弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1札幌市固定資産評価審査委員会が原告に対して平成24年12月6
日付けでした別紙物件目録記載の一棟の家屋について固定資産課税台
帳に登録された平成24年度の価格についての審査の申出を棄却する
旨の決定のうち,価格1億2698万6000円を超える部分を取り
消す。
2被告札幌市は,原告に対し,17万4100円及びこれに対する
平成25年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
3被告北海道は,原告に対し,44万5300円及びこれに対する
平成25年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
4原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用は被告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1札幌市固定資産評価審査委員会が原告に対して平成24年12月6日付けで
した別紙物件目録記載の一棟の建物の表示記載の建物に係る平成24年度固定
資産課税台帳の登録価格についての原告の審査申出を棄却する旨の決定を取り
消す。
2被告札幌市は,原告に対し,金34万4100円及びこれに対する平成25
年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告北海道は,原告に対し,金57万5300円及びこれに対する平成25
年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4訴訟費用は被告らの負担とする。
第2事案の概要
本件は,33の専有部分から構成された別紙物件目録記載の一棟の区分所有に
係る建物(以下「本件建物」という。)のうち,1階事務所用物件部分を所有す
る原告が,札幌市長により決定され固定資産課税台帳に登録された平成24年度
の本件建物の価格(以下「本件登録価格」という。)は地方税法352条1項に
反して違法であったなどと主張して,裁決行政庁である札幌市固定資産評価審査
委員会がした当該価格の登録についての原告による審査の申出を棄却する旨の決
定(以下「本件棄却決定」という。)の取消しを求めるとともに,国家賠償法1
条1項に基づき,被告札幌市に対して34万4100円(本件登録価格を基礎と
してされた平成24年度固定資産税賦課決定及び都市計画税賦課決定に基づき原
告が過大に納付した14万4100円並びに本件訴訟の弁護士費用20万円の合
計額)及び被告北海道に対して57万5300円(平成21年度に札幌市長によ
り決定され固定資産課税台帳に登録された平成23年度の本件建物の登録価格を
基礎としてされた平成23年度不動産取得税賦課決定に基づき原告が過大に納付
した37万5300円及び本件訴訟の弁護士費用20万円の合計額)並びにこれ
らに対する訴状送達の日の翌日である平成25年5月17日から支払済みまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1関係法令等
別紙のとおり(別紙で用いる略称は,以下においても用いる。)
2前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に
認められる事実)
当事者
原告は,不動産の賃貸等を目的とする有限会社であり,札幌市内の都市計
画区域の市街化区域内に所在する(甲2)本件建物のうち,
事務所部分(以下「本件事務所部分」という。)を所有している。
本件建物の所有関係
ア本件建物は,昭和58年に築造された,鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コ
ンクリート造陸屋根10階建,課税床面積2210.84平方メートルの
マンションであり,1個の事務所部分(専有床面積320.23平方メー
トル。本件事務所部分。)と32個の住居部分(専有床面積合計1257.
84平方メートル。以下「本件住居部分」という。)の計33個の専有部
分と,その他,廊下,階段室等の共用部分から構成されており,上記各専
有部分が区分所有権の目的となる建物(以下「区分所有建物」ということ
がある。)である。上記共用部分は,構造上,区分所有者全員に供される
部分(床面積合計48.96平方メートル。以下「本件全体共用部分」と
いう。)と本件住居部分の区分所有者のみに供される部分(床面積合計5
84.07平方メートル。以下「本件住居共用部分」という。)に分かれ
ている。(甲1,7)
イ本件事務所部分は,昭和59年度から平成23年度までの期間,訴外A
健康保険組合が所有し,かつ使用していた。同組合に対しては,法348
条4項により固定資産税を課すことができないため,本件事務所部分は,
上記の期間につき固定資産税が非課税とされていた。
その後,平成23年3月16日,訴外株式会社Bが同組合から本件事務
所部分の所有権を取得し,同月28日,原告が同社から同部分及びその敷
地の共有持分を1500万円で買い受け,所有者となった(甲1,2)。
ウなお,本件建物については,法352条1項第2かっこ書,規則15条
の3に基づいて,昭和59年1月28日受付「専有部分の床面積割合補正
申出書」(甲7・42頁)が札幌市長に提出されており,同申出書により
法352条1項所定の割合が本件住居部分について0.809617,本
件事務所部分について0.19038へと補正されている(以下「本件補
正割合」という。)。
⑶本件各賦課決定等に至る経緯
ア札幌市長は,平成24年度における本件建物の価格について,合計1億
3567万9000円(本件住居部分1億0302万1600円と本件事
務所部分3265万7400円の合計額)と決定し,これを固定資産課税
台帳に登録した(乙イ4)。
イまた,札幌市長は,上記アのとおり登録された本件事務所部分の価格を
家屋課税標準額とし,これに土地課税標準額(固定資産税につき246万
9246円,都市計画税につき493万8492円)を加えたものに市税
条例所定の税率を乗じ,平成24年度の原告に係る固定資産税額を49万
1700円,都市計画税額を11万2700円とする各賦課決定をした
(甲5。以下,それぞれにつき「本件賦課決定1」,「本件賦課決定2」
という。)。
ウ他方,被告北海道は,平成23年4月28日,札幌市長から,法73条
の18第3項の規定に基づき,原告が同年3月28日に本件建物を取得し
た旨の事実が記載された報告書類を受理した。
上記⑵イのとおり,本件事務所部分については平成23年度の固定資産
課税台帳に同年1月1日現在における価格が記載されていなかったことか
ら,札幌道税事務所長は,札幌市中央市税事務所長に対し,本件事務所部
分の評価相当額を照会したところ,札幌市中央市税事務所長より,本件事
務所部分の平成23年における評価相当額が3597万1600円である
との回答があった(乙ロ1)。
これを受けて,札幌道税事務所長は,法73条の21第2項に基づき,
上記額をもって,本件事務所部分の不動産取得税に係る課税標準額と決定
した上で,同額を基準として税額を143万8800円とする不動産取得
税賦課処分(以下「本件賦課決定3」という。)を行い,平成23年7月
7日付け納税通知書兼領収証書により同内容を原告に通知した(甲6)。
エ原告は,被告札幌市に対し,平成24年度固定資産税及び都市計画税
(土地,家屋分)として,平成24年4月19日に15万1400円,同
年7月10日,同年9月20日及び同年11月19日に各15万1000
円の合計60万4400円(うち固定資産税49万1700円,都市計画
税11万2700円)を,被告北海道に対し,平成23年度不動産取得税
として,平成23年7月20日に143万8800円を,それぞれ納付し
た(甲6,12)。
⑷原告による不服申立て
原告は,平成24年4月16日,本件登録価格の決定を不服として,札幌
市固定資産評価審査委員会に対し,法432条1項に基づく審査の申出を行
ったところ,同委員会は,同年12月6日,上記申出を棄却すると決定(本
件棄却決定)した(甲11)。
原告は,本件棄却決定を受け,同25年4月19日,当庁に同決定の取消
訴訟(本件訴訟)を提起した。
3争点
⑴本件棄却決定の適法性(争点1)
⑵本件各賦課決定の国家賠償法上の違法性及び被告らの過失の有無(争点2)
4争点に関する当事者の主張
⑴本件棄却決定の適法性(争点1)について
(被告札幌市の主張)
ア本件登録価格は,本件建物が明らかに用途の異なる本件住居部分と本件
事務所部分を併有する区分所有建物であることから,本件建物一棟全体に
単一の経年減点補正率を適用するのではなく,当該部分ごとに異なる経年
減点補正率を適用し,その結果算出された価格を合計することにより算定
している。
これは,固定資産の価格の適正な算定という法の大前提を踏まえ,一棟
の建物であったとしても,その内部に明らかに用途の異なる部分を有する
物件にあっては,物理的要因に加えて機能的要因ないし経済的要因を考慮
し定められた経年減点補正率を用途の異なる各部分に対し別個に適用する
ことで,より適正な価額を求めることができると考えられたことによる。
そうしない限り,本件住居部分の区分所有者が,本来事務所部分の区分所
有者である原告が負担すべき固定資産税の一部を支払うことを余儀なくさ
れ,不合理である。
イ法352条1項の趣旨は,共有物について連帯納税義務を定めた法10
条の2第1項の区分所有者に対する適用を排除し,区分所有者の有する共
有部分の持分割合に応じた区分所有者ごとの個別の税負担を求める点にあ
る。法352条1項所定の「当該家屋に係る固定資産税」が,原告が主張
するように家屋一棟の固定資産税額を指すのか,用途区分ごとに算出され
た固定資産税額を指すのかは,条文の文言からは決することはできないか
ら,同項は,納付義務の前提となる一棟の家屋の評価方法や,一棟の家屋
に明らかに用途を異にする複数の部分が存在する場合において,その部分
ごとに評価をした上,税額をあん分することが許されるか否かについて何
ら規定するものではなく,被告札幌市が主張する上記のような価格決定方
法を排除する趣旨は有していない。
仮に,原告が主張するように建物一棟の価格(課税標準)を決定した上
で一棟の家屋の税額を決定し,その税額を一定の基準に基づきあん分し,
各区分所有者の固定資産税額を決定するとの方法に限定されると解すると,
当該区分所所有者が,同一区域内に他の課税対象家屋を所有する場合,こ
れらとは別個に区分所有建物に係る税額を求めなければならず,同一区域
内の各資産の合計額が当該納税者の課税標準額となることを前提とする法
364条2項の趣旨に合致しない。
ウ以上のとおり,本件棄却決定は,固定資産の適正な評価及び税負担の衡
平という諸点に鑑み,本件住居部分と本件事務所部分に異なる経年減点補
正率を適用したものであり,法352条1項に反するものでもないから適
法である。
(原告の主張)
ア法352条1項に反すること
法352条1項は,区分所有者は「当該家屋に係る固定資産税額を」
「あん分した額を納付する義務を負う」旨定めており,その文言から明ら
かなとおり,建物一棟の価格(課税標準)を算出した上で一棟の家屋の税
額を決定し,その税額を上記あん分基準に基づき各区分所有者に配分し当
該金額を固定資産税額とすることを求めている(不動産取得税についても
同様である〔法73条の2第4項〕。)。
被告札幌市が主張するような,一棟の建物について専有部分ごとに価格
を算定し,これに税率を乗じて各区分所有者の負担すべき税額を決定する
ことを予定していないばかりか,地方税法その他の規定にも,このような
法解釈を是とする根拠は存在しない。
租税法規は文理解釈を原則とすべきであり,上記のとおり,法352条
が一棟単位で評価を行うことを求めていることは文理上明らかである。
イ評価基準にも反し,計算方法も不合理であること
評価基準においても,一棟全体の再建築費評点数に単一の経年減点補正
率を乗じることが原則的方法として採用されており,この例外としては,
当該建物に増築部分が存在する場合(評価基準第2章第一節四)と非課税
部分等が存在する場合(評価基準第2章第一節五)の,わずか2例がある
のみである。区分所有建物の評価方法につきこのような例外が設けられて
いない以上,評価基準は,区分所有建物について,通常の家屋と同様に一
棟単位で評価を行うことを原則として想定していると解すべきであり,そ
のように解することが法352条の上記趣旨とも合致する。さらに,用途
の明らかに異なる部分を併有する区分所有建物について用途の区分に応じ
た経年減点補正率を適用して価格を算出する手法は,区分所有建物の専有
部分が独立して存続することは不可能であり,当該家屋の経済的耐用年数
はやはり建物一棟を一単位として観念すべきこと,同一の共有部分を使用
しているにもかかわらず区分所有者ごとに同共用部分の耐用年数が異なっ
てしまうこと等の諸点からいって,そもそも合理性を有するものではない。
ウ原告主張の計算方法が法364条2項に反するものではないこと
法364条2項は,納税義務者の利益等を考慮した賦課徴収に関する租
税手続法規定にすぎず,租税債務の発生に係る課税要件等を定めるもので
はないし,区分所有建物に属する家屋についても,一棟の価格にあん分割
合を乗ずることによって算定しうる「専有部分ごとの価格」を課税標準と
して用いれば,法352条1項と364条2項は抵触するものではない。
エしたがって,本件建物につき,本件住居部分と本件事務所部分に対し別
の経年減点補正率を適用した本件棄却決定は法352条1項に反するもの
として違法である。
⑵本件各賦課決定の国家賠償法上の違法性ないし過失の有無(争点2)
(原告の主張)
ア本件各賦課決定の違法性
上記原告の主張アのとおり,法352条1項及び73条の2第4項
が,一棟の建物について価格を求めた上で,当該価格又はこれに税率を乗
じた税額を上記各条項の定める基準に従って各区分所有者にあん分するこ
とを要求していることは文言上明らかであって,本件各賦課決定はこれに
反する違法なものである。
イ原告が納付すべきであった固定資産税額及び都市計画税額
平成24年度における本件建物の再建築費評点数(2億4463万20
00点)に主たる用途(住居)・構造(鉄骨鉄筋コンクリート造鉄筋コン
クリート造)・経過年数(29年)に応じた経年減点補正率(0.471
9)及び評点1点当たりの価額(1.10円)を乗じて計算される本件建
物の評価額(1億2698万6000円)を本件補正割合であん分した結
果,本件事務所部分の課税標準は2417万5900円となる。
これに原告所有の他の固定資産も考慮した上,市税条例所定の税率を乗
ずると原告が本来納付すべきであった平成24年度の固定資産税額及び都
市計画税額は,それぞれ37万3000円,8万7300円である。
ウ原告が納付すべきであった不動産取得税額
原告が本件事務所部分の所有権を取得した平成23年度における同部分
の登録価格は,平成21年度に札幌市長により決定されたものであるとこ
ろ,同年度における本件建物の再建築費評点数(2億5484万4000
点)に主たる用途(住居)・構造(鉄骨鉄筋コンクリート造鉄筋コンクリ
ート造)・経過年数(26年)に応じた経年減点補正率(0.4982)
及び評点1点当たりの価額(1.10円)を乗じて計算される本件建物の
評価額(1億3965万9600円)を本件補正割合であん分した結果,
本件事務所部分の課税標準は2658万8000円となる。
これに道税条例所定の税率を乗ずると,原告が本来納付すべきであった
平成23年度の不動産取得税額は106万3500円である。
エ原告に生じた損害額
原告は,原告が被告らに実際に納付した金額と上記イ及びウの各税額と
の差額のほか,本件につき原告代理人に訴訟を委任したことにより,被告
らそれぞれにつき,弁護士費用相当額として20万円の損害を被った。
よって,原告に対し,被告札幌市は,平成24年度の固定資産税及び都
市計画税の過大納付額14万4100円及び弁護士費用相当額20万円の
合計34万4100円について,被告北海道は,本件建物の不動産取得税
の過大納付額37万5300円及び弁護士費用相当額20万円の合計57
万5300円について,それぞれ本件訴状送達日の翌日である平成25年
5月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を
付した金額を賠償すべき責任を負う。
(被告札幌市の主張)
上記⑴の被告札幌市の主張のとおり,本件登録価格は,複数の用途に供さ
れる区分所有建物である本件建物の性質を考慮し適正に算定されたものであ
り,その算定方法については,横浜市,相模原市,浜松市,大阪市,北九州
市,熊本市,京都市の各都市においても同様の解釈が採られているところで
あって,法及び評価基準に反するものではなく適法である。そして,本件賦
課決定1及び2についても,上記のとおり適法に算定された本件登録価格に
より算出された本件事務所部分の価格を基礎として行われたものであるから
もとより適法である。
したがって,本件賦課決定1及び2について,被告札幌市の担当職員が,
職務上通常尽くすべき注意義務に反したとはいえない。
(被告北海道の主張)
ア平成23年度固定資産課税台帳に登録されるとした場合の評価相当額
の算定方法については,被告札幌市が採用した算定方法が適法である旨
の同被告の上記⑴の主張を援用する。
イまた,札幌道税事務所長は,本件事務所部分の平成23年度の固定資産
課税台帳に価格の登録がなされていなかったために,法73条の21第2
項に基づいて札幌中央市税事務所長に対して本件事務所部分の評価相当額
を照会し,この結果得られた回答に基づいて本件事務所部分の課税標準と
なるべき価格を決定し,本件賦課決定3を行ったものである。
固定資産税及び不動産取得税の性格,課税対象不動産の評価の基準及び
評価の実施方法の同一性等に照らし,本件建物の評価相当額は固定資産課
税台帳の登録価格と同視することが合理的であって,それゆえに,被告北
海道は,当該評価額をもって法73条の21第2項において道府県知事が
決定することとされている不動産取得税の課税標準となるべき価格とした
ものである。
ウしたがって,本件賦課決定3を行ったことにより,被告北海道の公権力
の行使にあたる公務員がその職務を行うについて違法に損害を加えたとい
うことはできない。
第3当裁判所の判断
1本件棄却決定の適法性(争点1)について
法352条1項の解釈について
ア土地,家屋等に対して固定資産税を課す場合の基準となる課税標準は,
原則として賦課期日における当該固定資産の価格で固定資産課税台帳に登
録された価格であり(法349条1項),ここにいう「価格」とは,客観
的な交換価値としての適正な時価をいう(法341条5号)。法は,この
客観的交換価値の算定につき,全国一律の統一的基準によって固定資産の
価格を決定しなければならないと定め(法388条1項,403条1項),
固定資産の評価の基準並びに評価の実施方法及び手続を総務大臣の告示で
ある評価基準に委ねている。
イもっとも,固定資産のうち,区分所有建物に対して課す固定資産税につ
いて,法は,文理上,当該区分所有建物に関する固定資産税額,すなわち,
当該区分所有建物を一棟の建物として評価して算出された固定資産税額を
算定した上で,当該固定資産税額を原則として各区分所有者の共有部分の
持分割合(各専有部分の床面積の割合)で各区分所有者にあん分すること
によって区分所有者ごとの固定資産税を算定する旨を定めている(法35
2条1項,建物の区分所有等に関する法律〔以下「区分所有法」とい
う。〕14条1項から3項)。
法352条1項の規定の趣旨は,区分所有権(区分所有法2条1項1号)
は,区分所有建物の共有部分の持分と不可分であり(区分所有法11条,
14条参照),その専有部分も各個別の事情を有することなどから,個別
に区分所有権を評価することは著しく困難であり,また,区分所有建物に
対する固定資産税額の全体について各区分所有者が連帯して納税義務を負
うことは当該区分所有建物の実態にそぐわないことから,共有物等に課す
る地方税等については共有者が連帯納税義務を負うと定める法10条の2
第1項の適用を排除して,各区分所有者が個別の納税義務を負うこととし,
各区分所有者は,区分所有建物一棟の固定資産税額を一定の割合であん分
した額をその固定資産税として納付する義務を負うこととしたものである。
そして,実質的に見れば,各区分所有者が負担すべき税額は本来,その専
有部分に係る税額と共有部分に係る税額のうちその持分に応ずる額との合
算であるものの,実際上は,全員の共有となる区分所有建物の主体構造部
分が区分所有建物の価格の大部分を占めていることから,共有部分の持分
割合が,各区分所有者の負担すべき税額の割合を最もよく示すものとして,
上記区分所有建物の固定資産税額のあん分割合とされたと解される。この
ことからすれば,上記規定は,区分所有建物一棟の価格について予め用途
等により区分して評価することを予定しておらず,当該区分所有建物一棟
を基本単位として一括評価すべきであることを定めたものというべきであ
る。
ウそうすると,区分所有建物に専有部分を有する者の固定資産税額につい
ては,上記の法352条1項の規定の文理及び趣旨から,当該区分所有建
物一棟を基本単位とした再建築費評点数に,単一の経年減点補正率を乗じ
て一棟の建物全体を一括評価して固定資産税額を算出し,これを同項所定
の割合(共有部分の持分割合等)によってあん分した額とすべきである。
被告札幌市の主張について
アこの点に関し,被告札幌市は,①法352条1項の趣旨は専ら法10条
の2第1項の適用を排除する点にあり,一棟の区分所有建物の評価方法等
について何ら規定するものではないこと,②仮に上記⑴のような解釈を採
るとすれば,当該区分所有建物内に用途の異なる複数の部分が存在する本
件建物のような固定資産において,本来当該部分を所有する区分所有者が
負担すべき固定資産税額をその他の区分所有者が負担してしまうこととな
って不都合であること,③上記⑴のような解釈は法364条2項の趣旨に
も反すること等を主張する。
イしかし,上記ア①については,上記⑴のとおり,区分所有建物について,
法が一棟全体を基本的な単位として一括評価して固定資産税額を算出した
上で同固定資産税額を共有部分の持分割合によりあん分して各区分所有部
分の固定資産税額を算定することを求めていると解されることは法352
条1項の文理及び趣旨からして明らかであり,被告札幌市の上記主張は採
用できない。区分所有建物の大部分の価格を占める区分所有建物の主体構
造部分が,用途によって異なる経年劣化をするとは通常想定できないこと
から,一棟の区分所有建物に対して異なる経年減点補正率を適用して当該
部分ごとに固定資産の評価をする被告札幌市主張の計算方法は,区分所有
建物の上記主体構造部分の価格を適正に評価しているとはいえず,法35
2条1項の趣旨に反する。
また,区分所有建物の専有部分を取得した者に課する不動産取得税につ
いて「当該専有部分の属する一むねの建物」の価格に法352条1項と同
様のあん分割合を乗じて計算すべき旨定める法73条の2第4項や,一棟
の区分所有建物ごとに家屋課税台帳に価格を登録することを定める法34
1条12号といった法全体の規定のあり方からみても,法が,被告札幌市
主張の上記算定方法を想定しているものと解することはできない。
次に,上記ア②について,被告札幌市が区分所有者間における税負担の
不均衡を指摘する点についても,法352条1項は,区分所有建物一棟全
体の区分所有者間における固定資産税のあん分につき,各区分所有者の共
有部分の持分(専有部分の床面積)割合によってこれを行うことを原則と
しつつも,単純に共有部分の持分割合のみによってあん分するときに負担
の均衡を失するような場合には,規則15条の3所定の方法により上記割
合を補正することができる旨定めており,区分所有者間の税負担の衡平に
ついて,法はこれに配慮した規定及び制度を設けているのであるから,被
告が主張するような計算方法を採用することによって区分所有者間の税負
担の衡平を図るべきものとは認められない。
さらに,上記ア③について,被告札幌市が上記⑴の解釈が法364条2
項の趣旨に反する旨主張する点についても,同規定は,固定資産税の納税
者が複数の固定資産を有する場合において,固定資産税が当該固定資産ご
とにその課税標準となるべき価格が算定されるものであること,及び,免
税点の適用が当該固定資産ごとに異なること等から,納税義務者が所有す
る固定資産ごとの価額の内容をその合計額と合わせて同人に通知すること
としている手続的な保障規定であるにすぎない。また,区分所有家屋の価
格算定について上記⑴のとおりの計算方法を採用しても,固定資産税の課
税標準となる各区分所有家屋の価額を算定することは可能であるから,結
局,同項が上記算定方法を否定する趣旨のものであるとは解されない。
ウしたがって,被告札幌市の上記アの主張はいずれも採用することはでき
ない。
以上より,本件建物の価格については,本件建物全体について単一の経年
減点補正率を適用して一棟の建物全体の評価をした上で固定資産税額を算定
し,これを本件補正割合に応じてあん分すべきところ,本件棄却決定は,本
件事務所部分と本件住居部分に区分して異なる経年減点補正率を適用してそ
れぞれの価格を算定する点において,法352条1項に反し違法である。
そして,上記⑴の算定方法を前提に本件建物の価格について検討すると,
前記前提事実⑵のとおり,本件建物は32個の住居部分及び本件住居共有部
分(床面積合計1841.91平方メートル)並びに1個の事務所部分(専
有床面積320.23平方メートル)と,区分所有者全員に供される本件全
体共有部分(48.96平方メートル)から構成される区分所有建物であっ
て,これらの床面積割合によれば,本件建物は住居を主たる用途とするもの
であると認められるから,本件建物一棟全体の平成24年度における再建築
費評点数2億4463万2000点(甲7)に,主たる用途を住居として,
本件建物の構造,経過年数(前提事実⑵)に応じた経年減点補正率0.47
19(乙イ2)及び評点1点当たりの価額1.10円を乗じると,本件建物
の価格は,1億2698万6000円(100円未満切り捨て)となる。
したがって,本件棄却決定は,1億2698万6000円を超える部分に
つき違法であるから,当該部分に限りこれを取り消すのが相当である(最高
裁判所平成17年7月11日第二小法廷判決・民集59巻6号1197頁参
照)。
2本件各賦課決定の国家賠償法上の違法性ないし過失の有無(争点2)につい

国家賠償法1条1項における違法とは,国又は公共団体の公権力の行使に当
たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することを
いい(最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087
頁),仮に,公務員の行為が法令の解釈・適用を誤ったものであったとしても,
そのことから直ちに同項にいう違法があったと評価されることにはならず,公
務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をした
と認められるような事情がある場合に限り,上記の評価がされることになるも
のと解するのが相当である(最高裁判所平成19年11月1日第一小法廷判
決・民集61巻8号2733頁参照)。
そして,ある事項に関する法律解釈について,複数の解釈が考えられ,その
いずれについても相当の根拠が認められる場合において,公務員がそのうちの
一つの解釈に基づいて行為をしたときは,後に当該解釈が違法と判断されたと
しても,直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったものとすることは相当
ではない(最高裁判所昭和46年6月24日第一小法廷判決・民集25巻4号
574頁,最高裁判所平成3年7月9日第三小法廷判決・民集45巻6号10
49頁,最高裁判所平成16年1月15日第一小法廷判決・民集58巻1号2
26頁参照)。
⑴本件賦課決定1及び2について
ア上記1のとおり,本件棄却決定は法352条1項に反するものであり,
固定資産課税台帳に登録された価格を課税標準として行われた本件賦課決
定1及び2は,いずれもその課税額が客観的に過大であったと認められる。
イそして,札幌市の担当職員の注意義務違反の有無について検討すると,
地方公共団体における課税実務において参考とされている固定資産税務研
究会編集『固定資産税実務提要』(甲8)には,複数の用途に供されてい
る一棟の家屋の評価については,原則として主たる用途に応じた経年減点
補正率を適用すべきとしつつも,家屋の評価及び課税の均衡上の問題があ
ると市町村長が認める場合には,例外的に,用途,構造の異なる部分ごと
に異なる経年減点補正率を適用することができる旨記載されており,被告
札幌市においては,その主張する評価及び税額の算定方法が採用され,長
年にわたって実務の運用が行われてきた(証人C)。
また,被告札幌市以外の政令指定都市のうち,新潟市,さいたま市,千
葉市,川崎市,静岡市,名古屋市,堺市,広島市及び福岡市においては,
区分所有建物全体における主たる用途に応じた単一の経年減点補正率を適
用しているのに対し,横浜市,相模原市,浜松市,大阪市,北九州市及び
熊本市の各市おいては,専有部分ごとに当該専有部分の構造・用途に応じ
た経年減点補正率を適用する被告札幌市と同様の運用を行っており,実務
上の運用が区々に分かれていることが認められ(乙イ7),上記運用につ
いて,所管行政庁である自治省ないし総務省等から違法であるとの指摘を
受けたり,裁判上違法であるとの判断が示されたりしたことをうかがわせ
る事情は認められない。

算定方法が採り得ないことは明らかであることに加え,同算定方法は区分
所有建物の適正な評価という点においても合理性を有するものとはいえな
いこと(上記1⑵イ)に鑑みれば,被告札幌市の主張する上記算定方法を
採用することについて相当の根拠があったとはいえない。
そうすると,本件において,被告札幌市の担当職員が,長年にわたる実
務上の運用に基づき従前と同様の処分を行ったものであるなどの事情が存
在するとしても,そのような実務上の運用について相当の根拠があったと
は認められず,本件賦課決定1及び2を行うに際し,上記担当職員には国
家賠償法上の注意義務違反があったものと認められる。
⑵本件賦課決定3について
ア本件建物の本件事務所部分については,平成23年3月16日に訴外株
式会社Bが所有権を取得する以前は,訴外A健康保険組合が所有していた
ことにより固定資産税の課税は除外されていたことから(前提事実⑵イ),
固定資産課税台帳に本件事務所部分に係る価格が記載されていなかった。
そのため,被告北海道は,本件事務所部分が,原告がこれを取得した平成
23年度において仮に上記価格が算定されていたとした場合の額について,
札幌市中央市税事務所長に評価相当額を照会し,本件事務所部分の課税標
準が3597万1600円になるとの回答を得たことが認められる(前提
事実⑶ウ)。
イ不動産取得税は,不動産を取得した時点における当該不動産の価格を課
税標準として課せられる都道府県税であり(法73条の2),不動産評価
の統一及び評価事務の簡素化の趣旨から,固定資産課税台帳に価格が登録
されている不動産については原則としてその価格により不動産取得税の課
税標準を決定し(法73条の21第1項本文),他方,固定資産課税台帳
に価格が登録されていない場合又は特別の事情があるために固定資産課税
台帳価格により難い不動産については,都道府県知事が固定資産評価基準
によって自ら課税標準を決定することとされている(法73条の21第2
項)。
そして,法は,区分所有建物の専有部分を取得した者に課する不動産取
得税については,「当該専有部分の属する一むねの建物」の価格に法3
52条1項と同様のあん分割合を乗じて算定する旨の明文の規定を置い
ており(73条の2第4項),本件事務所を取得した原告に対して課す
不動産取得税を算出する場合においては,文理上,本件建物一棟全体の
価格に道税条例所定の税率を乗じて算出した税額を本件補正割合に応じ
てあん分する方法によるべきであることは明らかである。
ウそうすると,本件は,固定資産課税台帳に価格が登録されていない場合
に当たるから,被告北海道としては,自らが第一次的な責任をもって単
一の経年減点補正率を適用して算出された本件建物一棟全体の価格を課
税標準として決定し,これに道税条例所定の税率を乗じて不動産取得税
額を算定すべきであったにもかかわらず,被告札幌市から本件事務所部
分についての固定資産課税台帳に登録する価格の回答を受け,同価格に
基づき不動産取得税額を算定したことが認められる。しかし,このよう
な算定方法は法73条の2第4項の要求する算定方法に明らかに反する
ものであり,被告北海道が採用した算定方法が同項の解釈として相当な
根拠を有することをうかがわせる事情は存在しないから,結局,被告北
海道の担当職員が本件賦課決定3を行うに際しては国家賠償法上の注意
義務違反があったものと認められる。
⑶小括
以上によれば,本件賦課決定1ないし3は,いずれも,被告らの担当職員
に注意義務違反がある国家賠償法上違法なものであるから,被告らは,上記
各賦課決定によって原告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。
そして,法73条の2第4項及び352条1項により本件建物の価格が1
億2698万6000円と算定され(上記1⑶),これに法及び市税条例並
びに道税条例所定の計算を施し,原告が有する他の固定資産も考慮すると,
本件事務所部分に課されるべき平成24年度の固定資産税額は37万300
0円,都市計画税額は8万7300円,不動産取得税は106万3500円
となる(弁論の全趣旨)。そうすると,原告は,原告が現実に納付した金額
(前提事実⑶エ)との差額として,固定資産税につき11万8700円,都
市計画税につき2万5400円,不動産取得税につき37万5300円の損
害を被ったと認められる。
本件に関し相当因果関係のある弁護士費用としては,事案の難易等を考慮
し,被告札幌市に対する請求の関係では3万円,被告北海道に対する請求の
関係では7万円の限度でこれを認めるのが相当である。
第4結論
よって,原告の請求は,主文第1項ないし第3項記載の限度で理由があるから
認容し,その余はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担に
ついて行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条ただし書,61条を適用して,主
文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官
湯川浩昭
裁判官
宇田川公輔
裁判官
遊間洋行
(別紙)関係法令等の定め
1地方税法(以下「法」という。)
⑴不動産取得税の納税義務者等(73条の2)
ア1項
不動産取得税は,不動産の取得に対し,当該不動産所在の道府県において,
当該不動産の取得者に課する。
イ4項
建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第二条第
三項の専有部分の取得があった場合においては,当該専有部分の属する一む
ねの建物(同法第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物を含
む。)の価格を同法第十四条第一項から第三項までに規定する計算の例によ
つて算定して得られる専有部分の床面積の割合(専有部分の天井の高さ,附
帯設備の程度等について著しい差違がある場合においては,その差違に応じ
て総務省令で定めるところにより当該割合を補正した割合。次項において同
じ。)によってあん分して得た額に相当する価格の家屋の取得があったもの
とみなして,不動産取得税を課する。
⑵不動産取得税の課税標準(73条の13第1項)
不動産取得税の課税標準は,不動産を取得した時における不動産の価格とす
る。
⑶不動産取得税の賦課徴収に関する申告又は報告の義務(73条の18)
ア1項
不動産を取得した者は,当該道府県の条例の定めるところによって,不動
産の取得の事実その他不動産取得税の賦課徴収に関し同条例で定める事項を
申告し,又は報告しなければならない。
イ2項
前項の規定による申告又は報告は,文書をもってし,当該不動産の所在地
の市町村長を経由しなければならない。
ウ3項
市町村長は,前項の規定による申告書若しくは報告書を受け取った場合又
は自ら不動産の取得の事実を発見した場合においては,その日から十日以内
に当該申告書若しくは報告書を道府県知事に送付し,又は当該取得の事実を
通知するものとする。
⑶不動産の価格の決定等(73条の21)
ア1項本文
道府県知事は,固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不
動産については,当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標
準となるべき価格を決定するものとする。但し,当該不動産について増築,
改築,損壊,地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資
産の価格により難いときは,この限りでない。
イ2項
道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不
動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、第三百八十八条第一
項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準
となるべき価格を決定するものとする。
⑷固定資産税に関する用語の意義(341条)
固定資産税について,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に
定めるところによる。
(略)
五価格適正な時価をいう。
六基準年度昭和三十一年度及び昭和三十三年度並びに昭和三十三年度から
起算して三年度又は三の倍数の年度を経過したごとの年度をいう。
(略)
九固定資産課税台帳土地課税台帳,土地補充課税台帳,家屋課税台帳,
家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称する。
(略)
⑸土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準(349条1項)
基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋(以下「基準年度の土地又
は家屋」という。)に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当
該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(以下「基準年度の
価格」という。)で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(以下「土地課
税台帳等」という。)又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳(以下
「家屋課税台帳等」という。)に登録されたものとする。
⑹区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税(352条1項)
区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税については,当該家屋の専有
部分に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項の区分所有者(以下固
定資産税について「区分所有者」という。)は,第十条の二第一項の規定にか
かわらず,当該家屋に係る固定資産税額を当該区分所有者全員の共有に属する
共用部分に係る同法第十四条第一項から第三項までの規定による割合(専有部
分の天井の高さ,附帯設備の程度等について著しい差違がある場合においては,
その差違に応じて総務省令で定めるところにより当該割合を補正した割合)に
よってあん分した額を,当該各区分所有者の当該家屋に係る固定資産税として
納付する義務を負う。
⑺固定資産税に係る総務大臣の任務(388条1項)
総務大臣は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下
「固定資産評価基準」という。)を定め,これを告示しなければならない。こ
の場合において,固定資産評価基準には,その細目に関する事項について道府
県知事が定めなければならない旨を定めることができる。
⑻都市計画税の課税客体等(702条)
市町村は,都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基
づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため,当該市町村の区域で
都市計画法第五条の規定により都市計画区域として指定されたもの(以下この
項において「都市計画区域」という。)のうち同法第七条第一項に規定する市
街化区域(当該都市計画区域について同項に規定する区域区分に関する都市計
画が定められていない場合にあっては,当該都市計画区域の全部又は一部の区
域で条例で定める区域)内に所在する土地及び家屋に対し,その価格を課税標
準として,当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。当
該都市計画区域のうち同項に規定する市街化調整区域内に所在する土地及び家
屋の所有者に対して都市計画税を課さないことが当該市街化区域内に所在する
土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課することとの均衡を著しく失す
ると認められる特別の事情がある場合には,当該市街化調整区域のうち条例で
定める区域内に所在する土地及び家屋についても,同様とする。
⑼都市計画税の賦課徴収等(702条の8)
ア1項
都市計画税の賦課徴収は,固定資産税の賦課徴収の例によるものとし,特
別の事情がある場合を除くほか,固定資産税の賦課徴収とあわせて行うもの
とする。この場合において,第十七条の四の規定に基づく還付加算金,第三
百六十五条第二項の規定に基づく納期前の納付に対する報奨金又は第三百六
十八条若しくは第三百六十九条の規定に基く延滞金の計算については,都市
計画税及び固定資産税の額の合算額によって当該各条の規定を適用するもの
とする。
イ2項
都市計画税の賦課徴収に関する修正の申出及び不服申立て並びに出訴に
ついては,固定資産税の賦課徴収に関する修正の申出及び不服申立て並び
に出訴の例によるものとする。
ウ3項
都市計画税の納税義務者は,都市計画税に係る地方団体の徴収金を,固定
資産税に係る地方団体の徴収金の納付の例により納付するものとし,特別の
事情がある場合を除くほか,固定資産税に係る地方団体の徴収金とあわせて
納付しなければならない。
(略)
2地方税法施行規則(以下「規則」という。)
⑴法73条の2第4項の専有部分の床面積の割合の補正(7条の3)
ア1項
法第七十三条の二第四項の規定による建物の区分所有等に関する法律(昭
和三十七年法律第六十九号)第十四条第一項から第三項までに規定する計算
の例によって算定して得られる専有部分の床面積の割合の補正は,当該割合
に,次の各号の算式により計算した数値(当該各号の二以上に該当する場合
においては,それぞれの数値を加えた数値)に一を加えた数値を乗じて行う
ものとする。
一専有部分の天井の高さに差違がある場合
(家屋の評価額-専有部分に係る附帯設備の評価額相当額の合計額-専有
部分に係る仕上部分の評価額相当額の合計額)/家屋の評価額×天井の高
さの差違に応ずる数値
二専有部分の附帯設備の程度に差違がある場合
専有部分に係る附帯設備の評価額相当額の合計額/家屋の評価額×
((当該専有部分に係る附帯設備の単位床面積当りの評価額相当額/専有
部分に係る附帯設備の単位床面積当りの評価額相当額-1))
三専有部分の仕上部分の程度に差違がある場合
専有部分に係る仕上部分の評価額相当額の合計額/家屋の評価額×
((当該専有部分に係る仕上部分の単位床面積当りの評価額相当額/専有
部分に係る仕上部分の単位床面積当りの評価額相当額-1))
イ2項
前項各号の算式において,家屋とは専有部分の属する一棟の建物(建物の
区分所有等に関する法律第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の
建物を含む。以下本項及び次項において「家屋」という。)をいい,天井の
高さの差違に応ずる数値とは専有部分に係る天井の高さと当該家屋の専有部
分に係る天井の平均の高さとの差違のメートル数(一メートル未満の端数は,
切り捨てるものとする。)に〇・一を乗じて得た数値をいう。この場合にお
いて,専有部分に係る天井の高さが当該家屋の専有部分に係る天井の平均の
高さよりも低い場合においては,当該数値は,負数とするものとする。
ウ3項
第一項の補正は,当該家屋の区分所有者の全員が専有部分の天井の高さ,
附帯設備の程度等の差違に応じて協議して定めた補正の方法を当該道府県の
条例の定めるところによって道府県知事に申し出た場合において道府県知事
が当該補正の方法によることが適当と認めるときは,同項の規定にかかわら
ず,当該補正の方法によって行なうことができる。ただし,当該家屋に係る
固定資産税について第十五条の三第二項の規定により市町村長が当該補正の
方法によることが適当と認めるものがある場合においては,当該補正の方法
によって行なうことができる。
⑵法352条1項の割合の補正(15条の3)
ア1項
第七条の三第一項及び第二項の規定は,法第三百五十二条第一項に規定す
る建物の区分所有等に関する法律第十四条第一項から第三項までの規定によ
る割合の補正について準用する。
イ2項
前項の補正は,当該家屋の区分所有者の全員が専有部分の天井の高さ,附
帯設備の程度等の差違に応じて協議して定めた補正の方法を当該市町村の条
例の定めるところによって市町村長に申し出た場合において市町村長が当該
補正の方法によることが適当と認めるときは,同項の規定にかかわらず,当
該補正の方法によって行なうことができる。ただし,当該家屋に係る不動産
取得税について第七条の三第三項の規定により道府県知事が当該補正の方法
によることが適当と認めるものがある場合においては,当該補正の方法によ
って行なうことができる。
3固定資産評価基準における家屋の評価方法(乙イ2。平成24年総務省告示第
286号による改正前のもの。以下「評価基準」という。)
⑴家屋の評価(第2章第1節の一)
家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」とい
う。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点
一点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとする。
⑵非課税部分等のある家屋の価額の区分(第2章第1節の五)
一棟の家屋について固定資産税を課することができる部分とこれを課するこ
とができない部分とがある場合その他一棟の家屋の価額を二以上の部分に区分
して求める必要がある場合においては,それぞれの部分ごとに区分して価額を
求めるものとする。ただし,それぞれの部分ごとに区分して価額をもとめるこ
とが困難であると認められるときは,当該家屋の価額をそれぞれの部分の占め
る床面積の割合その他それぞれの部分の価額を求めるのに適当と認められる基
準によってあん分してそれぞれの部分の価額を求めるものとする。
⑶非木造家屋に係る評点数の算出方法(第2章第3節の一)
ア1項
非木造家屋の評点数は,当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎として,
これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとし,次の算式に
よって求めるものとする。この場合において,当該非木造家屋について需給
事情による減点を行う必要があると認めるときは,当該非木造家屋の評点数
は,次の算式によって求めた評点数に需給事情による減点補正率を乗じて求
めるものとする。
〔算式〕
評点数=再建築費評点数×経過年数に応ずる減点補正率
(経過年数に応ずる減点補正率によることが,天災,火災その他の事由
により当該非木造家屋の状況からみて適当でないと認められる場合にあ
っては,評点数=(部分別再建築費評点数×損耗の程度に応ずる減点補
正率)の合計)
イ2項
市町村長は,当該市町村に所在する非木造家屋の状況に応じ,「二部分
別による再建築費評点数の算出方法」又は「三比準による再建築費評点数
の算出方法」のいずれかにより再建築費評点数を求めるものとする。ただし,
在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数は「四在来分の非木造家屋に係
る再建築費評点数の算出方法」により求めるものとする。
⑷非木造家屋に係る部分別による再建築費評点数の算出方法(第2章第3節の
二)
部分別による再建築評点数の算出方法によって非木造家屋の再建築費評点数
を求める場合は,当該非木造家屋の構造の区分に応じ,当該非木造家屋につい
て適用すべき非木造家屋評点基準表によって求めるものとする。
非木造家屋評点基準表によって非木造家屋の再建築費評点数を求める場合に
おいては,各個の非木造家屋の構造の区分に応じ,当該非木造家屋について適
用すべき非木造家屋評点基準表によって当該非木造家屋の各部分別に標準評点
数を求め,これに補正項目について定められている補正係数を乗じて得た数値
に計算単位の数値を乗じて算出した部分別再建築費評点数を合計して求めるも
のとする。
(以下略)
⑸在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法(第2章第3節の四)
在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数は,次の算式によって求めるもの
とする。ただし,当該市町村に所在する在来分の非木造家屋の実態等からみて
この方法によることが適当でないと認められる場合又は個々の在来分の非木造
家屋に地方税法349条2項各号に掲げる事情があることによりこの方法によ
ることが適当でないと認められる場合においては,二又は三によって再建築費
評点数を求めることができるものとする。
(以下略)
4札幌市税条例(乙イ1。以下「市税条例」という。)
⑴固定資産税の課税標準(41条1項)
土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準は,法第349条の規定
を適用した場合における価格で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳又は家
屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録されたものとする。
⑵固定資産税の税率(43条)
固定資産税の税率は,100分の1.4とする。
⑶都市計画税の納税義務者等(127条)
ア1項
都市計画税は,都市計画法5条の規定により指定された都市計画区域のう
ち同法7条1項に規定する市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し,そ
の価格を課税標準として,当該土地又は家屋の所有者に課する。
イ2項
前項の「価格」とは,当該土地又は家屋に係る固定資産税の課税標準とな
るべき価格(法349条の3又は法附則15条,15条の2若しくは15条
の3の規定の適用を受ける土地又は家屋にあっては,その価格にそれぞれ当
該各条に定める率を乗じて得た額)をいい,同項の「所有者」とは,当該土
地又は家屋に係る固定資産税について37条(3項,8項及び9項を除く。)
において所有者とされ,又は所有者とみなされるものをいう。
⑷都市計画税の税率(129条)
都市計画税の税率は,100分の0.3とする。
5平成24基準年度札幌市家屋評価事務取扱要領(乙イ8。以下「評価要領」と
いう。)
⑴経年減点補正率の適用(第3節二の2⑸ア)
非木造家屋の用途区分及び構造区分により定めた別表4(省略)に掲げる
「非木造家屋経年減点補正率表」から当該家屋の経年減点補正率を適用するも
のとするが,次に掲げる事項に留意のうえ適用するものとする。
ア家屋が複数の用途及び構造により建築されている場合の経年減点補正率の
適用は,原則として主たる用途及び構造により一棟単位で行うものとし,主
たる用途又は構造の判断に当たっては,最も大きな床面積又は容積を占める
用途又は構造によるものとする。
(以下略)
⑵経年減点補正率又は損耗減点補正率(第4節三の4)
(区分所有家屋の専有部分の仮評価額の算出につき適用すべき)当該補正率
は,第3節二1⑸又は2⑸に掲げるところにより,専有部分ごとに当該専有部
分に相応する補正率を適用するものとする。
6北海道税条例(以下「道税条例」という。)44条(不動産取得税の税率)
不動産取得税の税率は,100分の4とする。
以上
(別紙物件目録添付省略)

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〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
時給 当社規定による
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シフトは週40時間以上
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