弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役八月に処する。
     本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
     原審並に当審の訴訟費用中各二分の一を被告人の負担とする。
     公訴事実中食糧管理法違反の点は無罪。
         理    由
 控訴の趣意は記録に編綴してある弁護人前島四郎提出の控訴趣意書の通りである
から茲にこれを引用する。
 論旨第一点について
 所論の要旨は原判決は事実を誤認し、ひいては法令の適用を誤つた違法がある。
即ち原判決は判示第二の所為を独立の犯罪と認め、判示第一の罪と併合罪と認定処
断しているけれども、被告人は原判示第一に記載の如く大崎駅構内で窃取した袋入
粳玄米を窃取した場所から同一駅構内で十一米五十糎位の極めて短距離の間を運ん
だのにすぎない。被告人の主観から見れば窃盗の目的遂行中途の運搬であるから、
いまだ独立した食糧管理法上の輸送違反と見るべきではなくして判示第一の窃盗の
罪に包含されるべきものであるから之を独立の犯罪と認めて判示第一の窃盗の罪と
併合罪として処断したのは違法であるというのである。
 そこで之に対して検討を加えると主要食糧の公正にして適正な配給を確保するた
め、食糧管理法は法定の除外理由がない限り、米の移動を禁ずるわけであるから、
窃盗の事後行為としての米の運搬といえども等しく食糧管理法違反の対象となるも
のであることはいうまでもない。
 <要旨>然し窃盗の事後行為としての米の輸送といい得るためには犯人が米の占有
者の所持を侵奪して犯人の実力支配内に確保して後新たな決意にもとづく
か、又は之と同視し得べき状況の下に米の輸送を開始した場合たることを要する。
犯人が他人の米についてその所持を侵奪して自己の実力支配内に移したが尚之を確
保する手段として所持の侵奪の所為即ち窃盗の所為に接着して之と密接不可分の関
係にある米の運搬の如きは、いまだ新たな決意にもとづく輸送とは解せられない。
食糧管理法上の輸送ありとはいえないものと解する。
 本件に於ては被告人は原判示第一に記載の如く大崎駅構内に於てA巡査等の監守
する原判示の米について、一応同人等の所持を侵奪して自己の実力支配内に移した
のであるが直ちに発見されて追跡され同駅構内でしかも僅々十一米五十糎位の間を
持ち運んだが遂に同所に放棄して逃走したというのであるから此の間の輸送は判示
窃盗の所為に接着して之と密接不可分の関係にあつて窃取の後新たな決意にもとづ
いて米を輸送しつつあつたものとは解し難いから食糧管理法上の独立の輸送ありと
解すべきではなくして判示第一の窃盗に包含され窃盗の一罪を構成するにすぎない
ものというべきである。
 従つて原判決が之を独立の犯罪と認め、原判示第一の窃盗と併合罪と認定して処
断したのは事実を誤認し法令の適用を誤つた違法を犯したので此の結果は判決に影
響を及ぼすことが明かである。
 此の点の論旨は理由があるから他の論旨に対する判断を加えるまでもなく、原判
決は破棄を免れない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条に則つて原判決を破棄し同法第四
百条但書に従つて当裁判所に於て更に判決する。
 罪となるべき事実並にこれを認めた証拠は、判示第二の事実を削除した外原判決
の通りであるから茲にこれを引用する。
 法律に照すと被告人の判示の所為は刑法第二百三十五条に該当するから所定刑期
の範囲内に於て被告人を懲役八月に処し、同法第二十五条に則つて本裁判確定の日
から二年間右刑の執行を猶予する。 刑事訴訟法第百八十一条に則つて原審並に当
審の訴訟費用中各二分の一を被告人の負担とする。
 本件公訴事実第二は、法定の除外事由のないのに昭和二十八年九月十日午後八時
四十分頃、勝田郡a村姫新線大崎駅構内に於て窃取した粳玄米二十九瓩を同駅構内
十一米五十糎の間を不法に携帯輸送したものであるというにあるが既に判示した如
く被告人の右所為は食糧管理法違反の罪を構成しないから、刑事訴訟法第三百三十
六条に則つて無罪の云渡をすべきものとする。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 宮本誉志男 判事 浅野猛人 判事 則井登四郎)

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