弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人村木一郎作成の控訴趣意書記載のとおりであり,これ
に対する答弁は,検察官江幡豊秋作成の答弁書記載のとおりであるから,これらを
引用する。
所論は,不法な公訴の受理,理由不備,法令の解釈適用の誤り・訴訟手続の法令
違反の主張である。
第1不法な公訴の受理の主張について
所論は,原審は,公訴事実を「被告人は,平成13年9月30日午後2時55分
ころ,東京都千代田区霞が関2丁目1番付近道路において,自動車登録番号標に赤
外線を吸収するための物を取り付けて普通乗用自動車を運転したものである。」と
し,罰条を「道路交通法120条1項9号,71条6号,東京都道路交通規則8条
13号」とする平成15年5月28日付け公訴の提起及び公訴事実を「被告人は,
平成14年12月1日午後2時42分ころ,千葉市中央区市場町1番2号付近道路
において,自動車登録番号標に赤外線を吸収するための物を取り付けて普通乗用自
動車を運転したものである。」とし,罰条を「道路交通法120条1項9号,71
条6号,千葉県道路交通法施行細則9条9号」とする平成15年7月25日付け公
訴の提起について,公訴の棄却をしなかったが,東京都道路交通規則(以下「東京
都規則」という。)8条13号及び千葉県道路交通法施行細則(以下「千葉県施行
細則」という。)9条9号は,いずれも道路交通法71条6号による委任の範囲を
逸脱しているから無効であり,仮にそうでないとしても,被告人の本件各行為につ
いて,道路交通法71条6号,東京都規則8条13号又は道路交通法71条6号,
千葉県施行細則9条9号を適用することは許されないから,本件各公訴が刑事訴訟
法339条1項2号の場合に該当するにもかかわらず,各公訴を棄却しなかった原
審には不法に公訴を受理した違法があるというのである。
そこで,記録を調査して検討すると,同法339条1項2号にいう「起訴状に記
載された事実が真実であっても,何らの罪となるべき事実を包含していないとき」
とは,起訴状の記載自体から罪とならないことが明らかな場合をいうのであり,本
件各公訴がそのような場合に該当しないことは明らかであるから,所論は失当であ
り,不法な公訴の受理をいう論旨は理由がない。
第2理由不備の主張について
所論は,原審において弁護人は,東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条
9号については,道路交通法71条6号の委任の範囲を逸脱しないよう限定解釈を
施してもなお被告人の本件各行為に適用する限りにおいては違法であるとの主張を
したが,原判決はこの主張に対しての判断を一切行わなかったから,原判決には理
由不備の違法があるというのである。
そこで,記録を調査して検討すると,刑事訴訟法378条4号にいう判決に附す
べき理由とは,有罪判決の場合には,同法335条1項所定の罪となるべき事実,
証拠の標目及び法令の適用を指すものであるところ,原判決は,罪となるべき事実,
証拠の標目及び法令の適用を示しているから,所論は失当であり,この論旨も理由
がない。
第3法令の解釈適用の誤り・訴訟手続の法令違反の主張について
所論は,原判決は,「罪となるべき事実」において,被告人は,①平成13年
9月30日午後2時55分ころ,東京都千代田区霞が関二丁目1番付近道路におい
て,自動車登録番号標に赤外線を吸収するための物を取り付けて普通乗用自動車を
運転し(原判示第1),②平成14年12月1日午後2時42分ころ,千葉市中
央区市場町1番2号付近道路において,自動車登録番号標に赤外線を吸収するため
の物を取り付けて普通乗用自動車を運転した(原判示第2)という事実を認定し,
①の事実に道路交通法120条1項9号,71条6号,東京都規則8条13号,②
の事実に道路交通法120条1項9号,71条6号,千葉県施行細則9条9号を適
用したが,東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号は,いずれも道路交
通法71条6号による委任の範囲を逸脱しているから無効であり,仮に道路交通法
71条6号による委任の範囲を逸脱しないよう東京都規則8条13号及び千葉県施
行細則9条9号の適用範囲を限定して解釈したとしても,道路交通法71条6号,
東京都規則8条13号又は道路交通法71条6号,千葉県施行細則9条9号を本件
に適用することは許されず,殊に,東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条
9号は,その実態においてそもそも違憲である自動車ナンバー自動読取りシステム
(いわゆる「Nシステム」。以下「Nシステム」という。)の捕捉を逃れることを
刑事罰をもって規制しようとするものであり,本件に道路交通法71条6号,東京
都規則8条13号又は道路交通法71条6号,千葉県施行細則9条9号を適用する
ことは許されず,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用の
誤り・訴訟手続の法令違反があるというのである。
そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果も併せて検討すると,本
件に道路交通法71条6号,東京都規則8条13号又は道路交通法71条6号,千
葉県施行細則9条9号を適用した原判決は,当裁判所としても,その結論において
正当として是認することができる。
すなわち,道路交通法71条は,1号ないし5号の5において車両等の運転者の
一般的な遵守事項について定めているが,6号は,各都道府県公安委員会が地方の
特殊性に応じて運転者の遵守義務を定めるため,公安委員会に対し,1号ないし5
号の5までに掲げるもののほか,道路又は交通の状況により,公安委員会が道路に
おける危険を防止し,その他交通の安全を図るため必要と認めるときは,車両等の
運転者の遵守事項を定めることができる権限を委任したものである。そして,東京
都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号は,赤外線による自動速度違反取締
り装置(いわゆるオービス,以下「オービス」という。)による取締りを逃れるた
め,ナンバープレートに赤外線を吸収し又は反射するための物を取り付けて高速走
行をする者があるという交通の状況にかんがみ,ナンバープレートにそのような物
を取り付けて自動車を運転する行為自体を取り締まることによって,オービスによ
る取締りの実効性を確保し,そのような者による危険な高速走行を防止することを
目的として規定されたものである(甲15,16)ところ,東京都規則8条13号
及び千葉県施行細則9条9号は,弁護人が主張するような限定解釈をしなければ道
路交通法71条6号の委任の範囲を逸脱するものとは解されず,その範囲に止まる
ものと解するのが相当である。以下,所論について順次検討する。
1所論は,道路交通法71条6号は「前各号に掲げるもののほか,道路又は交
通の状況により,公安委員会が道路における危険を防止し,その他交通の安全を図
るため必要と認めて定めた事項」と規定しているが,このような法文上明らかなと
おり,同法71条6号は①「道路又は交通の状況」及び②「道路における危険を防
止し,その他交通の安全を図るため」というの二つの要件を課しているところ,道
路交通法71条1号ないし5号の5を見る限り具体的かつ客観的な道路状況あるい
は交通状況を前提として,具体的かつ現実的な危険防止や交通安全の確保を内容と
したものが列挙されていることから,6号にある「道路又は交通の状況」という限
定も客観的なものでなくてはならない。また,「道路における危険を防止し,その
他交通の安全を図るため」という限定も具体的かつ現実的なものでなくてはならず,
例えば,東京都規則8条1号から12号までを見ると(千葉県施行細則でもほぼ同
様の内容が規定されている。),具体的かつ客観的な道路状況や交通状況を前提と
して,具体的かつ現実的な危険防止や交通安全の確保を内容とするものが羅列され
ていることが分かる。しかしながら,本件で問題とされている東京都規則8条13
号,千葉県施行細則9条9号は,「道路又は交通の状況」を一切問うことなく,単
にナンバープレートに赤外線を吸収し又は反射するための物を装着して車両を運転
する行為自体を禁止するという体裁になっており,そもそも「道路又は交通の状
況」という枠がはまっているといえるのかどうか自体が怪しく,上記のような物を
装着することと「道路又は交通の状況」とがどのように関わるのか疑問を抱かざる
を得ないし,このような物を装着して車両を運転する行為と道路交通上の具体的現
実的な危険の防止との関連性が皆目理解できないとしかいいようがない。したがっ
て,東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号は,道路交通法71条6号
の委任の範囲を逸脱した無効な規定である,と主張する。
しかしながら,道路交通法71条の規定を見ると,1号ないし3号,5号の4の
規定は,具体的な道路状況や交通状況を前提として運転者に徐行運転の義務等を課
すものであるが,4号ないし5号の3,5号の5の規定は,特に具体的な道路状況
や交通状況を前提とすることなく,運転者として必要な措置を講ずることを義務付
け又は運転者に一定の不作為を義務付けるものであることが明らかである。また,
東京都規則8条1号から12号までを見ると,弁護人が主張するように具体的な道
路状況や交通状況を前提とした規定もあるが,2号,3号,5号ないし8号,10
号ないし12号の各規定は,特に具体的な道路状況や交通状況を前提とすることな
く,道路における危険を防止し,その他交通の安全を図るため車両等の運転者に遵
守させることが必要であると認められた事項であると解される。その中には,当該
事項を遵守しないこと自体が道路における危険の発生に直接結び付くと考えられる
規定のほか,当該事項を遵守しないこと自体では道路における危険の発生に直接結
び付くとはいえないと考えられる12号(「普通自動二輪車(原動機の大きさが,
総排気量については0.125リットル以下,定格出力については1.00キロワ
ット以下のものに限る。)又は原動機付自転車(以下この号において「原動機付自
転車等」という。)を運転するときは,市町村(特別区を含む。)の条例で定める
ところにより当該原動機付自転車等に取り付けることとされている標識及び当該標
識に記載された番号を当該原動機付自転車等の後面に見やすいように表示するこ
と。」という規定である。なお,千葉県施行細則9条8号にも同じ規定がある。)
の規定もある。本件に適用された東京都規則8条13号も,当該規定を遵守しない
こと自体が道路における危険の発生に直接結び付くものとはいえないが,12号同
様,直接には交通違反等に対する取締りを逃れるための行為を防止することを目的
とし,そのことを通じて取締りの実効性を確保し,ひいては道路における危険を防
止し交通の安全を図るための規定であり,具体的には,上記のとおり,オービスに
よる取締りを逃れるため,ナンバープレートに赤外線を吸収し又は反射するための
物を取り付けて高速走行をする者があるという交通の状況にかんがみ,ナンバープ
レートにそのような物を取り付けて自動車を運転する行為自体を取り締まることに
よって,オービスによる取締りの実効性を確保し,そのような者による危険な高速
走行を防止することを目的として規定されたものと考えられる。
以上のとおりであるから,東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号も,
弁護人が指摘する道路交通法71条6号の定める二つの要件を充足するものである
ことは明らかであり,所論は採用できない。
2次に,所論は,仮に東京都規則8条13号や千葉県施行細則9条9号がおよ
そ定型的にオービスの設置が見込まれない区域における赤外線吸収装置を装着した
運転行為にも適用されるとすれば,道路交通法71条6号の委任を逸脱することに
なるから,委任の範囲を逸脱しないよう,東京都規則8条13号及び千葉県施行細
則9条9号の適用範囲は,例えば高速道路,自動車専用道路,あるいは一般道でも
幹線道路などというように速度違反が常態化している状況において,オービスが設
置され,その手法により取り締まっているという道路状況において取締りを阻害す
る付着物を禁止する場合に限るという限定解釈をすべきであり,道路交通法71条
6号,東京都規則8条13号又は道路交通法71条6号,千葉県施行細則9条9号
を本件に適用することは許されないと主張する。
しかしながら,自動車の高速走行が重大事故を発生させる原因の一つとなってい
ることは公知の事実であって,速度違反取締りの必要性は,高速道路,自動車専用
道路や一般道のうち幹線道路に限られるわけではなく,また,オービスには定点に
固定して実施されるいわゆる固定式装置のほか,取締りの必要に応じて設置場所を
変更して行われるいわゆる移動式装置もあるのであるから,これらオービスによる
取締りの実効性を確保するため,一般的網羅的に赤外線を吸収し又は反射するため
の装置を装着して自動車を運転する行為を規制することとしても,道路交通法71
条6号による委任の範囲を逸脱するものではないと解するのが相当である。したが
って,この所論も採用できない。
3さらに,所論は,Nシステムは,適正手続の保障(憲法31条),国民のプ
ライバシーの権利(憲法13条)を侵害し,住居移転の自由(憲法22条1項)の
精神的自由としての側面を過度に萎縮させるものであるから違憲であり,東京都規
則8条13号及び千葉県施行細則9条9号は,このようなNシステムによる捕捉を
逃れることを刑事罰をもって規制しようとするものであるところ,現に自己のプラ
イバシーを守るためNシステムによる捕捉を逃れることを目的として赤外線吸収装
置を装着して普通乗用自動車を運転した被告人に道路交通法71条6号,東京都規
則8条13号又は道路交通法71条6号,千葉県施行細則9条9号を適用すること
は許されないと主張する。
関係証拠によると,Nシステムは,走行中の自動車のナンバーを自動的に読み取
り,手配車両のナンバーと照合するシステムであり,①自動車使用犯罪発生時にお
いて,現場から逃走する被疑者車両を速やかに捕捉し,犯人を検挙すること,②重
要事件等に使用されるおそれの強い盗難車両を捕捉し,犯人の検挙及び被害車両の
回復を図ること等を目的として,警察庁が昭和56年から研究開発を行い,昭和6
1年度から導入されたものである。Nシステムの「自動車ナンバー自動読み取り装
置」によって撮影された画像には,走行車両のナンバープレート,バンパー,前照
灯,ボンネット及びその他の背景が写っているが,この画像から車両のナンバープ
レート部分のみを切り出して陸運支局コード,車種コード等の文字を認識し,「自
動車ナンバー自動読み取り装置」の番号等の付加情報とともに,「自動車ナンバー
照合装置」に送信され,同装置によって読み取った車両ナンバーとあらかじめ登録
されている手配車両ナンバーとが照合され,その結果が上記①,②の目的に利用さ
れる。「自動車ナンバー自動読み取り装置」によって撮影された画像には,一時的
に走行車両の搭乗者の容ぼう・姿態が写っている可能性があるが,この画像は瞬時
にコンピュータ処理によって車両ナンバープレートの文字データとして抽出される
ことになり,搭乗者の容ぼう・姿態が写っている可能性のある画像そのものが記録,
保存されることはない。Nシステムによって読み取られた走行車両のナンバーデー
タは,犯罪の発生から警察による事件の認知又は容疑車両等の割出しまでに時間が
かかる場合があるため,一定期間保存できるようになっているが,その後は消去さ
れる仕組みになっている(甲13,14)。
以上のとおりNシステムは,国民の自動車による移動自体には何らの制約を加え
るものではなく,Nシステムは「住居移転の自由(憲法22条1項)の精神的自由
としての側面を過度に萎縮させる」という弁護人の主張は,要するに自動車による
移動に関する個人情報が国によって把握され利用されることの違憲性,すなわちN
システムが国民のプライバシーの権利を侵害する点の違憲性の主張と重なり合うも
のと解される。そこで,まず,Nシステムによって走行車両のナンバーデータを記
録,保存していることが個人の私生活上の自由を保障する憲法13条の趣旨に反す
るかどうかについて検討する。
Nシステムによって,取得,保有,利用される情報は,直接には特定のナンバー
プレートの車両がNシステム端末の設置された公道上の特定の地点を一定方向に向
けて通過したとの情報に止まるものである。そして,そもそも自動車の所有者は,
道路運送車両法によって,車両ナンバープレート(自動車登録番号標)を取り付け
ることが義務付けられ(同法11条),これを見やすいように表示しなければ,運
行の用に供してはならないとされ(同法19条),更にその具体的な取付け位置に
ついて,道路運送車両法施行規則により自動車の前面及び後面の見やすい位置に確
実に行うものとすることとされており(同規則7条),公道を自動車が走行する際
には,常にナンバープレートが外部から容易に認識し得る状態となっているのであ
るから,Nシステムによって取得された情報は,警察を含む公権力に対して秘匿さ
れるべき情報であるとはいえず,警察を含む公権力がこの情報を取得しても憲法1
3条が保障する個人の私生活上の自由を直ちに侵害するものとはいえないと解され
る。
所論は,Nシステム撮影端末の設置状況,偏在性からみて同システムの設置目的
が自動車窃盗犯人あるいは自動車を使用した犯罪者の検挙であるとする主張はNシ
ステムの実状とかい離しており,さらに車両のナンバープレートは道路運送車両法
によって掲示が義務付けられてはいるが,Nシステムの特性,すなわちある車両の
移動状況が時間,場所とともに逐一記録され,時系列的に事後的に検索,再現が可
能であることからすると,結局のところ,一般の運転者について,本来自由に利用
が許されているはずの公道上の移動について「包括的届出制」を課すに等しいと主
張する。
しかしながら,Nシステムの目的が上記①,②であることや,Nシステムによっ
て取得される情報は,上記のとおり,特定のナンバープレートの車両がNシステム
端末の設置された公道上の特定の地点を一定方向に向けて通過したとの情報に止ま
ること,さらに犯罪の発生から警察による事件の認知又は容疑車両等の割出しまで
に時間がかかる場合があるため,一定期間保存できるようになっているが,その後
は消去される仕組みになっていることなど,証拠上認めることのできるNシステム
の目的や同システムによって取得される情報の性質,利用方法に照らすと,所論は
採用の限りではなく,Nシステムによる走行車両のナンバーデータの記録,保存に
よって,国民の私生活上の自由が違法に侵害されているとはいえない。
また,所論は,東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号は,Nシステ
ムによる捕捉を逃れることを刑事罰をもって規制しようとするものであるところ,
現に自己のプライバシーを守るためNシステムによる捕捉を逃れることを目的とし
て赤外線吸収装置を装着して普通乗用自動車を運転した被告人に道路交通法71条
6号,東京都規則8条13号又は道路交通法71条6号,千葉県施行細則9条9号
を適用することは許されないと主張する。
既に検討したとおり,関係証拠によれば,東京都規則8条13号及び千葉県施行
細則9条9号は,オービスによる取締りを逃れるため,ナンバープレートに赤外線
を吸収し又は反射するための物を取り付けて高速走行をする者があるという交通の
状況にかんがみ,ナンバープレートにそのような物を取り付けて自動車を運転する
行為自体を取り締まることによって,オービスによる取締りの実効性を確保し,そ
のような者による危険な高速走行を防止することを目的として規定されたものであ
り,ナンバープレートに赤外線を吸収し又は反射するための物を取り付けてNシス
テムによる捕捉を逃れようとする行為について,刑事罰をもって規制しようとする
目的で規定されたものであるとはいえない。
もっとも,東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号が規定された結果,
被告人のように,オービスによる取締りを逃れる意図はなく,専らNシステムによ
る捕捉を逃れることを目的として赤外線吸収装置を装着して自動車を運転した者に
対しても,このような者に対しては道路交通法71条6号,東京都規則8条13号
又は道路交通法71条6号,千葉県施行細則9条9号は適用しないという限定解釈
をしない限り,これらの規定が適用されることになるから,結果的に見ると,本来
東京都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号が意図していた規制目的を超え
る規制が加えられると見る余地を否定できないことは,弁護人指摘のとおりである。
しかしながら,弁護人が主張するような限定解釈をすることは,要するに,東京
都規則8条13号及び千葉県施行細則9条9号の規定について,「オービスによる
取締りを逃れる目的」という主観的要素を追加することに他ならず,そのような解
釈を採ると,真実はオービスによる取締りを逃れる意図で赤外線吸収装置を装着し
て自動車を運転した者であっても,専らNシステムによる捕捉を逃れることを目的
として赤外線吸収装置を装着して自動車を運転したという弁解をすれば,容易に東
京都規則8条13号又は千葉県施行細則9条9号による規制を逃れることを許す結
果となり,速度違反取締りの実効性が失われてしまう上,他方,既に検討したとお
り,Nシステムによる走行車両のナンバーデータの記録,保存によって,国民の私
生活上の自由が違法に侵害されているとはいえないのであるから,これらを併せ考
えると,オービスによる取締りを逃れる意図はなく,専らNシステムによる捕捉を
逃れることを目的として赤外線吸収装置を装着して自動車を運転した者に対しては
適用しないという限定解釈をせずに,東京都規則8条13号又は千葉県施行細則9
条9号を適用することとしても,道路交通法71条6号の委任の範囲を逸脱するも
のではないと解するのが相当である。この点に関する所論も採用できない。
以上のとおりであるから,所論はいずれも採用することができず,法令の解釈適
用の誤り・訴訟手続の法令違反をいう論旨も理由がない。
よって,刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却することとし,主文のとおり
判決する。
(裁判長裁判官高橋省吾裁判官植村稔裁判官家令和典)

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