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平成15年3月14日判決言渡同日原本領収 裁判所書記官
平成14年(ハ)第75476号 通話料金等請求事件
口頭弁論終結日 平成15年1月31日
主       文
1 被告は,原告に対し,金26万4960円及びこれに対する平成14年4月
26日から支払済みの日の前日まで年14.5パーセント(年365日の日割計
算)の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は,被告の負担とする。
 3 この判決は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請 求
  主文と同旨
第2 事案の概要
   本件は,電気通信事業を営む原告が,契約者である被告に対し通話料金等の
支払を求めたところ,被告は,利用者の気付かないままに国際電話サービスを利用
させるような接続システムを設定していた原告が,トラブル防止のために必要な一
定の措置を講じないまま,使用料金の支払いを請求するのは信義則に反し許されな
いとして争っている事案である。
 1 争いのない事実(証拠により容易に認定できる事実を含む)
  (1) 被告は,平成14年2月9日当時,訴外A株式会社の総合ディジタル通信
サービス(以下「Bサービス」という)の契約者であった(電話番号「(045)
a局b番」)。
   被告は,上記Bサービス申し込みの際に,第2種一般電話等契約を締結しな
い旨の意思表示をしなかったため,約款の定めにより,原告との間で前記第2種契
約が締結されたものとみなされることとなった。 
(2)上記加入電話により,平成14年2月9日から同年3月13日までの間
に,別紙のとおり(別紙省略),原告の国際電話サービスの利用(以下「本件サー
ビス利用」という)がされた。
(3)原告の電話サービス等契約約款には,契約者以外の者が利用した通話料に
ついても,当該契約者に支払義務がある旨規定されている。
 2 争点
(1)原告は,トラブル防止のために必要な措置を講じたか
(2)被告に対し本件使用料金を負担させることは,信義則に反し許されないか
第3 争点に対する判断
 1 証拠並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)原告は,インターネットを利用した国際情報提供サービスに関するトラブ
ルが増加したことから,総務省の要望を受け,平成7年頃から,新聞・雑誌によ
り,あるいは請求書送付の際に,利用者に対する注意を呼びかけてきた。また,平
成10年ごろからはホームページへの掲載を始め,平成11年頃からは,トラブル
が多いと思われる国際電話番号の通話については,国際電話であることを知らせる
音声ガイダンスを挿入した。そのうち,特にトラブル発生比率の高い特定地域に対
する通話について,平成13年中に,利用者が接続する前に音声ガイダンスにより
注意喚起する方法を講じた。その他,平成9年ごろから,国際電話料金が一定額
(5万円)を超えた場合には,法人・個人を問わずその時点で臨時請求書を発行し
利用者に早めに確認しても
らう措置(ただし,被告宛にこの臨時請求書を発行した事実はなかった。)や,消
費者センターなど各団体へトラブル発生の情報を提供するなどの措置を講じてき
た。
しかし,その後もトラブルは減少することなく,注意喚起による方法だけで
は対応しきれなかったため,平成14年12月16日からディエゴガルシア,セイ
シェルの二つの地域について国際ダイヤル通話等の取り扱いを当面の間休止する措
置をそれぞれ講じた。
  (2) 本件サービス利用は,被告の業務の時間中に,もっぱら被告代表者・訴外
C(以下「C」という)により行われた。Cは,インターネットについては5年程
度の使用歴があり,日常的に使用するときは,パーソナルコンピュータ(以下「パ
ソコン」という)の音声を絞り込んでいた。また,パソコンの使用中,画面上に国
際電話への接続を知らせる表示や警告を認識したことはなかった。
  (3) Cは,原告が発送した平成14年2月分の請求書を受け取る同年3月13
日を過ぎる頃まで,本件サービス利用が国際電話に接続して行われたものであるこ
とを知らず,同種トラブルについての注意喚起の情報等に触れることもなかった。
前記請求書が送付され,原告への照会により初めてその事実を知った。その後の使
用については,ホームページに掲載されているトラブル予防策に従い,画面上の表
示を注意深く観察しながら処理するよう努めたため,同種トラブルは発生しなかっ
た。
 2 以上の事実に基づいて,判断する。
  (1) 本約款には,実際の通話者が誰であるかにかかわらず契約者が通話料金を
負担する旨の定めがある。この約款は,通信事業を成り立たせるために必要なもの
であり,契約者の利益を一方的に害するものとは認められず,信義則に反するもの
とはいえない。
   しかしながら,一般の電話料金よりも高額に設定されている国際電話につい
ては,利用者が全く認識しないまま接続された場合にまで,その料金を契約者に負
担させるべきか否かについては,電気通信事業が公益的なものであるが故に,その
立場にある原告が適切な措置を講じたか否かという点とも併せて総合的に判断しな
ければならない。
  (2) 原告は,本件サービス利用時には,ホームページへの掲載や音声ガイダン
スにより,一般利用者に対する注意喚起の方法を,また,一定の地域に対する国際
電話料金が1か月5万円以上になる利用者については,法人,個人を問わず臨時請
求書を発送するなどして注意を喚起する措置を講じていた。しかし,そうした予防
策にもかかわらず,トラブルの増加に歯止めがかからず,後に,特定の地域に対す
る接続業務を停止するに至った。
  (3) これについて,被告は,原告がトラブル防止策として接続業務の停止をし
たことは,原告がこれまでの対策が不十分であったことを認めたということである
から,自らの不作為という過失に基づく請求は権利の濫用であり許されないと主張
する。
   しかし,原告が行う通信事業のメカニズム自体に瑕疵があり,それに基づい
て原告が利用料金の請求をしているのであればともかく,メカニズム自体に瑕疵が
認められない本件においては(前記のとおり,トラブル防止策のとおりに操作すれ
ば正常に作動していた。),被告の前記主張をそのまま採用することはできない。
  (4) 原告は,従来の対策を不十分として,そのメカニズムの妨害を作出してい
る原因を断つために,特定地域に対する接続停止の措置を講じている。原告のこの
措置は,結果的に被告の本件サービス利用の後になされたものであるが,準公益的
な立場にあることを踏まえた,自己の利益よりも公益を優先させることを目的とし
てとられた措置であり,一定の評価に値するものである。
ところで,トラブルの発生を事前に防止する方法としては,利用者の通話
先,通話の動機等を逐一管理することが考えられるが,そのような方法は,通信の
秘密を守るべき通信事業の性質上問題がある。
   通信事業は,国民の権利として保障されている通信の秘密の保持を原則とし
ており,本件のように,通信事業者ができ得る限りの対策を講じても防ぎきれなか
った結果については,通信の秘密が保持される限り,利用者の利益が制限されるこ
とになってもやむを得ないと解すべきである。
 また,被告が法人であることとも併せて考慮すると,被告に対し本件通話料
等を負担させたとしても,信義則に反することにはならないというべきである。
   よって,主文のとおり判決する。
東京簡易裁判所民事第1室
裁判官廣 瀬 信 義

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