べてみると、
第一審裁判所は「検証調書」の証拠調をしているから、その判決文に「検証の結果」
と記載されているのは「検証調書の記載内容」の意味であることがわかる。従つて
論旨はその立論の根拠を失う。要するに第二点の論旨はいずれも採用することがで
きない。
 同第三点について。
 所論憲法違反の主張は、その前提がすべて誤つていること上記のとおりであるか
ら、主張そのものも成り立ち得ず、採用することができない。また記録を調べても
刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す
る。
  昭和二八年一一月一〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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