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平成一〇年(ネ)第四二六四号、平成一一年(ネ)第七九〇号 著作権侵害差止等請求
控訴、同附帯控訴事件(平成一一年五月二七日口頭弁論終結。原審・東京地方裁判
所平成九年(ワ)第一九八三九号)
         判    決
          控訴人(附帯被控訴人) 【A】こと 【B】
          控訴人(附帯被控訴人) 【C】
          控訴人(附帯被控訴人) 有限会社   一     
          右代表者代表取締役   【C】
          控訴人(附帯被控訴人)ら訴訟代理人弁護士
                      山   本   宜   成
          被控訴人(附帯控訴人) 社団法人日本音楽著作権協会
          右代表者理事      【D】
          右訴訟代理人弁護士   田   中       豊
                      藤   原       浩
                      馬   橋   隆   紀
                      岡   本   弘   哉
         主    文
 一1 控訴人(附帯被控訴人)らの本件控訴に基づき、原判決主文第三項の1
中、「控訴人らは被控訴人に対し、連帯して、一一九万二六〇三円及びうち五万三
五六〇円に対する平成五年五月一日から、同額に対する同年六月一日から、同額に
対する同年七月一日から、七万〇〇四〇円に対する同年八月一日から、同額に対す
る同年九月一日から、同額に対する同年一〇月一日から、同額に対する同年一一月
一日から、同額に対する同年一二月一日から、同額に対する平成六年一月一日か
ら、同額に対する同年二月一日から、同額に対する同年三月一日から、同額に対す
る同年四月一日から、同額に対する同年五月一日から、同額に対する同年六月一日
から、同額に対する同年七月一日から、同額に対する同年八月一日から、同額に対
する同年九月一日から、五万一三六三円に対する同年一〇月一日から各支払済みま
で年五分の割合による金員を支払え。」と命じた部分を取り消す。
  2 右部分についての被控訴人の請求を棄却する。
  3 控訴人(附帯被控訴人)らのその余の本件控訴を棄却する。
 二1 被控訴人(附帯控訴人)の本件附帯控訴に基づき、次のとおり命ずる。
 附帯被控訴人らは、附帯控訴人に対し、連帯して、一一九万二六〇三円及びうち
五万三五六〇円に対する平成五年五月一日から、同額に対する同年六月一日から、
同額に対する同年七月一日から、七万〇〇四〇円に対する同年八月一日から、同額
に対する同年九月一日から、同額に対する同年一〇月一日から、同額に対する同年
一一月一日から、同額に対する同年一二月一日から、同額に対する平成六年一月一
日から、同額に対する同年二月一日から、同額に対する同年三月一日から、同額に
対する同年四月一日から、同額に対する同年五月一日から、同額に対する同年六月
一日から、同額に対する同年七月一日から、同額に対する同年八月一日から、同額
に対する同年九月一日から、五万一三六三円に対する同年一〇月一日から各支払済
みまで年五分の割合による金員を支払え。
  2 その余の本件附帯控訴を棄却する。
 三 訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを四〇分し、その一を被控訴人(附帯
控訴人)の負担とし、その余を控訴人(附帯被控訴人)らの連帯負担とする。
 四 この判決の第二項1は仮に執行することができる。
         事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
 控訴人(附帯被控訴人。以下「控訴人」という。)らは、原判決中控訴人ら敗訴
部分の取消しとともに被控訴人(附帯控訴人。以下「被控訴人」という。)の請求
棄却及び附帯控訴棄却の判決を求め、被控訴人は、控訴棄却とともに、附帯控訴と
して原判決主文第三項と同旨の選択的給付の判決及び仮執行宣言を求めた。
第二 当事者の主張
 一 請求原因
  1 被控訴人の権利
 被控訴人は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和一四年法律第六七
号)に基づく許可を受けたわが国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽
著作物の著作権者から著作権ないしその支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移
転を受ける(内国著作物については、その著作権者から著作権信託契約約款によ
り、外国著作物については、わが国の締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作
権仲介団体との間の相互管理契約による。)などしてこれを管理し、国内の放送事
業者を始め、レコード、映画、出版、興行、社交場、有線放送等各種の分野におけ
る音楽の使用者に対して音楽著作物の使用を許諾し、その対価として使用者から著
作物使用料を徴収するとともに、これを内外の著作権者に分配することを主たる目
的とする社団法人である。
 原判決別紙「カラオケ楽曲リスト」及び「カラオケ楽曲リスト(追録)」に各記
載の音楽著作物(以下「管理著作物」という。)は、いずれも被控訴人がその著作
権者から著作権の信託的譲渡を受けて著作権を管理するものである。
  2 控訴人らの行為
  (一) 控訴人【C】(以下「控訴人【C】」という。)及び控訴人【A】こと
【B】(以下「控訴人【A】」という。)は、平成元年一二月一六日ころから、原
判決別紙店舗目録記載の店舗(以下「本件店舗」という。)において、「ビッグエ
コー上尾店」の名称で、いわゆるカラオケボックスを営んでいる。
 控訴人有限会社一 (以下「控訴会社」という。)は、平成二年五月一六日に設
立されて以来、本件店舗において、控訴人【C】及び控訴人【A】と共にカラオケ
ボックスを営んでいる。
  (二)(1) 本件店舗には、遅くとも平成五年四月一日までに原判決別紙店舗見
取図(以下「原判決別紙見取図」という。)記載のとおり、カラオケ歌唱用の部屋
が一七室(原判決別紙見取図1ないし3、5ないし18)あり、原判決別紙物件目録
記載のカラオケ関連機器が備え付けられている。
   (2) 原判決別紙見取図記載の各部屋のうち、1ないし3、5及び17の各部屋
ではレーザーディスクカラオケ(ビデオカラオケに属する。)が、6ないし15及び
18の各部屋では通信カラオケ(ビデオカラオケに属する。)が、16の部屋ではCD
カラオケ(オーディオカラオケに属する。)が、遅くとも平成五年四月一日以降現
在に至るまで、それぞれカラオケ伴奏及び歌唱に使用されている。
  (三) 本件店舗では、営業開始以来現在に至るまで、顧客から利用予定時間に
対応する代金を受領して、顧客に対し、各部屋で使用するカラオケ機器のリモコン
装置及び使用する部屋の番号札を渡し、カラオケ関連機器を設置した部屋を使用さ
せ、カラオケ関連機器を操作させて、管理著作物を再生し、伴奏音楽に合わせて顧
客に歌唱させるとともに、飲食物を提供している。また、顧客からカラオケ機器の
操作方法を尋ねられたときには、控訴人らの従業員がカラオケ機器を操作して操作
方法を教示している。
  3 控訴人らによる著作権侵害
 本件店舗において、控訴人らは、顧客に飲食物の提供を行い、カラオケボックス
であることを表示することにより顧客に音楽を鑑賞させることを営業の内容とする
旨広告し、原判決別紙物件目録記載のカラオケ関連機器を設置することにより顧客
に音楽を鑑賞させるための特別の設備を設けているから、本件店舗における営業は
著作権法施行令附則三条一号に該当し、著作権法附則一四条の適用が除外されるも
のであるところ、控訴人らは、次のとおり管理著作物の著作権を侵害している。
  (一) 伴奏音楽の再生による演奏権の侵害
 控訴人らは、原判決別紙見取図6ないし16及び18の各部屋において、通信カラオ
ケ又はCDカラオケにより、管理著作物の伴奏音楽を公に再生し、演奏権(著作権
法二二条)を侵害している。
  (二) 映画の著作物において複製されている歌詞及び伴奏音楽の再生による上
映権の侵害
 控訴人らは、原判決別紙見取図1ないし3、5及び17の各部屋において、レーザ
ーディスクカラオケの再生により、映画の著作物において複製されている管理著作
物たる歌詞及び伴奏音楽を公に再生し、その上映権(著作権法二六条二項)を侵害
している。
  (三) 顧客の歌唱による演奏権の侵害
 控訴人らは、原判決別紙見取図1ないし3及び5ないし18の各部屋において、カ
ラオケ関連機器を使って管理著作物を顧客に公に歌唱させ、演奏権(著作権法二二
条)を侵害している。
  4 控訴人らの著作権侵害による被控訴人の損害
  (一) 被控訴人は、控訴人らの平成五年四月一日から平成九年九月一〇日まで
の前記著作権侵害により、少なくとも以下のとおりの管理著作物の使用料相当額の
損害を被った。
   (1) 平成五年四月一日から平成九年八月一〇日までの使用料相当額
   ① 昭和五九年六月一日認可の著作物使用料規程第二章第二節「演奏等」の
「3 演奏会以外の催物における演奏」の「(7) その他の演奏」の規定に基づき定
められた「カラオケ歌唱室の使用料率表」によれば、カラオケボックスにおける一
部屋ごとの管理著作物の使用料相当額は、(ア)平成五年四月一日から平成九年三月三
一日までは、定員が一〇名までの部屋(以下「小部屋」という。)については、オ
ーディオカラオケで月額三〇九〇円、ビデオカラオケで月額四一二〇円、定員が一
〇名を超え三〇名までの部屋(以下「中部屋」という。)については、ビデオカラ
オケで月額八二四〇円であり、(イ)平成九年四月一日から同年八月一〇日までは、小
部屋については、オーディオカラオケで月額三一五〇円、ビデオカラオケで月額四
二〇〇円、中部屋については、ビデオカラオケで月額八四〇〇円である。
   ② 本件店舗には、小部屋が一五室(原判決別紙見取図1ないし3、5ない
し16)あり、そのうち一室(原判決別紙見取図16)ではオーディオカラオケが、そ
の他の一四室ではビデオカラオケが利用でき、また、中部屋が二室(原判決別紙見
取図17及び18)あり、これらの部屋ではビデオカラオケが利用できる。
   ③ したがって、本件店舗における平成五年四月一日から平成九年八月一〇
日までの管理著作物の使用料相当額は、合計四〇四万八四〇三円である。
   (2) 平成九年八月一一日から同年九月一〇日までの使用料相当額
   ① 平成九年八月一一日、著作権使用料規程が文化庁長官の認可を受けて一
部変更され、同日から施行されたところ、同規程第二章第二節「演奏等」の「4 
カラオケ施設における演奏等」の(1)によれば、カラオケボックスにおける同日以降
の一部屋ごとの管理著作物の使用料相当額は、小部屋については月額九四五〇円、
中部屋については月額一万八九〇〇円である。
   ② 本件店舗には、小部屋が一五室(原判決別紙見取図1ないし3、5ない
し16)あり、中部屋が二室(原判決別紙見取図17及び18)ある。
   ③ したがって、本件店舗における平成九年八月一一日から同年九月一〇日
までの一か月間の管理著作物の使用料相当額は、合計一七万九五五〇円である。
  (二) 被控訴人は、控訴人らの前記著作権侵害により、平成九年九月一一日以
降本件口頭弁論終結日までの間、控訴人らが本件店舗における管理著作物の使用を
停止するまで、管理著作物の使用料相当額の損害として一か月当たり一七万九五五
〇円の損害を被り、また、本件口頭弁論終結日より後も、同額の損害を被ることに
なる。
  (三) 被控訴人は、本件訴訟の提起を弁護士に依頼せざるを得なかったとこ
ろ、その費用は一五〇万円を下らない。
  5 控訴人らの不当利得による被控訴人の損失
 控訴人らは、前記のとおり、管理著作物につき被控訴人の許諾を得ずかつ使用料
を支払うことなく使用し、これにより右4と同額の利益を得たものであり、被控訴
人は、これにより同額の損失を被った。
  6 よって、被控訴人は、控訴人らに対し、著作権法一一二条一項に基づき管
理著作物の使用の差止めを、同条二項に基づき専ら著作権侵害行為に供された機械
又は器具である原判決別紙物件目録記載のカラオケ関連機器の本件店舗からの撤去
を求めるとともに、著作権侵害の不法行為による損害賠償又は選択的に著作権侵害
による不当利得の返還として、連帯して金五七二万七九五三円及びこれに対する原
判決別紙遅延損害金目録記載の遅延損害金並びに平成九年九月一一日から控訴人ら
が本件店舗における管理著作物の使用を停止するまで一か月当たり金一七万九五五
〇円の割合による金員を支払うことを求める(この請求額は不法行為に基づく原審
における請求額であり、原審で一部請求棄却になったものは、当審の審理の対象外
である。また、選択的な不当利得返還請求は、原判決主文第三項の1、2で認容さ
れた額を求めるものである。)。
 二 請求原因に対する認否
  1 請求原因1の事実は不知。
  2(一) 同2(一)の事実中、控訴会社が本件店舗で「ビッグエコー上尾店」の
名称でカラオケボックスを営んできたことは認めるが、控訴人【C】及び同【A】
がこれを営んできたことは否認する。同店の営業による利益は控訴会社に帰属して
いた。
 原審で、控訴人【C】及び同【A】が右営業をしてきたことを認めたのは、事実
に反し、錯誤に基づくものであり、同控訴人らはこの自白を撤回する。
   (二) 同2(二)の事実のうち、本件店舗に現在原判決別紙見取図記載のとお
り、カラオケ歌唱用の部屋が一七室あり、原判決別紙物件目録記載のカラオケ関連
機器が備え付けられていることは認める。原判決別紙見取図17の部屋は間口三・五
メートル奥行六・五メートル、同18の部屋は間口四メートル奥行七メートルであ
り、その余の部屋は間口二・五メートル奥行六メートルである。本件店舗は、CD
カラオケ八室、レーザーディスクカラオケ七室の合計一五室の小部屋で営業を開始
し、平成五年六月に17及び18の部屋を増設したものである。通信カラオケは、その
後、平成六年一〇月に小部屋四室に、同年一二月に小部屋一室に、平成八年四月に
小部屋五室に、同年一〇月に18の部屋にそれぞれ備え付られた。なお、原判決別紙
見取図に「事務所」とあるのは厨房である。
 原判決別紙見取図記載の部屋(ただし、1、2及び16の部屋を除く。)において
現在被控訴人主張のカラオケ機器がカラオケ伴奏及び歌唱に使用されていることは
認める。1及び2の各部屋は平成八年一月一日に、16の部屋は平成九年三月に、そ
れぞれ閉鎖し、以後使用していない。
   (三) 同2(三)の事実は認める。
  3 同3は争う。
  4 同4、5の事実は否認する。
 三 控訴人らの主張
  1 使用許諾
 控訴人らが本件店舗で使用した業務用カラオケソフトは、、私的観賞に供される
市販レコードと異なり、カラオケソフト製作者が、スナック店やカラオケボックス
などで営業として利用されることを目的として製作したものである。被控訴人は、
そのような目的で業務用カラオケソフトが製作されることを熟知した上で、録音録
画許諾及び頒布許諾を与えたものである。
 このような業務用カラオケソフトの性格を考えると、被控訴人は、管理著作物の
業務用カラオケソフトの製作をその製作者に許諾していることによって、控訴人ら
が右製作者との契約に基づいて、本件店舗において右カラオケソフトを再生し、こ
れに合わせて顧客に歌唱させることについても許諾をしているというべきである。
カラオケソフト製作者から使用料を徴収した被控訴人が、更にカラオケスナック店
等から使用料を徴収するのは、使用料の二重取りに当たり、許されない。
  2 カラオケボックスについての使用許諾料の未認可
 被控訴人の管理著作物の使用許諾料徴収は、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法
律二条ないし四条により、文化庁長官の許認可に基づかなければならない。ところ
が、被控訴人がカラオケボックスについて著作物使用料の認可を受けたのは平成九
年八月一一日に至ってであるから、それより前の著作物使用料の請求は許されな
い。控訴人らが使用料支払を強制されるのは、憲法一三条及び三一条に反する。
  3 支払免除規定の適用
 カラオケボックスにおけるカラオケ使用が、被控訴人の著作物使用料規程の第二
章第二節「演奏等」の「3 演奏会以外の催物における演奏」に当たるとしても、
その使用料は、同節の「4 社交場における演奏等」によるべきである。本件店舗
のボックスのうち、原判決別紙見取図17の部屋の客席面積は二二・七五㎡、18の部
屋は二八㎡で、その他はいずれも一六・五㎡(五坪)以内の客席面積しかない。そ
して、17及び18の部屋は特定の団体客を対象とした宴会場に該当する。社交場にお
ける演奏等については、被控訴人の右規程によれば、団体客、招待客など主として
特定の客を対象とする宴会が行われる宴会場は、その面積が三三㎡(一〇坪)ま
で、その他は客席面積が一六・五㎡(五坪)までの場合、その使用料の支払を免除
する、とされているから、本件店舗の各ボックスについては、使用料が免除され
る。
 もし本件店舗について管理著作物の使用料を支払わなければならないとすると、
カラオケボックス以外の同面積の飲食店や宿泊施設の宴会場に比して著しく不公
平、不均衡であり、公序良俗に反し無効である。
  4 通信カラオケの使用許諾料の未認可
 被控訴人が通信カラオケについて著作物使用許諾料の認可を受けたのは、平成九
年八月一一日であったから、それより前の通信カラオケの管理著作物使用料の請求
は許されない。
  5 権利濫用
 控訴人らが被控訴人と著作物使用許諾契約を締結していないのは、専らこれまで
被控訴人が、控訴人【A】からの度重なる質問状に答えないなど不誠実な態度をと
ってきたことに起因するから、被控訴人の本件請求は権利の濫用である。
  6 消滅時効
 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求のうち、平成九年九月二二日の本訴
提起よりも三年以上前の著作権侵害分については、時効期間が経過しているので、
控訴人らはその消滅時効を援用する。
 四 控訴人らの主張に対する被控訴人の主張
 自白の撤回には異議がある。撤回に係る自白事実は、事実に反しないし、錯誤に
基づくものでもない。その他、権利の濫用、消滅時効等の控訴人らの主張はすべて
争う。
第三 当裁判所の判断
 一 甲第一、第二号証及び弁論の全趣旨によれば、請求原因1(被控訴人の権
利)の事実が認められる。
 二 請求原因2(控訴人らの行為)について
  1 請求原因2(一)の事実中、控訴会社が、本件店舗において被控訴人主張の
カラオケボックスを営んでいることは当事者間に争いがない。
 控訴人【C】及び同【A】が、本件店舗において被控訴人主張のカラオケボック
スを営んでいることについて、控訴人らは原審において自白していたが、当審の平
成一一年三月一八日の第三回口頭弁論期日において、これを撤回した。しかしなが
ら、これが事実に反することについての記載がある乙第四一号証(控訴人【A】の
陳述書)によっても、控訴人【C】及び同【A】が右カラオケボックスを営んでい
なかったことを客観的に裏付けるものではなく、他にこの事実を認めるに足りる証
拠はない(もとより、第四三、第四五、第四六号証(控訴人【C】又は同【A】の
氏名が記載されている控訴会社の名刺)はこの事実を裏付けるものではない。)。
また、弁論の全趣旨から明らかなとおり、控訴会社は平成二年五月に控訴人【C】
及び同【A】によって設立され、取締役は同控訴人らのみであって、他に役員はい
ないことのほか、平成一〇年八月二七日に、右自白があったことを前提にして、同
控訴人らに対しても被控訴人の請求を認容する原判決が言い渡されてから半年以上
も経過した後に自白を撤回した経緯並びに甲第一七ないし第一九号証及び乙第六号
証に照らしても、右乙第四一号証の陳述記載は採用することができない。したがっ
て、同控訴人らの自白が事実に反し、錯誤に基づくものであるとの点は到底認める
ことができず、自白の撤回は許されない。請求原因2(一)の事実中、同控訴人ら
が、本件店舗において被控訴人主張のカラオケボックスを営んでいることも、当事
者間に争いがないことに帰する。
  2 請求原因2(二)の事実のうち、本件店舗に、現在、原判決別紙見取図記載
のとおり、カラオケ歌唱用の部屋が一七室あり、原判決別紙物件目録記載のカラオ
ケ関連機器が備え付けられていること、現在3、5及び17の各部屋においてレーザ
ーディスクカラオケが、6ないし15及び18の各部屋において通信カラオケが、カラ
オケ伴奏及び歌唱にそれぞれ使用されていることは当事者間に争いがない。
 甲第一〇号証及び弁論の全趣旨によれば、本件店舗では、原判決別紙見取図1及
び2の各部屋において平成八年一月以降もレーザーディスクカラオケが、同16の部
屋において平成九年三月以降もCDカラオケが、いずれも引き続き現在に至るまで
カラオケ伴奏及び歌唱に使用されていることが認められる。乙第三六号証(控訴人
【A】作成の本件店舗稼動状況を示す年表)は、客観的な資料に基づくものとは認
められないので、右認定事実を左右するものではなく、他に右事実を客観的に動か
すべき証拠はない。
  3 請求原因2(三)の事実(本件店舗における営業方法等)は、当事者間に争
いがない。
 三 請求原因3(控訴人らによる著作権侵害)について
  1 以上説示したところによれば、本件店舗のカラオケ歌唱用の各部屋におい
ては、主として顧客自らが各部屋に設置されたカラオケ装置を操作し、通信カラオ
ケ又はCDカラオケにより管理著作物である伴奏音楽の再生による演奏が行われ、
管理著作物たる歌詞及び伴奏音楽の複製物を含む映画著作物であるレーザーディス
クカラオケの上映によって、管理著作物たる歌詞及び伴奏音楽の複製物の上映が行
われていることが明らかである。そして、前認定のとおり、本件店舗の経営者であ
る控訴人らは各部屋にカラオケ装置を設置して顧客が容易にカラオケ装置を操作で
きるようにした上で顧客を各部屋に案内し、顧客から求められれば控訴人らの従業
員がカラオケ装置を操作して操作方法を教示しているのであり、顧客は控訴人らが
用意した曲目の範囲内で選曲するほかないことに照らせば、控訴人らは、顧客の選
曲に従って自ら直接カラオケ装置を操作する代わりに顧客に操作させているという
ことができるから、各部屋においてカラオケ装置によって前記のとおり管理著作物
の演奏ないしその複製物を含む映画著作物の上映を行っている主体は、控訴人らで
あるというべきである。
  2 また、本件店舗のカラオケ歌唱用の各部屋においては、顧客が各部屋に設
置されたカラオケ装置を操作し、再生された伴奏音楽に合わせて歌唱することによ
って、管理著作物の演奏が行われていることが認められるところ、控訴人らは各部
屋にカラオケ装置と共に楽曲索引を備え置いて顧客の選曲の便に供し、また、顧客
の求めに応じて従業員がカラオケ装置を操作して操作方法を教示するなどし、顧客
は指定された部屋において定められた時間の範囲内で時間に応じた料金を支払い、
再生された伴奏音楽に合わせて歌唱し、歌唱する曲目は控訴人らが用意したカラオ
ケソフトに収納されている範囲に限られることなどからすれば、顧客による歌唱
は、本件店舗の経営者である控訴人らの管理の下で行われているというべきであ
り、また、カラオケボックス営業の性質上、控訴人らは、顧客に歌唱させることに
よって直接的に営業上の利益を得ていることは明らかである。
 このように、顧客は控訴人らの管理の下で歌唱し、控訴人らは顧客に歌唱させる
ことによって営業上の利益を得ていることからすれば、各部屋における顧客の歌唱
による管理著作物の演奏についても、その主体は本件店舗の経営者である控訴人ら
であるというべきである。
  3 そして、右1及び2で認定したように、伴奏音楽の再生及び顧客の歌唱に
より管理著作物を演奏し、その複製物を含む映画著作物を上映している主体である
控訴人らにとって、本件店舗に来店する顧客は不特定多数の者であるから、右の演
奏及び上映は、公衆に直接聞かせ、見せることを目的とするものということができ
る。
  4 ところで、著作権法附則一四条によれば、適法に録音された音楽の著作物
の演奏の再生については、当分の間自由に行い得るものとされている。
 しかし、同条は、公衆送信に該当するもの及び営利を目的として音楽の著作物を
使用する事業で政令で定めるものにおいて行われるものは、当分の間自由に行い得
るものから除外する旨規定しており、これに基づく政令として著作権法施行令附則
三条が規定されているところ、控訴人らは本件店舗において顧客に飲食物の提供を
行っている(当事者間に争いがない。)から、控訴人らの本件店舗における営業
は、同附則三条一号所定の「喫茶店その他客に飲食させる営業」に該当する。ま
た、顧客がカラオケボックスにおいてカラオケの伴奏音楽を再生してこれを聴くこ
と、及び、再生された伴奏音楽に合わせて歌唱を行ってこれを聴くことは、いずれ
も同条同号所定の「音楽の鑑賞」に当たり、弁論の全趣旨によれば、控訴人らは本
件店舗においてカラオケボックスであることを表示して営業している(控訴人ら
は、この点を争っていない。)から、同条同号所定の「客に音楽を鑑賞させること
を営業の内容とする旨広告し」ているというべきであり、本件店舗のカラオケ歌唱
用の各部屋に原判決別紙物件目録記載のカラオケ関連機器を設置することにより同
条同号所定の「客に音楽を鑑賞させるための特別の設備を設けている」というべき
である。
 したがって、控訴人らの本件店舗における営業は、著作権法施行令附則三条一号
の事業に該当するから、著作権法附則一四条は適用されない。
  5 以上によれば、控訴人らは、本件店舗においてカラオケ関連機器を使っ
て、①管理著作物である伴奏音楽を公に再生することにより管理著作物の演奏権を
侵害し、②映画の著作物において複製されている管理著作物たる歌詞及び伴奏音楽
を公に上映してその上映権を侵害し、③再生された伴奏音楽に合わせて管理著作物
を顧客に公に歌唱させることにより管理著作物の演奏権を侵害しているものという
べきである。
 四 控訴人らの主張について
  1 使用許諾について
 控訴人らは、被控訴人は、管理著作物の業務用カラオケソフトの製作をその製作
者に許諾していることによって、控訴人らが右製作者との契約に基づいて、本件店
舗において右カラオケソフトを再生し、これに合わせて顧客に歌唱させる行為につ
いても許諾をしている旨主張する。
 しかしながら、以下に説示するとおり、控訴人らの右主張は理由がない。
 カラオケソフトを製作する行為と、製作されたカラオケソフトをカラオケボック
スの店舗において公に再生すること、及び、これに合わせて公に顧客に歌唱させる
こととは、明らかに別個の行為というべきところ、甲第七号証の一ないし三及び甲
第八号証によれば、被控訴人と業務用カラオケソフト製作者との契約では、例え
ば、被控訴人が業務用カラオケソフト製作者である株式会社第一興商との間に締結
した録音物製造における管理著作物に関する契約(昭和六一年一月二〇日締結)に
おいて、「本使用許諾は、録音物製作者に対してのみ有効であり」(使用許諾条件
11)と記載され、使用許諾の内容は、「貴殿(株式会社第一興商)の使用許諾申請
にたいし当協会(被控訴人)の管理著作物を録音使用することを許諾いたしま
す。」と記載されていること(この契約は、録音媒体を製造して音楽著作物を録音
する態様におけるものと認められる。)、また、被控訴人と、いわゆる通信カラオ
ケの送信を営む業者(通信カラオケ事業者)が会員となっている社団法人音楽電子
事業協会との間で平成九年九月二六日に締結された「業務用通信カラオケによる管
理著作物利用に関する合意書」においては、管理著作物を、カラオケ伴奏用にコン
ピューター等の記憶装置にデータベースの構成部分として複製し、かつ送受信装置
を用いて、社交飲食店やホテル、旅館、カラオケボックス等の事業所に送信し、提
供するシステムにより、複合的に利用することについて合意されたが、同合意書に
おいては「受信先における演奏・歌唱は除く」ものであることが明記されているこ
と(合意書前文の記載)が認められる。
 これらの事実によれば、右各契約当事者となっていないカラオケボックスの営業
主体における管理著作物の再生及びこれに合わせた歌唱は、許諾の対象となってい
ないことが認められる。控訴人らは、カラオケソフト製作者から使用料を徴収した
被控訴人が、更にカラオケスナック店等から使用料を徴収するのは、使用料の二重
取りに当たり、許されない旨主張するが、右にみたように、カラオケソフトを製作
する行為と、製作されたカラオケソフトをカラオケボックスの店舗において公に再
生すること、及び、これに合わせて公に顧客に歌唱させることとは、別個の行為で
あるから、それぞれについて管理著作物についての使用料が支払われるべきもので
あり、これを違法、不当とすべき理由はないから、使用料の二重取りに当たるとす
る控訴人らの主張も、採用することができない。
  2 使用許諾料の未認可の主張について
 甲第四号証、乙第三八号証及び弁論の全趣旨によれば、カラオケボックスにおけ
る管理著作物の演奏等については、控訴人らの本件店舗における営業開始前から、
被控訴人が制定し文化庁長官の認可を受けた著作物使用料規程の第二章第二節「演
奏等」の「3 演奏会以外の催物における演奏」の「(7) その他の演奏」に該当す
るものとして、被控訴人が著作物使用料の支払を受けることができるものと解さ
れ、そのように取り扱われていたことが認められるところ、前記の本件店舗におけ
るカラオケ関連機器を使う方法による演奏等が、右の「3 演奏会以外の催物にお
ける演奏」のうちの(1)ないし(6)以外の「(7) その他の演奏」に該当するものであ
ることは明らかである。なお、甲第六号証、乙第三八号証及び弁論の全趣旨によれ
ば、平成九年八月一一日、右著作物使用料規程が文化庁長官の認可を受けて一部変
更され、カラオケボックスにおける管理著作物の演奏等については、同規程の第二
章第二節「演奏等」の「4 カラオケ施設における演奏等」に該当するものとして
規程が整備されたことが認められるが、平成九年八月一一日の一部変更により初め
てカラオケボックスにおける演奏等について被控訴人が著作物使用料の支払を受け
ることができるようになったものではないことが明らかである。
 したがって、被控訴人が、平成九年八月一一日カラオケボックスについて著作物
使用料規程一部変更の認可を受けるより前の著作物使用料の請求は許されないとす
る控訴人らの主張は採用することができない。憲法違反に関する控訴人らの主張
も、前提を欠き、失当である。
  3 支払免除規定の適用の主張について
 控訴人らは、カラオケボックスにおける使用料は、著作物使用料規程の第二章第
二節「演奏等」の「4 社交場における演奏等」のものによるべきである旨主張す
る。
 しかしながら、社交場が客に飲食をさせ、社交が行われる場所であり、客や従業
員による歌唱等はその効果を高めるための副次的な要素を持つにすぎないのに対
し、カラオケボックスは、客がカラオケ伴奏により歌唱を行うことを主眼とする場
所である点で大きな差異があるものというべきである。両者の間に著作物の使用料
に差異があるものとする被控訴人の主張に、控訴人らが主張するような不合理な点
は認められない。控訴人らは、本件使用許諾料は著しく不公平、不均衡であり、公
序良俗に反し無効であると主張するが、この主張を裏付ける事実関係を認めるに足
りる証拠はなく、採用することができない。なお、控訴人らの当審における主張中
には、ビデオカラオケ及び通信カラオケが、オーディオカラオケよりも使用許諾料
が高く設定されているのは不合理であり、不当であるとする部分があるが、前者に
は上映権に関する使用許諾料も含む場合もあり、音による伴奏だけのカラオケに比
してより顧客吸引力があることは明らかであるから、右のような差異があることを
もって、不合理であり不当であると認めることはできない。
  4 通信カラオケの使用許諾料の未認可の主張について
 カラオケボックスにおける演奏等が平成九年八月一〇日までは前記著作物使用料
規程の第二章第二節「演奏等」の「3 演奏会以外の催物における演奏」のうち
「(7) その他の演奏」に該当することは前記2で判示したとおりであるが、その演
奏の方法として通信媒体によるものが排除されていたとすべき根拠はない。前記2
で判示したところに照らせば、通信カラオケについての使用許諾料が平成九年八月
一〇日までは未認可であったとする控訴人らの主張は到底採用することができな
い。
  5 権利濫用について
 控訴人らは、控訴人らと被控訴人とのこれまでの交渉経緯等に照らし、被控訴人
の本件請求は、権利濫用である旨主張する。
 しかしながら、本件全証拠を総合しても、控訴人らが被控訴人と著作物使用許諾
契約を締結していないことが専ら被控訴人の不誠実な対応に起因するといった事情
を認めることはできない。他に、被控訴人の本件請求が権利の濫用に当たることを
裏付けるべき事実関係も認められないから、控訴人らの権利濫用の主張は採用する
ことができない。
  6 消滅時効について
 本訴は平成九年九月二二日に提起されており、その三年前の平成六年九月二二日
以前の本件著作権侵害行為に基づく損害賠償請求権につき時効中断事由の主張立証
はないので、被控訴人の主張する平成五年四月一日から平成六年九月二二日までの
著作権侵害についての不法行為に基づく損害賠償請求権は時効により消滅したもの
というべきである。
 一方、右の間については、控訴人らが共同して本件の著作権侵害行為を行うこと
により利益を得て、そのため、被控訴人において損失を被ったものというべきであ
るから、控訴人らは、その利得額を被控訴人に返還すべきである。
 五 請求原因4、5(被控訴人の損害及び損失)について
  1 控訴人らは、共同して本件の著作権侵害行為を行っており、前記認定事実
によれば右侵害行為につき控訴人らに故意又は過失があることは明らかであるか
ら、控訴人らは、右のとおり時効によって消滅したもの(不法行為に基づく損害賠
償請求権)を除き、控訴人らの右侵害行為によって被控訴人が被った損害を連帯し
て賠償すべき責任があり、また、時効によって消滅した期間の分については、控訴
人らは著作権侵害によって利得したものであるから、被控訴人が被った損失を返還
すべきところ、被控訴人が被った損害及び損失並びに控訴人らの共同して得た利得
は、少なくとも被控訴人の定める管理著作物の使用料の相当額を下回らないものと
認めるのが相当である。
 甲第四ないし第六号証及び弁論の全趣旨によれば、平成五年四月一日以降におけ
る管理著作物の使用料相当額は、請求原因4(一)(1)①、(2)①記載のとおりである
と認められる。
  2 弁論の全趣旨によれば、本件店舗におけるカラオケ歌唱用の各部屋のう
ち、原判決別紙見取図記載の1ないし3及び5ないし16の各部屋の広さは約一五平
方メートルであり、いずれも小部屋に該当すること、17の部屋の広さは約二三平方
メートル、18の部屋の広さは約二八平方メートル(各部屋の広さは控訴人らにおい
て自認するところである。)であって、その広さに照らすと、17及び18の部屋はい
ずれも中部屋に該当することが認められる。
 本件店舗がCDカラオケ八室、レーザーディスクカラオケ七室の合計一五室の小
部屋で営業を開始し、平成五年六月に中部屋二室を増設したものであること、通信
カラオケは、平成六年一〇月に小部屋四室、同年一二月に小部屋一室、平成八年四
月に小部屋五室、同年一〇月に中部屋一室に備え付けたものであることは、控訴人
らの自認するところであり、右事実に乙第二四号証の一ないし四を総合すると、平
成五年四月一日以降の本件店舗におけるカラオケ機器の使用状況は、次のとおりで
あったものと認められる。
   (ア) 平成五年四月から同年六月まで
 CDカラオケ小部屋八室、レーザーディスクカラオケ小部屋七室
   (イ) 平成五年七月から平成六年一〇月まで
 CDカラオケ小部屋八室、レーザーディスクカラオケ中部屋二室、小部屋七室
   (ウ) 平成六年一一月から同年一二月まで
 CDカラオケ小部屋四室、レーザーディスクカラオケ中部屋二室、小部屋七室、
通信カラオケ小部屋四室
   (エ) 平成七年一月から平成八年四月まで
 CDカラオケ小部屋三室、レーザーディスクカラオケ中部屋二室、小部屋七室、
通信カラオケ小部屋五室
   (オ) 平成八年五月から同年一〇月まで
 CDカラオケ小部屋一室、レーザーディスクカラオケ中部屋二室、小部屋四室、
通信カラオケ小部屋一〇室
   (カ) 平成八年一一月以降
 CDカラオケ小部屋一室、レーザーディスクカラオケ中部屋一室、小部屋四室、
通信カラオケ中部屋一室、小部屋一〇室
 甲第四ないし第六号証及び弁論の全趣旨によれば、右CDカラオケは「カラオケ
歌唱室の使用料率表」(甲第五号証)における「オーディオカラオケ」に、レーザ
ーディスクカラオケ及び通信カラオケは右使用料率表における「ビデオカラオケ」
にそれぞれ該当するものと認められる。
  3(一) 以上によれば、被控訴人が控訴人らの前記著作権侵害によって被った
使用料相当額の損害ないし損失(控訴人らの利得)は、(ア)平成五年四月から六月ま
で月額五万三五六〇円、(イ)同年七月から平成六年一〇月まで月額七万〇〇四〇円、
(ウ)同年一一月から一二月まで月額七万四一六〇円、(エ)平成七年一月から平成八年
四月まで月額七万五一九〇円、(オ)同年五月から平成九年三月まで月額七万七二五〇
円、(カ)同年四月から七月まで月額七万八七五〇円、(キ)同年八月一日から一〇日ま
で二万五四〇三円、(ク)同月一一日から同年九月一〇日まで一七万九五五〇円、(ケ)
同月一一日以降月額一七万九五五〇円であり、右損害額(損失額)を合計すると、
平成五年四月一日から平成九年九月一〇日までの侵害に係るものが合計四〇〇万二
三八三円であり、同月一一日以降の侵害に係るものが一か月当たり一七万九五五〇
円である。
   (二) そのうち時効により消滅した以外のもので、控訴人らが損害金として
賠償すべきものは、(イ)のうち平成六年九月二三日から同年一〇月まで月額七万〇〇
四〇円、(ウ)同年一一月から一二月まで月額七万四一六〇円、(エ)平成七年一月から
平成八年四月まで月額七万五一九〇円、(オ)同年五月から平成九年三月まで月額七万
七二五〇円、(カ)同年四月から七月まで月額七万八七五〇円、(キ)同年八月一日から
一〇日まで二万五四〇三円、(ク)同月一一日から同年九月一〇日まで一七万九五五〇
円、(ケ)同月一一日以降月額一七万九五五〇円であって、平成六年九月分を日割計算
すると一万八六七七円(一円未満切捨て)であるから、以上の損害額のうち平成六
年九月二三日から平成九年九月一〇日までの侵害に係るものは合計二八〇万九七八
〇円であり、平成九年九月一一日以降の侵害に係るものが一か月当たり一七万九五
五〇円である。
   (三) 右の額以外で、控訴人らが不当利得として返還すべきものは、(ア)平成
五年四月から六月まで月額五万三五六〇円、(イ)のうち同年七月から平成六年九月二
二日まで月額七万〇〇四〇円であり、平成六年九月分の二二日までの日割額は五万
一三六三円(一円未満切上げ)であるから、その合計は一一九万二六〇三円であ
る。前記判示したところによれば、控訴人らは悪意の利得者と認められるので、民
法所定の利息を付してこれらを返還すべきである。
  4 被控訴人は、本件訴訟の提起を弁護士に依頼しているところ、本件事案及
び本件請求の内容を総合すれば、控訴人らの前記著作権侵害と相当因果関係のある
弁護士費用相当の損害額は、一五〇万円を下らないものと認められる。
第四 結論
 以上によれば、控訴人らに対し、著作権法一一二条に基づき、原判決主文第一項
の管理著作物の使用差止め及び原判決主文第二項のカラオケ関連機器の本件店舗か
らの撤去を求める被控訴人の請求は理由があり、原判決主文第三項の著作権侵害の
不法行為による損害賠償請求は、第三の五3(二)のとおりの損害額(平成六年九月
二三日から平成九年九月一〇日までの各月額合計二八〇万九七八〇円及び平成九年
九月一一日以降の一か月当たり一七万九五五〇円)及び各月の損害額に対する不法
行為の後である原判決主文第三項1、2記載の日から各支払済みまで年五分の遅延
損害金の支払並びに前記(第三の五4)の弁護士費用相当損害金の支払を求める限
度において理由がある(原判決主文第三項の2の金員のうち、本件訴訟の口頭弁論
終結日の翌日以降の損害に対応する金員の支払を求める部分は、将来の給付を求め
るものであるが、あらかじめ判決を求める必要があるものと認められる。)。以上
の部分に関する原判決は相当であり、これについての本件控訴はいずれも理由がな
い。右額を超える部分の損害賠償の金銭支払を命じた原判決は取り消してその部分
の請求を棄却すべきであるが、これと選択的に当審で附帯控訴において請求された
著作権侵害の不当利得返還請求は、前記(第三の五3(三))のとおりの利得額(各
月額及び日割額合計一一九万二六〇三円)及びこれに対する各月の利得の後である
本判決主文第二項1記載の日から各支払済みまで年五分の利息の支払を求める部分
を認容すべきである。
 よって、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第一八民事部
         裁判長裁判官    永   井   紀   昭
            裁判官    塩   月   秀   平
            裁判官    市   川   正   巳

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