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平成24年10月25日判決言渡
平成23年(行ケ)第10432号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成24年8月30日
判決
原告ケーディーキャノピー,インク.
訴訟代理人弁護士尾関孝彰
同鰺坂和浩
訴訟代理人弁理士長谷川芳樹
同大森鉄平
同城戸博兒
同阿部寛
原告株式会社ニューテックジャパン
訴訟代理人弁護士小長井雅晴
訴訟代理人弁理士竹内裕
被告富士見産業株式会社
訴訟代理人弁護士岡本健二
訴訟代理人弁理士須田英一
主文
1特許庁が,無効2008-800245号事件について,平成23年11
月7日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨
第2争いのない事実
1特許庁における手続の経緯等
原告らは,発明の名称を「非圧縮性ピボットを備えたシザー端部が捕獲された折
畳み可能なキャノピー骨組構造体」とする特許第2625255号(平成3年12
月23日出願,平成3年1月4日優先権主張,平成9年4月11日設定登録。以下
「本件特許」という。)の特許権者である。
被告は,平成20年11月6日,本件特許の無効審判請求(無効2008-80
0245号事件)をし,原告らは,平成21年3月3日,本件特許の訂正請求をし,
特許庁は,同年9月7日,「訂正を認める。特許第2625255号の請求項1~
12に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とす
る。」との審決をし,その謄本は,同月18日,原告らに送達された。
原告らは,平成22年1月15日,知的財産高等裁判所に対し,上記審決の取消
しを求める訴訟を提起し(平成22年(行ケ)第10011号事件),同年3月4
日,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判を請求したところ,同裁判所は,
同年3月29日,特許法181条2項に基づき事件を審判官に差し戻すために,
「特許庁が無効2008-800245号事件について平成21年9月7日にした
審決を取り消す。訴訟費用は原告の負担とする。」との決定をした。
原告らは,平成22年8月30日,本件特許の訂正請求をし,特許庁は,平成2
3年2月10日,「平成22年8月30日付けの訂正請求のうち,訂正事項3乃至
4及び9乃至12については,訂正を認める。訂正事項1乃至2及び5乃至8につ
いては訂正を認めない。特許第2625255号の請求項1,3,6~9に係る発
明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は平成23年2月18
日,原告らに送達された。
原告らは,平成23年4月11日,知的財産高等裁判所に対し,上記審決の取消
しを求める訴訟を提起し(平成23年(行ケ)第10117号事件),同月12日,
特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判を請求したところ,同裁判所は,同年
6月23日,特許法181条2項に基づき事件を審判官に差し戻すために,「特許
庁が無効2008-800245号事件について平成23年2月10日にした審決
を取り消す。訴訟費用は原告の負担とする。」との決定をした。
原告らは,同年7月19日,本件特許の訂正請求をし(以下「本件訂正とい
う。」),特許庁は,同年11月7日,「訂正を認める。特許第2625255号
の請求項1~6に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄
本は同月16日,原告らに送達された(以下,「審決」とはこの審決を指す。)。
2特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載は,次のとおりである
(甲24,甲25。以下,各請求項に係る発明を,それぞれ「本件特許発明1」な
いし「本件特許発明6」といい,これらを総称して「本件各特許発明」という。ま
た,本件訂正後の特許請求の範囲,明細書及び図面を総称して「本件明細書」とい
う。)。
【請求項1】
折畳まれ,そして折畳まれた状態で保管され,そして支持面上に展開された状態
で組みたてられるようになった展開可能な骨組構造体であり,前記支持面の上方に
キャノピーカバーを支持することができる骨組構造体において,
(a)各々が支持面上に配置可能な下端部と,前記下端部と反対側の上端部とを
有する複数個の直立した支持部材を備え,前記支持部材は折畳まれた状態で相互に
相並ぶように向けられ,そして展開状態に向かって相互に離れて外方に移動可能で
あり,各支持部材は断面矩形状であり,さらに,
(b)複数個の端縁シザー組立体を備え,一つの端縁シザー組立体が前記支持部
材のうちの隣接した支持部材を相互に連結し,各々の前記端縁シザー組立体が1対
の外側上端部および1対の外側下端部を有し,前記端縁シザー組立体は開閉するよ
うに作用可能であり,それにより前記骨組構造体は展開状態と収縮状態との間を移
動することができ,展開状態において前記端縁シザー組立体の外側側面全体が前記
キャノピーカバーに覆われ,各々の前記端縁シザー組立体は上端部及び下端部にお
いて相互に連結されたシザーユニットにより構成され,前記シザーユニット間の連
結部は構造を補強するための更なる直立した支持部材により前記支持面上に支持さ
れておらず,前記骨組構造体全体が展開状態において4個の直立した支持部材によ
ってのみ支持されており,さらに,
(c)前記の直立した支持部材上に配置されかつ前記端縁シザー組立体を前記支
持部材に締め付けるように作用する複数個のマウントを備え,該各マウントは前記
支持部材が嵌合される断面矩形状の中空部が形成された収容部を備え,前記マウン
トの各々は,隔置された平行な側壁部分により形成され,互いに直交する一対のソ
ケットを有し,該一対のソケットの側壁部分はそれぞれ前記収容部の前記中空部を
囲う側壁に平行であり,前記端縁シザー組立体の各々はその平行な向き合った側壁
部分の間に締り嵌め係合されるように前記ソケットのうちのそれぞれの1個のソケ
ット内に受け入れられる長方形横断面の外側端部を有し,それにより前記の平行な
側壁部分と共に平面状の接触面を形成し,さらに,
(d)前記端縁シザー組立体の各々の外側端部をそれぞれのソケット内に枢動可
能に固定する締付ピンを備え,前記平行な側壁部分と接触する前記外側端部表面に
突起が存在せず,前記端縁シザー組立体を構成するシザーバーは中空部を備える管
状構造であり,
(e)1対の前記マウントが前記の直立した支持部材の各々の上に配置され,前
記の1対のマウントの一方が固定マウントであり,そして前記の1対のマウントの
他方がスライドマウントであり,前記スライドマウントが前記の直立した支持部材
に滑動可能に固定されかつそれぞれの前記端縁シザー組立体が開閉するときに前記
支持部材に沿って前記固定マウントに近い位置と前記固定マウントから遠い位置と
の間に移動可能であり,
(f)前記固定マウントに一対のソケットが直交して形成され,該一対のソケッ
トの各々において平行な側壁部分は,その上端部において水平な壁部で相互に連結
され,前記スライドマウントに一対のソケットが直交して形成され,該一対のソケ
ットの各々において平行な側壁部分は,その下端部において水平な壁部で相互に連
結され,
(g)前記固定マウントの各々は,それぞれ直交する一対のソケットの中央部に,
隔置された平行な側壁部分により形成される中央部のソケットを有し,該中央部の
ソケットは前記側壁部分を連結する水平な壁部を有さず,
(h)前記マウントは前記骨組構造体が展開し,そして収縮するときに前記端縁
シザー組立体を開閉させるように相互に関して相対移動可能であり,一方ソケット
の平行な側壁部が平面状の接触面に沿って外側端部に作用して前記端縁シザー組立
体の横方向のたわみおよびねじりによるたわみを阻止し,
(i)前記の固定マウントの前記収容部が,前記支持部材に沿って前記スライド
マウントの方向に向かってすべての前記ソケットを超えて延び出しており,
(j)骨組構造体が展開状態にあるときに前記の直立した支持部材により支持面
の上方に支持されるルーフ支持組立体を含み,前記ルーフ支持組立体が前記キャノ
ピーカバーを支持するように作用し,前記ルーフ支持組立体が頂点を形成するため
にその近位置端部において相互に枢動可能に連結され,かつ展開状態にあるとき相
互に離れて半径方向に外方に延びる複数個のルーフ支持部材を含み,各々のルーフ
支持部材がその遠位置端部において前記の直立した支持部材上の前記固定マウント
の中央部ソケットに枢動可能に連結されており,
(k)支持部材の前記下端部各々が,前記固定マウント及び前記スライドマウン
トとは別部材であり,貫通孔を有して前記支持面と係合するプレート状部材を備え
る骨組構造体。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の展開可能な骨組構造体において,それぞれの前記スラ
イドマウントをそのそれぞれの前記固定マウントに近い位置において釈放可能に締
め付けるために前記の直立した支持部材と組み合わされたラッチ装置を含む骨組構
造体。
【請求項3】
請求の範囲第1項に記載の展開可能な骨組構造体において,各々の前記ルーフ支
持部材が前記骨組構造体が折畳まれた状態にあるときの引っ込められた状態と前記
骨組構造体が展開された状態にあるときの伸張した状態との間に移動可能な1対の
伸張可能な部分を含み,そして前記の伸張可能な部分を伸張した状態に釈放可能に
保持するルーフ支持部材ラッチ装置を含む骨組構造体。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載の展開可能な骨組構造体において,1対の前記マウント
が前記の直立した支持部材の各々の上に配置され,前記の1対のマウントの一方が
固定マウントであり,そして前記の1対のマウントの他方がスライドマウントであ
り,前記スライドマウントが前記の直立した支持部材に滑動可能に固定されかつそ
れぞれの前記端縁シザー組立体が開閉するときに前記支持部材に沿って前記固定マ
ウントに近い位置と前記固定マウントから遠い位置との間に移動可能であり,そし
て前記ルーフ支持部材の各々がそれぞれの固定マウントに枢動可能に連結され,そ
して第1片持端部において前記伸張可能な部分の一方と枢動可能に連結されかつ前
記第1片持端部と反対側の第2片持端部においてそれぞれの前記の隅の支持部材上
のスライドマウントと枢動可能に連結された片持部分を含む骨組構造体。
【請求項5】
請求の範囲第1項に記載の展開可能な骨組構造体において,前記端縁シザー組立
体の各々が端と端とをつなぐ関係で内側の上端部および下端部において連結された
1対のシザーユニットを含み,前記端縁シザー組立体の各々がそれぞれのシザーユ
ニットの内側の上端部および下端部を枢動可能に連結するためにそれぞれ作用する
上側浮動マウントおよび下側浮動マウントを含み,前記上側浮動マウントおよび下
側浮動マウントの各々が隔置された平行な側壁部分によりそれらの内部に形成され
た複数個のソケットを有し,前記シザーユニットの内側端部の各々がその向き合っ
た側壁部分の間に締り嵌め係合するように前記ソケットのうちのそれぞれのソケッ
ト内に受け入れられた長方形横断面を有し,かつソケットの平行な側壁部分が前記
シザーユニットの横方向のたわみおよびねじりによるたわみを阻止する間に前記シ
ザーユニットの各々の内側端部をそれぞれのソケット内に枢動可能に固定する締付
ピンを含む骨組構造体。
【請求項6】
請求の範囲第5項に記載の展開可能な骨組構造体において,骨組構造体が展開状
態にあるときに前記の直立した支持部材により支持面の上方に支持されるルーフ支
持組立体を含み,前記ルーフ支持組立体が前記キャノピーカバーを支持する作用を
する骨組構造体。
3審決の理由
(1)別紙審決書写しのとおりである。その概要は,以下のとおりである。
ア本件特許発明1は,甲1(実願昭62-157952号(実開平1-613
70号)のマイクロフィルム)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及
び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ本件特許発明2は,引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に
発明をすることができたものである。
ウ本件特許発明3は,引用発明,甲2(特開平1-142183号公報)記載
の発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもので
ある。
エ本件特許発明4は,引用発明,甲2の記載事項及び周知の技術に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ本件特許発明5は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明
をすることができたものである。
カ本件特許発明6は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明
をすることができたものである。
キしたがって,本件特許は,特許法123条1項2号に該当し,無効とすべき
ものである。
(2)上記判断に際し,審決が認定した引用発明の内容,引用発明と本件特許発明
1との一致点及び相違点は以下のとおりである。
ア引用発明の内容
わく組立と折畳み操作が簡易な伸縮瞬間わく組立家屋結構であり,地面の上方に
テントを支持することができる伸縮瞬間わく組立家屋結構において,
(a)各々が地面上に配置可能な底台片と,前記底台片と反対側の上端部とを有
する複数個の直立した角型柱体の,主支柱とその下部に固定された伸縮支柱からな
る4本の支柱を備え,前記支柱は折畳まれた状態で相互に相並ぶように向けられ,
そして展開状態に向かって相互に離れて外方に移動可能であり,さらに,
(b)2つの交叉式サイドバーの上端部と下端部を相互に連結した,「連結され
た2つの交叉式サイドバー」を複数個備え,連結された2つの交叉式サイドバーが
支柱を相互に連結しているが,2つの交叉式サイドバーの連結部分は支柱には支持
されておらず,テントをかぶせた状態で,連結された2つの交叉式サイドバー全体
がテントに覆われ,各々の前記連結された2つの交叉式サイドバーが1対の支柱に
締め付けられる上側の端部および1対の支柱に締め付けられる下側の端部を有し,
前記交叉式サイドバーは開閉するように作用可能であり,それにより前記伸縮瞬間
わく組立家屋結構は展開状態と収縮状態との間を移動することができ,さらに,
(c)前記の直立した支柱上に配置されかつ前記連結された2つの交叉式サイド
バーを前記支柱に締め付けるように作用する複数個の角型空心柱状の支えバー軸体
を備え,該空心部分に支柱をはめ,支えバー軸体の各々は,互いに直交しそれぞれ
が前記角型空心柱の側壁に平行なサイドバー固定軸片を有し,前記サイドバーの端
部の各々は隔置された平行な側壁部分を有し,該平行な側壁部分間に長方形横断面
を有するサイドバー固定軸片が挿入されることにより,該平行な側壁部分とサイド
バー固定軸片が接触面を形成し,さらに,
(d)前記連結された2つの交叉式サイドバーの各々の前記端部をそれぞれの支
えバー軸体のサイドバー固定軸片に枢動可能に固定するボルトまたはリベットを備
え,サイドバー固定軸片表面には突起が存在せず,
(e)1対の前記支えバー軸体が前記の直立した支柱の各々の上に配置され,前
記の1対の支えバー軸体の一方が上固定支えバー軸体であり,そして前記の1対の
支えバー軸体の他方が下活動支えバー軸体であり,前記下活動支えバー軸体が前記
の直立した支柱に滑動可能に固定されかつそれぞれの前記連結された2つの交叉式
サイドバーが開閉するときに前記支柱に沿って前記上固定支えバー軸体に近い位置
と前記上固定支えバー軸体から遠い位置との間に移動可能であり,
(f)前記上固定支えバー軸体に一対の上サイドバー固定軸片が直交して形成さ
れ,前記下活動支えバー軸体に一対の下サイドバー固定軸片が直交して形成され
(g)前記上固定支えバー軸体の各々は,それぞれ直交する一対の上サイドバー
固定軸片の中央部に,屋根押上バー固定軸片を有し,
(h)前記支えバー軸体は前記伸縮瞬間わく組立家屋結構が展開し,そして収縮
するときに前記連結された2つの交叉式サイドバーを開閉させるように相互に関し
て相対移動可能であり,
(j)テントの屋根部分を支える4本の屋根支えバー及び屋根フレーム押上バー
が支柱上に支持され,屋根フレーム押上バーの両端はそれぞれ下活動支えバー軸体
の屋根押上バー固定軸片及び屋根支えバーの中間の適当な位置に固定され,屋根支
えバーの両端部は隔置された平行な側壁部分を有し,その前端部をそれぞれ中心の
屋根梁受軸の屋根フレーム固定軸片に枢動固定され,他端部は上固定支えバー軸体
に設けた屋根支えバー固定軸片が該隔置された平行な側壁部分に挿入されることに
より両部材が面接触し枢動固定されており,
(k)支柱の伸縮支柱下端に設けられた地面と接する底台片は,上固定支えバー
軸体及び下活動支えバー軸体とは別部材であり,貫通孔を有するプレート状の部材
である伸縮瞬間わく組立家屋結構であって,
(l)活動挿ピンを支柱上の止め孔まで挿入して下活動支えバー軸体をくい止め
固定し,全体が変形または収縮するのを防止する活動挿ピン及び止め孔を備えた伸
縮瞬間わく組立家屋結構。
イ引用発明と本件特許発明1との一致点及び相違点
(ア)一致点
「折畳まれ,そして折畳まれた状態で保管され,そして支持面上に展開された状
態で組みたてられるようになった展開可能な骨組構造体であり,前記支持面の上方
にキャノピーカバーを支持することができる骨組構造体において,
(a)各々が支持面上に配置可能な下端部と,前記下端部と反対側の上端部とを
有する複数個の直立した支持部材を備え,前記支持部材は折畳まれた状態で相互に
相並ぶように向けられ,そして展開状態に向かって相互に離れて外方に移動可能で
あり,各支持部材は断面矩形状であり,さらに,
(b)複数個の端縁シザー組立体を備え,一つの端縁シザー組立体が前記支持部
材のうちの隣接した支持部材を相互に連結し,各々の前記端縁シザー組立体が1対
の外側上端部および1対の外側下端部を有し,前記端縁シザー組立体は開閉するよ
うに作用可能であり,それにより前記骨組構造体は展開状態と収縮状態との間を移
動することができ,展開状態において前記端縁シザー組立体の外側側面全体が前記
キャノピーカバーに覆われ,各々の前記端縁シザー組立体は上端部及び下端部にお
いて相互に連結されたシザーユニットにより構成され,前記シザーユニット間の連
結部は構造を補強するための更なる直立した支持部材により前記支持面上に支持さ
れておらず,前記骨組構造体全体が展開状態において4個の直立した支持部材によ
ってのみ支持されており,さらに,
(c)前記の直立した支持部材上に配置されかつ前記端縁シザー組立体を前記支
持部材に締め付けるように作用する複数個のマウントを備え,該各マウントは前記
支持部材が嵌合される断面矩形状の中空部が形成された収容部を備え,互いに直交
する一対の枢軸部材を有し,該一対の枢軸部材はそれぞれ前記収容部の前記中空部
を囲う側壁に平行であり,前記端縁シザー組立体の各々と枢軸部材は締り嵌め係合
されるように,マウントまたは端縁シザー組立体の端部の一方が隔置された平行な
側壁部分を有するソケットにより形成され,他方が該ソケット内に受け入れられる
長方形横断面の端部を有し,それにより前記の平行な側壁部分と共に平面状の接触
面を形成し,さらに,
(d)前記端縁シザー組立体の各々の外側端部と枢軸部材とを枢動可能に固定す
る締付ピンを備え,前記平行な側壁部分と接触する前記端部表面に突起が存在せず,
(e)1対の前記マウントが前記の直立した支持部材の各々の上に配置され,前
記の1対のマウントの一方が固定マウントであり,そして前記の1対のマウントの
他方がスライドマウントであり,前記スライドマウントが前記の直立した支持部材
に滑動可能に固定されかつそれぞれの前記端縁シザー組立体が開閉するときに前記
支持部材に沿って前記固定マウントに近い位置と前記固定マウントから遠い位置と
の間に移動可能であり,
(f)前記固定マウントに一対の枢軸部材が直交して形成され,前記スライドマ
ウントに一対の枢軸部材が直交して形成され,
(g)前記固定マウントの各々は,それぞれ直交する一対の枢軸部材の中央部に,
中央部の枢軸部材を有し,
(h)前記マウントは前記骨組構造体が展開し,そして収縮するときに前記端縁
シザー組立体を開閉させるように相互に関して相対移動可能であり,
(j)骨組構造体が展開状態にあるときに前記の直立した支持部材により支持面
の上方に支持されるルーフ支持組立体を含み,前記ルーフ支持組立体が前記キャノ
ピーカバーを支持するように作用し,前記ルーフ支持組立体が頂点を形成するため
にその近位置端部において相互に枢動可能に連結され,かつ展開状態にあるとき相
互に離れて半径方向に外方に延びる複数個のルーフ支持部材を含み,各々のルーフ
支持部材がその遠位置端部において前記の直立した支持部材上の前記固定マウント
の中央部の枢軸部材に枢動可能に連結されており,
(k)支持部材の前記下端部各々が,前記固定マウント及び前記スライドマウン
トとは別部材であり,貫通孔を有して前記支持面と係合するプレート状部材を備え
る骨組構造体。」の点。
(イ)相違点(引用発明と本件特許発明2ないし6との相違点でもある。)
a相違点1
本件特許発明1では,マウントがソケットを有し,ソケットの平行な側壁部分は
上端部又は下端部において水平な壁部分で相互に連結されており,中空部を備える
管状構造のシザーバーから構成される端縁シザー組立体の外側端部が該ソケット内
に受け入れられて,平行な側壁部分が平面状の接触面に沿って外側端部に作用して
前記端縁シザー組立体の横方向のたわみおよびねじりによるたわみを阻止するのに
対して,引用発明では,端縁シザー組立体の外側端部がソケットを有し,マウント
もシザー組立体も中空部を備える管状構造の部材ではなく,マウントが該ソケット
内に受け入れられて,平行な側壁部分が平面状の接触面を形成するものの,その平
行な側壁部分は上端部又は下端部において水平な壁部分で相互に連結されておらず,
たわみを阻止するかどうか不明な点。
b相違点2
本件特許発明1では,中央の枢軸部材が隔置された平行な側壁部分により形成さ
れ前記側壁部分を連結する水平な壁部を有しない中央部ソケットからなり,ルーフ
支持部材の遠位置端部が中央部ソケットに枢動可能に連結されているのに対して,
引用発明では,中央の枢軸部材が,隔置された平行な側壁部分により形成され前記
側壁部分を連結する水平な壁部を有しないソケット有するルーフ支持部材(屋根支
えバー)の端部に枢動可能に結合されている点。
c相違点3
本件特許発明1では,固定マウントの収容部が,支持部材に沿って前記スライド
マウントの方向に向かってすべてのソケットを超えて延び出しているのに対して,
引用発明は,そのような構成を有しない点。
第3当事者の主張
1取消事由に係る原告らの主張
審決には,以下のとおり,(1)本件特許発明1と引用発明との相違点を看過した
誤り(取消事由1),(2)本件特許発明1と引用発明との相違点1ないし3に関す
る容易想到性判断の誤り(取消事由2)があり,これらは,審決の結論に影響を及
ぼすから,審決は取り消されるべきである。
(1)本件特許発明1と引用発明との相違点を看過した誤り(取消事由1)
審決は,「引用発明の,スライドバーの端部の隔置された平行な側壁部分にはサ
イドバー固定軸片が挿入されることから,当該部分はソケットを構成し,サイドバ
ー固定軸片がサイドバーの端部の隔置された平行な側壁部分の間に締り嵌め係合し
ているといえる。」として,本件特許発明1と引用発明が,「前記端縁シザー組立
体の各々と枢軸部材は締り嵌め係合されるように」で一致すると判断した。
しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。
本件特許発明1の「締り嵌め係合」は,本件明細書(甲13の7頁13欄10な
いし48行)の記載から,マウントにおける,シザーバー41,42の幅「W1」
よりも僅かに大きい幅「W2」だけ隔置された平行な側壁部分に,締付ピンを確実
に締め付けて取り付けても,締付ピンの規制された最小の距離によって又は水平な
壁部の補強によりソケット側壁部分の間隔が上記の幅W2に維持されるので,非圧
縮ながら端縁シザー組立体がマウントに確実に固定され,かつ,自由に枢動運動す
ることができる係合状態であることが理解できる。すなわち,本件特許発明1の
「締り嵌め係合」とは,「確実な固定」と「自由な枢動」という相反する事柄を両
立させた係合である。
一方,甲1には,「スライドバーの端部の隔置された平行な側壁部分にはサイド
バー固定軸片が挿入されること」が記載され,スライドバーの端部の隔置された平
行な側壁部分は,少なくともサイドバー固定軸片の幅と略同じかそれよりも大きい
幅を有することは理解できるが,幅のサイズについての詳細は記載されておらず,
平行な側壁部分とサイドバー固定軸片とはボルト及びナットによる圧着が可能な状
態が制限されていないことから(図14),「確実な固定」と「自由な枢動」とい
う相反する事柄を両立させた「締り嵌め係合」が記載されているとはいえない。
したがって,審決は,一致点の認定を誤り,「締り嵌め係合」の相違点を看過し
た誤りがある。
(2)本件特許発明1と引用発明との相違点1ないし3に関する容易想到性判断の
誤り(取消事由2)
ア相違点1について
審決は,相違点1に係る本件特許発明1の構成について,課題の予測性,構成の
周知性,置換の容易性があるとして,引用発明に周知技術を適用することにより,
当該構成に想到することは,当業者が容易になし得る旨判断した。
しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。
(ア)課題の予測性について
審決は,「本件特許発明1は,テント等の骨組構造において,風などの外力によ
るたわみ,ねじりを防止することをその解決すべき課題としている。」とし,「テ
ントのように野外で用いる構造物に風などの外力が作用すること,及びそのための
対策を取る必要があることは,当業者に広く知られた事実である。また,テントに
限らず,展開・収納可能な骨組構造は,その枢軸部や可動部の構造上,風やその他
の外力に対して,骨組みの結合部分の強度を確保する必要があることも,当業者が
広く認識している事項である。」と認めた上,甲4,甲5,甲7ないし甲9に見ら
れる「骨組みの結合部分の枢軸構造は,どれも『隔置された平行な側壁部分により
形成されたソケットを有し,その平行な向き合った側壁部分の間に締り嵌め係合さ
れるようにソケット内に受け入れられる長方形横断面の外側端部を有し,それによ
り前記の平行な側壁部分と共に平面状の接触面を形成し』ているが,このような構
造が,・・・側壁部分が1枚の枢軸構造に比べて機械的強度,特にたわみやねじり
に対する強度が優れていることは,当業者であれば容易に理解できる」と判断した。
しかし,本件明細書(甲13の3頁5欄18ないし28行)の記載によれば,本
件特許発明1の課題は,横方向のたわみ,ねじりを阻止するだけでなく,「自由に
枢動することを前提として」たわみを解決することである。一方,甲1,甲2,甲
4,甲5,甲7ないし甲9においては,「自由に枢動することを前提として」たわ
みを解決しなければならないとする課題について,示唆も開示もされていない。
また,本件特許発明1に係る折り畳みテントは地面(支持面)に固定されるもの
であるから,風によるキャノピーのたわみやねじりが考えられ,キャノピーのたわ
みはシザー組立体或いは支柱とシザー組立体の連結部に付加され,これらが損傷し
て,その場合,キャノピーは折り畳むことができず,携行することもできなくなる。
一方,甲4,甲8及び甲9記載のポータブルなベンチや椅子は,地面に固定される
ものではなく,通常,強風が吹いたときは撤去できるから(甲16の1,2),風
によるたわみやねじりを考慮する必要がなく,使用者による荷重を如何に受け止め
るかという観点から骨組みの結合部分の構造が補強されたにすぎない。そのため,
甲4,甲8及び甲9には,風に関する外力については記載及び示唆がない。加えて,
甲5の仮設建物は,本件特許発明1のキャノピー構造体のように人の自由な出入り
を許容させるためにシザー組立体と地面(支持面)との間に障害物のない領域を確
保するものではなく,むしろ密閉された内部空間を形成することを目的とした構造
物であり,多数の柱(支持部材)を短間隔で備えるため,シザー組立体と柱との間
の枢動連結構造の強化は考えられていない。甲7のテントは,シザー組立体の外側
側面全体を覆う大面積のキャノピーカバーマージンを介して受ける風圧等がもたら
す負荷に相当するような作用は想定されていない。そうすると,甲4,甲5,甲7
ないし甲9の記載から,風によるたわみやねじりを阻止するために骨組みの結合部
分の強度を確保する必要があることを予見することはできない。
(イ)構成の周知性について
審決は,「骨組構造のたわみやねじりに対する強度を向上させるための枢軸構造
として『隔置された平行な側壁部分により形成されたソケットを有し,その平行な
向き合った側壁部分の間に締り嵌め係合されるようにソケット内に受け入れられる
長方形横断面の外側端部を有し,それにより前記の平行な側壁部分と共に平面状の
接触面を形成』し,しかも『ソケットの平行な側壁部分の一端を水平な壁部で相互
に連結』することは,・・・当業者によく知られた事項である。」と判断した。
しかし,甲4,甲5,甲7ないし甲9には,締り嵌め係合について示唆及び開示
はなされておらず,また,骨組み構造のたわみやねじりに対する強度を向上するた
めの枢軸構造として「ソケットの平行な側壁部分の一端を水平な壁部で相互に連
結」された構造は開示されていない。
すなわち,甲4では,「確実な固定」と「自由な枢動」という相反する事柄を両
立させた係合を実現させるような構造に関して記載されておらず,突起部を受け入
れるために軸受け盤3は柔軟であると考えることが自然であり,少なくともテント
を補強できるような「確実な固定」については実現されていないから,締り嵌め係
合について示唆及び開示されていない。また,軸受け盤3上に側壁が立設されてい
る構造が開示されているが,この構成は,軸受け盤3が垂直方向の力の分散を考慮
し支持面(地面)との接触面積を確保するためのものにすぎず,横方向のたわみ及
びねじりを阻止することを目的としていないから,骨組み構造のたわみやねじりに
対する強度を向上されるための枢軸構造として「ソケットの平行な側壁部分の一端
を水平な壁部で相互に連結」された構造は開示されていない。
甲5では,取付プレート9に取付ボルト10にて接続することしか記載されてお
らず,締り嵌め係合について示唆及び開示されていない。また,取付プレートに立
設された側壁間を連結する構造は示唆及び記載されていないから,骨組み構造のた
わみやねじりに対する強度を向上するための枢軸構造として「ソケットの平行な側
壁部分の一端を水平な壁部で相互に連結」された構造は開示されていない。
甲7では,カップリング部品がブラケットの離間した端部に受け入れられること,
及び,ピボットピン30によってカップリング部品がブラケットに回動可能に固着
されるとしか記載されておらず,締める構成については記載されていないから,締
り嵌め係合について示唆及び開示されていない。また,ブラケットの水平断面がC
字型となっていると記載されているが,骨組み構造のたわみやねじりに対する強度
を向上するための枢軸構造として「ソケットの平行な側壁部分の一端を水平な壁部
で相互に連結」された構造は開示されていない。
甲8では,脚32,33が平行な向き合った側壁部分を有する部材の間にピンに
より枢支されているが,圧着・非圧着が不明なため,締り嵌め係合について示唆及
び開示されていない。また,側壁部分の上端部において水平な壁部分によって相互
に連結されているが,このような構成は,垂直方向の荷重を3つの脚に適切に分散
させるためのものであって風による外力に抗する構造ではないから,骨組み構造の
たわみやねじりに対する強度を向上するための枢軸構造として「ソケットの平行な
側壁部分の一端を水平な壁部で相互に連結」された構造は開示されていない。
甲9では,かなめ金具8a,8b,鈎型金具4aが向き合った側壁部分を形成し
ているが,圧着・非圧着が不明なため,締り嵌め係合について示唆及び開示されて
いない。また,側壁間を連結する構造は示唆及び記載されていないから,骨組み構
造のたわみやねじりに対する強度を向上するための枢軸構造として「ソケットの平
行な側壁部分の一端を水平な壁部で相互に連結」された構造は開示されていない。
(ウ)置換の容易性について
審決は,「互いに対応する形状を有し,組み合わされることにより係合される2
つの部材は,お互いに補完する関係にあり,両部材の配置を任意に交換できるのが
普通である。本件特許発明1と引用発明においても,マウントと端縁シザー組立体
の外側端部とは,ともにこのような関係にあるから,これらの部材の対応する構成
を入れ替えることにより本件特許発明1に係る構成を採用することは,当業者が容
易になし得る事項である。」と判断した。
進歩性の判断において,当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技
術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろう
という推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するために
したはずであるという示唆等が存在することが必要であるが,本件において,当業
者が,引用発明から出発して,本件特許発明1の構成に至る複数の設計変更を試み
た可能性があるとしても,甲1において,両部材の配置を任意に交換するという動
機付けは示されていない。
また,引用発明は,シザーバーの端部に二枚の平行な板体が取り付けられ,この
二枚の平行な板体の間に,支柱に装着された連結用のマウントから延びる一枚の板
状のタブが,挿入されボルト・ナットで圧縮結合する構造となっており,マウント
のタブの破断により,シザー組立体を故障から保護していたという技術的なメリッ
トがある上,マウントは,シザー組立体と比較して安価であるから(甲18),引
用発明を変形して本件特許発明1の構成にする動機付けはない。
さらに,審決では,変形された引用発明において,側壁部分が水平な壁部で相互
に連結される構成を採用することを想定しているが,仮に引用発明において変形す
ることが想到できる場合であっても,側壁部分が水平な壁部で相互に連結される構
成に置換することは困難である。なぜなら,側壁部分が水平な壁部で相互に連結さ
れる構成が示唆されているのは,甲4及び甲8に記載のポータブルなベンチや椅子
のみであり,折り畳みテントとポータブルなベンチや椅子とでは技術分野が異なり,
用途及び目的の違いから異なる設計思想が要求されるからである(国際特許分類に
おいてセクションも異なる。)。すなわち,折り畳みテントのソケットは,持続的
な強風による負荷の増大に耐える強度を有しつつ,空中で支持可能に軽量化されて
いなければならないため,「ソケットの平行な側壁部分の一端を水平な壁部で相互
に連結」された構造を採用し,マウントもシザー組立体も中空構造となっている。
これに対し,ポータブルなベンチや椅子等は,構造体を破壊するほどの横風を受け
ることがなく,クロスバーが接地して連結構造の負荷を分散させることができるた
め(甲16の1ないし3),構造体を空中で支持するためにクロスバーを軽量化さ
せることは想定されず,使用者の荷重を受け止める構成を持っていれば足り,むし
ろ携帯性が重要である。そうすると,キャノピー構造体(折り畳み式テント)の当
業者は,引用発明の構造から出発して,ポータブルなベンチや椅子の構成を参考と
することはない。
加えて,「組立体の外側端部を嵌め込む二つの側壁部」は本件特許発明1の重要
な部材であり,それらを連結する部材も本件特許発明1の特徴点であって,水平壁
があることによって「締り嵌め係合」の精度が向上することもあるから,水平壁は,
設計事項とはいえない。
(エ)以上のとおり,課題の予測性,構成の周知性及び置換の容易性に関する審決
の判断は誤りであり,相違点1に関する審決の容易想到性判断は誤りである。
イ相違点2について
審決は,本件特許発明1の中央部のソケットとルーフ支持部材及び引用発明の屋
根フレーム固定軸片と屋根支えバーは,互いに対応する形状を有し,組み合わされ
ることにより係合され,お互いに補完する関係にあるから,「これらの部材の対応
する構成を入れ替えることにより相違点2に係る構成を採用することは,当業者が
容易になし得る」旨判断した。
しかし,「水平な壁部」が選択的にソケット側壁部分を連結する構造は,証拠に
記載されておらず,従来技術文献において,当業者がそうしたであろうという動機
付けも示されていない。本件特許発明1は,このような選択的な補強構造により,
キャノピーカバーマージンに接しないために強い負荷が発生することが想定されな
いルーフ支持部材の遠位置端部を受容するソケットは構造強化を省略して,ルーフ
支持部材の枢動範囲を広げることができる。
したがって,相違点2に関する審決の容易想到性判断は誤りである。
ウ相違点3について
審決は,相違点3について,「ブラケット部材の形状や厚み等をどのようなもの
にするかは,用いる各部材との関係や用途,求められる強度等を総合的に参酌して,
当業者が適宜決定しうる事項である」旨判断した。
しかし,本件特許発明1のマウントにおいては,断面矩形状の中空部が形成され
た収容部が断面矩形状の支持部材を収納し,かつ互いに直交する一対のソケットの
側壁部分が主要部の中空部を囲う側壁と平行であるとともに,収容部が支持部材に
沿ってスライドマウントの方向に向かって全てのソケットを超えて延び出している
ことにより,支持面に係合された支持部材に回転不能に取り付けられ,キャノピー
カバーのマージンを介してシザー組立体が受ける風圧による歪みを強固に制止する
構造となっている。本件特許発明1の課題に関連する構成について,作用効果を検
討することなく設計事項と判断することは誤りである。
したがって,相違点3に関する審決の容易想到性判断は誤りである。
(3)以上のとおり,審決は,相違点1ないし3に関する容易想到性判断を誤った
ものである。
2被告の反論
審決には,以下のとおり,取り消されるべき違法はない。
(1)取消事由1(本件特許発明1と引用発明との相違点を看過した誤り)に対し
原告らは,本件特許発明1の「締り嵌め係合」とは,「確実な固定」と「自由な
枢動」という相反する事柄を両立させた係合であるが,甲1には,そのような「締
り嵌め係合」が記載されているとはいえないとして,審決は一致点の認定を誤り,
相違点である「締り嵌め係合」の点を看過した誤りがある旨主張する。
しかし,折り畳み可能な骨組構造体の枢動構造においては,その機能上,当然に,
「前記二以上の部材が前記軸を中心に相対的に枢動可能であること。」(自由な枢
動)及び「前記二以上の部材は,骨組構造体が組み立てられた状態となっていると
きの状態における『がたつき』ができるだけ小さいこと。」(確実な固定)が要求
されるから,「確実な固定」と「自由な枢動」という相反する事柄を両立させた係
合は,当業者にとって基本的な技術常識である。
また,甲1の図14,15,18には,サイドバー(5)の端部に設けられたソ
ケット状凹部の平行な向き合った側壁部分に対し,サイドバー固定軸片(32)
(42)の長方形横断面の外側端部が相対的に自由に枢動運動可能に嵌め込まれ,
ボルト及びナットにより枢動可能に固定されている構造が図示されている。
そして,ボルトの軸の先端部分のみに雄ネジが形成されることにより,ボルト及
びナットによる連結点の圧着を防止する技術は周知であり(甲3のFIG.5),
リベット(丸棒の両端に頭が形成されたもの)による連結でも,ワッシャーを加え
ることにより,圧着を防止しながら連結点が角回転できるようにする構成が採用さ
れることは,当業者は容易に理解できる。そうすると,甲1には,「確実な固定」
と「自由な枢動」という相反する事柄を両立させた係合が開示されているといえる。
したがって,審決には,一致点の認定に誤りはなく,相違点の看過もない。
(2)取消事由2(本件特許発明1と引用発明との相違点1ないし3に関する容易
想到性判断の誤り)に対し
ア相違点1について
原告らは,審決における課題の予測性,構成の周知性及び置換の容易性について
の判断には誤りがある旨主張するが,原告らの主張は,以下のとおり,いずれも失
当であり,相違点1に関する審決の容易想到性判断に誤りはない。
(ア)課題の予測性について
折り畳み可能で,展開可能な骨組構造体は,「自由に枢動すること」を前提とし
て成り立つものであるから,審決による「本件特許発明1は,テント等の骨組構造
において,風などの外力によるたわみ,ねじりを阻止することをその解決すべき課
題としている。」との判断も「自由に枢動することを前提として」たわみを解決す
ることを課題として認定した趣旨と解すべきである。
一方,引用発明の課題解決手段は,家屋結構が,風による外力を受けても安定し
ながら,迅速に伸張及び収縮できるようにしたものであるから,甲1には,伸張し
た状態で風による外力を受けても安定しながら家屋結構(テント)として機能する
ための前提として,結合部分に関し「自由な枢動と(確実な)固定という相反する
課題」が示されている。また,引用発明の構成からも,自由な枢動を確保しつつ,
「シザー組立体の外側端部がソケットを有し,マウントが該ソケット内に受け入れ
られて,平行な側壁部分が平面状の接触面を形成」することによって,シザー組立
体のたわみに対してマウントの接触面が耐える作用が発揮されることが明白である。
したがって,甲1には,本件特許発明1の課題が示唆されていると認めるべきで
あり,課題の予測性に関する審決の判断に誤りはない。
(イ)構成の周知性について
以下のとおり,甲4及び甲8には「締り嵌め係合」及び「ソケットの平行な側壁
部分の一端を水平な壁部で相互に連結された構造」(「水平な壁部での連結構
造」)が開示されており,甲5,甲7及び甲9には「締り嵌め係合」が,それぞれ
開示されている。なお,原告らは,上記各甲号証における「締り嵌め係合」につい
て,圧着か非圧着か不明であるとの主張をするが,「自由な枢動」を前提とする以
上,それらの「締り嵌め係合」が「非圧着」のものであることは当業者にとって容
易に理解できる事項である。
a甲4(折畳み式ベンチ)について
甲4の折畳み式ベンチの軸受け盤は,「締り嵌め係合」において要求される「確
実な固定」の要件は充たしており,それを折り畳み式テントに適用しようとする場
合には,継ぎ手に係る基礎的な他の周知技術を適用して容易に想到できる。
また,甲4の図2~図4には「上部軸受け盤3」と「下部軸受け盤3」について,
「水平な壁部での連結構造」が示されている。「下部軸受け盤3」に「水平な壁」
が設けられた目的としては,垂直方向の力の分散を考慮し支持面(地面)との接触
面積を確保するという点だけでなく,軸受け盤における軸受けWの平行な側壁の強
度の向上という点も認められる。そして,「上部軸受け盤3」に水平な壁が設けら
れているのは,下部軸受け盤3と同一部材を使用して部品の種類を減らすためだけ
でなく,軸受け盤における軸受けWの平行な側壁について,その強度の向上を図る
ためでもある。これら複数の目的は,排他的な関係ではなく,並立する関係にあり,
いずれも当業者が容易に理解できる。
b甲5(折畳み仮設建物)について
甲5に「締り嵌め係合」が開示されていることは,当業者が容易に理解できる。
c甲7(アンブレラテント)について
甲7に「締り嵌め係合」が開示されていることは,当業者が容易に理解できる。
d甲8(折畳み式腰掛け)について
甲8について,「確実な固定」と「自由な枢動」という相反する事柄を両立させ
た非圧着の係合,すなわち「締り嵌め係合」が開示されていることは,当業者が容
易に理解できる。
また,甲8において,側壁部分の上端部が水平な壁部分により相互に連結されて
いるのは,垂直方向の荷重を3つの脚に適切に分散させるためだけでなく,側壁部
分について強度の向上を図るためでもある。そして,これら複数の目的は,排他的
な関係ではなく,並立する関係にあり,いずれも当業者が容易に理解できる。
e甲9(折畳み椅子)について
甲9について,「確実な固定」と「自由な枢動」という相反する事柄を両立させ
た非圧着の係合,すなわち「締り嵌め係合」が開示されていることは,当業者が容
易に理解できる。
(ウ)置換の容易性について
原告らは,①甲1には,両部材の配置を任意に交換するという動機付けは示され
ていない,②引用発明の構造は,マウントのタブの破断により,シザー組立体を故
障から保護する技術的なメリットがある上,マウントは,シザー組立体と比較して
安価であるから,引用発明を変形して本件特許発明1の構成にする動機付けはない,
③側壁部分が水平な壁部で相互に連結される構成が示唆されているのは,甲4及び
甲8記載のポータブルなベンチや椅子は,折り畳みテントと技術分野が異なり,用
途及び目的の違いから異なる設計思想が要求されるから,仮に引用発明において変
形することが想到できる場合であっても,側壁部分が水平な壁部で相互に連結され
る構成に置換することは困難であると主張する。
しかし,原告らの主張は,以下のとおり失当である。
a上記①について
引用発明は,家屋結構が,風による外力を受けても安定しながら,迅速に伸張及
び収縮できるようにしたことを課題解決手段とするが,同時に,伸張した状態で家
屋結構(テント)として機能するための前提として,結合部分に関し「自由な枢動
と固定という相反する課題」を有するといえる。そうすると,引用発明に接した当
業者にとって,「剪断および曲げモーメントに耐える」作用効果を向上させるため
に(それを「さらなる」作用効果を有する構成とするために),甲1の第6図及び
第13図に示されている締り嵌め係合という技術思想を支柱の各マウントとの結合
部分にどのように適用するか,すなわち,ソケットを有する側をどちら側にするか
という課題は,当然に検討すべき事項である。
したがって,甲1において,両部材の配置を任意に交換するという動機付けは十
分に存在する。
b上記②について
原告らは,マウント部分を犠牲にして「シザー組立体を保護すること」が引用発
明の解決課題と解するようであるが,マウントのタブが破断した場合もテントとし
ての機能や安全性が損なわれるから,技術的にも経済的にもシザー組立体が破損し
た場合との優劣をつけることはできない。原告らの主張は,折り畳み式テント等の
組立式骨組構造体における「連結部分を補強すること」という本質的な課題を無視
するものである。甲1に,本件特許発明1の課題を想起することの阻害的な要因が
あるとはいえない。
c上記③について
折り畳み可能な骨組構造体の技術分野における当業者にとって,甲4及び甲8に
記載された水平な壁部での連結構造を,同一の技術分野に属する引用発明に適用す
るのは容易である。仮に,本件特許発明1に係る折り畳み可能なテントの骨組構造
体が属する技術分野が,同骨組構造体そのものの技術分野に制限されるとしても,
当業者は,折り畳み可能な椅子の骨組構造体に関する技術知識を有していたと合理
的に判断でき,その技術知識に基づけば,甲4及び甲8記載の水平な壁部での連結
構造を引用発明に適用するのは容易である。
むしろ,「側壁部分が水平な壁部で相互に連結される構成」は,たわみを阻止す
るという作用効果を発揮させる上で特段の意味を持つとはいえず,強度の向上を図
るため当業者により適宜採用される設計事項にすぎないというべきである。
本件特許発明1の構成によるたわみ阻止の程度が完全な阻止である場合など,阻
止の程度において顕著な差が認められる場合には,置換容易性が認められないこと
もあろうが,本件明細書の記載から判断する限り,そのような顕著な作用効果があ
るとはいえない。
(エ)以上のとおり,課題の予測性,構成の周知性及び置換の容易性の各観点から,
引用発明から出発点として,周知技術を適用することによって,相違点1に係る本
件特許発明1の構成に想到することは容易であったとする審決の結論に誤りはない。
イ相違点2について
原告らは,「水平な壁部」が選択的にソケット側壁部分を連結する構造は,いず
れの証拠にも記載されておらず,従来技術文献に出願当時の当業者がそうしたであ
ろうという動機付けも示されていないとして,相違点2に関する審決の容易想到性
判断は誤りである旨主張する。
しかし,相違点2の構成は,原告らが「選択的な補強構造」と称して強調するよ
うなものではなく,中央のソケットに対するルーフ支持部材の枢動範囲を上下に広
く確保する必要上から必然的にそうなったものにすぎない。
また,相違点2による効果は,技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果
を有するものでもない。
ウ相違点3について
原告らは,本件特許発明1の課題に関連する構成について,作用効果を検討する
ことなく設計事項と判断することは誤りであるとして,相違点3に関する審決の容
易想到性判断は誤りである旨主張する。
しかし,収容部と支持部材のような形状が合ったものを嵌め合わせる場合に,両
者の接触面積が広いほど,両者の結合の程度が大きくなることは技術常識である。
相違点3の構成は,収容部と支持部材の結合の程度を大きくするために,収容部
が,支持部材に沿ってスライドマウントの方向に向かって全てのソケットを超えて
延び出しているようにすることにより,両者の接触面積が広くなるようにしたもの
であり,技術常識を用いた設計事項であって,その効果も当然予測されるものにす
ぎないから,そのような構成を採用することに阻害要因はない。
原告らは,「支持面に係合された支持部材に回転不能に取り付けられ,キャノピ
ーカバーのマージンを介してシザー組立体が受ける風圧による歪みを強固に制止す
る構造となっている」旨主張するが,技術水準から予測される範囲を超えた顕著な
作用効果が存在していることは示されていない。
したがって,相違点3に関する審決の容易想到性判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,以下のとおり,原告ら主張の取消事由2に理由があり,審決を取り
消すべきものと判断する。
1取消事由2(本件特許発明1と引用発明との相違点1ないし3に関する容易
想到性判断の誤り)について
(1)相違点1について
原告らは,審決における課題の予測性,構成の周知性及び置換の容易性について
の判断には誤りがある旨主張するので,検討する。
ア認定事実
(ア)本件明細書には,次の記載がある(甲13,甲24,弁論の全趣旨)。
a本件訂正後の請求項1の記載は,上記第2の2のとおりである。
b発明の詳細な説明(3頁)
本発明は,特に,シザー組立体を相互に連結しかつキャノピー構造体のその他の
構成部分と連結するようにシザー組立体の端部を捕獲するソケットを有する非圧縮
性のマウントの形態の構造用装置に関する。これらのマウントは,自由に枢動する
と共に横方向のたわみおよびねじりによるたわみを阻止するように構成されている。
従って,本発明は,一般に,一体構成のキャノピー装置における枢動する構造用部
材の取付けに関する。・・・
米国特許・・・の明細書に示された構造体において経験された問題は,隣接した
支持部材の間に延びる端縁シザー組立体がそれらの安定性を低下させる傾向がある
横方向の力をしばしば受けることである。シザー組立体が相互にかつ隅の支持部材
と連結されている場合には,もしも締め付けられれば,シザーの作用を阻止し,そ
して横方向にたわむときに剪断力をうける。連結ボルトが過大な横方向のたわみに
より曲り,または破断することがしばしば発見された。・・・
c発明の要約(3ないし5頁)
本発明の一つの目的は,トラス組立体のシザー要素のための連結装置であって,
シザー構成要素を自由に枢動させると共に,シザー要素の横方向の変形およびねじ
りによる変形を阻止するように非圧縮性の連結装置を提供することにある。
本発明のさらに別の一つの目的は,構造体を構成する要素を相互に連結するため
の新規の有用なマウントを設け,そしてさらに複雑な構造体に統合することができ
る最小限の異なる部品を有する連結装置を使用することにより,折畳み可能なキャ
ノピー構造体を簡単にすることにある。
本発明のさらに一つの目的は,構造上の結合性または強度を有意に損なうことな
く重量がより軽い隅の支持部材およびシザーバーを使用することができるキャノピ
ーのための折畳み可能でありかつ展開可能な骨組構造体を提供することにある。・
・・
複数個の端縁シザー組立体が展開可能な骨組のためのトラス部材を構成し,一つ
の端縁シザー組立体が支持部材のうちの隣接する支持部材を相互に連結している。
各々の端縁シザー組立体は,1対の外側上端部と,1対の外側下端部とを有し,そ
して端縁シザー組立体を直立支持部材に留めるために,複数個の新規のマウントが
該支持部材に配置されている。この目的のために,マウントの各々には,隔置され
た向き合う側壁部分によりソケットが形成されており,それにより端縁シザー組立
体の外側端部を向き合う側壁部分の間に締り嵌め係合するようにソケットのそれぞ
れ内に捕獲することができる。締付ピンが各々の端縁シザー組立体の各々の外側端
部をそのそれぞれのソケット内に枢動可能に固定している。
これらのマウントは,端縁シザー組立体が開閉するように作用して,それにより
骨組構造体を展開状態と収縮状態との間に移動することができるように,相互に相
対移動可能である。・・・ソケットおよびマウントは,シザーユニットを構成する
シザーバーのための枢動連結部を提供する。シザーユニットは,圧縮付属具でない
シザー組立体を備えている。それにも拘らず,側壁部は,端縁シザー組立体の外側
端部,従って,シザー組立体自体の横方向のたわみおよびねじりによるたわみを阻
止する作用をする。・・・
d図面の簡単な説明(5頁)
・・・第4(a)図は本発明の実施例によるシザーユニットを示した側面図,そ
して第4(b)図はシザーまたはトラス組立体を形成するために端と端とをつなぐ
関係に相互に連結された第4(a)図の2個のシザーユニットを示した側面図,・
・・第8図は隅の直立した支持部材の上側部分に使用される本発明の実施例による
固定マウントの斜視図,・・・第10図はそれぞれのシザー組立体の2個のシザー
要素が取り付けられた・・・固定マウントの底面平面図・・・
e好ましい実施例の詳細な説明(7頁)
・・・(第4(a)図および第4(b)図に示してある)それぞれのシザーバー
41および42の端部は,第10図に示したように,ソケット120内で相対的に自由に
枢動運動するために締り嵌めかみ合い係合するサイズに形成されている。この締り
嵌めされた構造のために,側壁部121および122は,それらのそれぞれのシザーバー
41,42の横方向のたわみおよび部分的なたわみを阻止する。・・・
(判決注第4(a)図,第4(b)図,第8図及び第10図は,別紙1のとおり
である。)
(イ)甲1には,次の記載がある。
「1.考案の名称伸縮瞬間わく組立家屋結構」(明細書1頁)
「サイドバーの巧妙な設計により交互に交叉式または取揃支え式を組合わせ,必要
により入口のところを揃えて上昇し,その上昇面をして単面から四面全部に及び,
製造時に先ず人々の出入り及び本考案の適用対象をプラスするように設定すること
ができる,それには次のような優点がある:
1.一体成型で,運搬携帯に便利。
2.わく組立と折叠み操作が簡易で省時省力。・・・
4.任意に移位可能で定位できる。
5.風に吹き倒されるおそれがない。」(明細書5,6頁)
「第4図で示すように,本考案は数本の主支柱(1),サイドバー(5),下活動
支えバー軸体(3),上固定支えバー軸体(4),屋根支えバー(7),槽鉄関節
(6),屋根フレーム押上バー(9)及び屋根受梁軸(8)により組成される,主
支柱(1)は角型または円型柱体で,上端に一つの上止め孔(12)を設けて活動
挿ピン(13)を主体(1)の上止め孔に挿入するのに提供し,並びにそれにより
下活動支えバー軸体(3)を滑り下りないように固定する(第16図参照),その
主支柱(1)の下端に数ヶの下止め孔(11)を設け,その主支柱(1)の空心の
ところに一本の伸縮支柱(2)を設けている,上方も同じように数ヶの止め孔(2
2)を設け,その止め孔の作用は伸縮支柱(2)が主支柱(1)内から適当な長さ
に伸出した時に活動挿ピンを挿入して主支体(1)上の下止め孔(11)に固定し,
全体の高度を上昇し並びに固定する,その伸縮支柱(2)下端は一つの底台片(2
1)を溶接固定して全体の安定を強化している」(明細書6,7頁)
「主支柱(1)上にはめている下活動支えバー軸体(3)は一本の角型または円型
の空心柱(第15,16図)で兩端は開き口であり,下端には二つの下サイドバー
固定軸片(32)を設け,その兩軸はサイドバー(5)の一端と互いに結合し,別
途にその兩軸片(32)夾角の中央上方に一つの屋根押上バー固定軸片(31)を
設けている,その軸片と屋根押上バーの一端を結合し,その下活動支えバー軸体
(3)の中間の空心部分を主支柱(1)上にはめて,サイドバー(5)の伸張及び
収縮が上下滑動をなすように配慮し,本体が最大まで伸張した時に活動挿ピン(1
3)を支柱上の止め孔(12)まで挿入して,而して下活動支えバー軸体(3)を
くい止め固定し,並びに下活動支えバー軸体(3)が滑り下ち,全体が変形または
収縮・・・するのを防止している;」(明細書7,8頁)
「屋根部分は屋根支えバー(7a)(7b)及び屋根フレーム押上バー(9)で組
成し,屋根支えバー(7a)(7b)は一つの槽鉄(6)で連結して,前後端をそ
れぞれ中心の屋根梁受軸(8)の屋根フレーム固定軸片(81)に固定している,
他端は上固定支えバー軸体(4)の屋根支えバー固定軸片(41)上に固定され,
その屋根梁受軸(8)の中心は円型またはその他の形状で,その周囲に数個の屋根
支軸固定軸片(81)を設け(第18図参照)ている;」(明細書9頁)
「4.図面の詳細な説明
第1図は本考案実施例にテントをかぶせた立体外観図。
第2図は本考案実施例に屋根だけをはめた立体外観図。
第3図は本考案実施例の一部分のサイドバーを取揃えて上昇し,屋根をはめた立
体外観図。
第4図は本考案実施例のサイドバー全部が交叉式で組合せた展開立体外観図。
第5図は本考案実施例のサイドバー全部が取揃え上昇式で組合せた展開立体外観
図。
第6図は本考案実施例のサイドバーを交叉と取揃え上昇式で混合組成した展開立
体外観図。・・・
第12図は本考案実施例の第11図における伸縮支柱活動挿ピンの部分解剖面立
体図。・・・
第14図は本考案実施例の主支柱上方に固定された固定フレーム捻り軸の立体外
観図。
第15図は本考案実施例を主支柱上の下活動フレーム捻り軸にはめた立体外観図。
第16図は本考案実施例の主支柱上活動挿ピン及び下活動フレーム捻り軸分解立
体外観図。
第17図は本考案実施例第16図の中,主柱の活動挿ピン及び下活動フレーム捻
り軸組合せ立体外観図。
第18図は本考案実施例第4,5,6,10図の中屋根フレームの中心を梁軸受
けに連接した立体外観図。」(明細書12ないし14頁)
(判決注第1図ないし第6図,第12図,第14図ないし第18図は,別紙2の
とおりである。)
(ウ)甲4,甲5,甲7ないし甲9には,次の記載がある。
a甲4
「1.考案の名称折畳み式ベンチ」(明細書1頁)
「本考案は数人で腰掛けせられるベンチを横方向にワンタツチで開展折畳みせられ
ると共に体積も最小限に縮小せられて携行収蔵に至便であり然も部材の種類が少な
く且組立て作製も容易にして安価堅牢なこの種折畳み式ベンチを提供するものであ
る。」(明細書2頁)
「即ち実施例の図面に示したように2本の同径等長の金属製脚管1,2の各中央部
を開閉自在に枢着Pしたクロス脚Xの多数本を設け,且これらクロス脚を順次横平
行に配すると共に各クロス脚Xの前後端間毎にそれぞれクロス脚Xを介設してその
交錯状に集交した各脚管1,2の上下端口に,中央部に円形の挿孔Rを穿ち且該挿
孔の片面外周に平面巴状に各軸受けWを立設した一体のナイロン又は合成樹脂製軸
受け盤3における対角的に該当する各軸受けWに介装軸支tされたナイロン又は合
成樹脂製の各軸継ぎ手4の基部4′を嵌着し然して後列側の上下各軸受け盤3の挿
孔Rに各長尺な背もたれ管5を串通してその各下端を各下部軸受け盤3の挿孔Rに
固着し又前列左右側端の上下各軸受け盤3の挿孔Rには,縮小極限においてクロス
脚Xの所要開き角度一杯即ち腰掛け高さ相応の高さとなる各伸縮管6の内管a上端
と外管b下端をそれぞれ固着してベンチの骨格を構成し,然して各クロス脚X上端
の軸受け盤3の上面に細幅長尺の座布7の長手両端を順次止め金Tにて着脱自在に
取着けすると共に各背もたれ管5の上端には細幅長尺の背もたれ布8に等間隔に縫
着した皮製等の強靱な各袋筒部8′を抜き差し自在に嵌着して成るものである。」
(明細書3ないし4頁)
「従つて本案は携行収蔵に至便なことは勿論であるが更に本案においては前列両側
端の各上下軸受け盤3間にはクロス脚Xの所要開き角度と高さを縮小限度とする各
伸縮脚6を介設したので座布7面を腰掛けに快適な程よい凹曲面に保持せしめるの
と緊張による該座布の寿命を短かゝらしめることがない利点とベンチ両側を安定的
に支持し傾倒破損を防止する効果を具有するものである。」(明細書5頁)
「4.図面の簡単な説明
・・・第4図は軸受け盤の拡大図であって・・・(B)は同上の側面図・・・で
ある。」(明細書6頁)(判決注第4図(B)は別紙3(1)のとおりである。)
b甲5
「(1)発明の名称折畳み仮設建物」(明細書1頁)
「・・・第3図の6は外柱として7の中柱を外柱内部に差し込み土台及び
桁合掌等を9の取付プレートに10の取付ボルトにて接続し8の芯柱を
7の中柱内部を通して建物上下(土台部分小屋部分桁部分)を組合せる
又8の芯柱は6の外柱最上部及び最下部の各内部に固定金具を設け芯柱が外
柱最上部以上又は最下部以下に抜け出さないようにする・・・第4図は合掌
及び角合掌棟木取付プレート第5図は小屋伸縮及び上下作動部分第4
図の取付プレートを正方形建物の場合は上下に各1箇づゝ計2箇を使用長方形
建物の場合には上下に各2箇づゝ計4箇を使用しこれに合掌及び角合掌棟木
等を接続し小屋構造とする」(明細書2頁左上欄~右上欄)
「なほ第7図に示した開き止め装置を小屋中央部に取り付け小屋部分の下降を
止めると同時に小屋全体の強度をこれにてさゝえる」(明細書2頁左下欄)
(判決注第3図,第4図及び第7図は別紙3(2)のとおりである。)
c甲7
「1.発明の名称アンブレラテント」(明細書1頁)
「各リブ22の端部の中間にはピボツトブラケツト26が固着されている。第1
1図にもつともよく示されているように,このブラケツトは断面がほぼC字形であ
る。ブラケツトの閉端はリブの中間部分を受入れるために縦グループを備えている。
リブは前述したねじと同様にねじのような手段でブラケツトに固着されている。ブ
ラケツトの離間した端部はそれらの間にカプリング部品の外部部分28を自由に受
入れている。ブラケツトの離間した端部とカプリング部品にある整合開口はピボツ
トピン30を受入れ,それによりカプリング部品はブラケツトに回動可能に固着
されている。」(明細書4頁右上欄)
「4.図面の簡単な説明
・・・第6図は・・・組立テントの中心の部分垂直断面図である。」(明細書1
0頁左上欄~右上欄)
(判決注第6図は別紙3(3)のとおりである。)
d甲8
「1.考案の名称折り畳み式腰掛け」(明細書1頁)
「第1図に示す使用状態においては,・・・脚部13は,上記筒体11の下部でこ
の筒体11の内部に上下方向に摺動可能に嵌挿された脚部保持体31と,この脚部
保持体31に対して半径方向外側に互いに開脚可能に例えば図示のようにピンによ
り枢支された三本の脚32,33,34と,・・・を含んでいる。」(明細書1
0,11頁)
「第5図は本考案による他の実施例を示しており,この折り畳み式腰掛け40は,
第1図の実施例と同様に・・・構成されている。」(明細書15頁)
「脚部43は,筒体41の下部で筒体41の内部に上下方向に摺動可能に嵌挿され
・・・た脚部保持体47と,この脚部保持体47に対して半径方向外側に互いに開
脚可能に例えば図示のようにピンにより枢支された三本の脚32,33,34とを
含んでいる。」(明細書17頁)
「・・・本考案によれば,より一層軽量且つ小型に構成され,これにより簡便に携
帯可能である,極めて優れた折り畳み式腰掛けが提供され得ることとなる。」(明
細書23頁)
(判決注第1図及び第7図は別紙3(4)のとおりである。)
e甲9
「1.考案の名称折畳み椅子」(明細書1頁)
「[考案が解決しようとする課題]
・・・本考案の目的は,組立てた状態では機械的強度及び安定度が良く,また折
畳んだ状態では鞄やケース等に容易に収納し易いように,小型に束ねることができ
る折畳み椅子を提供することにある。」(明細書2頁)
「第3図は・・・かなめ金具8a,8b,第4図は鈎型金具4aを示している。・
・・かなめ金具8a,8bは左右対称の2つの金具M1とM2を組合わせて構成さ
れ,この2つの金具M1とM2は孔P1を通る枢軸7a,7b及び孔P2,P3を
通る取付用ピン11によって相互に組合わされている。また,鈎型金具4a及び4
bも第4図に示すように,左右対称の2つの金具N1とN2を組合わせて構成され,
これらの2つの金具N1とN2は孔S1を通る軸12及び孔S2を通る取付用ピン
11によって相互に結合されている。」(明細書5頁)
(判決注第1図,第3図及び第4図は別紙3(5)のとおりである。)
イ判断
上記ア(ア)認定の事実によれば,本件特許発明1は,特に,シザー組立体を相互
に連結しかつシザー組立体の端部を捕獲するソケットを有する非圧縮性のマウント
の形態の構造用装置に関するものであり,また,支持面の上方にキャノピーカバー
を支持することができ,展開状態において4個の直立した支持部材のみによって支
持され,支持部材の下端部各々がプレート状部材により支持面と係合する構成を有
していること,隣接した支持部材の間に延びる端縁シザー組立体が横方向の力をし
ばしば受けるが,シザー組立体が相互にかつ隅の支持部材と連結されている場合,
締め付けられれば,シザーの作用を阻止し,横方向にたわむときに剪断力をうける
ため,連結ボルトが過大な横方向のたわみにより曲り,又は破断し得ること,その
ため,本発明の目的は,「トラス組立体のシザー要素のための連結装置であって,
シザー構成要素を自由に枢動させると共に,シザー要素の横方向の変形およびねじ
りによる変形を阻止するように非圧縮性の連結装置を提供すること」や,「構造体
を構成する要素を相互に連結するための新規の有用なマウントを設け,そしてさら
に複雑な構造体に統合することができる最小限の異なる部品を有する連結装置を使
用することにより,折畳み可能なキャノピー構造体を簡単にすること」,「構造上
の結合性または強度を有意に損なうことなく重量がより軽い隅の支持部材およびシ
ザーバーを使用することができるキャノピーのための折畳み可能でありかつ展開可
能な骨組構造体を提供すること」であること,端縁シザー組立体を直立支持部材に
留めるために,支持部材に配置された複数個の新規のマウントは,隔置された向き
合う側壁部分によりソケットが形成され,それにより端縁シザー組立体の外側端部
を向き合う側壁部分の間に締り嵌め係合するようにソケットのそれぞれ内に捕獲す
ることができ,マウントの平行な側壁部は,平面状の接触面に沿って外側端部に作
用し,シザー組立体自体の横方向のたわみ及びねじりによるたわみを阻止する作用
をすることが認められる。すなわち,本件特許発明1は,支持部材の下端部が支持
面である地面に係合され,上端付近(支持面の上方)にキャノピーカバー等が配置
される骨組構造体であることから,風力等によりシザー要素の横方向の変形及びね
じりによる変形を生じ得るという課題を有するものであり,マウント(連結装置)
の「平行な側壁部分は上端部又は下端部において水平な壁部分で相互に連結され
て」いる構成は,シザー要素の上記の変形を阻止する作用を有するものであり,連
結部分の構造を改良・強化することにより,課題を解決する手段であるといえる。
一方,上記ア(イ)認定の事実によれば,甲1には,引用発明の「優点」として,
「任意に移位可能で定位できる」,「風に吹き倒されるおそれがない」ことが記載
され,伸縮支柱(2)下端が一つの底台片(21)に溶接固定されること,第12
図には底台片(21)に孔があることが記載されている。そうすると,引用発明は,
止め孔を通じて支持面に定位され,風圧等による横方向の力の影響を受けやすい構
造体の上部に屋根等が配置される(第1図ないし第6図)ことから,風圧等による
シザー要素の横方向の変形及びねじりによる変形をも考慮して,構造体の補強を指
向するものと一応認められる。しかし,引用発明の上固定支えバー軸体,下活動支
えバー軸体(本件特許発明1のマウントに相当すると認められる。)は,端縁シザ
ー組立体の外側端部がソケットを有し,上記バー軸体が当該ソケット内に受け入れ
られるものとなっており,かつ,ソケットの平行な側壁部分は上端部又は下端部に
おいて水平な壁部分で相互に連結されていない構成であるところ,甲1には,かか
る構成が,シザー要素の上記の変形を阻止する作用を有すること及びそのために連
結部分の構造を改良・強化するものであること(本件特許発明1の課題と解決)に
ついては,記載も示唆もされていないというべきである。
また,上記ア(ウ)認定の事実によれば,甲5,甲7及び甲9には,ソケットの平
行な側壁部分が上端部又は下端部において水平な壁部分で相互に連結されている構
成が示されておらず(この点は,被告も特に争っていない。),また,シザー要素
の横方向の変形及びねじりによる変形を生じさせるような力に対する考慮も示唆さ
れていない。また,甲4及び甲8には上記構成と同様の構成が示されているが,以
下のとおり,本件特許発明1や引用発明において想定される,シザー要素の上記の
変形を生じさせるような力の作用を考慮した連結装置を開示するものとはいえない。
すなわち,甲4記載の折畳み式ベンチは,交錯状に集交した脚管の端部の連結器
具として軸受け盤の軸受けは平行な向き合った側壁部分を有し,その下端部が相互
に連結されているが(第4図),携行収蔵に至便,組立て作製も容易なように,脚
の下端が接地面(支持面)に固定される構成は有さず,脚の上下端に脚管が連結さ
れて骨格を構成してベンチに作用する力を支持し,傾倒破損を防止する効果を有す
るものといえる。
また,甲8記載の折り畳み式腰掛けは,その脚部が,筒体の下部で筒体の内部に
上下に摺動可能に嵌挿された脚部保持体を有し,脚部保持体は,平行な向き合った
側壁部分の下端部が相互に連結されているが(第7図),より一層軽量且つ小型に
構成され,簡便に携帯可能なようにしたものである。
そうすると,上記ベンチ及び上記腰掛けは,上記の構成,目的及び用途からして,
シザー要素の横方向の変形及びねじりによる変形を生じさせるような態様の力が作
用することは想定しがたいものであって,甲4及び甲8に,そのような作用を想定
した連結装置が開示ないし示唆されているとは認められない。
以上によれば,甲1には,本件特許発明1のマウントに相当する上固定支えバー
軸体,下活動支えバー軸体の構成により,シザー要素の横方向の変形およびねじり
による変形を阻止する作用を有することは格別記載も示唆もされていないから,甲
1に接した当業者が,かかる変形を阻止するために,さらに,上記軸体の構成を,
相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることに容易に想到するとは言い難い。
また,仮に,甲1の記載から,引用発明における上記軸体の構成を変更することの
示唆を得たとしても,上記のとおり,甲4,甲5,甲7ないし甲9は,ソケットの
平行な側壁部分は上端部又は下端部において水平な壁部分で相互に連結された構成
は示されていないか,シザー要素の上記の変形を阻止する作用を考慮したものでは
ないから,これらに記載された技術を引用発明に適用することが容易とはいえない。
したがって,甲4,甲5,甲7ないし甲9には,骨組み構造のたわみやねじりに
対する強度を向上するための枢軸構造として「ソケットの平行な側壁部分の一端を
水平な壁部で相互に連結」された構造は開示されていないとして,引用発明におい
て,連結装置を,側壁部分が水平な壁部で相互に連結される構成に置換して,相違
点1に係る本件特許発明1の構成とすることは困難である旨の原告らの主張には理
由がある。
これに対し,被告は,①折り畳み可能な骨組構造体の技術分野における通常の知
識を有する当業者にとって,折り畳み可能な椅子の骨組構造体に関する技術知識を
有していたと合理的に判断でき,その技術知識に基づけば,甲4及び甲8記載の水
平な壁部での連結構造を引用発明に適用するのは極めて容易である,②「側壁部分
が水平な壁部で相互に連結される構成」は,たわみを阻止するという作用効果を発
揮させる上で特段の意味を持つとはいえず,引用発明において,強度の向上を図る
ため当業者により適宜採用される設計事項にすぎない旨主張する。
しかし,上記①の主張につき,甲4及び甲8には,ソケットの平行な側壁部分は
上端部又は下端部において水平な壁部分で相互に連結された構成が記載されている
としても,シザー要素の横方向の変形及びねじりによる変形を阻止する作用を考慮
したものではないから,当業者が,甲4及び甲8記載の技術知識を有していたとし
ても,それを引用発明に適用することを容易に想到し得たとは認められない。また,
上記②の主張につき,本件特許発明1において,連結装置に関する「側壁部分が水
平な壁部で相互に連結される構成」は,平行な側壁部分を連結してこれを補強する
ものであることは当業者にとって明らかであるから,シザー要素の横方向の変形及
びねじりによる変形を阻止するという課題の解決手段であり,発明の特徴点といえ
る。甲1,甲4,甲5,甲7ないし甲9において,構造体の強度の向上を図るとの
課題は示唆されるとしても,かかる一般的な課題から,シザー要素の上記の変形を
阻止するとの課題が当然に発想され得ることを裏付ける証拠はないから,連結装置
に関して上記構成を採用することを,当業者が適宜採用する設計事項と認めること
はできない。よって,被告の主張は失当である。
したがって,本件特許発明1と引用発明との相違点1に関する審決の容易想到性
の判断には誤りがある。
2本件特許発明1と引用発明との相違点1は,本件特許発明2ないし6と引用
発明との相違点でもあるから,本件特許発明2ないし6が,引用発明及び周知技術
に基づいて容易に想到できたとする審決の判断にも誤りがある。
第5結論
以上のとおりであるから,原告ら主張の取消事由2に理由があり,その余の争点
について判断するまでもなく,審決は違法として取り消されるべきである。被告は,
他にも縷々反論するが,いずれも採用の限りでない。
よって,審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
芝田俊文
裁判官
岡本岳
裁判官
武宮英子
別紙1
第4(a)図
第4(b)図
第8図
第10図
別紙2
第1図,第2図第3図
第4図第5図
第6図第12図
第14図,第15図第16図
第17図第18図
別紙3
(1)甲4
第4図(B)
(2)甲5
第3図
第4図第7図
(3)甲7第6図
(4)甲8
第1図第7図
(5)甲9第1図,第3図及び第4図

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