弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人海野普吉、同坂上寿夫の上告趣意について。
 所論は、本件適用法令たる外国為替及び外国貿易管理法(以下、単に法という)
二七条一項三号(以下、本件規定という)の憲法二九条違反をいい、その理由とし
て、憲法二九条の解釈上、財産権の行使を制限しうるのは、公共の福祉のために必
要な場合に限られるべきであるところ、本件事案は、輸出したメリヤス糸の実際の
売買代金を越えた金額の弗建信用状を受け取り、右信用状による代金受領後その超
過分等を計算して円貨で支払つたというにすぎず、右支払が居住者に対し非居住者
のためになされたものであるとしても、その円貨は自由に外貨に変りうるものでな
く、むやみに外貨として流出するおそれはないのであるから、わが国の外貨収支面
からはプラスにこそなれマイナスにはならない、かようなわが国民経済にとつて有
利となる支払までも禁ずることとなる本件規定は、公共の福祉のために必要とされ
る範囲を越えこ財産権の行使を制限するものであり、憲法二九条に違反する、と主
張する。
 本件規定並びにこれに基づく、本件当時の外国為替管理令(昭和二五年政令第二
〇三号)一一条等の定めるところによれば、所定の主務大臣の許可ないし日本銀行
又は外国為替公認銀行の承認を受けなければ、本件のような支払はなしえないこと
とされている。かような規制を加えることが、憲法二九条に違反するかどうかにつ
いて判断するに、本件のようないわゆる預かり円の発生については、その前提とし
て既にそれに相当する外貨が本邦に入り、外国為替銀行等の手に集中されることに
より、外貨の集中という目的は一応達成されているとみることができ、しかも本件
のような預かり円の支払を自由に認めることにより、わが国輸出業者の相手方外国
輸入業者に対する便宜供与を容易ならしめ、もつてその業績伸長を通じ、わが国輸
出貿易の拡大に寄与する面がないとはいえないかもしれない。しかし、法による外
国為替及び外国貿易の管理が単に外貨の流入を促進し、集中すること、ないしは個
々の貿易業者の業績伸長のみを目的とするものでないことは、法一条に、「この法
律は、外国貿易の正常な発展を図り、国際収支の均衡、通貨の安定及び外貨資金の
最も有効な利用を確保するために必要な外国為替、外国貿易及びその他の対外取引
の管理を行い、もつて国民経済の復興と発展とに寄与することを目的とする。」と
規定されていることにかんがみるも、明らかなところである。そして、本件のよう
な預かり円の支払に対し何らの規制手段が講ぜられないものとすれば、右支払を受
けた非居住者が本邦内においてこれを外貨で他人に売り渡し、その結果、円資金が
安価に取り引きされ、円の公定相場が乱されるおそれがある一方、外国人が滞在費
として支払うため本邦に持参する外貨が預かり円の存在によつてそれだけ減少し、
間接的にもせよ外貨の流入を妨げる事態が発生することも予想される等、具体的な
実害の危険がないともいえないのである。とくに本件輸出品目(メリヤス糸)につ
いては、本件取引当時いわゆるチエツク・プライスの制度が採られていたので、本
件のような預かり円の支払が自由に許されるというのであれば、信用状の額面上は、
チエツク・プライス或いはそれ以上の取引額としておき、実際はチエツク・プライ
メを下廻つた輸出契約が行なわれ易くなり、輸出貿易上、好ましくない事態の発生
を助長することも懸念されたのである。本件規定が国民の経済活動、ひいて財産権
の行使に対しある程度の制限を加えているものであることは疑いがないけれども、
以上、説示したところにかんがみれば、右制限は、公共の福祉に適合する、合理的
なものと認むべきであり、本件規定は憲法二九条に違背するものでないから、所論
は結局において理由がないものというべきである。
 よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。
  昭和四〇年一月二〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    草   鹿   浅 之 助
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛