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令和2年8月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
令和元年(ワ)第29268号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日令和2年2月17日
判決
主文5
1被告は,原告に対し,33万円及びこれに対する令和元年8月18日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,これを10分し,その7を原告の負担とし,その余を被告
の負担とする。10
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,110万円及びこれに対する令和元年8月18日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。15
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,名誉棄損の不法行為に基づく損害賠償として,
110万円及びこれに対する不法行為の日の後である令和元年8月18日から
支払済みまで平成29年法律第44号(以下「改正法」という。)による改正20
前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる事実)
⑴ア原告は,インターネット等の通信ネットワーク及び電子技術を利用した25
各種の情報提供サービス,情報収集サービス,広告及び宣伝に関する業務
並びにその代理業務等を目的とするC株式会社の代表取締役を務める者で
ある。(甲9)
イ被告は,令和元年8月当時,愛知県豊田市議会議員の地位にあった者で
ある。
⑵令和元年8月10日,茨城県守谷市の常磐自動車道において自動車を運転5
していた男性(以下「本件被疑者」という。)が,先行する自動車の前方に
割り込んで同自動車を停車させた上,同自動車を運転していた男性に対し,
暴行を加えて傷害を負わせるという事件(以下「本件事件」という。)が発
生した。また,本件被疑者の運転する自動車に同乗していた女性(以下「本
件女性」という。)は,携帯電話のカメラ機能を用いて本件被疑者の上記暴10
行の様子等を撮影した。
なお,同月17日当時,ツイッター(インターネットを利用してツイート
と呼ばれるメッセージ等を投稿することができるウェブサイト)等で,不特
定多数の人物が本件女性の上記行動を非難する記事を投稿していた。(甲5)
⑶茨城県警察は,令和元年8月16日,本件被疑者を全国に指名手配した。15
⑷原告は本件女性でないにもかかわらず,令和元年8月17日,ツイッター
において,原告が本件女性であるとの記事が投稿された(以下「本件元ツイ
ート」という。)。(甲2,6)
⑸被告は,本件元ツイートが投稿された後,ソーシャル・ネットワーキング・
サービスであるフェイスブックにおいて被告が管理するウェブページ上に本20
件元ツイートを引用した記事(以下「本件記事」という。)を投稿した。本
件記事には,原告の顔写真が掲載されており,「同乗の女も見つけたようで
す。」「早く逮捕されるよう拡散お願いします。」等の記載がある。(甲2,
3,10)
3争点及び争点に関する当事者の主張25
本件の争点は,損害の発生及び額である。
(原告の主張)
原告は,被告による本件記事の投稿により,本件女性であると誤認され,そ
の社会的評価を低下させられた。これにより原告が被った精神的苦痛を金銭に
換算すると100万円を下らない。また,上記の被告の不法行為と相当因果関
係のある弁護士費用は,10万円を下らない。5
(被告の主張)
否認ないし争う。なお,原告は,他の加害者から既に和解金を受領したから,
その被った損害の一部が填補されている。
第3争点についての判断
1ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,10
一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものである(最高裁
昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻
8号1059頁参照)。そして,本件記事には,本件事件の際に本件被疑者の
運転する自動車に同乗し,携帯電話のカメラ機能を用いて本件被疑者の暴行の
様子等を撮影していた本件女性が原告である旨の元ツイートが引用され,「同15
乗の女も見つけたようです。」「早く逮捕されるよう拡散お願いします。」と
いう記載及び原告の顔写真が掲載されているから,本件記事は,原告が本件事
件の際に本件被疑者の運転する自動車に同乗し,携帯電話のカメラ機能を用い
て本件被疑者の暴行の様子等を撮影していた旨の事実を摘示すると通常理解さ
れるものと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。したがって,本件記事20
は,原告の社会的評価を低下させるものと認められる。
2そして,本件記事の内容,その投稿の態様等本件に顕れた一切の事情を総合
考慮すると,原告が本件記事の投稿によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料
の額は,30万円をもって相当と認められる。
本件事案の難易,上記の認容額等に照らすと,上記不法行為と相当因果関係25
のある弁護士費用の額は,3万円と認めるのが相当である。
3⑴なお,被告は,原告が他の加害者から既に和解金を受領したから,原告の
被った損害の一部が填補されている旨を主張する。
⑵しかしながら,前記⑴の被告の主張は,原告の主張する不法行為が,本件
記事の投稿のみならず,被告以外の加害者による投稿をも加えた複数の投稿
全部であることを前提とするものと解されるところ,原告の主張する不法行5
為が本件記事の投稿のみであることは,主張上明らかである。また,被告が
他の者と共同して本件記事の投稿を行った旨の主張,立証はない。
したがって,前記⑴の被告の主張は,前提を欠き,採用することができな
い。
4なお,被告は,本件記事の投稿に係る原告の損害賠償請求権について,改正10
法の施行日である令和2年4月1日より前の令和元年8月18日に遅滞の責任
を負ったから,改正法附則17条3項により,上記損害賠償請求権に係る法定
利率については,改正前民法が適用される。
第4結論
以上によれば,原告の請求のうち33万円及びこれに対する本件記事の投稿の15
日の翌日である令和元年8月18日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の
割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから認容し,その余の部
分は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部
裁判長裁判官田中寛明
裁判官岡﨑真実
裁判官早田久子は,退官のため署名押印することができない。
裁判長裁判官田中寛明

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