弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原判決主文第一項を取消す。
     控訴人Aの請求中控訴人青山建設有限会社の請求が認められないことを
条件とした部分の訴を東京地方裁判所に差戻す。
     控訴人Aのその余の控訴、控訴人青山建設有限会社の控訴をいずれも棄
却する。
     前項にかかる控訴費用は控訴人らの負担とする。
         事    実
 控訴人ら代理人は「(1)原判決を取消す。(2)被控訴人らは控訴人Aに対し
各自金九五万円を支払うべし。(3)被控訴人東京冷機工業株式会社は控訴人青山
建設有限会社に対し金三〇万円を支払うべし。(4)仮りに(3)の請求が認めら
れないときは、被控訴人らは控訴人Aに対し金一〇〇万円およびこれに対する昭和
四三年六月二六日から支払ずみまで年六分の金員を支払うべし。(5)訴訟費用は
第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は
各控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張および証拠の関係は、控訴人ら代理人において「仮り
に控訴会社の本件冷暖房取付けの工事請負契約の履行に代る損害賠償の請求が理由
がなく、かつ被控訴会社による右契約の解除が有効と認められる場合には、予備的
に被控訴会社に対して不当利得として金三〇万円の支払を求める。すなわち本件契
約成立とともに控訴会社が被控訴会社に対して支払つた金三〇万円については本件
冷暖房機引取の後はそのままこれを同会社にとどめておくことは法律上の原因を欠
くものであるから、被控訴会社は右金三〇万円を不当に利得しているものというべ
きである、被控訴会社主張の自働債権の存在を争う。」と述べ、被控訴人ら代理人
において控訴会社の右主張に対し、「被控訴会社は控訴会社に対し本件冷暖房機二
基の売買代金一五五万円より右冷暖房機を撤去し他に売却した売却額の合計金一〇
一万五、〇〇〇円を差引いた額金五三万五、〇〇〇円につき債務不履行による損害
金債権を有するものであるから、これを自働債権とし、控訴会社より右売買代金の
内金として被控訴会社が受領した金三〇万円の返還債権を受働債権として本訴にお
いて対当額につき相殺する。」と述べ、控訴人ら代理人が当審における控訴人兼控
訴会社代表者Aの尋問の結果を援用し、被控訴人ら代理人が当審証人Bの証言を援
用したほかは、原判決事実摘示のとおりであるがらこれを引用する。
         理    由
 一、 控訴人Aの本件訴訟の当事者適格の有無に関する当裁判所の判断は原判決
理由一において説示するところと同一であるがらこれを引用する。
 二、 次に当裁判所は当審における弁論および証拠調の結果をしんしやくしさら
に審究した結果、控訴人Aの控訴の趣旨(2)の請求および控訴会社の同(3)の
請求はいずれも失当としてこれを棄却すべきものと判断するものであつて、その理
由は次に附加訂正するほか原判決理由三ないし五において説示するところと同一で
あるからこれを引用する。
 (1) 原判決一四枚目表九行目に「本件契約締結に際しての、原告会社が代金
の支払を遅延したときは被告会社は無催告で解除し、直ちに本件冷暖房機を引取る
ことができる旨の特約は、」とあるのを「しかし被控訴会社は控訴会社と本件契約
締結に際し、控訴会社が代金の支払を遅延したときは、被控訴会社は無催告で契約
を解除し、直ちに本件冷暖房機を引取ることができ、控訴会社は右引取について異
議がない旨特約しているのであるから、控訴会社は右の場合に被控訴会社が契約解
除のうえ本件冷暖房機を撤去し引取ることを予め承諾していたものというべきであ
る。しかして右特約は」に訂正する。
 (2) 同一五枚目異二行目の「本件契約の解除」の次に「および機械の引取は
なんら信義則に反するものではなく、契約の解除」を加える。
 (3) 当審における控訴人兼控訴会社代表者尋問の結果中右に引用した原判決
の認定に反する部分はたやすく措信しがたい。
 三、 次に控訴会社の不当利得の主張について判断する。
 控訴会社が被控訴会社に対し本件契約成立とともに本件冷暖房工事の請負代金の
内金として金三〇万円を支払つたことは当事者間に争がなく、その後本件契約が解
除されたことは右に引用した原判決の説示するとおりであるから、控訴会社は被控
訴会社に対し不当利得として右金三〇万円の返還債権を有するものというべきであ
る。ところが当審証人Bの証言によれば、被控訴会社は本件撤去した冷暖房機二基
を合計金一〇一万五、〇〇〇円で他に売却し、控訴会社の代金支払遅延がなければ
被控訴会社が取得したであろう本件工事代金一五五万円から右金額を差引いた金五
三万五、〇〇〇円の損害をこうむつたことが認められ、しかしてこれは控訴会社の
債務不履行によつて被控訴会社がこうむつた損害であるがら、被控訴会社は控訴会
社に対して右金額の損害賠償債権を有するものというべく、しかして被控訴会社は
これを自働債権とし控訴会社の前記金三〇万円の返還債権を受働債権として相殺を
主張しているので、右相殺の結果右返還債権は消滅したものというべく、従つて控
訴会社の不当利得の主張も理由がない。
 <要旨>四、 次に控訴人Aの本件請求中控訴の趣旨(4)の請求は控訴会社の控
訴の趣旨(3)の請求の認められないことを条件としたものであつて、それ
だけをとらえればいわゆる主観的予備的併合にあたるものというべきであるが右請
求の相手方当事者である被控訴人らはすでに控訴の趣旨(2)(3)の請求の相手
方たる当事者となつているものであつて、当初から本件訴訟において第一次的に相
手方たる地位にあり、その点からいえば右併合は客観的併合の場合と変りはなく、
同一の訴訟手続内において当初から当事者として関与しつつ、他の当事者に対する
他の請求の当否について判断された後に、自己の請求が判断されるべき関係にある
ものであるから、純粋な主観的予備的請求とは異なりなんら相手方の防禦権を害せ
ず訴訟の不安定をきたすおそれはないと考えられるから、このような場合における
併合はこれを適法なものと認めて差支ない。
 五、 よつて控訴の趣旨(2)(3)の請求に関する控訴はいずれも理由がない
から、民事訴訟法第三八四条第一項によりこれを棄却し、控訴の趣旨(4)の請求
を不適法として却下した原判決は不当であるから、原判決主文第一項を取消し、さ
らに原審裁判所をして右請求の当否について審理判断させるため、同法第三八八条
によりこれを原審裁判所に差戻すこととし、訴訟費用の負担につき同法第九五条、
第九三条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 浅沼武 裁判官 岡本元夫 裁判官 田畑常彦)

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