弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人田畑喜与英の上告理由について。
 論旨は、原判決は、原本に基づいて言い渡されたものでないから、判決の手続に
違法があるというのである。
 よつて、原審における判決言渡調書を調べてみるに、原判決は、昭和三四年六月
一八日午前一〇時言い渡されたことになつているが、当時判決原本は浄書の途中に
あつて、いまだ完成に至らず、退庁時までには完成する十分の見込があつたため、
原稿によつて言い渡されたものであることを知ることができる。
 もつとも、記録に編綴されている判決正本によると、同正本初葉上部欄外に、「
昭和三四年六月十八日判決言渡、昭和三四年六月十八日判決原本領収、裁判所書記
官補渡辺隆吉」なる記載があり、念のために取り寄せた判決原本にも同じ記載があ
るところからみて、判決原本は言渡の当日に完成し、同日中に裁判所書記官補に交
付されたものであることを知ることができるから、判決文そのものは、主文も理由
も、言渡の際すでに完成し、浄書を終えるばかりになつていたものであることを推
測するに難くない。
 原審における右の措置は、裁判の迅速を考慮するの余り、その適正の面に対する
配慮が十分でなかつたものといわざるを得ず、その点甚だ遺憾ではあるが、右のよ
うな特殊な事情の下において言い渡されたのであるから、原判決は、結局、原本に
基づいて言い渡されたものと同視できるものと解すべきである。従つて、論旨は採
るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官下飯坂潤夫の少
数意見ある外、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 裁判官下飯坂潤夫の少数意見は次のとおりである。
 「判決ノ言渡ハ判決原本ニ基キ裁判長主文ヲ朗読シテ之ヲ為ス」旨の民事訴訟法
一八九条一項の規定は裁判官に対する至上命令である。すなわち裁判官はすでに厳
格に作成されてある判決原本に基づいて判決を言渡すべきであり、判決の草稿や下
書などを基として言渡をなすことを絶対認められてはいないのである。このことは
判決手続の厳格を保障するばかりでなく、判決は公開法廷で行わなければならない
旨の憲法八二条一項の規定の精神に副う所以でもある。そもそも右のような規定の
なかつた旧民事訴訟法の時代においては判決の言渡は極めて乱雑であり、判決原本
に基づかずして判決の言渡さるることが、日常茶飯事の如き観を呈し、或るものは
判決原本の作成が言渡におくるること数週或は数カ月にも達し極端なるものは二年
も三年もおくれるものがなきにしもあらずであつたのである。また一方廊下言渡な
るものが頻々として行われ(裁判所書記に判決の内容を口頭で申伝え、以て能事了
れりとするが如き傾向)判決原本作成の後に口頭言渡と内容の全く異るが如き醜態
を惹起し識者の顰蹙を買つたような事態すらあつたのであり、その悪弊風の赴くと
ころ底止するところを知らなかつたのである。かくては裁判の威信に関する一大事
であるが故に旧民事訴訟法が新民事訴訟法と改正される際に、立法者が上叙の悪風
を一掃すべく新たに設けたものが、「判決ノ言渡ハ判決原本ニ基キ主文ヲ朗読シテ
之ヲ為ス」との規定そのものなのである。されば、新民事訴訟法の下においては、
裁判官は如何なる理由あるにせよ、判決原本に基づかずして判決の言渡をなすこと
は許されないのであり、このことは今や全国裁判官に徹底し、裁判所の美風として
全国的に浸透しているものと考える。然るにこれを蔑視し些末の理由付けによつて
これを紊そうとする向が、仮にありとせんか、この美風も蟻の一穴より潰え、やが
て、往時の乱脉ぶりを再現するの虞なしとしない。私のおそるるところは実にここ
に在る。原判決の場合判決草案はすでに出来ていたのであろう。しからば判決言渡
期日を何故に一両日後に変更しなかつたのであろうか。しからば上告人に痛くもな
い肚をさぐられて判決に疑を挟まるるような事態は惹起しないで済んだであろう。
判決の公正はいつ如何なる場合も厳正なる訴訟手続によつて担保され保障されてい
ることを原審裁判官は銘記すべきであろう。私見を以てすれば、原判決は判決の手
続が重要な法律に違背しているものと認め民訴三九六条によつて上告審の訴訟手続
に準用されている同法三八七条により原判決は取消さるべきものと考え、その間に
いささかの宥恕も許すべからざるものと信ずるのである。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   朔   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛