弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人東城守一、同陶山圭之輔の上告理由第二点の一の(一)について。
 原審の確定する事実関係のもとにおいては、本件依願免職処分そのものが上告人
らとその所属する労働組合との関係を動機としてされたものといえないことは明ら
かであり、したがつて、右処分が不当労働行為に当たらない旨の原審の判断は、正
当として是認するに足りる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することがで
きない。
 同(二)について。
 所論は、本件依願免職処分は不当労働行為に該当し、それゆえ当然無効である、
というが、右処分が不当労働行為に該当しないことは、前述のとおりであつて、所
論はその前提を欠く。のみならず、仮に右処分に不当労働行為に該当する瑕疵が存
するとしても、右処分がそのゆえに当然無効となるものでないことは、後述のとお
りであつて、所論はこの点においても失当である。論旨は採用することができない。
 同(三)について。
 原審の確定する事実関係のもとにおいては、本件辞職願の撤回が信義に反するも
のでないかどうか、したがつて、本件依願免職処分が違法であるかどうかというこ
とは、必ずしも明白であるとはいえない。それゆえ、右処分は、仮に違法であると
しても、その瑕疵が明白であるとはいえないので、当然無効ということはできない
旨の原審の判断は正当であり、その過程に所論の違法はない。論旨は採用すること
ができない。
 同第一点及び第二点の二、三について。
 論旨は、要するに、原判決が上告人Aを除く上告人ら(以下単に上告人らという。)
の被上告人B郵便局長に対する本件依願免職処分の取消しを求める訴え(以下本訴
という。)を不適法であるとして却下したのは、違法ひいては違憲である、という
のである。
 一 まず、本訴の適否について検討する。
 1公共企業体等労働関係法(以下「公労法」という。)二条一項二号イ(昭和四
一年法律第八号による改正前のものであるが、実質上は現行法と変りはない。)の
事業を行う国の経営する企業に勤務する一般職の国家公務員(同条二項二号参照。
以下単に現業公務員という。)であつた上告人らは、いずれも昭和三六年三月一八
日付で被上告人B郵便局長から本件依願免職処分を受けたので、同年五月四日本訴
を提起し、右処分には、本件辞職願撤回後にされたとの瑕疵、不当労働行為該当の
瑕疵などの違法事由があると主張したこと、右処分につき人事院に対する審査請求
がされていなかつたところ、第一審判決は、本訴を却下し、原判決も、本訴が行政
事件訴訟特例法(昭和二三年法律第八一号。以下「行特法」という。)二条の訴願
前置の要件を欠く不適法なものであり却下すべきであるとして、第一審判決を維持
し、控訴を棄却したこと、以上の事実は、本件記録に徴して明らかである。
 2 ところで、本件処分が国家公務員法(以下「国公法」という。)八九条一項
の処分(以下不利益処分という。)に該当するとの原審の判断は、正当として是認
することができるから、本訴の適否の問題は、結局、現業公務員に対する不利益処
分の効力を裁判上争う方法いかんという問題にかかるものと解されるところ、この
点については、およそ次のように解するのが相当である(最高裁昭和四六年(行ツ)
第一四号同四九年七月一九日第二小法廷判決参照)。
 すなわち、不利益処分は、行特法一条のいわゆる行政処分であつて、その効力を
裁判上争うには、その瑕疵が重大かつ明白であるため右処分が当然無効であるとい
えないかぎり、取消訴訟(同条参照)によることを要するのであり、不当労働行為
該当の瑕疵は、右処分の法律上の効力に影響を及ぼすが、それが重大かつ明白でな
いかぎり、当然無効の原因ではなく、取消の原因にとどまるものである。そして、
右処分に対する行政段階における救済手続が不当労働行為該当の瑕疵を争う場合と
それ以外の瑕疵を争う場合とで明確截然と二分されているが(昭和三七年法律第一
六一号による改正前の国公法九〇条、昭和三七年法律第一四〇号による改正前の公
労法二五条の五、昭和三七年法律第一六一号による改正前の公労法四〇条三項参照)、
それにも拘らず、一個同一の不利益処分に対する取消訴訟は、なお一個のものであ
つて、右瑕疵の区分は、訴訟上は単に攻撃防禦方法の提出ないし審理に関する区分
としての意味を有するにすぎず、不利益処分に不服のある者は、直ちに右処分に対
する取消訴訟を提起することができ、行特法五条所定の出訴期間内に適法に提起さ
れた訴訟においては、右処分のすべての瑕疵を争いうるのである。ただ、不当労働
行為該当の瑕疵以外の瑕疵を当事者が主張しまた裁判所が審理するについては、行
特法二条における訴願前置の趣旨に鑑み、審査請求(昭和三七年法律第一六一号に
よる国公法九〇条参照)に対する人事院の裁決を経由することを要し、これを経な
いかぎり(ただし、行特法二条但書の事由があるときは、右裁決を経由することを
要しない。)その主張、審理が制限される結果となるものである(行特法二条の訴
願前置は、右取消訴訟に関するかぎりは、出訴の要件ではなく、いわば、主張、審
理の要件であることになる。)。
 3 右に述べたところにしたがえば、行特法五条一項の期間内に提起されたこと
が明らかな本訴は、いずれも適法なものというべきであり、本件処分について審査
請求に対する人事院の裁決を経ていないから(なお、公共企業体等労働委員会に対
する不当労働行為救済の申立てが行特法二条の訴願に当たらず、また右申立てをす
ることによつて、右の審査請求に代えることができるものでないこと、本訴の提起
につき行特法二条但し書の「正当な事由」があるといえないことは、原審の判示す
るとおりであるから、右の点に関し、原判決に違法があるとの所論は失当であり、
右違法を前提とする違憲の所論は、その前提を欠く。)、本訴の訴訟手続において、
右処分に不当労働行為該当の瑕疵以外の瑕疵が存するとの点を主張、審理すること
は制限されるのを免れないが、右処分に不当労働行為該当の瑕疵が存するとの点を
主張、審理することが制限される理由はなく、したがつて、事実審裁判所としては、
本訴を却下することなく、右後者の点につき判断を示して、その請求の当否につき
結論を出すべきであつたといわなくてはならない。それゆえ、本訴を却下した第一
審判決及びそれを維持した原判決は、違法であることが明らかである。
 二 しかしながら、右の違法は、原判決の結論に影響を及ぼすものではない。そ
の理由は、次のとおりである。
 すなわち、上告人らは、第一次的に、被上告人国を相手に、本件処分が無効であ
ることを前提として郵政省職員の地位にあることの確認を請求し、第二次的に、被
上告人B郵便局長を相手に、本件処分の取消しを求める旨の本訴の請求をしている
ところ、本訴につき、事実審裁判所が実体審理を尽くすべき点が、本件処分に不当
労働行為該当の瑕疵があるか否かとの点、換言すれば、本件処分が不当労働行為に
該当するか否かとの点のみであつたことは、既に述べたとおりである。ところで、
右の点については、第一、二審において、当事者の弁論が充分に尽くされていると
いいうること、そして、第一、二審裁判所において、第一次請求につき、右の点に
関し本件処分が不当労働行為に該当しないとの判断を示していること、また、被上
告人らが常に一体となつて弁論をしているため、右の点についての第二次請求の弁
論の内容は、第一次請求のそれと全く同一であることが記録上明瞭であるから、仮
に第一、二審裁判所が第二次請求についても右の点につき実体判断を示すべきであ
るとの見解に立つとしても、第一次請求についての右判断と同一の判断を示したで
あろうことは、容易に推察しうるところである。そうであるとすると、右の点につ
いては、第二次請求である本訴についても、既に、第一、二審において充分に実体
審理が遂げられているものと看ることができるのであり、しかも、本件処分が不当
労働行為に該当しないとの原審の判断が正当であることは前述のとおりであるから、
このような場合にまで、実体審理に関する審級の利益を保障する趣旨において、民
訴法三九六条、三八八条により、原判決を破棄し、第一審判決を取り消したうえ、
本訴を第一審裁判所に差し戻すことは必要ではなく、原審の右判断にそつて、本訴
の請求につき結論を出すことが許されるものと解されるのである。右によると、本
訴の請求は、理由がないものとして棄却を免れないことになるが、その結論は、原
判決の結論よりも上告人らに不利益であるところ、民訴法三九六条、三八五条によ
ると、上告人らのみの上告にかかる本訴につき、原判決より上告人らに不利益な結
論となる判決をすることは許されないので、当裁判所は、原判決の結論を維持する
ほかなく、したがつて、原判決の前示の違法は、その結論に影響を及ぼさないこと
になる。
 それゆえ、論旨は、結局、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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