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平成16年(ネ)第2000号 不正競争行為差止等請求控訴事件(原審・東京地方
裁判所平成13年(ワ)第21187号)
口頭弁論終結日 平成17年1月17日
    判決
  控訴人兼被控訴人(一審原告,以下単に「一審原告」という。)
 株式会社アザレインターナショナル
訴訟代理人弁護士野邊寛太郎
同村岡みち代
同楠眞佐雄
同本郷誠
同田中正和
同小西輝明
  一審原告補助参加人   X2
  一審原告補助参加人   X3
一審原告補助参加人ら訴訟代理人弁護士
 中田祐児
同島尾大次
同川島清嘉
同川島志保
同関本和臣
  控訴人(一審被告,以下単に「一審被告」という。)
 アザレ東京株式会社
  控訴人(一審被告,以下単に「一審被告」という。)
 アザレアルファ株式会社
(旧商号 アザレアゼット株式会社)
  控訴人(一審被告,以下単に「一審被告」という。)
 アザレウイング有限会社
控訴人(一審被告,以下単に「一審被告」という。)
 アザレ武蔵野株式会社
一審被告ら以上4名訴訟代理人弁護士
 横山雅文
被控訴人兼控訴人(一審被告,以下単に「一審被告」という。)
 アザレプロダクツ株式会社
被控訴人兼控訴人(一審被告,以下単に「一審被告」という。)
 共和化粧品工業株式会社
被控訴人(一審被告,以下単に「一審被告」という。)
       Y
一審被告ら以上7名訴訟代理人弁護士
 濱﨑憲史
同濱﨑千恵子
     主文
1 一審被告ら(一審被告Yを除く。)の各控訴に基づき,
(1) 原判決中,同一審被告らの敗訴部分を取り消す。
(2) 一審原告の同一審被告らに対する請求を棄却する。
2 一審原告の本件控訴及び当審において拡張した請求を棄却する。
3 訴訟費用は,第一,二審を通じ,補助参加によって生じた費用は補助
参加人らの負担とし,その余は一審原告の負担とする。
    事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 一審原告
(1) 原判決中,一審原告の敗訴部分を取り消す。
(2) 一審被告Yは,原判決別紙表示目録1ないし3記載の各表示を付した化粧
品,石けん類又は香料類を製造,出荷又は販売してはならない。
(3) 一審被告Y及び同共和化粧品工業株式会社は,原判決別紙表示目録1ない
し3記載の各表示を付した化粧品,石けん類及び香料類を廃棄せよ。
(4) 一審被告Y,同アザレプロダクツ株式会社及び同共和化粧品工業株式会社
は,一審原告に対し,連帯して29億0378万4687円及びうち3億9053
万6218円に対する平成12年12月31日から,うち7億2128万7706
円に対する平成13年12月31日から,うち6億5902万7501円に対する
平成14年12月31日から,うち6億7975万9957円に対する平成15年
12月31日から,うち4億5317万3305円に対する平成16年8月31日
から各支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え(上記請求のうち,1
8億6121万7534円及びこれに対する平成13年10月20日から支払済み
まで年5分の割合による金員の支払を求める部分を超える請求は,当審において拡
張した請求である。)。
(5) 原判決主文5項中の「「アザレアゼット株式会社」なる商号」を「「アザ
レアルファ株式会社」なる商号」と変更する(請求の趣旨の訂正)。
(6) 訴訟費用は,第一,二審を通じ,一審被告らの連帯負担とする。
2 一審被告ら
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,一審原告が,原判決別紙表示目録1ないし3の各表示(以下「本件
各表示」という。)は自己の商品等表示として需要者の間に広く認識されているも
のであり,一審被告らが本件各表示を付した化粧品,石けん類及び香料類(以下,
これらを総称して「アザレ化粧品」という。)を製造,販売等する行為や「アザ
レ」を含む商号を使用する行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に
該当すると主張して,同法3条及び4条に基づき,一審被告らに対し,アザレ化粧
品の製造,販売等の差止め及び製品の廃棄,並びに「アザレ」を含む商号の抹消登
記手続を求めるとともに,損害賠償を求めている事案である。
 原判決は,本件各表示は一審原告の周知商品等表示であり,一審被告アザレ
プロダクツ株式会社(以下「一審被告アザレプロダクツ」という。)はOEM契約
による製造業者であって,一審被告Y(以下「一審被告Y」という。)を除くその
余の一審被告らの行為は不正競争行為に該当するが,一審被告Yによる不正競争行
為は認められないなどとして,一審被告Yに対する請求の全部,一審被告アザレプ
ロダクツに対する損害賠償請求の一部,一審被告共和化粧品工業株式会社(以下
「一審被告共和化粧品」という。)に対する廃棄請求及び損害賠償請求の一部をそ
れぞれ棄却し,その余の請求を認容した。
 そこで,一審原告,一審被告ら(一審被告Yを除く。)がそれぞれ各敗訴部
分について控訴を提起し,一審原告は,当審において,一審被告Y,同アザレプロ
ダクツ及び同共和化粧品に対する損害賠償請求について請求を拡張したものであ
る。
2 前提となる事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠(甲29,30,7
8,134~136,乙ロ1ないし3)及び弁論の全趣旨により認定できる事実)
(1) 当事者
ア アザレインターナショナルは,昭和52年10月ころ,個人企業として
創業され,アザレ化粧品の販売を開始した。その後,昭和53年3月に有限会社ア
ザレインターナショナルが設立され,昭和57年1月20日には同有限会社を解散
して一審原告が設立された。
 一審原告代表者であるX1(以下「X1」ということがある。)は,有
限会社アザレインターナショナルの時代及び一審原告設立後の期間を通じて代表者
の地位にあった。
イ 一審被告アザレ東京株式会社(以下「一審被告アザレ東京」という。)
はアザレ東京有限会社(平成12年7月24日設立)を組織変更して平成14年9
月5日に,同アザレアルファ株式会社(以下「一審被告アザレアルファ」とい
う。)はアザレアゼット株式会社として昭和60年4月11日に(平成16年8月
13日,アザレアルファ株式会社に商号変更),同アザレウイング有限会社(以下
「一審被告アザレウイング」という。)は昭和61年5月22日に,同アザレ武蔵
野株式会社(以下「一審被告アザレ武蔵野」という。)は昭和57年10月8日
に,それぞれ設立登記をした会社である。
ウ 一審被告YとA(以下「A」という。)は,平成5年4月20日に婚姻
した夫婦であるが,平成9年11月4日,Aは死亡した。一審原告補助参加人X2
及び同X3(以下「補助参加人ら」という。)は,Aと先妻B(平成5年3月18
日離婚)との間の子である。
エ 一審被告アザレプロダクツは,昭和60年7月1日に設立された各種化
粧品の製造販売等を目的とする株式会社であり,一審被告共和化粧品は,昭和34
年2月25日に設立された各種化粧品の製造販売等を目的とする株式会社である
(2) 一審被告アザレプロダクツは,平成12年4月ころから,一審原告を介す
ることなく,本件各表示を付した化粧品,石けん類又は香料類(以下「被告製品」
という。)を製造販売し,一審被告アザレ東京は,これを一審被告アザレプロダク
ツから仕入れて,一審被告アザレアルファ,同アザレウイング及び同アザレ武蔵野
に販売し,同一審被告らはそれぞれ傘下の販売員を通じて被告製品を消費者に販売
している。
3 争点及び争点に関する当事者双方の主張は,次の4及び5のとおり付加訂正
するほか,原判決の「第2 事案の概要」の「2 争点及び当事者の主張」記載の
とおりであるから,これを引用する(ただし,原判決6頁11行目の「商品等表示
として」を「商品等表示としてのみ」に,同30頁15行目の「ンフレット」を
「パンフレット」に改める。)。
 なお,以下,原判決の用法に従い,「ジュポン社」,「ワンダフル」,「本
件各商標」,「本件各商標権」などの略称を用いる。
4 一審原告の主張
(1) 一審被告Yの共同不法行為責任
 原判決は,一審被告Yは,外観上被告製品の注文の取次行為を行っている
に過ぎないとして,一審被告Yに対する請求をすべて否定した。
 しかし,一審被告Yは,平成10年2月ころから,C(以下「C」とい
う。)らと共謀して,一審原告の経営権の掌握とアザレ化粧品の製造販売事業によ
る利益の独占等を図り,これに失敗すると,一審被告アザレプロダクツが本件各商
標を冒用して偽アザレ化粧品の製造販売事業を行うという不正競争行為を計画し,
これに積極的かつ主体的に加担して,不正競争行為の継続に必要不可欠の重要な役
割を果たしてきたものであって,不正競争行為について,一審被告アザレプロダク
ツらとの共同不法行為者であり,差止等請求及び損害賠償請求を免れることはでき
ない。すなわち,一審被告Yは,本件の不正競争行為において,ワンダフルの代表
者として,一審原告に対し,本件各商標の使用契約を解除してその使用の差止め訴
訟を提起するなどして,一審原告のアザレ化粧品の製造販売を妨害したり,一審被
告アザレプロダクツによる偽アザレ化粧品の製造販売事業の立ち上げなどについて
資金面で多大な協力をしたりしたほか,本件各商標権の処分禁止仮処分違反等を潜
脱するために本件各商標権の自己使用の外観を積極的に作出するなどして,一審被
告アザレプロダクツの偽アザレ化粧品の製造販売事業に協力し,さらに代金数百万
円を分担支出して,一審原告のアザレ化粧品が被告製品に切り替わったかのごとき
パンフレットを作成・配布するなど,主体的・積極的に不正競争行為に加担,協力
しているものであり,これにより,平成12年度は4億6654万円余,平成13
年度は3億0155万円余,平成14年度は3億7677万円余もの莫大な利益の
分配を受けている。このような一審被告Yの行為は,原判決が認定したような「外
観上取次行為を行っているにすぎない」などという軽微なものではなく,不正競争
行為を行う上で不可欠なものであって,不正競争行為につき共同不法行為責任を免
れないというべきである。
(2) 請求の拡張に伴う主張の訂正
 請求の拡張に伴い,原判決39頁13行目から40頁16行目までの一審
原告の主張を次のとおり改める。
「(イ) 一審被告Y,同アザレプロダクツ及び同共和化粧品(以下「一審被
告Yら」という。)に対し請求し得る損害額について
ⅰ 一審被告Yらの不正競争行為により一審原告が被った営業上の利益
に係る損害
① 一審被告Yらの不正競争行為が始まる前3年間の一審原告の営業
利益は,次のとおり合計18億8851万0811円であり,1年間の平均営業利
益は6億2950万5604円である。
第16期(平成9年1月1日から同年12月31日)
               3億5086万0391円
第17期(平成10年1月1日から同年12月31日)
               5億8472万9473円
第18期(平成11年1月1日から同年12月31日)
               9億5292万0947円
②ところが,一審被告Yらによる不正競争行為が始まって以降,一
審原告の営業利益は,次のとおり激減した。
第19期(平成12年1月1日から同年12月31日)
                 9695万6217円
第20期(平成13年1月1日から同年12月31日)
                -2621万0492円
第21期(平成14年1月1日から同年12月31日)
                 3038万9694円
第22期(平成15年1月1日から同年12月31日)
                 1154万2007円
第23期(平成16年1月1日から同年8月31日)
(前年の利益の8か月分)      769万4671円
③ ①による1年間の平均営業利益額6億2950万5604円から
②による実際の営業利益額を控除した損害額は次のとおりである。
平成12年 3億5503万2925円(ただし,不正競争行為開
始後である5月1日から12月31日までの8か月分)
平成13年 6億5571万6096円
平成14年 5億9911万5910円
平成15年 6億1796万3597円
平成16年 4億1197万5732円(ただし,1月1日から8
月31日までの8か月分)
 計26億3980万4260円
④ 弁護士費用としては,上記金額の1割である2億6398万04
26円が相当である。
⑤ よって,上記③と④の合計29億0378万4687円及び③に
よる各年毎の損害額に弁護士費用(1割)を加えた額について,不法行為の後であ
る各年末日(ただし,平成16年分については8月31日)から支払済みまで年5
分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。
ⅱ 不正競争防止法5条1項に基づいて算定した一審原告の損害額
① 一審被告Yの売上単価と商品構成が一審原告と同様であると仮定
し,両者の売上高の比較から,侵害者たる一審被告Yらの譲渡数量を算定する。
② 一審原告の平成13年ないし平成15年各12月期の決算書か
ら,商品毎の売上単価,売上原価,荷造運賃,支払保険料,支払手数料,商標使用
料の各変動費について単価を算定する。
③ ②の各単価に①の譲渡数量を乗ずると,
売上高  98億5654万4000円
売上原価44億1938万2000円
荷造運賃2億1965万5000円
支払保険料  2953万5000円
支払手数料703万5000円
商標使用料8億3531万1000円
となるので,この売上高から各費用を控除し,
 さらに,個別固定費である
給料手当等3341万1000円
法定福利費227万4000円
広告宣伝費 6億5474万4000円
販売促進費2億5053万8000円
を控除すると,34億0466万円となる。
④ この損害額34億0466万円の内金請求として上記ⅰの⑤の限
度でその支払を求める。
ⅲ 一審被告Yらが不正競争行為により受けた利益の額に基づいて計算
される一審原告の損害額(不正競争防止法5条2項)
① 一審被告Yの得た利益
平成12年5月1日から同年12月31日
4億6654万2773円
平成13年1月1日から同年12月31日
3億0155万8318円
平成14年1月1日から同年12月31日
3億7677万8589円
平成15年1月1日から同年12月31日
3億6634万5827円
平成16年1月1日から同年8月31日
(平成15年の金額の8か月分)2億4423万0551円
計17億5545万6058円
② 一審被告アザレプロダクツの得た利益
平成12年6月1日から平成13年5月31日
2億1342万9725円
平成13年6月1日から平成14年5月31日
1億2502万2477円
平成14年6月1日から平成15年5月31日
1億1331万3207円
平成15年6月1日から平成16年5月31日
(前年と同額と推定)1億1331万3207円
平成16年6月1日から平成16年8月31日
(前年の金額の3か月分)  2832万8302円
計5億9340万6918円
③ 一審被告共和化粧品の得た利益
 一審被告共和化粧品の利益全体の額に「アザレ化粧品」の利益が
占める割合8割を乗じた金額
平成12年5月1日から平成13年1月31日
2億9832万9240円
平成13年2月1日から平成14年1月31日
1億8080万7030円
平成14年2月1日から平成15年1月31日
2億3416万9786円
平成15年2月1日から平成16年1月31日
(前年と同額と推定)2億3416万9786円
平成16年2月1日から平成16年8月31日
(前年の金額の7か月分)1億3659万9042円
計10億8407万4884円
④ 弁護士費用としては,上記①ないし③の合計額が34億3293
万7860円であることにかんがみると,2億9958万4143円が相当であ
る。
⑤ そうすると,一審被告Yらの得た利益を基準として計算される一
審原告の損害額は合計37億3252万2003円となり,その内金請求として上
記ⅰの⑤の限度でその支払を求める。」
(3) 一審被告らの当審における主張について
ア 一審被告らは,一審被告Yが同アザレプロダクツに対し本件各商標につ
いて使用許諾したと主張するが,この主張は,訴訟上の信義則に反し,「時機に後
れた攻撃防御方法」として,許されない。また,一審被告らは,原審において,一
審被告Yが同アザレプロダクツに対して本件各商標の使用を許諾した事実を否定
し,許諾したことはないとの主張をしていたから,当審における上記主張は,自白
の撤回に当たり許されない。
イ 一審被告Yが一審原告との間のワンダフルを介した独占的通常使用契
約,処分禁止の仮処分及び商標法35条に違反して,一審被告アザレプロダクツに
本件各商標の使用を許諾することは,一審被告らの違法行為に加担するものであ
り,権利の濫用として許されない。
5 一審被告らの主張
(1) 本件各表示は,一審原告及び一審被告アザレプロダクツらで構成されたア
ザレグループの出所表示として取引者・需要者に広く認識されていたものであり,
このようにグループ企業を構成して事業を展開していた企業グループが分裂して,
それぞれが従前の商品表示で商品の製造・販売を行った場合,それぞれが表示主体
と認められるか否かは,分裂時までの周知性・著名性の獲得についての寄与の程度
によって判断されるべきである。一審被告アザレプロダクツは,アザレグループの
中核企業として,本件各表示の周知性・著名性の獲得に当たって,相当の寄与をし
てきたものであり(一審被告共和化粧品の活動による周知性の承継を含む。),本
件各表示に対する信用は,一審原告のみならず,一審被告アザレプロダクツにも帰
属しているというべきである。したがって,たとえ一審原告がアザレグループ内で
中心的な地位にあったとしても,一審原告のみが本件各表示の独占的な表示主体で
あったものではなく,一審被告アザレプロダクツもその表示主体であったというべ
きである。そして,その他の一審被告らも,グループ分裂後,一審被告アザレプロ
ダクツの供給する化粧品を販売しているものであるから,本件各表示の表示主体と
いうべきである。
 したがって,本件各表示は,一審被告らとの関係においては,不正競争防
止法2条1項1号にいう「他人の商品等表示」に当たるとはいえない。
(2) 使用権限(使用許諾)の抗弁
 仮に,一審被告Yによる本件各商標の自己使用が認められないとしても,
Aの死亡により本件各商標権を単独相続した一審被告Yは,平成12年3月ころ,
一審被告アザレプロダクツに対し,本件各商標について黙示の使用許諾をした。し
たがって,一審被告アザレプロダクツは,平成12年4月以降,本件各表示を付し
た被告製品を製造販売する正当な権限を有していたものであり,その余の一審被告
らによる販売も正当な権限に基づくもので,不正競争行為は成立しない。
 なお,本件のように,アザレグループの中核企業である「製造元」の一審
被告アザレプロダクツと「発売元」の一審原告の決別という事態を受けて,商標権
者である一審被告Yが一審被告アザレプロダクツに対して本件各商標権の使用許諾
をしたことは,商標権の価値の維持及び分配利益の確保の両面から考えて当然,あ
るいはやむを得ぬ選択であって,権利濫用とはいえない。
(3) 一審原告の請求拡張に伴う主張の訂正について
一審原告の損害額の主張,その算定根拠及び算定方法は争う。
第3 当裁判所の判断
1 前記前提となる事実並びに証拠(書証の枝番のすべてを引用するときは,枝
番号の表示を省略する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることがで
きる。
(1) アザレ化粧品の製造販売に至るまでの経緯(甲1の3,6,35の1,9
2,99,101,117,乙1,2,13,30,95,乙ロ6,一審原告代表
者本人,一審被告共和化粧品及び同アザレプロダクツ代表者本人)
ア Aは,昭和37年ころ,それまで勤務していたポーラ化粧品をやめて,
D,E,Fと共にヴァロー化粧品(東京都葛飾区所在)を創業し,専務取締役とな
った。X1は,昭和37年にDと結婚し,ヴァロー化粧品に勤務していたが,夫の
Dは昭和40年7月交通事故で死亡した。その後,ヴァロー化粧品の経営方針をめ
ぐってAと代表者のFとの間に対立が生じ,Aは,福岡に事務所を新設してヴァロ
ー化粧品を販売することとし,X1も一緒に福岡に移り,Aの事業に従事した。
 ところが,「ヴァロー」という商標の使用について問題が生じるなどし
たため,Aは,昭和45年ころ,新たに福岡市内でジュポン社を設立し,「ルール
ジュポン」という商標の商標権を取得して,化粧品の販売を行うようになり,X1
もその業務に従事していた(当時,Aは36歳,X1は26歳であり,両者は親密
な関係にあった。)。その後,ジュポン社は,大阪市内,東京都板橋区内と本店を
移し,営業していた。
イ ジュポン社設立当時,大手化粧品メーカーの化粧品公害が問題となって
おり,黒皮症をめぐる訴訟も提起されていた状況であったことから,ジュポン社に
おいては,Aの発案により,黒皮症を念頭に置き,石油由来の界面活性剤を使用せ
ず,「肌に負担をかけない」「植物性」「自然派化粧品」などを謳い文句に水溶性
ファンデーションを開発し,これに「エレガンスカラー」と名付けて販売を開始し
た。ジュポン社は,当初,同商品を含む「ジュポン化粧品」の製造については,大
阪府所在の永田美研工業に内容物の製造を委託し,ジュポン社においてこれを容器
に詰めるなどして製品として完成させて,各地の販売店に販売していた。
ウ しかしながら,永田美研工業が,ジュポン社の関知しないところで「ジ
ュポン化粧品」と同一仕様の製品を製造し,直接販売店に出荷していたことが判明
したため,昭和48年ころ,ジュポン社は永田美研工業との契約を解除し,大阪府
内で化粧品の受託製造を専門に行っていた一審被告共和化粧品との間で,新たに化
粧品の製造委託を内容とする契約を締結した。
 上記契約の契約書は「製造請負契約書」と題するもの(甲1の3は同契
約書の草稿)であり,概要,次のような内容となっていた。
① ジュポン社は,一審被告共和化粧品に対し,ジュポンエレガンススペ
シャル,ジュポンゴールドエレガンス,ジュポンウェディングカラー,ジュポンエ
レガンスソープ,ジュポンナイトビューティの製造を請け負わせるものとして,そ
れに必要な資材の容器,化粧箱,ダンボール小箱,ダンボール大箱は,ジュポン社
が支給し,内容製造原料は一審被告共和化粧品が負担する。
② 一審被告共和化粧品がジュポン社より供給を受けた材料はすべてジュ
ポン社の所有であり,一審被告共和化粧品は,これを処分したり担保に供したりし
てはならず,また,その明細書の提出を求められた場合は,一審被告共和化粧品は
これに直ちに応じなければならない。
③ 一審被告共和化粧品は,ジュポン社より交付を受けた注文書により製
造するものとし,納品はジュポン社の指定する場所に発送する。
④ 一審被告共和化粧品は,ジュポン社の取引先,及びジュポン社の営業
活動にて該当製品の存在を関知した他者より問合わせや注文があった場合は,直ち
にジュポン社に連絡して,ジュポン社の指示に従いジュポン社及びジュポン社の取
引先の営業権を擁護し,ジュポン商標や他のブランドの製品を理由の如何を問わず
また直接,間接にても取引することは決してできない。
⑤ 一審被告共和化粧品は,ジュポン社が製造を委託したジュポンエレガ
ンススペシャル,ジュポンゴールドエレガンス及びジュポンウェディングカラーの
3種類の製品と同一様式の水溶性ファンデーションの製造は,ジュポン社以外の業
者に対しては請け負えない。
⑥ ジュポン社は,一審被告共和化粧品以外の業者に対しては,ジュポン
エレガンススペシャル,ジュポンゴールドエレガンス,ジュポンウェディングカラ
ー,ジュポンエレガンスソープ,ジュポンナイトビューティと同一様式の製品の製
造は委託できない。ただし,ジュポン社の発注数量に対して,一審被告共和化粧品
がその70%の生産数量を3か月連続して達成し得ない場合は,ジュポン社は,他
の業者に対して委託できる。
エ 一審被告共和化粧品は,上記契約に基づいて製品の製造を始めることに
なったが,ジュポン社からは,基本的な製品のコンセプトの指示があっただけで,
具体的な成分,原材料の種類・内容・割合,製法など具体的な処方について知らさ
れることはなく,また,永田美研工業からも特段の引継ぎを受けられなかったた
め,Aの意向に沿うべく,独自の立場でその製品化を進めた。
オ 上記の「エレガンスカラー」の販売が好調であったこともあって,ジュ
ポン社の売上は伸びていたが,「ルールジュポン」の商標が,米国の化学メーカー
であるデュポン社の名称と類似することが問題となって紛争が生じたこと,「ルー
ルジュポン」商標には化粧品が指定商品とされていなかったことなどから,昭和5
0年12月ころ,Aは「ジュポン化粧品」の事業及び「ルールジュポン」の商標権
を取締役のEに譲り,X1を連れて福岡に戻り,一時化粧品業界から離れた。
カ なお,Aには,昭和33年7月11日に婚姻した妻B,その間の子であ
る補助参加人らがおり,これら家族も福岡で生活をしていた。
(2) アザレ化粧品の創業(甲1の2,4,5,12,35の1,90~92,
96,101,乙13,95,乙ロ6,7の1・2,81,一審原告代表者本人,
一審被告共和化粧品及び同アザレプロダクツ代表者本人)
ア 化粧品事業から手を引いたAに対しては,G(以下「G」という。)を
初めとするジュポン社当時の取引先や,一審被告共和化粧品の代表者であるCか
ら,化粧品業界に戻るように強い要請,説得がなされた。
 このようなCらによる強い要請,説得を受けたAは,ジュポン社当時に
引き続き,「自然派化粧品」の理念のもとに,再び化粧品販売事業に乗り出すこと
とし,製品の開発,製造についてはCに委せることとする一方,昭和52年10月
ころ,福岡市内のA所有の建物を事務所とし,X1を代表として「アザレインター
ナショナル」の名称で,アザレの商標(昭和49年8月12日にB名義で出願して
いた「AZARE アザレ」の商標が昭和52年5月12日に設定登録された。)
を用いた化粧品の販売を始めることとした。Aは,その後も別紙商標一覧のとおり
アザレに関する商標登録出願をし,その商標登録を受けた。
イ 個人企業としての「アザレインターナショナル」は,昭和53年1月に
法人化されて,有限会社アザレインターナショナルとなり,代表取締役にX1,取
締役としてC,Hが就任した。その後,業績も次第に上がってきたため,Aは,大
阪市内に営業の本拠地を移すこととし,有限会社アザレインターナショナルを解散
した上で,昭和57年1月,資本金1000万円で一審原告を設立し(本店所在
地・大阪市),販売事業を行うようになった。一審被告共和化粧品は,当時から大
阪府八尾市に本店及び自社工場を持って事業を行っていた。
 一審原告の設立当時の持ち株比率は,Aの意向により,X150%,A
14%,C10%,佐賀本舗のI(以下「I」という。)10%などとされ,代表
取締役にはX1,取締役にC及びAがそれぞれ就任した。
ウ アザレ化粧品の製造は,ジュポン社時代に引き続いて一審被告共和化粧
品が行い,個人企業時代の「アザレインターナショナル」と一審被告共和化粧品の
間で製品取引契約が締結され,一審原告が設立された昭和57年1月,改めて,一
審原告と一審被告共和化粧品との間でアザレ化粧品の製造委託を内容とする契約が
締結されたが,これら契約の内容は,専らAとCの間で話し合われ,決められてい
た。
 上記契約の契約書は「製品取引契約書」と題するもの(甲1の2)であ
り,概要,次のような内容を持つものであった。
① 一審原告は,製品を完成するのに必要な外装用資材を一審被告共和化
粧品に供給し,一審被告共和化粧品は,製品中身の製造に必要な原料を仕入れ,加
工完成して一審原告の販売機構である各県の販売指定店に一審原告の指示に基づい
て送付し,納品する。
② 一審原告は,一審被告共和化粧品に対して,一審原告の営業活動によ
り設置する販売店全部の住所氏名を通知し,一審被告共和化粧品はこの名簿により
出荷する。
③ 一審被告共和化粧品は,②により一審原告の販売経路や販売方法等の
詳細を知る立場を利用して,一審原告の経営を阻害する行為を行ってはならない。
④ 一審原告が一審被告共和化粧品に支払うべき製品の代価は,一審被告
共和化粧品の見積書を一審原告が承認して決定する。
⑤ 一審被告共和化粧品は,一審原告の主たる商品であるメイクアップ料
を水溶液中に保留した通称水彩カラーと称するアザレグレイスカラーと同一様式の
製品を一審原告以外の第三者より受注してはならない。
⑥ 一審原告は,⑤の製品及びアザレの商標を使用する製品のすべてを一
審被告共和化粧品以外の第三者に発注してはならない。
⑦ 一審被告共和化粧品は,一審原告の販売機構内の指定販売店・販売
店・販売員から一審原告の商品と異なる種類の製品でも受注してはならない。
⑧ 一審被告共和化粧品の製造品種以外の製品については,一審原告は,
一審被告共和化粧品を製造元と定め,一審被告共和化粧品を通じて他業者に下請け
を発注する。
⑨ 製品の内容処方や成分については,一審被告共和化粧品が決定して製
造し,一審原告は一審被告共和化粧品の製造内容に準じてこれを販売する。
⑩ 一審被告共和化粧品が一審原告より供給を受けた資材はすべて一審原
告の所有資産であり,一審被告共和化粧品は,これを流用し,処分し,又は担保に
供する等の行為をしてはならない。
エ 一審原告は,個人企業の時代,有限会社アザレインターナショナルの時
代を含め,本件各表示を一審被告共和化粧品(一審被告アザレプロダクツ設立後は
同一審被告)の製造した化粧品に付して使用している。
 アザレインターナショナルの創業後,最初に商品として発売されたの
は,「アザレグレイスカラー」という水溶性ファンデーションであり,これは,ジ
ュポン社時代のヒット商品である「ジュポンエレガンスカラー」のノウハウを生か
して改良を重ねたものであった。その後,一審被告共和化粧品からの提案等により
新商品も開発,販売され,一審原告が設立された昭和57年1月ころには,20種
類以上の商品がアザレ化粧品として販売されるようになった。
(3) アザレ化粧品の販売網の形成(甲2,7の1~10,11,17,24の
2,59,65~68,70,71,73,98,101,151~153,16
5,167,242,乙14,17,20,32,71の4,80,81,95,
乙ロ1~3,14,20~56,61,62,原審証人J)
ア 一審原告では,個人企業の時代から,「本舗」と呼ばれる販売指定店を
設け,本舗に属する販売員などによる訪問販売,直接対面販売方式によってアザレ
化粧品を販売するという流通方法を採ることとし,全国各地で本舗ないしは販売協
力店,販売普及員を募集した。この本舗は,それぞれ販売活動のできる地域が厳格
に定められ(原則として都道府県毎に1本舗),アザレ化粧品以外の商品の販売を
禁止された専属的な販売店であった。この本舗の開拓は,Aが,CやX1を同行し
て行っていたが,順次その数も増え,昭和57年には全国に39本舗,昭和58年
には43本舗となり,ほどなく50以上の本舗が開設されるに至った。これらの本
舗のほとんどは,株式会社や有限会社など独立した法人となり,大半の本舗におい
て商号に「アザレ」の語を用いている。また,各本舗は独自に営業その他の目的を
持つ子会社を設立させる場合もあり,そのような子会社の多くも「アザレ」を含む
商号を使用している。
イ 一審原告と本舗との間には販売指定店契約が締結されたが,これらの契
約書には,昭和53年ころのものには,「契約立会人」として一審被告共和化粧品
及びAの記名(署名)押印があり,また,昭和57年以降平成2年までのものに
は,同じく「契約立会人」として,一審被告共和化粧品又は一審被告アザレプロダ
クツのほか,K弁護士などの記名押印がある。このように,Cは,Aの意向によ
り,当初から本舗の開拓や契約締結にも関わりを持つなど,アザレ化粧品の事業の
展開に協力していた。
 この契約には,前記のとおり各県1本舗とする厳格な地域割りと,一審
原告と本舗との間における製品の扱いなどを中心とする詳細な規定が設けられてい
たが,一審原告による販売方法に関する指導などについての具体的な定めはなく,
「乙(本舗)は,・・・自己専有地域内の販売店に対する教育,講習等は自らこれ
を実施して,甲(一審原告)にその代行を求めないこととする」との条項が定めら
れていた。
ウ 当時,一審原告には,AとX1以外に販売方法などについて指導するス
タッフが存在した形跡はなく(薬剤師を雇用した後である平成11年4月12日更
新の東京商工リサーチ企業情報によると、一審原告の従業員は3名とされている。
乙71の4),AとX1が各本舗の開催する講演会や講習会などへ出席していた
が,それらはアザレの理念の啓蒙や美容実演などが主であり,機関誌などで情報提
供するなどのほかは,基本的には,市場開拓や販売活動の具体的な方法などについ
ては,各本舗それぞれの独自の工夫や自助努力に委されていた。
 そこで,各本舗は,一審原告が理念とする訪問,直接対面販売といった
基本的な枠組みの下で,それぞれの工夫や努力によって販売手法の確立や販売組織
の形成を行っていた。後に全国の本舗において共通して採用されるに至った販売方
法やノウハウも,当初は各本舗における工夫の中から生み出され,定期的な本舗の
社長会,一審原告や各本舗が発行する機関誌やパンフレット類によって紹介される
などして,各本舗の間の営業成績の競争を促す中で広まっていったものであった。
 例えば,東京地区の本舗として設立されたアザレコーポレーション株式
会社(代表取締役・L(以下「L」という。))は,独自に作成したチラシなどを
用いた販促活動のほかに,昭和57年ころから(販売指定店契約は昭和58年10
月30日付けで締結されているが,それ以前から本舗活動をしていた。),「講習
会」制度や「アドバイザー資格」制度を考案して実践するうちに効果が上がり,昭
和58年度には本舗中1位の成績である全国の売上の18パーセントを占めるに至
った(平成元年には全国の売上の約43パーセントを東京本舗が占めるに至ってい
る。)。また,昭和62年7月には,有力本舗の代表者などを中心として,アドバイ
ザーや営業所長教育の講座や講習会の運営ノウハウ,教育・講習用の教材,カタロ
グや営業用ツールの作成,提供などのためのアザレアカデミー株式会社が設立さ
れ,各本舗は,ここで作成された教材,資料等を使用するなどしてそれぞれの販売
活動を行っていたが,その成果は,一審原告の機関誌や社長会などを通じて全国の
本舗に知らされ,同種の運営方法が採用されるようになっていった。
エ このような中で,一審原告は,主として,本舗からの製品受注と一審被
告共和化粧品(一審被告アザレプロダクツ設立後は同一審被告)への発注(製品は
製造元から各本舗へ直接納入),容器等の業者への発注,販売促進品の提供,パン
フレットの作成配布,各本舗が開催する講演会,講習会などへの出席,本舗の表彰
や毎月の機関誌の発行,新聞,雑誌等への宣伝広告など,アザレ化粧品の総発売元
としての業務を行い,各本舗の努力等もあって,アザレ化粧品の販売事業は順調に
発展していった。なお,Aは,各本舗や傘下の販売員から「先生」とも呼ばれ,多
くの講演や機関誌(各本舗作成のものを含む。)への寄稿によって,「自然派化粧
品」というアザレの理念を説き,アザレ化粧品のいわば象徴的存在としての役割を
担っており,また,X1は,各本舗が開催する美容講習会や展示会において化粧実
演を行うなど,女性の立場で実践的な活動を担当していた。
(4) 一審被告アザレプロダクツの設立(甲1の1,27,34,76,178
~186,乙78,81,91,92,95,乙ロ12~16,20,78,7
9,95,一審被告共和化粧品及び同アザレプロダクツ代表者本人)
ア 一審被告共和化粧品は,一審原告と製品取引契約を締結した後も,アザ
レ化粧品以外の化粧品の製造を行っていた。しかしながら,アザレ化粧品が徐々に
消費者に受け入れられ,知名度が上がってきたことから,一審被告共和化粧品に化
粧品製造を請け負わせている他の化粧品会社が,アザレ化粧品と同一の製造元によ
る製品であるとの宣伝を行うようになり,アザレ化粧品のブランドの価値が損なわ
れるおそれが生じたこと,アザレ化粧品だけの専用工場を持つことがアザレグルー
プ全体の発展に資すると考えられたことなどから,Aの意向もあって,一審被告共
和化粧品のアザレ化粧品製造部門を分社化して独立させ,アザレ化粧品専門の製造
会社が設けられることになった。そして,昭和60年7月,一審被告アザレプロダ
クツが設立され,Cとその親族のほか,AとX1が株主兼発起人となり,Cが代表
取締役,M(Cの父で一審被告共和化粧品の前代表者)とX1が取締役にそれぞれ
就任した。
イ 一審被告共和化粧品は,アザレ化粧品の製造開始後の昭和54年2月,
工場を新設していたが,その後,アザレ化粧品の製造部門の独立のため,新たに土
地を取得して工場等を建設することとし,昭和60年7月,一審被告アザレプロダ
クツのための鉄骨造3階建事務所・工場を完成させ(この土地建物は,平成13年
1月25日,一審被告アザレプロダクツが買い受けた。),さらに,平成元年5月
には,隣接する土地及び工場・倉庫を借り受けて,施設を拡充した。この一審被告
アザレプロダクツの工場建物正面には,大きく「AZARE」という表示が付さ
れ,敷地入口や建物入口には一審被告アザレプロダクツの社名のみが掲げられ,外
形的にもアザレ化粧品の専用工場としての体裁が採られている。この新工場建設の
経過などは,一審原告発行の機関誌「アザレリポート」でも,「”アザレプロダク
ツ”・・・全国の本舗のみなさんの意欲的な活動が予定よりもなんと二年も早くア
ザレプロダクツ建設を実行させることになりました。」(1984年11月号),
「アザレプロダクツ完成」(1985年7月号),「プロダクツ拡張 全国アザレ
グループの躍進が業界の注目を浴びていますが,・・・隣地に大きな原材料倉庫を
建て終り,・・・新倉庫の上に爽やかにたったアザレグループの看板が,ひときわ
目を引きますね。」(1988年8月号)などと紹介されている。
 一審被告アザレプロダクツは,設立後,薬事法に基づく化粧品及び医薬
部外品の製造許可を取得し,一審被告共和化粧品の上記工場設備等を使用してアザ
レ化粧品だけの製造を始め,一方,一審被告共和化粧品は,従前の工場において,
アザレ化粧品以外の製品の製造に専念することとなった。
ウ 一審被告アザレプロダクツの設立後,平成元年12月18日に一審原告
と一審被告アザレプロダクツとの間で,それまでの製品取引契約に代えて新たに契
約を締結した。
 同契約の契約書は「委託製造取引契約書」と題するもの(甲1の1)で
あり,概要,次のような内容のものであった。
① 一審原告は製品を完成するのに必要な外装用資材を自己資金で作り,
一審被告アザレプロダクツに預け,一審被告アザレプロダクツは製品中身の製造に
必要な原料を仕入れ,加工完成して一審原告の販売機構である各県の販売指定店に
一審原告の指示に基づいて送付し,納品する。
② 一審原告は一審被告アザレプロダクツに対して一審原告の営業活動に
より設置する販売店全部の住所・氏名を通知し,一審被告アザレプロダクツはこの
名簿により出荷する。
③ 一審被告アザレプロダクツは,②により一審原告の販売経路や販売方
法等の詳細を知る立場を利用して,一審原告が開発した取引先と直接談合したり,
一審被告アザレプロダクツが別に経営する一審被告共和化粧品と一審原告の得意先
と取引したりして信頼に背き,一審原告の経営を阻害する行為を行ってはならな
い。
④ 一審原告が一審被告アザレプロダクツに支払うべき製品の代価は一審
被告アザレプロダクツの見積書を一審原告が承認して決定する。
⑤ 一審被告アザレプロダクツは,アザレの商標を使用する製品を一審原
告の指示する所以外に,いかなる理由でも出荷してはならないこととする。
⑥ 一審原告は,アザレの商標を使用する化粧品の製造を一審被告アザレ
プロダクツ以外の下請業者に発注してはならない。ただし,医薬品及び医薬部外品
は除外する。
⑦ 一審被告アザレプロダクツは,一審原告の販売機構内の販売指定店,
販売店,販売員から一審原告の商品と異なる種類の製品でも受注してはならない。
⑧ 製造の内容処方や成分については,一審原告と一審被告アザレプロダ
クツが協議の上決定して製造するものとし,一審原告の承諾なく変更してはならな
い。
⑨ 一審被告アザレプロダクツが一審原告より供給を受けた資材はすべて
一審原告の所有資産であり,一審被告アザレプロダクツはこれを流用し,処分し,
又は担保に供する等の行為をしてはならない。
エ 上記契約内容によれば,一審原告は,アザレ化粧品の製造(医薬品・医
薬部外品を除く)を一審被告アザレプロダクツ以外の者にさせることはできないの
に対して,一審被告アザレプロダクツは,他社に外注することを禁じられておら
ず,もともと製造設備を用意していない石けん,口紅などは,同一審被告において
外注に出しており(このことは,一審被告共和化粧品と一審原告との契約当時も同
様であり,当時の契約書では,前記のとおり,同一審被告の製造品種以外の製品に
ついては,一審原告は,同一審被告を製造元と定め,同一審被告を通じて他業者に
下請けを発注すると定められていた。),また,その他の一部製品についても株式
会社日本色材工業研究所に製造委託していたが,それらの製品にはすべて製造元と
して一審被告アザレプロダクツが表示され,製品自体も委託先から一審被告アザレ
プロダクツに納品され,同一審被告から各本舗に発送されていた。
オ 一審原告が販売員など会員用に作成配付した「躍進AZARE」と題す
るパンフレットには,表紙に「全国アザレグループ」との記載があり,「真の美を
追求するアザレ製造グループ」として,一審原告の紹介に続けて,「アザレプロダ
クツ株式会社」の工場や製造場面などの紹介のページがあり,一審被告アザレプロ
ダクツをアザレ製造グループとして表示している(そのほかに,同パンフレットに
は,「日本中に拡がったアザレオフィス」,「お客様のニーズに応える信頼のアザ
レグループ」などの記載の下に,各地の本舗オフィスなどの写真が掲載されてい
る。)。
(5) アザレ化粧品の売上及び広告宣伝等(甲16,24,25,29,59~
66,79,146~150,211,230,234,乙16,49~52,乙
ロ20,57~61,76,81)
ア 一審原告の設立以降の売上の推移は,原判決別紙「売上高・営業利益・
商標使用料比較一覧表」の売上高欄記載のとおりである。一審原告が設立された昭
和57年度に既に売上高は6億7628万0760円にのぼっていたが,それが昭
和59年には,12億2526万6090円になり,その後も平成8年ころまで順
調に売上を伸ばし,平成8年度の売上高は71億円超を記録した。
イ 一審原告と一審被告共和化粧品,同アザレプロダクツとの契約関係が存
続中に販売されたアザレ化粧品の外箱や化粧瓶には,本件各表示が付され,その外
箱あるいは瓶底のシール等には,「発売元」として一審原告が記載され,「製造
元」として一審被告共和化粧品,同アザレプロダクツが記載されていた。
ウ アザレ化粧品用のパンフレットやチラシには,一審原告が作成し,一審
原告の名前が出所として記載されているもの(その中には,最初のページに「全国
アザレグループ」との表示があり,最終ページの末尾に「アザレ ビューティフル
 エッセンス 発行:AZARE INTERNATIONAL CO.LTD」
との表示があるものもある。乙ロ76)だけではなく,各地の本舗において作成さ
れ,各本舗の会社名が表示されているもの,「AZARE GROUPE」と表示
されているものなど多種にわたっていた。
エ アザレ化粧品の新聞広告は,平成8年以降,朝日新聞,毎日新聞,読売
新聞,産経新聞に年間延べ120回,半2段(縦約7㎝×横約19㎝)の大きさで
掲載され,その文面には,いずれも一審原告のみが広告主として記載されていた。
もっとも,この広告内容は,「アザレ化粧品から訪問・直接対面販売のお知らせ」
と題されたもので,商品の紹介を内容とするものではなかった。
 雑誌広告については,昭和57年2月から7月まで及び昭和58年2月
から5月までを除いて,月刊「健康ファミリー」に商品広告が連続掲載されたほ
か,女性誌「主婦の友」,「ヘア&メーク」,「MiL」においても商品広告が掲
載された。これらの商品広告において,広告主の名前が掲載されるときには,一審
原告の名前が掲載されていた。
 これらの新聞及び雑誌広告のための支出額は,平成8年度で約3089
万円,平成9年度で約5532万円,平成10年度で約7648万円である。
オ 各種ファッション雑誌,婦人雑誌での化粧品の記事には,他の化粧品と
並んでアザレ化粧品が取り上げられることがあったが,そこでは,概ねアザレ化粧
品は,植物性の自然派化粧品として紹介されており,出所が表示されるときには,
一審原告が記載されていた。
カ 一審原告は,毎月「アザレリポート」を販売店向けに発行して,各種の
連絡,情報の提供などを行っていたほか,昭和56年以降「販売店コンクール」等
を開催して販売店及び販売員の競争意欲を高めるようにしていた。これに応じて各
本舗・販売店でも独自に販売員向けの資料を作成したり,販売員の研修を行い,独
自のパンフレット,機関誌などを作成配布して活発な販売活動等をしていた本舗も
あった。
 また,一審原告は,各本舗用に,多数の販売促進品を提供した。
キ 上記の各広告などにおける一審原告の表示は,「株式会社アザレインタ
ーナショナル」,「㈱アザレインターナショナル」「AZARE INTERNA
TIONAL」と表示されたもの,問合わせ先として「㈱アザレインターナショナ
ル」と表示されたもの,「アザレ高級化粧品」あるいは「アザレビューティフルエ
ッセンス」との表示の下に小さく「㈱アザレインターナショナル」と表示されたも
の,比較的大きく「AZARE」との表示の下に小さく「INTERNATION
AL」と表示されたものなど多様なものがあった。また,各本舗やその傘下の会社
などが発行したパンフレット,機関誌などにも,それぞれの本舗名や「AZAR
E」「AZAREX」「アザレア会」その他「アザレ」や「ASARE」を含む表
示が使用されていた。
 なお,前記のとおり,一審原告では,各本舗における具体的な販売活動
等については,基本的に各本舗の工夫や自助努力に委せており,各本舗等で販売促
進活動の一環として上記のようなパンフレット等を使用することを禁じていた形跡
はない。
ク 一審原告は,上記のような販売及び広告宣伝のために,別紙「売上高・
広告宣伝費・販売促進費比較一覧表」記載のとおりの広告宣伝費,販売促進費を支
出した。
(6) アザレ化粧品の製品開発等(甲9,13~16,21の1,76,93,
96,101,102,乙95,乙ロ20,77,一審被告共和化粧品及び同アザ
レプロダクツ代表者本人)
ア 化粧瓶及び外箱について
 前記(4)ウ記載のとおり,アザレ化粧品の化粧瓶及び外箱については一審
原告が一審被告アザレプロダクツに供給することとされており,また,当初使用さ
れていた各種化粧瓶の意匠については,Aを創作者として意匠登録出願がされ,一
審原告が意匠権を取得している。
イ 一審原告の研究体制等について
 アザレ化粧品の製造は,前記のとおり,当初は一審被告共和化粧品が,
その後一審被告アザレプロダクツがそれぞれ担当し,新製品などの基本的なコンセ
プトなどはともかく,製品の技術的な研究,開発,製造は同一審被告らが主体とな
って行っていたものであり(前記のとおり,一審被告共和化粧品との契約書では,
製品の内容処方や成分については,同一審被告が決定して製造するものとされてお
り,また,一審被告アザレプロダクツとの契約書では,製品の内容処方や成分につ
いては,同一審被告と一審原告が協議の上決定して製造するものとされてい
た。),平成の初めころまでにはアザレの主力製品はほぼ出揃い,販売体制も全国
的に本舗が展開され,アザレ化粧品の販売事業の基礎ができていた。
 一審原告は,平成2年,ワンダフル所有の福岡県内の土地建物で研究所
を開設し,平成3年4月,X1とAの面接を受けて,薬剤師のNが入社した。それ
までの間,一審原告の試験研究費は,年間30万円を超えたことはなく,その後も
N以外の技術者が存在した形跡は窺われない。一審原告は,平成4年以降,社団法
人福岡県製薬工業協会の正会員となり,平成10年に化粧品製造業許可を,平成1
2年には医薬部外品製造業許可を福岡県知事から受けた。
 一審原告の研究所では,アザレ化粧品の成分や効能に関する質問が本舗
から寄せられたときに,その質問に答えたり,クレーム品について微生物検査をす
るなどしてその原因を究明する業務を行ったり,クリームや化粧水についての新し
い処方を考え,サンプルを作ることなどをするようになっていった。
 また,一審原告では,平成8年ころからPL法相談室を設け,X1の姪
で一審原告の取締役になっていたOがこれを担当するようになった。
(7) 本件各表示についての商標権(甲3,4,5,20の3・4,23,2
8,32の1~3,33,35の1,92,99,101,102,108,11
4,172,乙4,5,72,90,94,95,丙5の2,6,10)
ア 本件各表示のうち,原判決別紙表示目録2及び3の元となったと思われ
る商標は,別紙商標一覧のとおり,昭和49年8月12日にB名義で商標登録出願
がなされ(実質的にはAが出願をしたもの),同人を商標権者として,昭和52年
5月商標権の設定登録がされた後,昭和57年7月12日,Aに権利移転登録がさ
れているものであり,同目録1の元となったと思われる商標は,昭和56年9月7
日に同じくB名義で商標登録出願がされ,昭和61年9月Aを商標権者として商標
権の設定登録がされたものである。
イ Aは,昭和54年1月10日,有限会社アザレインターナショナルとの
間で,商標使用を許諾することを内容とする次のような契約を締結した。
① 有限会社アザレインターナショナルは,Aの商標である「アザレ」を
使用する。
② 有限会社アザレインターナショナルは,当該商標の価値と信用を高め
るように常に留意する。
③ 有限会社アザレインターナショナルは,Aに対して,使用料として,
当該商標を使用した製品の出荷高につき末端小売定価の1.8%を支払う。
④ 当該商標使用製品の1か年合計額が実際取引入金金額で4億円を超過
した場合は,小売定価の0.5%を支払う。
ウ その後,Aは,ワンダフルを設立し(設立登記は昭和57年3月31
日),昭和57年1月5日,ワンダフルに対し,Aが権利を有する商標を再許諾権
付きで使用許諾する契約を締結した。ワンダフルは,設立以来Aが唯一の取締役で
あり,その出資持分は,設立当初はAが400口,X1の母親が100口であり,
この母親の分は昭和63年6月8日に補助参加人X3に譲渡された。なお,ワンダ
フルの収入の大部分は一審原告からの下記商標使用料であった。
 ワンダフルは,昭和57年1月5日,一審原告に対し,上記商標の使用
を許諾する旨の次のような内容の契約を締結した(以下「本件各商標使用許諾契
約」という。)。
① 一審原告は,ワンダフルの商標である「アザレ」を使用する。
② 一審原告は,当該商標の価値と信用を高めるように常に留意する。
③ 一審原告は,ワンダフルに対して,使用料として,当該商標を使用し
た製品の出荷高につき末端小売定価の2%を支払う。
④ 当該商標使用製品の1か年合計額が実際取引入金金額で1億円を超過
した場合は,小売定価の1.5%を支払う。
⑤ 一審原告よりワンダフルに支払う商標使用料の1年間合計額が200
0万円を超える場合は,本商標の価値を高める目的で,一審原告の要求によりワン
ダフルは広告援助金を支払い,一審原告の営業活動を支援しなければならない。
⑥ アザレ関係パッケージボトル販促物品のデザイン使用料及び一審原告
に対するワンダフルの営業協力歩合も,本商標使用料に含まれる。
エ その後,ワンダフルから契約改訂の申し入れがあり,昭和60年1月1
6日,上記ウ記載の④及び⑤が削除された。
 そして,本件各商標使用許諾契約に基づき,一審原告からワンダフルに
対して,原判決別紙「売上高・営業利益・商標使用料比較一覧表」記載の商標使用
料が支払われた。なお,「アザレ」の表示は,一審被告ら(一審被告Y,同共和化
粧品を除く。)やその他多くの本舗の商号にも用いられ,本件各表示も各本舗や販
売店などによって,パンフレットなどを含めアザレ化粧品の販売活動に関係する様
々な場面で使用されていたが,ワンダフルは,一審原告との間で商標使用について
の契約を締結したのみで,他の者との間で商標使用契約を締結することはなかっ
た。
オ Aは,平成9年3月に入院し,同年11月4日に死亡した。その法定相
続人は,妻である一審被告Y,先妻Bとの間の子である補助参加人らであったが,
Aは,全財産を一審被告Yに相続させること,ワンダフルの持分全部も一審被告Y
が相続し,代表取締役に就任することなどを内容とする遺言書を残していた。
 一審被告Yは平成10年11月にAの有していたすべての商標権につき
相続を原因とする移転登録を了し,有限会社ワンダフルの代表者に就任した。
 その後,後記紛争の過程で,ワンダフルは,一審原告に対し,平成11
年12月13日付け通知書により,本件各商標使用許諾契約を書面到達後6か月の
経過をもって解約する旨通知し,さらに平成12年2月10日付け通知書により,
同契約を即時解除する旨を通知した。
カ 上記各通知に先立ち,補助参加人らは,一審被告Yに対する上記商標権
の遺贈を対象として遺留分減殺請求権を行使し,共有持分移転登録請求権を被保全
権利とする商標権の処分禁止の仮処分を福岡地方裁判所に申し立て(同裁判所平成
11年(ヨ)第928号),平成11年12月10日に申立て認容の決定を受け,保
全異議(同裁判所平成12年(モ)6018号)でも同仮処分決定が認可され,その
抗告審(福岡高等裁判所平成12年(ラ)第95号)でも抗告を棄却する旨の決定が
なされた。
 もっとも,平成12年9月5日に言い渡された補助参加人らと一審被告
Yの間の本案訴訟の第一審判決(福岡地方裁判所平成11年(ワ)第3714号)で
は,一審被告Yが主張した遺留分減殺請求権行使に対する価額賠償の抗弁が認めら
れ,一審被告Yが補助参加人らに一人当たり約2億6000万円を支払うことによ
って,遺贈に係る商標権を完全に保有できることとされ,その控訴審判決(福岡高
等裁判所平成12年(ネ)第979号,平成16年10月20日言渡)は,補助参加
人らと一審被告Yとの間に有効な遺産分割協議が存在するとして,補助参加人らの
遺留分減殺請求権を否定し,補助参加人らの請求をすべて棄却した。この控訴審判
決に対しては上告・上告受理が申し立てられている。
(8) 紛争の経緯(甲17,20の1・2,21,29,30,31,77,7
8,84,89,100,128ないし133,191,194,195,19
9,200,乙18,19,33~48,59,72,90,95,101,10
2~105,乙ロ20,65,68,69,一審原告代表者本人,一審被告共和化
粧品及び同アザレプロダクツ代表者本人,一審被告Y本人)
ア Aの死亡後,一審原告の取締役として,それまでのX1,C,Iに加
え,平成10年2月27日付けで一審被告Yが,同年4月3日付けでL(東京本舗
であるアザレコーポレーション株式会社の代表取締役)がそれぞれ就任した。そし
て,平成10年3月以降,これら取締役,監査役等が毎月1回以上「株主定例会」
と称する会議に集合し,一審原告,一審被告アザレプロダクツ,各本舗などにおけ
るアザレ化粧品の製造販売に関する様々な問題点を話し合って解決していくように
なり,その定例会の詳細な記録も残された(それまでの間,取締役会など経営のた
めの実質的な会議等が行われていたかどうか明確ではなく,少なくとも証拠上,そ
のような会議等の記録は存在しない。)。
イ ところが,次第に,取締役らの間で,それぞれの利害なども絡んで意見
が合わなくなり,C,L,I及び一審被告Yは,X1及びGらと対立するようにな
った。
 そして,平成11年2月の役員改選期において,Lが取締役に再任され
ない見通しとなったことを不満として,C,I及び一審被告Yは,一審原告の取締
役に再任されることを拒否し,平成11年3月以降,C,I,L及び一審被告Yの
4名は株主定例会に出席しなくなった。
 その後,一審被告アザレプロダクツは,平成11年11月4日付けの催
告書を一審原告に送付し,一審原告の姿勢にはアザレ化粧品の理念に反するものが
あり,また,一審原告が一方的に新製品の販売を会員に約束したことなどを不満と
して,従来同様の新商品の開発及び販売のルールを確認することなどを要求し,納
得できる説明がなければ3か月の経過により委託製造取引契約を解約する旨を申し
入れた。これに対して,一審原告は,同年11月17日付けの回答書をもって,一
審原告及びX1にアザレ化粧品の精神にもとる行動はなく,今後も一審原告と一審
被告アザレプロダクツとの契約を継続していきたい旨回答した。
 しかしながら,両者の関係は修復されることなく,一審被告アザレプロ
ダクツは,平成12年2月2日付けの通知書により,同月5日の経過をもって同契
約を解約することを一審原告に申し入れ,一審原告も解約に同意したため,両者の
契約は同月5日限りで合意解約された。
ウ 上記解約後の平成12年4月ころから,一審原告は,日本コルマー株式
会社を新たな製造元として,本件各表示を付した化粧品等の販売を開始した。
 他方,一審被告アザレプロダクツも,被告製品の製造販売を開始し,こ
の動きに呼応して,平成12年4月以降,約18の本舗が,一審被告アザレプロダ
クツ製造の製品を取り扱うことができなくなることなどを理由として,一審原告と
の間の販売指定店契約の解約の意思表示を行い,被告製品の取扱いを開始した。
 一審被告アザレ東京,同アザレアルファ,同アザレウイング及び同アザ
レ武蔵野は,被告製品を販売している。なお,被告製品及びその包装の外観の色彩
や瓶の形状は一審原告製品とは若干異なっているものの,本件各表示と同一の表示
が付されている。
被告製品には製造元として一審被告アザレプロダクツの表示が付されて
いるもの,発売・製造元として同一審被告の表示が付されているものが流通し,し
ばらく後に発売元として「アザレ化粧品 福岡市中央区天神2-3-10」,製造
元として一審被告アザレプロダクツの表示が付されているものが流通するようにな
った。これに合わせて,被告製品に関するパンフレットには出所の表示として一審
被告アザレプロダクツ又は「アザレグループ」の表示があるのみであったが,その後
上記「アザレ化粧品」を発売元とするものが配布されている。上記発売元(アザレ
化粧品)の住所は,一審被告Yが借り受けているマンションであるが,現実の製品
の発注処理は,各本舗から一審被告Yの上記事務所と一審被告アザレプロダクツの
双方に注文書を送付し,製品は一審被告アザレプロダクツから各本舗に直接送られ
るという処理をしていたものであり(その後も,一審被告Yの事務所では,各本舗
から送付されてくる発注書をそのまま被告アザレプロダクツに転送するという処理
をしているに過ぎない。),商品のクレーム対策や品質の管理もすべて一審被告ア
ザレプロダクツが行い,一審被告Yの事務所の郵便受け等にもアザレ化粧品の事務
所であることを示すような表示はない。
2 争点(1)(本件各表示は一審原告の商品等表示としてのみ需要者の間に広く認
識されているか)について
(1) 以上認定したアザレ化粧品の創業の経緯,その後の事業体制や事業展開の
実際などからすると,アザレ化粧品は,Aが,ジュポン社時代の化粧品製造業者や
販売業者の強い要請を受けて,それまでの経験と見識に基づいて培った自然派化粧
品という基本的な理念に則り,製造技術者の協力の下に,商品化したものであっ
て,その「アザレ」という名も,Aの考案によって商標登録を受けるに至ったもの
で,形式的にも実質的にも,Aのブランドということができるものである。
 このアザレの商標について,一審原告代表者X1の陳述書(甲35の1,
90,92,101)及び本人尋問の結果中には,①昭和52年になって化粧品の
製造販売業を再開するに当たり,ヴァローとジュポンと2度の失敗があるため,商
標の問題に注意した,②そこで,自分が,イスラエルの地名「ナザレ」から,「ア
ザレ」という商標を考案した,③「アザレ」の商標は自分とAが相談しながら決め
たが,一審原告の代表取締役を自分がすることにしたので,商標の登録はAにする
ことにした旨の記載及び供述部分がある。
 しかしながら,「アザレ」についての最初の商標登録出願は昭和49年8
月であり,この時期は,ジュポン社が製造委託先を一審被告共和化粧品に代えて1
年余り経過し,エレガンスカラーの販売が好調になっていたころであって,事業の
再開に当たり,X1がこれを考案したというのは不自然であること,アザレ新鹿児
島ディストリビューター(甲11によれば,唯一の一審原告直営の本舗である。)発
行の広報誌には,「アザレネームの由来」として,「(アザレア)アザレア属・つつ
じ属の亜属,西洋つつじ,オランダつつじとも称す」との記載があり(乙ロ5),
X1の認識とは異なる説明がなされていること,当時,Aと親密な関係にあったX
1がその考案に関与した商標を,Aが妻のB名義で出願するというのも考えにくい
ことなどに照らすと,上記記載及び供述部分は,採用することができず,他にAの
ブランドであるとの上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(2) そして,前記認定したところからすれば,Aは,CやGなどの要請を受け
てアザレ化粧品の事業を始めるに当たり,その販売部門についてはA側が,製造部
門についてはCが,それぞれ分担し協力していくことを前提として,全国各地にG
など販売担当の本舗を置いてその事業展開をしていくこととしたものであり,この
ような基本的な考えに基づき,販売部門として,X1を代表者に据えた一審原告
(その前身の有限会社)を立ち上げ,他方,製造部門としては,当初,Cが経営す
る一審被告共和化粧品にこれを委ねていたが,その後,Cが中心となって設立され
た一審被告アザレプロダクツがこれを担当するようになったものであって,そのよ
うな体制の下で,アザレ化粧品の販売事業は,一審原告を総発売元,一審被告共和
化粧品,同アザレプロダクツを製造元として,全国各地に展開される本舗,販売店
に商品を供給し,それら本舗等による販売活動等を通じて,次第に消費者の信頼を
得て発展していったものということができる。このアザレ化粧品については,本舗
等に属する販売員による訪問販売方式が採用されており,本件各表示が付されたア
ザレ化粧品の外箱あるいは瓶底のシール等には,発売元として「株式会
社アザレインターナショナル」,製造元として「アザレプロダクツ株式会社(その
設立前は共和化粧品工業株式会社)」と表示され,また,各本舗のほとんどは,そ
の商号に「アザレ」の語を用い,パンフレットなど様々な形でアザレの名称等を用
いて,消費者に対する販売活動を行っていたものであって,一審原告,一審被告ア
ザレプロダクツ(その設立前は一審被告共和化粧品)及び各本舗等は,アザレ化粧
品の販売普及という共通の目的の下に,発売元,製造元及び販売店として,それぞ
れの役割を分担し合いながら結合した一つのグループを形成し,対外的にもそのよ
うな結合関係にあることを表示していたものとみるのが相当である。このことは,
前記認定のとおり,一審原告自身も,アザレリポートやパンフレットにおいて,一
審被告アザレプロダクツ及び各本舗等を含めて「アザレグループ」と表示していた
ことからも明らかである。
 そして,消費者にとってみれば,アザレ化粧品は,そのようなアザレグル
ープが提供する化粧品であり,「アザレ」の表示は,上記グループ全体の営業ある
いは商品を示すものとして認識されていたものとみるのが自然であって,本件各表
示は,そのようなグループ共通の商品等表示として,消費者の信頼を獲得し,周知
になっていったものと認めるのが相当である。
(3) このようなアザレグループの中で,①一審原告は,販売を担当する本舗を
募集し,各本舗との間で販売指定店契約を締結して,アザレ化粧品の販売権を付与
する一方で,一審被告アザレプロダクツとの間で委託製造取引契約を締結し,これ
らの契約に基づいて,各本舗から製品の注文を受け付け,一審被告アザレプロダク
ツに発注して,各本舗に製品を供給していたこと,②アザレ化粧品には一審原告の
名称が発売元として表示され,アザレ化粧品の宣伝広告にも一審原告の名称が表示
されていたこと,③一審原告は,各本舗全体に対する情報提供などを行い,パンフ
レットなどを作成配布し,販促品の提供などをしていたこと,④一審原告は,ワン
ダフルとの間で,唯一本件各商標の使用許諾契約を締結して,毎年相当額の商標使
用料の支払をしていたことなどからすると,一審原告は,アザレグループの組織内
における中心的な役割を果たしており,対内的にも対外的にも,アザレグループの
中核的な企業として認識され,グループ全体の発展に貢献してきたものであること
は明らかである。
 他方,一審被告アザレプロダクツの設立により,グループの体制が名実と
もに確立されることとなったアザレグループにおいて,同アザレプロダクツは,ア
ザレ化粧品創業当時からの一審被告共和化粧品のアザレ化粧品製造部門を分社化し
て設立された会社であり,①一審被告共和化粧品が製造していた当時と同様に,ア
ザレ化粧品について,独占的な製造権を有し,Aの追求する自然派化粧品の理念に
沿うべく,主体的に製品の技術的な研究,開発,品質の保持等に努めてきたこと,
②その製造する製品は,全国各地の本舗等を通じて消費者の信頼を獲得し,一審原
告の売上高ベースでみても,昭和59年当時12億円余であったものが,平成8年
にはその6倍弱の71億円余に達する程の成長を遂げるなど,昭和60年の設立以
降,長年にわたりアザレグループ全体の発展に貢献してきたものであること,③ア
ザレ化粧品には,一審原告と並んで,製造元として一審被告アザレプロダクツ(そ
の設立前は一審被告共和化粧品)の名称も表示されており,一審原告も,パンフレ
ットなどで,一審被告アザレプロダクツをアザレ化粧品の専用工場として,工場の
建設や拡張等について紹介するなど,一審原告と並ぶアザレ製造グループの一員と
して宣伝していたこと,④一審被告アザレプロダクツについては,X1が株主とな
るとともにその取締役に,一審原告については,Cが株主となるとともにその取締
役に,それぞれ就任していたものであり,このような株式の所有や役員就任は,ア
ザレグループ内では同一審被告と一審原告との間だけであることなどからすると,
一審被告アザレプロダクツも,同共和化粧品のアザレ化粧品製造部門を引き継い
で,アザレ化粧品の製造を一手に引き受け,主体的に製品の開発,製造に関わる重
要な役割を果たしてきたものであり,対内的にも対外的にも,一審原告と並んでア
ザレグループの中核的な企業として認識され,グループ全体の発展に貢献してきた
ものということができる。
(4) 一審原告は,一審被告アザレプロダクツは,同共和化粧品と同様に,単に
アザレ化粧品をOEM製造していたものに過ぎないと主張するが,上記のような一
審被告アザレプロダクツがグループ内において果たしてきた役割などの事情に加
え,前記認定のとおり,①アザレ化粧品の創業はCらのAに対する積極的な働きか
けが発端であり,Aとしては,事業展開に当たって,その製造部門はCに委せるこ
ととしていたこと,②アザレ化粧品の創業後,Cは,A及びX1と同行するなどし
て,アザレ化粧品の本舗網の拡充に協力し,一審被告共和化粧品,その後同アザレ
プロダクツが,各本舗・一審原告間の販売指定店契約書に立会人として関与するな
ど,アザレ化粧品の事業展開に深く関わっていたこと,③一審原告と一審被告共和
化粧品,同アザレプロダクツとの間のアザレ化粧品の製造に関する契約において,
一審原告は,同一審被告らに対してのみアザレ化粧品の製造を委託するものとさ
れ,同一審被告らだけがアザレ化粧品の製造元になるとされていたこと,④一審被
告共和化粧品との契約書では,製品の内容処方や成分については,同一審被告が決
定して製造するものとされており,また,一審被告アザレプロダクツとの契約書で
は,製品(契約書では「製造」)の内容処方や成分については,同一審被告と一審
原告が協議の上決定して製造するものとされていたことなど,本件に現れた諸事情
を総合考慮すると,一審被告共和化粧品は,アザレ化粧品のほかにも,他社から化
粧品製造の委託を受けていたものではあるが,そのことから直ちに一審原告との関
係をOEMに過ぎないとすることはできず,アザレ化粧品の創業の経緯,その後の
事業展開への関わり,契約内容などからみても,同一審被告は,アザレ化粧品の販
売事業において,単なるOEM業者とは異なる役割を担っていたものというべきで
あるし,また,一審被告アザレプロダクツは,まさにアザレグループの中核として
その役割を果たしていたことが明らかであって,ともに単なる相手先ブランドで販
売される製品を製造するOEM業者に過ぎないということはできないのであり,一
審原告の上記主張は採用できない。
 また,一審原告は,一審被告アザレプロダクツは,アザレ化粧品が専用工
場で製造されているとの外観・外形を示すことだけを目的に設立されたペーパーカ
ンパニーに過ぎないなどとして,商品表示の主体としての「アザレグループ」は存
在していないと主張する。
 確かに,前記認定のとおり,一審被告アザレプロダクツは,最近まで,同
共和化粧品の工場設備等を使用してアザレ化粧品を製造していたものであるが,一
審被告アザレプロダクツは,その設立後,薬事法に基づく製造許可を得て,専用の
工場でアザレ化粧品を製造し,アザレ化粧品に製造元として表示されているのであ
り,また,一審原告自身も,パンフレットで,アザレ化粧品の専用工場として一審
被告アザレプロダクツを紹介しているのであって,一審被告共和化粧品の施設,人
員を使用するなどしているとしても,一審被告アザレプロダクツの代表者であるC
がこれを管理監督していたとみることもできるのであり,そのことは系列会社の関
係にある同一審被告ら内部の問題に過ぎず,そのような施設の所有関係等や経理上
の処理などをとらえて,一審被告アザレプロダクツが実体のないペーパーカンパニ
ーに過ぎないということはできない。そして,本件のアザレ化粧品の販売事業にお
いて,一審原告,一審被告アザレプロダクツ,各本舗等はアザレ化粧品の販売普及
という目的の下に結合した一つのグループを形成しているものであり,本件各表示
がそのグループ全体を表示するものとして認識され,周知になっていったものであ
ることは,前記のとおりである。
 さらに,一審原告は,一審被告アザレプロダクツの設立以前にアザレ化粧
品が一審原告の商品であり,本件各表示が一審原告の商品表示であることの周知性
が確立されていたと主張する。
 しかし,前記認定のとおり,アザレ化粧品の販売事業は,販売部門につい
てはA側が,製造部門についてはCが,それぞれ分担し協力していくことを前提と
して,全国各地に本舗等を置いて事業展開していくこととして始められたものであ
り,一審被告アザレプロダクツが設立される前までは,一審原告,一審被告共和化
粧品,各本舗等が一つのグループをなして,アザレ化粧品の普及に努め,発展して
きたものであって,消費者にとって,「アザレ」の表示は,それら営業主体の全
体,すなわちアザレグループの商品等表示として認識され,周知になっていったも
のである。したがって,一審原告が主張するように,一審被告アザレプロダクツの
設立以前に本件各表示が一定の周知性を獲得していたとしても,それは,あくまで
アザレグループの商品あるいは事業という,アザレグループ全体と結びついたもの
として周知になり,信用を形成していったものであって,アザレグループを離れて
一審原告のみの商品等表示として周知になったものではないというべきであるか
ら,一審原告の上記主張は採用することができない。
 また,一般に,商品等表示の周知性,著名性は,その周知等の程度におい
て初期の状態から,よりその程度の高い状態まで,企業活動や取引の動向等に応じ
て拡充されていくのが通常であるところ,アザレ化粧品の売上高の推移に照らして
考えれば,たとえ一審被告アザレプロダクツ設立前に,一定程度の周知性を獲得し
ていたとしても,その時期における周知性の程度は,未だそれほど高いものとはい
えないというべきであり,専用工場としての一審被告アザレプロダクツが設立され
た後の売上高の顕著な増加からしても,同アザレプロダクツが,一審被告共和化粧
品の果たした役割を引き継いで,さらにその周知性の維持,拡大に貢献しているこ
とは明らかであって,一審被告アザレプロダクツが,本件各表示が一定程度の周知
性を獲得した後に設立され,アザレグループの一員となったものであるとしても,
そのことから,同アザレプロダクツが本件各表示の周知性の獲得に貢献していない
とか,グループの中核的企業としての役割を持たないなどということができないこ
とは当然である。
 なお,本件各商標については,一審原告のみが使用許諾を得て毎年相当額
の商標使用料を支払っていることは前記認定のとおりである。しかし,前記認定し
た事実を総合すると,Aは,自然派化粧品という基本的な理念に基づき,アザレの
ブランドを用いて,アザレ化粧品の販売事業に乗り出したものであるが,自らは,
単にその商標権者の地位にとどまり,実質的にはともかく,形式的には,一審原告
の代表取締役に就任することもせずに,専らアザレ化粧品の普及のために全国の各
本舗等でアザレ化粧品の理念を啓蒙するなどして,いわばアザレグループの象徴的
存在としての役割を果たしていたものであり,一審原告が,ワンダフル(実質的に
はAの個人会社である。)との間で本件各商標使用許諾契約を締結し,毎年相当額の
商標使用料を支払うこととされたのは,Aがアザレグループによるアザレ化粧品販
売事業による収益の分配を商標権の使用対価という形で受けるための手段として採
られた方法とみるのが合理的であって(一審原告と一審被告アザレプロダクツある
いは各本舗との契約関係において,一審原告のみが商標使用料を支払っていること
はその契約条件の設定に当たり当然考慮されていたであろうことは,推測するに難
くない。),本件において,一審原告のみが商標使用料を支払っていることは,前
記認定説示したようなアザレグループの存在や一審被告アザレプロダクツの中核的
役割などを否定する理由となるものでないことも明らかである。
(5) 以上のとおり,一審原告と一審被告アザレプロダクツ(その設立前は一審
被告共和化粧品)は,いずれもアザレグループにおいて,組織的にはアザレ化粧品
の発売部門と製造部門をそれぞれが分担し合う形でその役割を果たし,対内的・対
外的にともにグループの中核的な企業として認識され,それぞれの立場でグループ
全体の発展に貢献してきたものであって,このような一つのグループ内において,
ともに組織的かつ対外的に中核的な地位を占めてきた一審原告と一審被告アザレプ
ロダクツが袂を分かち,傘下の各本舗等を含めてグループ組織が分裂することとな
った場合には,そのアザレグループの商品等表示として周知となっていた本件各表
示については,それらグループの中核的企業であった一審原告及び一審被告アザレ
プロダクツのいずれもが,グループ分裂後も,その商品等表示の帰属主体となり得
るものと解するのが相当であるから(もっとも,そのような場合の取扱いについて
予め企業間に特段の合意が存在する場合は,その合意の内容に従うことは当然であ
るが,本件においては,そのような特段の合意の存在は認められない。),一審原
告と一審被告アザレプロダクツとの間においては,その商品等表示,すなわち本件
各表示は,互いに不正競争防止法2条1項1号所定の「他人の」商品等表示には当
たらないというべきであり,グループ分裂後にその商品等表示を使用することにつ
いて,互いにこれを不正競争行為ということはできないと解すべきである。
 なぜなら,不正競争防止法2条1項1号の規定は,他人の周知な商品等表
示と同一又は類似する表示を使用して需要者を混同させることにより,当該表示に
化体した他人の信用にただのりして顧客を獲得する行為を,不正競争行為として禁
止し,もって公正な競業秩序の維持,形成を図ろうとするものであるところ,本件
のように,販売部門と製造部門を分担し合い,ともにグループの中核的企業として
本件各表示の周知性の獲得に貢献してきた一審原告と一審被告アザレプロダクツ
は,いずれもが当該表示により形成された信用の主体として認識される者であり,
グループの分裂によっても,それぞれに帰属していた本件各表示による信用が失わ
れることになるわけではなく,互いに他人の信用にただのりするものとはいえない
からである。
 そうすると,一審被告アザレプロダクツが本件各表示の付された被告製品
を製造販売する行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当す
るものではなく,また,一審被告アザレプロダクツの傘下に属して,アザレの商号
を使用し,同一審被告の製造する本件各表示の付された被告製品を販売する一審被
告アザレ東京,同アザレアルファ,同アザレウイング,同アザレ武蔵野の行為も,
同号所定の不正競争行為に該当しないというべきである。また,前記認定した事実
からすれば,一審被告共和化粧品及び同Yは,いずれも自らの業務として本件各表
示の付された被告製品の製造販売を行っているものではないから,同一審被告らに
ついて不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為が成立するとは認められな
いし,一審被告アザレプロダクツの被告製品の製造販売行為は不正競争行為に該当
するものではないから,これが不正競争行為に当たることを前提に,一審被告共和
化粧品及び同Yについて共同不法行為の成立をいう一審原告の主張も理由がない。
3 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,一審原告の本訴請
求は当審において拡張した部分を含めて理由がない。よって,一審原告の請求を一
部認容した原判決は相当でなく,一審被告ら(一審被告Yを除く。)の本件控訴は
理由があるが,一審原告の本件控訴(及び当審において拡張した請求)は理由がな
いから,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条,66条,61条を適用して,主
文のとおり判決する。
東京高等裁判所知的財産第3部
     裁判長裁判官     佐  藤  久  夫
 裁判官     設  樂  隆  一
 裁判官     若  林  辰  繁

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今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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