弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人敗訴の部分を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人吉永多賀誠、同徳田敬二郎の上告理由第一点および同第二点について。
 所論は、原審の確定した事実によれば、本件株式の払込は単に外形上払込の形式
を整えたに過ぎず、いわゆる見せ金による払込であつて、現実に払込のなされたも
のでないことが明らかであるのに、右仮装の払込を以て真実の払込としてその効力
を認めた原判決には、商法一七七条一項の解釈適用を誤つた違法があり、また、本
件のような仮装の払込について、発起人たる被上告人らに同法一九二条所定の払込
責任を負わせないためには、なんらかの事情がある筈であるのに、かかる特段の事
情を判示することなく、有効な払込があつたものと認めて被上告人らの払込責任を
否定した原判決には、理由不備の違法があるという。
 よつて審案するに株式の払込は、株式会社の設立にあたつてその営業活動の基盤
たる資本の充実を計ることを目的とするものであるから、これにより現実に営業活
動の資金が獲得されなければならないものであつて、このことは、現実の払込確保
のため商法が幾多の規定を設けていることに徴しても明らかなところである。従つ
て、当初から真実の株式の払込として会社資金を確保するの意図なく、一時的の借
入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻
してこれを借入先に返済する場合の如きは、右会社の営業資金はなんら確保された
ことにはならないのであつて、かかる払込は、単に外見上株式払込の形式こそ備え
ているが、実質的には到底払込があつたものとは解し得ず、払込としての効力を有
しないものといわなければならない。しかして本件についてこれを見るに、原判決
の確定するところによれば、訴外D株式会社は資本金二〇〇万円全額払込ずみの株
式会社として昭和二四年一一月五日その設立登記を経由したものであるが、被上告
人Bは、発起人総代として同じく発起人たるその余の被上告人らから、設立事務一
切を委任されて担当し、株式払込については、被上告人Bが主債務者としてその余
の被上告人らのため一括して訴外E銀行Gから金二〇〇万円を借り受け、その後右
金二〇〇万円を払込取扱銀行である右銀行支店に株式払込金として一括払い込み、
同支店から払込金保管証明書の発行を得て設立登記手続を進め、右手続を終えて会
社成立後、同会社は右銀行支店から株金二〇〇万円の払戻を受けた上、被上告人B
に右金二〇〇万円を貸し付け、同被上告人はこれを同銀行支店に対する前記借入金
二〇〇万円の債務の弁済にあてたというのであつて、会社成立後前記借入金を返済
するまでの期間の長短、右払戻金が会社資金として運用された事実の有無、或は右
借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等、その如何によつては本件株
式の払込が実質的には会社の資金とするの意図なく単に払込の外形を装つたに過ぎ
ないものであり、従つて株式の払込としての効力を有しないものではないかとの疑
いがあるのみならず、むしろ記録によれば、被上告人Bの前記銀行支店に対する借
入金二〇〇万円の弁済は会社成立後間もない時期であつて、右株式払込金が実質的
に会社の資金として確保されたものではない事情が窺われないでもない。然るに、
原審がかかる事情につきなんら審理を尽さず、従つてなんら特段の事情を判示する
ことなく、本件株式の払込につき単にその外形のみに着目してこれを有効な払込と
認めて被上告人らの本件株式払込責任を否定したのは、審理不尽理由不備の違法が
あるものといわざるを得ず、その結果は判決に影響を及ぼすことが明らかであるか
ら、論旨は理由があり、原判決は、その余の論点に対する判断を俟つまでもなく、
破棄を免れない。
 よつて民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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