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平成14年3月1日判決言渡・同日判決原本領収 裁判所書記官
平成10年(ワ)第265号 地位確認等請求事件
口頭弁論終結の日 平成13年11月9日
判       決   
主       文   
1 被告は,原告に対し,金13万5864円及び内金4万4030円に対する平
成10年1月27日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を,内金3
774円に対する平成10年1月8日から支払済みまで年14.6パーセントの割
合による金員を,内金8万8060円に対する本判決確定の日の翌日から支払済み
まで年5パーセントの割合による金員をそれぞれ支払え。
2 原告のその余の請求(その余の主位的請求及びその余の予備的請求を含む。)
をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由   
第1 請求の趣旨
1 主位的請求
(1) 原告と被告との間で,原告が被告に対し,労働契約上の地位を有することを確
認する。
(2) 被告は,原告に対し,次の金員を支払え。
ア 金42万0105円(賃金)並びに内金8万4021円に対する平成10年1月
27日から,内金8万4021円に対する平成10年2月27日から,内金8万4
021円に対する平成10年3月27日から,内金8万4021円に対する平成1
0年4月28日から,及び内金8万4021円に対する平成10年5月27日から
各支払済みまでそれぞれ年6パーセントの割合による金員
イ 平成10年6月から本判決確定の日まで毎月26日限り金8万4021円(賃
金)
ウ 平成10年から本判決確定の日まで毎年7月5日限り金4万6000円,毎年1
0月20日限り2万1000円及び毎年12月5日限り5万3000円(賞与)
エ 金100万円(慰謝料)及びこれに対する平成9年12月16日から支払済みま
で年5パーセントの割合による金員
オ 金7490円(休業手当)及びこれに対する平成9年12月27日から支払済み
まで年6パーセントの割合による金員
2 予備的請求
 被告は,原告に対し,次の金員を支払え。
(1) 金7万0674円(解雇予告手当)及びこれに対する平成9年12月16日か
ら支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員
(2) 金7万0674円(解雇予告手当付加金)及びこれに対する本判決確定の日の
翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員
(3) 金7490円(休業手当)及びこれに対する平成9年12月27日から支払済
みまで年14.6パーセントの割合による金員
3 その余の請求
 被告は,原告に対し,次の金員を支払え。
(1) 金7490円(休業手当付加金)及びこれに対する本判決確定の日の翌日から
支払済みまで年5パーセントの割合による金員
(2) 金14万5060円(有給休暇非付与による損害賠償)及びこれに対する本判
決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員
(3) 金1万2000円(賞与差額)及びこれに対する平成9年12月6日から支払
済みまで年6パーセントの割合による金員
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 前提となる事実(証拠を掲記して認定した事実のほかは,当事者間に争いがな
い。)
(1) 当事者
ア 被告は,合成樹脂製品の製造,加工及び販売等を業とする株式会社である。
イ 原告は,平成3年9月ころ,労働時間は午前中の3時間45分のみ,時給は65
0円のパートタイマーとして被告に雇用され,被告の関東工場(群馬県前橋市所
在)で工場作業員として稼働していた。
(2) 関東工場の概要
ア関東工場は,昭和62年に開設され,平成9年当時,主としてカップ麺のプラ
スチック容器を製造していた。その主要設備は,容器を成形する成形機6台,容器
の印刷をする印刷機6台である(乙第13,第19,第21,第22号証,証人甲
の証言)。
イ 関東工場で稼働する従業員の内訳は,平成9年12月15日当時は正社員33
名,準社員35名,アルバイト33名,フルタイムパート1名,半日パート3名で
あり,平成10年8月20日時点では正社員33名,準社員28名,アルバイト3
4名であった(乙第13,第23,第32号証,証人甲の証言)。
  正社員は,期限の定めなく雇用され,月給制であり,原則として週休2日で,
就業時間は午前8時30分から午後5時までである。正社員のうち現業職は,主と
して成形機及び印刷機の操作に従事しており,1週間交替で,午後5時から午前1
時30分までの夜勤も行っている(乙第13号証,証人甲の証言)。
  準社員は全て女性であり,期間の定めなく雇用され,時給制であり,原則とし
て週休2日で,就業時間は午前8時30分から午後5時までで,主として成形機及
び印刷機から構成される生産ラインに配置されて,製品の検査に従事している(乙
第13号証,証人甲の証言)。
  アルバイトは全て男性であり,日給制で,原則として週休2日であり,一部の
荷役担当を除き,就業時間は午後5時から午前1時30分までの夜勤で準社員と同
じ製品の検査を夜間に行っている(乙第13号証,証人甲の証言)。
ウ 半日パートの採用
(ア) 被告は,平成2年,平成3年当時,人手不足で準社員を十分に採用できない
ことから,期間の定めなく,時給制(後に日給制)で概ね午前又は午後の3時間4
5分(後に4時間)を勤務時間とするパートタイマー(以下,これを「半日パー
ト」という。)を採用することとし,記録に残っている限り,原告を含め順次12
名を採用した(乙第14,第53号証,証人乙,同丙の各証言)。
(イ) 被告は,原告に対し,原告が被告に在籍していた当時,準社員となる機会を
与えたが,原告は,これに応じなかった。
(3) 被告の就業規則
  被告のパートタイマー,準社員用の就業規則(平成6年10月1日一部改正後
のもの,乙第2号証の1,2)は,この就業規則が適用されるパートタイマーを
「一就労日の勤務時間が社員より少なくかつ6時間以上の人」(3条1項)と規定
している(乙第2号証の1,2)。
(4) 原告の解雇の経緯
ア 平成9年10月17日,被告は,原告を含む半日パート全員に対し,生産ライン
の製品検査の機械化による剰員を理由に同年12月15日をもって退職してもらい
たい旨通告した。
イ 平成9年11月19日,原告は被告に対し,引き続き就労したい旨申し入れた。
  上記申入れに対し,同月20日,被告は原告に対し,退職慰労金として11万
1970円の支払を提示し,重ねて退職を勧奨したが,原告は同退職慰労金の受取
を断った。
ウ 被告は,平成9年12月8日,再度原告に対し,退職慰労金の受取を促し,退職
を勧奨したが,原告はこれを断った。
  被告は,同日,原告に解雇通知書を交付して同月15日限りで解雇する旨通知
した(以下,これを「本件解雇」という。)。
エ 原告は,被告に対し,平成9年12月10日ころに解雇撤回申入書を提出し,同
月15日には1か月間の有給休暇届を提出した。
オ 平成9年12月17日,原告は,被告から三鷹労政事務所を通じて提示された退
職慰労金19万3940円の受取を断った。また,原告は,そのころ労働組合ぐん
まユニオンに加入し,同月24日には被告に対し団体交渉を申し入れた。
  平成10年2月6日及び同年3月10日に被告とぐんまユニオンとの間で団体
交渉がもたれたが解決に至らず,その後団体交渉は中断された。
  また,原告は,同年4月13日に前橋簡易裁判所に解雇撤回などを求めた調停
を申し立てたが,同年6月1日に上記調停は不成立で終了した。
2 争点
(1) 本件解雇の効力
(2) 本件解雇による原告の損害の有無及びその額
(3) 原告の未払賃金等の有無及びその額
3 争点に対する当事者の主張の骨子
(1) 争点(1)(本件解雇の効力)
(被告の主張)
ア 本件解雇の効力(主位的主張)
  本件解雇は,いわゆる整理解雇としてなされたものではないが,半日パートに
適用される就業規則は,遅くとも平成9年当時以降は作成されていない。本件解雇
は,以下のような理由でなされたものであって,解雇権の濫用には当たらない。
  被告は,平成3年9月13日,原告を半日パートとして雇用したが,①半日パ
ートが従事していた生産ラインでの製品の検査を機械化したために半日パートが剰
員になったこと,②原告は,勤務地を関東工場に限定して採用され,また住所も前
橋市にあるので被告の東京本社,東京工場又は九州事業部などに配置転換すること
も不可能であること,③関東工場内においても,原告の能力からして原告を機械の
操作をする正社員に切り換えることはできず,当時,準社員にも欠員がなく,製品
検査のアルバイトは夜勤を専らとし,女性である原告をそのアルバイトに切り換え
ることは当時の労働基準法上できないことなどから,やむを得ず原告を解雇したも
のである。
  なお,前提となる事実(4)オ記載の事実に見られる原告側の硬直的な姿勢は,解
雇権濫用の判断にあたり斟酌されるべきである。
イ 本件解雇が整理解雇である場合の本件解雇の効力(予備的主張)
  原告のような半日パートには,長期雇用システムにおける正社員を整理解雇す
る場合の,いわゆる整理解雇の法理は妥当しないが,仮に,同法理によるとして
も,本件解雇の手続は,以下に述べるとおり相当である。
(ア) 人員削減の必要性(半日パートという職種の廃止の必要性)
  最近注目されている環境ホルモンの問題のために,食品用プラスチック容器を
製造している被告の受注が落ち込むことが予想され,企業体質を強化しておく必要
があった。
  半日パートが従事していた生産ラインでの製品の検査を機械化したために半日
パートが剰員になったが,その半日パートには長期雇用の期待もなく,また,勤務
時間が半日なので準社員の主要業務である生産ラインでの製品の検査に一日勤務の
準社員の代替として従事させるには,残りの半日について,常に他のパートあるい
は半日年休をとった準社員を割り当てなければならないなどの問題点があったの
で,半日パートという職種の廃止の必要性があった。
(イ) 人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(解雇回避努力)
  関東工場内においては,原告の能力からして原告を機械操作を行う正社員に切
り換えることはできず,当時,準社員にも欠員がなく,製品検査のアルバイトは夜
勤を専らとし,女性である原告をそのアルバイトに切り換えることは労働基準法上
できなかった。また,原告は,勤務地を関東工場に限定して採用され,住所も前橋
市にあるので,被告の東京本社,東京工場又は九州事業部などに配置転換すること
も不可能であった。
(ウ) 人選の合理性
前記のとおり,半日パートの職種の廃止の必要性があり,かつ半日パートの解
雇回避努力が尽くされているのであるから,半日パートを解雇対象者とする人選基
準には合理性があり,また,原告を解雇した当時には半日パートは原告だけであっ
たから人選基準の適用も公平である。
  また,原告には,①検査の基準となる製品の規格に関する上司の指示を守らな
かったことや,②製品検査において必要以上に時間をかけたり,時間がなくなると
杜撰なチェックで済ませたりと自分勝手な判断で作業を行うことがしばしばあった
などの事情があったのであるから,これらの点からも原告を解雇対象者として人選
したことには合理性がある。
(エ) 解雇手続の相当性
  被告は,平成9年10月17日,原告を含む半日パート3名及びフルタイムパ
ート1名に対して,生産ラインの製品検査の機械化による剰員を理由に,同年12
月15日を目途とする退職勧奨を行い,その結果いずれも上記期日に退職すること
に同意したが,同年11月19日,原告は就職先がなかったとして被告に雇傭の継
続を求めた(なお,原告を除く3名は上記合意のとおり退職した。)。
  被告は,平成9年11月20日,原告に対し,規定外の退職慰労金(11万1
970円)を支給することを条件として退職を勧奨したが,原告は被告の就業規則
上1日6時間以上のパートタイマーの定年が52歳までであることを理由に退職に
応じなかった。また,被告は,同年12月8日,原告に対し,上記退職慰労金に加
えて就職先を捜すことを手伝う旨申し入れたが,原告が上記定年の年齢となる平成
10年6月までの6か月分の給与相当額の支給を求めたので,退職の合意に至らな
かった。そのため,被告は,原告に対し,同月15日を解雇日とする解雇通知書を
交付したものである。
 その後も,被告は,三鷹労政事務所の助言を受け,同月10日に原告に対して
解雇ではなく会社都合退職としてはどうかと伝えたが,原告はこれに応じなかっ
た。
(被告の主張に対する原告の反論)
ア 被告の主張アは争う。半日パートである原告を整理解雇する場合には,いわゆ
る整理解雇の法理が妥当する。
イ 本件解雇が整理解雇である以上,いわゆる整理解雇の法理が妥当し,①人員削
減の必要性,②人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(解雇回避
努力),③被解雇者選定の妥当性,④解雇手続の妥当性の各要件の具備を要すると
ころ,本件では,以下のとおり,前記各要件のいずれも欠けるから,本件解雇は解
雇権の濫用であり無効である。
(ア) 人員削減の必要性
  被告は,平成9年8月の決算で過去最高の黒字を出していて,その額は,資本
金1億円に対し2億円であった。被告は,九州工場の増改築や関東工場隣接地への
大きな倉庫の建築,検査機械の導入などの設備投資を行い,平成9年には業績手当
ての支給,従業員の昇給,賞与の支給などを実施した。
  また,関東工場では,欠勤した従業員の代替要員を常に必要とする状態であっ
た上,平成9年12月20日,同月23日及び翌平成10年1月以降も休日出勤が
行われ,関東工場では本件解雇時には仕事量が増加するなど,常に人手不足の状態
にあった。現に,被告は,最初に原告等に退職勧奨を行った平成9年10月17日
の2か月前の同年8月には,準社員を2名採用しており,本件解雇後も準社員や半
日パートが行っていた職種についてアルバイトという形で募集を行っており,正社
員,準社員による残業は退職勧奨後も行われている。
  したがって,本件解雇の当時,被告に人員削減の必要性はなかった。
(イ) 人員削減の手段として解雇を選択する必要性(解雇回避努力)
  関東工場では,退職する準社員が多かったので,準社員に欠員が出ることが見
込まれていた。また,本件解雇後も,被告は,製品検査,オペレーター補助等の昼
間のアルバイトの募集もしているので,原告を解雇せずにアルバイトへ転換するこ
とも可能であった。また,被告は,原告を東京工場に配置転換することも可能であ
った。
  また,平成11年9月から本格的に操業を開始した新工場については,本件解
雇当時,数年以内にその稼働が予想されていたから,相当数の従業員の増加が必至
であった。実際,100名以上が増員された。
  したがって,原告を解雇する必要はなかった。
(ウ) 被解雇者選定に合理性のないこと
 原告は勤続期間中,母親と2人暮らしであり,被告からの給与で生活を立てて
いたので,本件解雇により生活が成り立たなくなった。また,原告は,関東工場に
おいて平均以上の働きをしていたと思っている。
(エ) 解雇手続に妥当性がないこと
 被告は,平成9年11月20日及び同年12月8日の原告との話合いにおい
て,原告に対し,就業規則を持ち出し,原告の定年は52歳であり,定年まであと
数か月しかないのだからと言って,12月15日までの退職を強要した。
  また,原告は実際には期間を定めず雇用されているにもかかわらず,被告は,
労政事務所に対し,原告の雇用契約を1年契約であると言ったと団体交渉で話すな
ど,誠意のない対応をした。
(原告の主張)
  使用者は,労働者を解雇する場合には,30日前にその旨予告するか,30日
前に予告しない場合には30日分以上の平均賃金を支払わなければならないところ
(労働基準法20条),被告は平成9年12月8日に解雇予告をしたが,解雇日は
同月15日であるにもかかわらず,解雇予告手当を支払わず,同月10日に原告か
らの解雇撤回申入れを無視して,同月16日以降については,原告の就労を拒絶
し,賃金も支払っていない。
  よって,本件解雇は労働基準法に違反するものであり,違法である。
  以上(被告の主張に対する原告の反論及び原告の主張)で述べたとおり,本件
解雇は無効であるから,原告が労働契約上の地位を有することの確認を求める。
(原告の主張に対する被告の反論)
  被告は,解雇の効力発生日をいつとするかについてはこだわっていない。した
がって,解雇の効力発生日が後の日となった場合には,これによって発生する未払
賃金はもちろん支払う予定である。なお,原告は,少なくとも解雇予告手当の受領
を拒絶してきたものである。
(2) 争点(2)(本件解雇による原告の損害の有無及びその額)
(原告の主張)
原告は,違法な本件解雇によって,人格権を侵害され,また,生存権を脅かさ
れた。かかる原告の精神的損害を慰謝するには,100万円の賠償が相当である
(主位的請求)。
(被告の主張)
  争う。
(3) 争点(3)(原告の未払賃金等の有無及びその額)
(原告の主張)
ア 賃金(主位的請求)
  原告の賃金は,本件解雇当時,1日4時間勤務で日給3745円であり,皆勤
手当が月額6000円支給されていたが,被告の関東工場の平成9年8月21日か
ら平成10年8月20日までの原告の所定労働日数は250日であり,これに皆勤
手当を含めると,上記期間の1か月の平均賃金は8万4021円となる。
  なお,原告は本件解雇前1年間に13日欠勤したが,これは被告では有給休暇
が付与されていなかったからであり,労働基準法に則して有給休暇が付与されてい
れば原告は無欠勤となるものであり,皆勤手当は全額支払われるべきである。
  よって,本件解雇が無効であることを前提に過去(遅延損害金を含む。)及び
将来の賃金の支払を求める。
イ 賞与(主位的請求及びその余の請求)
原告は,毎年7月5日に夏季賞与,12月5日に冬季賞与の支給を受けていた
が,平成8年の支給額は夏季賞与が4万7000円,冬季賞与が5万3000円,
平成9年の支給額は夏季賞与が4万6000円,冬季賞与が4万1000円であっ
た。また,原告は,平成7年以降,10月20日に2万1000円の業績賞与を支
給されていた。
  よって,本件解雇が無効であることを前提に過去(遅延損害金を含む。)及び
将来の賞与の支払を求め,また,本件解雇が無効であるか否かにかかわらず,平成
9年の冬季賞与のうち,前年のそれに比べて減額された分の差額1万2000円及
びこれに対する支払期日の翌日である平成9年12月6日から支払済みまで商事法
定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
ウ 休業手当(主位的請求,予備的請求及びその余の請求)
  平成9年11月8日及び同月15日は,出勤の予定であったが,振替休日との
ことで休みとなった。しかし,本件解雇に至るまで振替出勤は行われず,未だ休業
手当2日分7490円は支払われていない。
  よって,主位的には本件解雇が無効であることを前提に休業手当及びこれに対
する支払期日後である平成9年12月27日から支払済みまで商事法定利率年6パ
ーセントの割合による遅延損害金の支払を求め,予備的には本件解雇が無効とはい
えないことを前提に休業手当及びこれに対する上記平成9年12月27日から支払
済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条1項,同法施行令1条に規定する年
14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め,さらに本件解雇が無効
であるか否かにかかわらず休業手当付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日
から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め
る。
エ 解雇予告手当及び付加金請求(予備的請求)
  本件解雇の解雇予告は平成9年12月8日であり,解雇日は同月15日である
が,解雇予告手当はまだ支払われていない。
  よって,原告は,本件解雇が無効とはいえないときには,予備的に次のとおり
解雇予告手当及び付加金の支払(遅延損害金の支払を含む。)を求める。具体的に
は,①本件の解雇予告手当は7万0674円であるから,同金員及びこれに対する
平成9年12月16日から支払済みまで,賃金の確保等に関する法律6条1項及び
同法施行令1条に規定する年14.6パーセントの遅延損害金の支払を求め,ま
た,②労働基準法114条,20条により,解雇予告手当と同額の付加金及びこれ
に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合
による遅延損害金の支払を求める。
オ 有給休暇非付与による損害(その余の請求)
  原告は,被告で稼働している間,年次有給休暇を与えられなかった。
  したがって,平成8年4月から平成9年12月分までの賃金につき,原告の欠
勤を有給休暇に振り替えた場合の賃金額と,原告の受領賃金額の差額14万506
0円(下記(ア)ないし(サ)の合計額)が有給休暇非付与による損害となる。
(ア) 平成8年4月分2万4870円(欠勤日数6日,日給増加額1万8870
円,皆勤手当増加額6000円)
(イ) 平成8年5月分1万5435円(欠勤日数3日,日給増加額9435円,皆
勤手当増加額6000円)
(ウ) 平成8年6月分1万2290円(欠勤日数2日,日給増加額6290円,皆
勤手当増加額6000円)
(エ) 平成8年10月分1万2290円(欠勤日数2日,日給増加額6290円,
皆勤手当増加額6000円)
(オ) 平成8年11月分1万2290円(欠勤日数2日,日給増加額6290円,
皆勤手当増加額6000円)
(カ) 平成9年3月分6145円(欠勤日数1日,日給増加額3145円,皆勤手
当増加額3000円)
(キ) 平成9年4月分1万5435円(欠勤日数3日,日給増加額9435円,皆
勤手当増加額6000円)
(ク) 平成9年5月分1万2290円(欠勤日数2日,日給増加額6290円,皆
勤手当増加額6000円)
(ケ) 平成9年6月分6145円(欠勤日数1日,日給増加額3145円,皆勤手
当増加額3000円)
(コ) 平成9年9月分6145円(欠勤日数1日,日給増加額3145円,皆勤手
当増加額3000円)
(サ) 平成9年11月分2万1725円(欠勤日数5日,日給増加額1万5725
円,皆勤手当増加額6000円)
  よって,本件解雇が無効であるか否かにかかわらず,有給休暇非付与による損
害金14万5060円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民
法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)
ア 賃金
  平成9年8月21日から平成10年8月20日までの原告の所定労働日数が2
50日であることは認めるが,その余は否認する。
  原告の解雇当時の日給は3145円であり,通勤手当(出勤の場合のみ支給す
る。)は日額600円であった。
イ 賞与
原告の平成8年の賞与支給額が夏季4万7000円,冬季5万3000円,平
成9年の賞与支給額が夏季4万6000円,冬季4万1000円であったこと,原
告が,平成7年から平成9年まで,2万1000円の業績賞与を支給されていたこ
とは認める。
 賞与は,過去の労働に対する対価の面とともに,各従業員の将来の可能性に対
する期待の面を含んでいるが,半日パートは将来の可能性に対する期待の面がなく
なったので,平成9年の冬季賞与を減額した。
  そもそも,業績賞与は,半日パート従業員に一律に支給するものではなく,業
績賞与支給基準にそって,利益に貢献した者に利益の一部を分配するものであるか
ら,原告が当然に一定の額の支給を受ける権利を有するものではない。
ウ休業手当
 平成9年11月8日及び同月15日は,出勤の予定であったが,振替休日との
ことで休みとなったこと,この2日に替わる出勤は原告解雇まで行われなかったこ
と,2日分の休業手当が支払われていないことは認める。
  被告は,振替出勤日の原告の出勤を不能とするために原告を解雇したものでは
ない。
エ 解雇予告手当及び付加金請求
本件解雇の解雇予告は平成9年12月8日であること,解雇日は同月15日で
あること,解雇予告手当が支払われていないことは認める。
  被告が解雇予告手当を支払わなかったのは,当事者間で本件解雇を任意退職と
する方向で交渉が継続し,また,平成12年4月以降は,原告が解雇予告手当の受
領を拒絶することを三鷹労基署に対して表明したからである。
オ 有給休暇非付与による損害
  被告が,半日パート従業員に年次有給休暇を与えなかったことは認める。ま
た,有給休暇に振り替えるべき欠勤日数の計算については,平成8年11月は現実
の欠勤日数の内1日であること,平成9年3月については0日であることを除き,
認める。
  なお,平成7年4月から平成8年3月までの1年間では,年休基準日(平成7
年4月1日)に付与される年休は,多くても13日であるから,すべて消化してお
り,平成8年4月からの年休年度への年休の繰り越し分はない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件解雇の効力)について
(1) 本件解雇に妥当する解雇法理
  被告は,原告のような半日パートには,長期雇用システムにおける正社員を整
理解雇する場合の,いわゆる整理解雇の法理は妥当しないと主張し,原告は,本件
解雇は整理解雇であると主張してこれを争うので,まず,本件解雇に妥当する解雇
法理について検討する。
  前記前提となる事実に加えて,甲第1,第7,第11,第42,第79号証,
乙第1号証,第2号証の1,2,第3号証の1,2,第5,第6,第13,第1
4,第21,第22,第32,第40,第59号証,証人甲,同乙の各証言,原告
本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,以下のようにいうことができる。
ア 被告は,厚木プラスチック(昭和37年創業)が昭和39年に株式会社として設
立された法人であり,合成樹脂製品の製造,加工,販売等を業としているが,昭和
62年12月,群馬県前橋市に関東工場を開設した。なお,被告が開設する施設等
としては,平成9年当時,関東工場のほか,本社・工場(東京都東久留米市所在)
及び九州事業部(福岡県飯塚市所在)が存在したが,平成11年8月に本社工場が
関東工場に移設統合され,現在は,本社,関東工場及び九州事業部・工場の3施設
となっている。
  関東工場は,平成9年当時,主としてカップ麺のプラスチック容器を製造して
いたが,関東工場に勤務する被告の従業員には,大別して正社員,準社員,アルバ
イト及び半日パートの4職種があった。
(ア) 正社員は,被告への就職を希望する者のうち選考試験(書類選考,筆記試
験,面接試験及び健康診断)に合格した者であり,期間の定めなく雇用され,月給
制であり,原則として週休2日で,就業時間は午前8時30分から午後5時までで
ある。正社員のうち現業職は,主として成形機及び印刷機の操作に従事し,1週間
交代で,午後5時から翌日午前1時30分までの夜勤も行っている。
  被告は,正社員に対し,本人の能力,経験,健康,希望等を考慮し,転勤,職
務変更,配置換えなどの異動を命ずることがあり,正社員は,正当な理由なくして
異動を拒んではならない(乙第1号証,就業規則9条)とされる一方で,業務外の
傷病により引き続き3か月以上欠勤したとき,自己の都合により1か月欠勤したと
きなどは休職扱いとなり,その後勤続年数に応じて定められた期間を経過してもな
お復職ができないときに限って退職扱いとされる(乙第1号証,就業規則10条,
14条4号)。年次休暇については,有給休暇として,過去1年間の出勤率が80
パーセント以上の者に対し,初年度10日,次年度より1年当たり1日追加し,総
日数20日を限度として与えること(乙第1号証,就業規則37条),特別休暇と
して,正社員本人及び子女の結婚,本人の妻の出産,本人の配偶者,実養父母,実
養子の死亡等被告が必要と認めたとき,それぞれ1日ないし7日を与えること(乙
第1号証,就業規則38条)とされ,他に社員の福利厚生及び社員会への援助等が
定められている(乙第1号証,就業規則47条ないし49条)。なお,正社員の定
年は原則として満60歳とされ,場合により嘱託として継続雇用されることがある
(乙第1号証,就業規則15条)。
(イ) 準社員は,すべて女性であり,被告への就職を希望する者のうち被告が面接
試験等により準社員として適当と認めた者であり,期間の定めなく雇用され,時給
制であって,原則として週休2日,就業時間は午前8時30分から午後5時までで
ある。主として成形機及び印刷機から構成される生産ラインに配置されて,製品の
検査に従事している。
  準社員の異動については,業務上必要があるときは,職場又は職種を変更する
ことがある旨の規定があるのみである(乙第2号証の1,就業規則10条)。他
方,業務外の傷病により引き続き4か月以上欠勤したとき,自己の都合により1か
月欠勤したときは,休職ではなく退職理由とされている(乙第2号証の1,就業規
則11条5,6号)。年次休暇,特別休暇については正社員の場合とほぼ同様の規
定があるが(乙第2号証の1,就業規則25条,27条),特別休暇の日数は1日
ないし3日と正社員より少なく,また,有給休暇についても当初は初年度6日とさ
れていたものが数度の就業規則改定により最終的に正社員と同じ初年度10日まで
引き上げられている(乙第2号証の1,2,乙第3号証の1,2,各就業規則の2
5条)。準社員の福利厚生等については正社員と同様であるが,定年は55歳であ
る(乙第2号証の1,就業規則14条,48条ないし50条)。なお,本件解雇当
時使用されていた就業規則(乙第2号証の1)によれば,1日6時間を超えるパー
トタイマーについても,準社員と同じ就業規則の適用を受けるとされている(3条
1項)が,その改定による変遷は後記カのとおりであり,また,上記就業規則の適
用を受けるパートタイマーの定年は満52歳とされている(14条)。
(ウ) アルバイトは,すべて男性であり,日給制,原則として週休2日であり,一
部の昼勤の荷役担当を除き,就業時間は午後5時から翌日午前1時30分までの夜
勤であって,準社員と同じく製品の検査に従事している。
(エ) これらに対し,半日パートは,後記イのとおり準社員の補充として雇用され
たもので,勤務時間を概ね午前又は午後の3時間45分(後に4時間に変更され
た。)とし,期間の定めはない職種であった。
イ 平成2年,平成3年ころ,好景気による人手不足のため,被告,特に関東工場は
1日勤務の準社員を十分に採用できなかったことから,上記ア(エ)の半日パート従
業員を採用し,午前勤務の半日パート従業員1名と午後勤務の半日パート従業員1
名を組み合わせ,2名で準社員1名の代わりをさせることとし,平成2年から平成
3年にかけて,被告の記録に残る限り,原告を含めて12名の半日パート従業員を
採用した。また,被告は上記以外にも約20名の半日パート従業員を採用したが,
いずれも数日ないし1週間程度で退職したため,被告の記録にはない。
ウ ところが,半日パート従業員は午前勤務の者と午後勤務の者を組にして準社員の
代わりとするため,両者が同数確保できなければ準社員の代わりにならず,剰員が
生じてしまうこと,準社員に比べて勤務時間が短い半日パート従業員は一般に作業
の熟練度が低いため作業スピードが遅く,対を組む準社員に負担がかかる上,半日
パート従業員には短期のうちに退職する者も多いため,作業を教えてもすぐに教え
直しが必要となる傾向があり,準社員が半日パート従業員と対を組むことを嫌がる
こと,半日パート従業員を充てた部分には午前と午後で別の者が作業に従事する仕
儀になるが,半日パート従業員は準社員の代わりとして製品の検査に従事するた
め,検査の基準が人によって異なる不都合が生じることなど,半日パートの職種と
しての問題点が平成5年ころから認識されるようになった。
エ そこで,被告は,平成4年秋ころから,半日パート従業員に対し,準社員に切り
替わるよう勧奨し,現にこれに応じて半日パートから準社員に切り替わった従業員
がいた。また,被告は,平成5年12月を最後として,以後半日パート従業員を雇
用していない。なお,被告は,それまで従業員慰安旅行の対象としていなかった半
日パート従業員を平成4年秋の同旅行に参加させたが,その際も半日パート従業員
に対して1日勤務への切り替えを期待する旨伝えている。
オ 半日パート従業員の入退社の状況は,別紙1のうち(半日パート)のAないしM
及び(フルタイムパート)のNに記載のとおりである(ただし,平成10年4月1
5日に退職したMについては,平成5年12月16日に準社員に切り替わった。ま
た,上記イのとおり,上記別紙1に記載のない半日パート従業員については1週間
程度勤務しただけで退職している。)。これによれば,平成5年10月8日に退職
した2名(D,F)については退職理由に「雇止め」との記載があるが,その後に
退職した半日パート従業員についてはいずれも自己都合,会社都合,体調不良であ
って期間の定めがあることを前提とした退職理由は見当たらない。原告についても
被告作成の書面(乙第40号証)上も「雇止め」ではなく「会社都合」による退職
とされており,本件解雇の通知は「解雇通知書」と題する書面(甲第1号証)によ
り行われている。他方,本件解雇の前後に退職した準社員は同別紙のうち(準社
員)A’ないしN’に記載のとおりである。
  また,平成6年8月から平成11年1月までの被告関東工場の従業員の員数の
推移は,概ね別紙2に記載のとおりである。同別紙の「社員」ないし「アルバイ
ト」欄の数字は,被告従業員の丁(以下「被告従業員丁」という。)が作成した資
料をもとに被告従業員乙が集計したもので,その数字を単純に合計した数字が「実
質合計」,被告従業員丁が被告従業員乙に報告した要員の合計数が「予定合計」と
して記載されたものである(なお,原告の陳述書である甲第79号証には同別紙の
元となる書証(乙第32号証)について縷々その信用性がないとの主張が記載され
ているが,その細部はともかく同書証の全体的な信用性を損なうまでのものとはい
えない。)。
カ 被告の就業規則のうち,パートタイマー及び準社員用に実施されたものは,平成
2年5月21日作成にかかるものが最初であり,その後,平成3年7月21日,平
成4年8月21日,平成5年12月16日,平成6年10月1日にそれぞれ改定さ
れ,本件解雇当時は平成6年10月1日改定の同規則が実施されていたところ,こ
れらによると,上記各就業規則の適用を受けるのは,当初作成された就業規則(原
告採用当時に適用されていたと認められる平成3年7月21日の就業規則でも同
様)では,パートタイマーとして「勤務時間又は勤務日数が社員より少ない人」,
準社員として「勤務時間および勤務日数が社員と同じ人」をいうとされていたが,
平成6年10月1日実施の改定により,パートタイマーを「一就労日の勤務時間が
社員より少なくかつ6時間以上の人」とされ,本件解雇時には後者の規定が適用さ
れていた。なお,被告の就業規則には上記以外に正社員用のものがある(乙第1号
証)が,同就業規則は「嘱託,パート,アルバイト等については適用しない」とさ
れている(同就業規則2条)。
キ 上記カのうち,平成2年5月21日作成の就業規則(乙第3号証の1)15条に
は,「従業員が次の各号の1つに該当するときは,30日前に予告するか,労働基
準法の定めによる30日分の予告手当を支給して解雇する,ただし,予告の日数
は,予告手当を払った日数だけ短縮する。」旨の規定があり,上記「各号」として
以下のような小項目が存する。なお,同就業規則の規定は,上記カの各改定のいず
れに際しても変更されていない。
① 精神又は身体の障害により業務に耐えられないと認められるとき
② 勤務成績,作業能力が甚だしく劣るとき又は作業に怠慢なとき
③ 服務規律に故意に,又はしばしば違反し注意しても直らないとき
④ 会社に対して不誠実な行為があったとき
⑤ 無断欠勤が1週間以上におよんだとき
⑥ やむを得ない業務の都合により雇用の必要がなくなったとき
⑦ 秩序保持上やむを得ない事由があるとき
⑧ 業務上の傷病療養中の者に労働基準法上の打切補償をしたとき
⑨ その他各号に準じた事由のあるとき
ク 原告は,前記のとおり,平成3年9月被告に雇用され,当時は午前8時30分か
ら午後0時15分までの3時間45分の勤務であったが,平成5年ないし平成6年
ころからは終業時刻が午後0時30分となりそれに従って勤務時間も4時間とな
り,本件解雇までこの勤務時間で稼働していた。
ケ 以上認定した事実によれば,次のようにいうことができる。
(ア) 原告を含む半日パート従業員は,被告において臨時従業員の一種であると位
置づけられており,正社員ではない準社員,アルバイト及びフルタイムパートと比
べても,その処遇や採用の経緯に照らし,臨時職としての性質の強い職種であった
といえる。しかし,被告は,原告ら半日パート従業員を雇用するに際して雇用期間
の定めをしていないこと(乙第6号証によれば,むしろ,特段の事情がない限り継
続する雇用契約であったことがうかがわれる。),半日パート従業員に対する「雇
止め」による雇用契約終了も平成5年10月8日を最後に行われておらず,現に本
件解雇も「雇止め」ではなく「会社都合」による「解雇」として行われたのである
から,原告被告間の雇用関係は期間の定めのない労働契約として存在していたもの
と認めることができ,本件解雇には解雇に関する法理の適用があると解される。
(イ) これに対し,被告は,半日パート従業員は長期雇用システムにおける正社員
から最も遠くに位置づけられる非正規従業員であって,半日パート従業員である原
告に適用される就業規則は存在せず,本件解雇は民法に基づく解雇である旨主張す
る。確かに,本件全証拠によっても,本件解雇の時点において半日パート従業員に
適用される就業規則の存在は認められない。しかし,上記認定したとおり,原告を
雇用した当時の準社員及びパートタイマーを対象とする就業規則(乙第3号証の
2)にはその対象から半日パート従業員を除外する規定がなく,その後の平成4年
秋ころ以降,被告において半日パート従業員を準社員等に組み込む方針をとり,ま
た,平成6年の就業規則改定により半日パート従業員を就業規則の対象から外す旨
の規定が設けられたのである。以上によれば,準社員及びパートタイマーに適用さ
れる就業規則が元々は半日パート従業員に適用される就業規則として存在してお
り,また,半日パート従業員を就業規則の対象から外したのもその経緯に照らせば
できるだけ準社員に組み込むためであったと評価できるから,本件解雇も,民法に
基づく期間の定めのない雇用契約の解雇としていつでも被告の任意において解雇が
可能であると解するべきではなく,準社員及びパートタイマーに適用される就業規
則の規定の精神に基づきその適法性を判断すべきであると解される。
(ウ) してみると,被告の会社都合により原告を解雇した本件解雇については整理
解雇の法理の適用ないし準用があるものの,既に認定した正社員や準社員等との取
扱いの差異等から,半日パートの職種自体の廃止の必要性など整理解雇の個々の要
件を検討するにあたっては,正社員や準社員等を整理解雇する場合とは自ずから差
異が認められるべきものといえる。
(2) (1)で認定した事実に加えて,甲第1,第2,第4ないし第7号証,第9号証
の1ないし5,第10号証の1,2,第11号証,第12号証の1,2,第13な
いし第47号証,第72ないし第74号証,第76号証の1,第77ないし第88
号証,乙第2号証の1,2,第3号証の1,2,第5ないし第15号証,第17な
いし第50号証,第53ないし第55号証,第57ないし第62号証,証人甲,同
乙,同戊及び同丙の各証言,原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば,次
の事実が認められる。
ア 被告は,カップめん容器等のプラスチック容器の製造やこれらのメーカーへの納
品等を業務としているところ,関東工場はそのうちPSPを原料とするカップラー
メン容器(ラーメンカップ)の生産を主体とする工場であったが,インスタントラ
ーメンは,その販売量が袋物を含めれば年間50億食以上であるとも言われたけれ
ども,市場自体既に成熟市場分野であるとの見方がされており,また,市場に占め
る被告のシェアも大きく,今後被告における受注の大幅な増加は期待できない状況
にあった。そのため,被告は,平成9年ころ,合理化,効率化による利益増と乳製
品容器等の受注を増やすなどの方向を検討していたが,折しも以下の状況が生じ
た。
(ア) すなわち,同年8月ころから「環境ホルモン」(内分泌かく乱作用が疑われ
る化学物質)が問題視されるようになり,同年11月ころにはPSPの原料である
スチレンも内分泌かく乱作用が疑われるとの報告(論文発表)がなされたことか
ら,被告内部においても今後ラーメンカップの製品寿命が縮まるのではないかとの
意見が出されるようになった。しかも,被告の業績は平成7年度から平成9年度に
かけて伸びを示したが,関東工場についてみると平成9年10月以降生産高の落込
みが見られた。
(イ) 因みに,本件解雇後の平成10年になると環境ホルモンについて新聞や雑誌
等でも取り上げられるようになり,現に受注高も減少したことから,被告は,同年
9月ころ,関東工場の夜勤アルバイト30名に対し,20名を希望退職者として募
ること,希望退職者に対しては相応の補償をするが,在職希望の者に対しては,短
期雇用契約に切り替えを行ったうえ,いつまで雇用できるか分からず,またその者
に対してはいざ解雇となった場合に何らの補償も行えないこともあり得る旨を通告
した。
(ウ) 従前(平成7,8年ころ),関東工場には社員,準社員,パートタイマー,
アルバイトの合計で,概ね110名前後の従業員がいた。しかるに,本件解雇当時
(平成9年12月前後)には105,6名程度となり,さらに平成11年1月には
80名にまで減少するに至っている。
イ 関東工場における作業の概要は,次のとおりである。
(ア) 被告において,①フィルム状の白い原反用紙を購入し,②原反用紙を加熱発
泡させたうえ,まず,金型に入れてカップ容器を成形し,ついで,トリミングプレ
スで切り落とし(無地玉),③これを検品者が目視検査して箱詰めし(成形過
程),④箱詰めされた無地玉を機械にかけて順次印刷し(印刷過程),⑤成形,印
刷の終わった容器を出荷する。
(イ) 関東工場には,成形の機械(成形機),印刷の機械(印刷機)が各6台あ
り,その他に製函室,検品室があった。そして,準社員及び半日パート従業員は,
順次以下5種類の仕事をした。①製品の保管・運搬用段ボール箱の組み立て(製函
室),②検品(検品室),③印刷前成形品の印刷機への搬入(玉入れ),④成形機
による段ボール箱封緘,ラベル貼り,コンベア搭載,⑤成形機あるいは印刷機に2
人1組が付いて,成型あるいは印刷の終わった製品の良,不良を検品する。
  上記従業員は,当初は①ないし④を並行して行って身につけるが,1か月程度
経ってある程度②の仕事(⑤の仕事に類似する仕事である。)の経験を積むと⑤の
仕事も行うようになり,その後は原則としてローテーションを組んでそれぞれの仕
事を行うこととされていた。
(ウ) しかし,上記アに記載のとおり,被告は,合理化,効率化による利益増を図
るなどの必要から,機械化を図り人員を削減する必要に迫られ,また,平成7年7
月にいわゆるPL法が施行されたことに伴い,製品検査を確実かつ迅速に行う必要
も生じ,そこで,次のとおり機械化を図り,その結果人員に余剰が生じた。
a ポリサーターの導入(平成8年9月)。これは,製品の保管・輸送用段ボール
箱の内壁にそってポリ袋をセットする機械であり,当該導入により日勤だけでも準
社員2名が剰員となった。
b 6台の印刷機での玉入れにつき,従来は1名の準社員が1台の印刷機を担当し
ていたが,平成8年9月から1名で2台の印刷機を担当することとなり,これによ
り日勤だけでも準社員3名が剰員となった。
c 上記a,bの結果,準社員が5名剰員となり,また,準社員の補充要員である
半日パート従業員も余剰となった。そこで,被告において,これらの者を検査室で
の検品作業に回したところ,たまっていた検品対象製品が激減し,数か月分を残す
だけとなった。
d スクリュウスタッカーの導入(平成9年10月)。これは,プレスにより切り
離された成形品を最終ライン上で整列させるための機械であり,当該導入により準
社員及び半日パート従業員の人手がさらに削減可能対象となった。
ウ これより前,半日パート従業員は,勤務時間が短いなどの理由により作業の習熟
が遅いため,特にイ(イ)⑤の作業では準社員が半日パート従業員と組を作ることを
嫌がる傾向が見られ,また,半日パート従業員の場合には,午前勤務者1名と午後
勤務者1名を組み合わせて準社員1名と同じ役割を果たすことになるため,(1)に認
定したとおり,午前勤務者と午後勤務者の人数が合わないと人員に無駄が生じる結
果となり,さらに,午前勤務者と午後勤務者とで特にイ(イ)⑤の作業において検査
基準が違うことがあるため品質管理上も問題視されるようになった。
  そこで,被告は,平成4年秋以降,半日パート従業員を準社員に切り替える方
針をとり,その方針にそって半日パート従業員を社員旅行に参加させるなど福利厚
生面で準社員等とできるだけ同等に扱い,また,半日パート従業員に対して準社員
ないしはフルタイムパートへの転換を促すとともに,平成5年を最後に半日パート
従業員の新規採用をやめた。その結果,別紙1の半日パート従業員Mのように,被
告の意向に従って準社員となった者もおり,遅くとも平成8年2月以降は,半日パ
ート従業員は原告を含めて3人だけとなっていた。
エ 原告は,平成3年9月,勤務地を関東工場に限定し,1日3時間45分勤務の半
日パート従業員として被告に雇用され,勤務時間は平成5年ころから1日4時間に
変更された(前記)。そして,原告の月収は,平均すると約8万円であり,準社員
と同じくイ(イ)①ないし⑤の作業を行っていたが,平成6年ころ以降は,イ(イ)
①,②の作業のみに従事することが多くなったものであるところ,これは,原告
が,⑤の作業を行う際に被告の設定した検品基準よりも厳しい基準で検品を行うた
め作業が遅くなり,他方,そのために検査していないものがたまった場合,逆に緩
い基準で検品を行うため不良品が混入することがあったことから,周囲の被告従業
員らから原告と組になることを嫌われたためであり,周囲の被告従業員らの中に
は,原告に対し,かかる検品のやり方について注意を与えた者もあったけれども,
改善は見られなかった。
オ 被告は,平成9年10月17日,原告を含む半日パート従業員3名及びフルタイ
ムパート1名の合計4名に対し,生産ラインの機械化等による剰員を理由に同年1
2月15日をもって退職してもらいたい旨の退職勧奨を行ったが,これについて
は,原告を含めて特段の異議は出ず,同年12月15日,原告を除く3名の従業員
は,任意に退職したものであるところ,この間の同年11月19日,原告は被告に
対し,就職先を探したがなかったので引き続き就労したい旨申し入れ,これに対
し,被告は,同月20日,規定外の退職慰労金として1か月分給与8万1970円
と退職一時金3万円の合計11万1970円を支払うことで再度退職を勧奨した。
しかし,原告は,これに応じず,上記退職慰労金の受領を拒否した。
カ 被告は,同年12月8日,再度原告に対し,退職慰労金の支払に加えて就職先を
探すことを手伝う旨を申し入れたが,原告はこれに応じず,結局,被告は,同日,
原告に対し,同月15日を解雇日とする解雇通知書を交付して同日限りで解雇する
旨を通知した。なお,被告は,その後の同月10日ころ,原告に対し,解雇ではな
く会社都合退職とすることも提案したが,原告はこれにも応じなかった。
キ なお,平成9年12月(本件解雇)後における被告の動向につき付言する。
(ア) 被告は,平成10年6月ないし7月ころ,「昼バイト」の募集を行ったが,
その仕事内容は,重さ約100キログラムの材料のロールを成形機の所定の位置に
設置することなど,その仕事対象としては男性のみが想定されていた。
(イ) 被告は,旧東京工場を群馬県前橋市内に移転し,平成11年9月から関東第
1工場として操業を開始したが,以下の事情によるものである。確かに,旧東京工
場は平成6年に全面改装を行ったばかりであり,当初は最低10年は維持する予定
であった。しかし,平成10年8月,品質管理の専門家より旧東京工場の改善と前
橋市内への移転を勧められた。そこで,同年10月以降工場の統廃合が検討され,
上記のとおり,平成11年9月に前橋市での操業にこぎつけた。すなわち,本件解
雇当時(平成9年12月)には,旧東京工場の前橋市内移転の案は全く存在しなか
った。
(3) 以上(1),(2)に認定した事実をもとに,以下検討を加える。
ア 人員削減の必要性
  被告においては,半日パートにつき,平成4年秋ころ以降,その職種としての
廃止が検討されてきたものであるが,半日パート従業員の配置の困難性,2人1組
で行う作業について準社員が半日パート従業員と組を作ることを嫌がる傾向にある
こと及び機械化の状況などに照らすと,被告が半日パート従業員を職種として廃止
する方針を取ったことには合理性が認められ,いいかえれば,半日パート従業員に
ついて人員削減の必要性があったということができる。
  原告は,被告が平成9年度に最高の業績をあげ,さらに,本件解雇後もアルバ
イト等を新たに雇用したこと,平成11年に前橋市内に新工場を設置したため,新
たな雇用の必要が生じたはずであることなどを挙げて,本件解雇において人員削減
の必要性がなかった旨主張する。しかし,本件解雇後に雇用したアルバイトについ
ては,前記認定のとおり,男性のみが想定されており,その作業内容からいっても
原告を含む半日パート従業員をその要員に充てることはできず,また,旧東京工場
の移転については,本件解雇後に初めて検討されたものであり,これらの事情をも
って人員削減の必要性がなかったとすることはできない。しかも,被告は,平成9
年度に最高の業績をあげたとはいえ,本件解雇に先立つ平成9年8月ころから,関
東工場において主として製造されてきたプラスチック容器について,環境ホルモン
の問題が生じ,今後生産高の落ち込みが予想され,その後現に生産高が落ち込んだ
時期があったことなどに照らすと,平成9年度の業績のみをもって,人員削減の必
要性がないとまでいうことはできない。
イ 解雇回避努力
  被告は,半日パートの職種としての廃止をするにあたり,準社員への転換可能
な者については準社員への転換を図るとともに,できる限り任意の退職を勧奨して
きたところであるが,原告についてはその同意を得ることができなかった。したが
って,前記のとおり,本件解雇を整理解雇に準じた性質のものであるとする以上
は,原告については解雇以外の方法を取る余地がなかったか検討を要するところで
ある。
  この点,まず,原告は,関東工場に限定して被告に雇用され,前橋市に居住し
ていたことから,関東工場以外の部署である東京本社,旧東京工場,九州事業部の
いずれかに配置転換することは,原告の都合や交通費,住宅費といったコストの面
に照らし,事実上不可能というべきである。また,関東工場の他種類の従業員,す
なわちアルバイトないし準社員への転換についても,上記認定のとおり,アルバイ
トについては,重量のある物を運搬する業務が含まれているか,専ら夜勤であるた
め,女性である原告をアルバイトに配置転換することは不可能であり,準社員につ
いては,機械化の影響で準社員自体にも剰員があることや,原告の仕事振りからす
ると,やはり準社員への配置転換はできないものといわざるを得ない。
  正社員についても,採用の方法や従事する業務の内容等の点で,準社員,アル
バイト,半日パート従業員との違いが大き過ぎて,原告を正社員としなかったこと
が不適切であるとはいえない。
  以上によれば,原告が任意の退職に応じなかった以上,被告が原告を解雇した
ことは真にやむを得なかったというべきである。
ウ 人選の合理性
  被告は,本件解雇に当たり,半日パートという職種自体を廃止するため,原告
を含む半日パート従業員3名全員に退職勧奨を行い,原告を除く2名の従業員は退
職に同意して,平成9年12月15日任意退職しており,前記のとおり,半日パー
ト(職種)の廃止はやむを得ないものである以上,解雇の人選に誤りを生じる余地
はない。
エ 解雇手続の相当性
(ア) 被告は,原告より,平成9年11月19日,退職勧奨に応じない旨の返答を
受けて同年12月8日までの間,原告に対し,規定外の退職慰労金として1か月分
給与8万1970円と退職一時金3万円の合計11万1970円を支払う旨の条件
を提示し,原告がこれに応じなかったことから,上記退職慰労金の支払に加えて原
告のための再就職先を紹介する旨の提案をするなど,できる限り誠意をもって原告
に対したものといえる。
  この点,原告は,平成9年12月10日から同月14日にかけて被告従業員と
原告との間でなされた電話でのやりとり,本件解雇後の離職票の送付,原告の定年
などの事項について,被告従業員らが団体交渉や本件訴訟の場において矛盾した供
述をしており,また,被告従業員らは実際には誠意ある対応をしていない旨を主張
し,原告の陳述書(甲第11,第79号証)にもその旨の記載があるが,原告が指
摘する被告従業員らの発言はいずれも相互に矛盾するとまでいえるほど明確なもの
ではなく,また,仮にこれらの点につき相互に矛盾があったとしても,上記被告の
対応が誠意のないものであったとすることができるほどの矛盾とはいえず,原告の
上記主張は採用しない。
(イ) 上記認定した事実によれば,被告は,原告に対し,平成9年12月8日,同
月15日をもって解雇する旨の解雇通知をしたが,解雇予告手当金の支払がなされ
ていないので,同月15日限りの解雇としてはその効力を有しない。しかし,使用
者が即時解雇に固執する趣旨でないときは解雇通知から30日の経過又は30日分
の給与相当額が支払われたときに解雇としての効力が発生すると解されるところ,
弁論の全趣旨によれば,本件において被告は平成9年12月15日限りでの解雇に
固執する趣旨ではないと認められ,したがって,本件解雇自体が解雇予告手当不払
のために当然に無効となるということはできず,同月8日の解雇通知から30日が
経過した平成10年1月7日の経過により本件解雇はその効力が発生するものと解
される。
オ まとめ
  以上のとおりであって,本件解雇の無効をいう原告の請求部分は理由がない。
2 争点(2)(本件解雇による原告の損害の有無及びその額)について
 前記1において検討したとおり,本件解雇は有効にその効力を生じたものであり
違法な点は存しないから,その余の点を検討するまでもなく,争点(2)にかかる原告
の請求(慰謝料の支払)は理由がない。
3 争点(3)(原告の未払賃金等の有無及びその額)について
(1) 争点(3)ア(未払賃金)について
  本件解雇は,1(3)エ(イ)のとおり,平成10年1月7日の経過により有効とな
るところ,甲第61ないし第63号証(給与明細書)及び弁論の全趣旨によれば,
本件解雇当時の原告の基本給は,被告主張のとおり,1日あたり3145円であっ
たと認められる。また,乙第2号証の1,2(就業規則)によれば,準社員,パー
ト等の休日は日曜日,国民の祝日(振替あり),土曜日(ただし,祝日のある週は
出勤)及び年末年始(12月29日から1月4日まで)である(就業規則24条)
ことが認められる。そうすると,本件解雇の翌日である平成9年12月16日から
本件解雇の効力発生日である平成10年1月7日までの23日間において,出勤日
は14日(年末年始の7日間と日曜日2回を控除)となるので,14日分の日給額
に相当する4万4030円の限度で,原告は被告に対し未払賃金の請求ができる。
しかし,本件解雇の効力が生じる同月8日以後の賃金の支払請求は理由がない。附
帯請求については,原告の請求する同月27日からの分については理由があるとい
えるので,上記認容額にかかる附帯請求はすべて理由がある。
  なお,原告は,原告の1日当たりの基本給は3745円であったと主張する
が,甲第61号証ないし第63号証によれば,前記のとおり(3145円)であ
り,そのほか1日当たり600円の通勤手当が支給されていたことが認められると
ころ,通勤手当は一般に現実に出勤した日数を基準として支給されるものであっ
て,本件解雇後その効力が発生するまでの間について原告が現実に被告関東工場に
出勤しなかったことは当事者間に争いがないので,1日当たり600円の通勤手当
の支払を求める原告の該部分の主張は理由がない。
  また,原告は月額6000円の皆勤手当についてもその支給を求めるが,乙第
2号証の1,2によれば,被告の就業規則上,皆勤手当は現に出勤した者のうち,
その欠勤,遅刻,早退,外出等の日数,時間数が一定水準以下の者について支給さ
れることとなっていることが認められ,先にみたように,原告は現に被告関東工場
に出勤していないので,本件解雇後の皆勤手当の支給が認められる余地はなく,原
告の該部分の主張は理由がない。
(2) 争点(3)イ(未払賞与)について
  原告が,被告から毎年7月5日に夏季賞与,12月5日に冬季賞与を受けてい
たこと,平成8年の夏季賞与は4万7000円,冬季賞与は5万3000円,平成
9年の夏季賞与は4万6000円,冬季賞与は4万1000円であったこと,原告
は,被告から平成7年から平成9年までの各10月20日に,業績賞与として2万
1000円を支給されたことについては,当事者間に争いがない。
  賞与は,一般に企業の業績,経済状況によって増減することが見込まれるもの
であるところ,原告についてみても,上記のとおり,夏季及び冬季の各賞与の金額
には増減があり,業績賞与については,平成6年以前には支給されていなかったも
のであるから,平成10年以降も,平成9年に支給を受けた金額を当然受けられる
とはいえない。そして,乙第2号証の1,2によれば,被告の就業規則上は夏季及
び冬季賞与と業績賞与とは特に区別されずに会社の業績に応じて支給されるとされ
ており(46条),また,1(1)において認定したとおり,被告は,平成5年ころ以
降,半日パート従業員についてできる限り準社員等他の職種に変換することを期待
して福利厚生の向上等の措置を図ってきたこと及び業績賞与が原告に支給され始め
た時期等に照らすと,業績賞与の支給は半日パートの制度を廃止しできる限り準社
員等とその地位を同じくする方針の中で行われるようになったものということがで
き,原告については,平成10年1月7日の経過により解雇の効力が発生するもの
であり,業績賞与を受給できる資格があるということはできない。
  他方,平成10年の夏季賞与については,上記支給状況にかんがみると,その
金額はともかく,本件解雇の効力発生の日までの間の日割り計算で支給されるべき
もののようにもみえる。しかし,冒頭に述べた賞与の性質に照らせば,被告におい
て制度として廃止された地位の者に対して新たに賞与を支給すべき義務はないとい
うべきところ,1(2)に認定したとおり,平成9年12月15日を経過した後は,原
告を除き被告関東工場には半日パート従業員は1人もいない状態であったものであ
るから,被告には,原告に対し,平成10年の夏季賞与を支給すべき義務はないと
いわざるを得ない。
  また,原告は,平成9年の冬季賞与が減額されたことが不当であるとして,本
件解雇が無効であるか否かにかかわらず,同減額分相当額の支払を求めるが,やは
り,賞与の性質(前記)に照らせば,被告が従業員に対し前年と同額の冬季賞与を
保証する義務はないというべきである。
  以上のとおりであるから,賞与にかかる原告の請求はいずれも理由がない。
(3) 争点(3)ウ(本件解雇以前の休業手当)について
  原告は,当初,平成9年11月8日及び同月15日出勤予定であったが,被告
の都合で休日となり,その後本件解雇に至るまで振替出勤が実施されないままであ
ったので,この2日の休日分の休業手当を受ける権利を有する旨主張するところ,
原告が,当初,上記両日出勤予定であったこと,この両日が被告の都合で休日とな
り,その後本件解雇に至るまで振替出勤が実施されないままであったことは当事者
間に争いがなく,また,原告の日給については,前記のとおり3145円である。
  そうすると,被告は,原告に対し,該2日分の日給額6290円の100分の
60に相当する3774円を支払うべき義務があるというべきところ(労働基準法
26条),原告の請求のうち,上記金額の支払を求める部分は理由があるが,その
余の請求部分は理由がない。
  附帯請求については,休業手当が履行可能になったとき,すなわち,原告によ
る振替出勤が不可能になった日(本件解雇の効力が発生した日)である平成10年
1月8日以降についてのみ理由がある。そして,原告は,上記附帯請求の年率につ
き,本件解雇の無効を前提とする主位的請求においては商事法定利率の年6パーセ
ントと主張し,本件解雇が無効とはいえないことを前提とする予備的請求において
は年14.6パーセントと主張するが,本件解雇は,1(3)エ(イ)のとおり,平成1
0年1月7日の経過により有効となり,これにより原告は被告を退職したことにな
るところ,賃金の支払の確保等に関する法律6条1項は,「事業主は,その事業を
退職した労働者に係る退職手当を除く賃金の全部又は一部をその退職の日までに支
払わなかった場合には,その労働者に対し,当該退職の日の翌日からその支払をす
る日までの期間について,その日数に応じ,当該退職の日の経過後まだ支払われて
いない賃金の額に年14.6パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じ
て得た金額を遅延利息として支払わなければならない。」と規定し(労働基準法1
1条,同法26条により休業手当も賃金に含まれる。),これを受けて賃金の支払
の確保等に関する法律施行令1条は上記政令で定める率を14.6パーセントであ
る旨規定する。したがって,被告は,原告に対し年14.6パーセントの遅延損害
金を支払う義務を負うというべく,休業手当については,上記限度で認容すること
とする。
(4) 争点(3)エ(解雇予告手当及び付加金)について
  原告は,解雇予告手当及び付加金の支払を求めるが,前記のとおり,本件解雇
は,平成10年1月7日の経過により解雇としての効力が発生するものであるとこ
ろ,上記(1)のとおり,本件解雇の効力発生日までの賃金相当額の支払請求を認める
以上,解雇予告手当及び付加金の支払を求める権利は認められず,原告のこの部分
の請求は理由がない。
(5) 争点(3)オ(有給休暇非付与による損害)について
ア 被告が原告に対し有給休暇を与えていなかったこと及び原告が平成8年4月か
ら同年6月までの間に11日間,同年10月に2日間,同年11月から平成9年6
月までの間に9日間,同年9月に1日間,同年11月に5日間,それぞれ欠勤した
ことは,当事者間に争いがない。
イ ところで,原告入社時の平成3年7月21日改定の就業規則(乙第3号証の
2)によれば,以下のとおりである。①有給休暇は準社員,パート従業員のうち,
2月,5月,8月,11月の各20日のいずれかを基準日として過去1年間の出勤
率が80パーセント以上となる従業員について,8日間与えられる。②ただし,入
社後最初の基準日が満1年を超えることとなる場合の基準日は,満9か月を経過し
た後の基準日とする(同就業規則25条1項)。③翌基準日より勤続1年につき1
日を加算し,総日数は20日を限度とする(同就業規則25条2項)。
  これによると,原告は,平成3年9月に被告に雇用されたものであるから(前
記),平成4年8月20日(上記就業規則25条1項ただし書)に8日間の有給休
暇を取得し,同日から3年を経過した平成7年8月20日時点では11日間の有給
休暇を取得できることになる。そして,原告は同日以後1年間(具体的には平成8
年4月から同年6月までの間)に11日間欠勤しているから,同欠勤日数をすべて
有給休暇として消化できる。また,原告は,平成8年8月20日時点では12日間
の有給休暇を取得できることになるところ,原告は,同日以後1年間(具体的には
平成8年10月,同年11月から平成9年6月まで)に合計11日間欠勤している
から,同欠勤日数をすべて有給休暇として消化でき,さらに,原告は,平成9年8
月20日時点では13日間の有給休暇を取得できることになるところ,原告は,同
日以後本件解雇まで(具体的には平成9年9月及び同年11月)に合計6日間欠勤
しているから,同欠勤日数をすべて有給休暇として消化できることになる。以上の
とおり,原告入社時の就業規則の規定を適用すれば,原告は,その主張する合計2
8日間の欠勤について,すべて有給休暇を消化したものとみることができる。
ウ これに対し,本件解雇時の就業規則(乙第2号証の1)によれば,以下のとお
りである。①有給休暇は,1日6時間以上勤務の準社員及びパートの従業員のう
ち,4月又は10月の各15日のいずれかを基準日として,過去半年間の出勤率が
80パーセント以上となる従業員について,10日間与えられる(同就業規則25
条1項)。②翌基準日より勤続1年につき1日を加算し,総日数は20日を限度と
する(同就業規則25条2項)。これによると,原告には上記就業規則の各規定が
当然には適用されないが,前記のとおり,原告にも同就業規則の規定が準用ないし
類推されるべきである。そこで同規則を基準として有給休暇の日数を計算すると,
原告は同規則が施行された平成6年10月1日から最も近い基準日である同月15
日に10日間の有給休暇を取得し,その後1年を経過した平成7年10月15日時
点では,原告は11日間の有給休暇を取得できることになる。そして,原告は同日
以後1年間(具体的には平成8年4月から同年6月まで及び同年10月)に13日
間欠勤しているから,そのうち11日間を有給休暇として消化できる。また,原告
は,平成8年10月15日時点では12日間の有給休暇を取得できることになると
ころ,原告は,同日以後1年間(具体的には同年11月から平成9年6月まで及び
同年9月)に合計10日間欠勤しているから,同欠勤日数をすべて有給休暇として
消化でき,さらに,原告は,平成9年10月15日時点では13日間の有給休暇を
取得できることになるところ,原告は,同日以後本件解雇まで(具体的には平成9
年11月)に5日間欠勤しているから,同欠勤日数をすべて有給休暇として消化で
きることになる。以上のとおり,本件解雇時の就業規則の規定を適用すれば,原告
は,その主張する合計28日間の欠勤のうち26日間について有給休暇を消化した
ものとみることができる。
エ このように,原告に原告入社時の就業規則の規定を適用するか,本件解雇時の
就業規則の規定を適用するかにより結論が異なるのであるが,本件全証拠を総合し
ても,かかる場合にいずれの就業規則の規定を適用するかについての経過規定等の
存在が認められないため,原告に有利な規定を適用するのが相当であると解され
る。そうすると,原告は,その主張する28日間の欠勤すべてについて有給休暇を
取得したものということができるから,原告には上記日数分の賃金を請求する権利
を有することになる。
オ よって,原告の有給休暇にかかる請求のうち,被告に対し,原告の日給314
5円の28日分に相当する8万8060円の支払を求める部分の請求は理由がある
が,その余の請求には理由がない。附帯請求については,原告は,本判決確定の日
の翌日からの民法所定の年5パーセントの遅延損害金を請求するから,理由があ
る。
4 結語
  以上の判断をまとめると,主位的請求のうち,本件解雇の効力が生じる平成1
0年1月8日の前日までの賃金の支払請求中4万4030円及びこれに対する同月
27日以降の年6パーセントの割合による遅延損害金の請求部分は理由があるから
これを認容し,その余の主位的請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,予備
的請求のうち,本件解雇以前の休業手当中3774円及びこれに対する同月8日以
降の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の請求部分は理由があるからこ
れを認容し,その余の予備的請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,その余
の請求のうち,有給休暇非付与による損害金の支払請求中8万8060円及びこれ
に対する本判決確定の日の翌日以降の年5パーセントの割合による遅延損害金の請
求部分は理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこ
れを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。
   前橋地方裁判所民事第2部
       裁判長裁判官  東 條   宏
           裁判官  原   克 也
           裁判官  鈴 木 雄 輔
(別紙1) 半日パート・準社員一覧
(別紙2)  関東工場要員推移表

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