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裁判例


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主文
1被告は,原告Aに対し,736万8598円及びこれに対する
平成18年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
2被告は,原告Bに対し,802万8137円及びこれに対する
平成18年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
3原告らのその余の請求を棄却する。
4訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の,その余を原告らの負
担とする。
5この判決は第1,2項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1被告は,原告Aに対し4427万9189円,被告Bに対し4804万95
66円,及びこれらに対する平成18年12月15日から支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,被告の設置する奈良県立奈良病院(以下「奈良病院」という。)の
産婦人科に勤務する医師である原告A(以下「原告A」という。)及び原告B
(以下「原告B」という。)が,原告らの行っている宿日直勤務及び宅直勤務
は時間外・休日勤務であるのに,平成16年1月1日から平成17年12月3
1日までの割増賃金が支払われていないとして,被告に対し,労働基準法37
条に基づく割増賃金と,これに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法
所定年5分の割合の遅延損害金の支払を求めた事案である。
2前提事実
当事者間に争いのない事実及び証拠(各認定事実の後に掲記のもの)によっ
て容易に認められる事実は,以下のとおりである。
()当事者等1
原告A及び原告Bは,奈良病院産婦人科に勤務する医師である。
被告は,奈良病院を設置運営する者である。
本件請求に係る期間である平成16年1月1日から平成17年12月31
日までの間,奈良病院産婦人科には原告ら2名を含む5名の医師が勤務して
いた。
()勤務時間等2
ア原告らの正規の勤務時間(所定就業時間)は,月曜日から金曜日までの
各午前8時30分から午後5時15分までである(甲1)。
イ被告は,原告らに対し,本来の勤務以外に交代で宿日直勤務を命じてお
り,原告らはこれに従事している(甲1,2の1,2の2,乙33∼56
の2)。その勤務時間は,宿直が平日休日を問わず午後5時15分から翌
朝8時30分まで,日直が休日(土曜,日曜,祝日)の午前8時30分か
ら午後5時15分までである(甲1)。
宿直医師は,入院患者並びに救急外来患者に対する診療に当たるために,
奈良病院に宿泊する。
ウ原告らを含む奈良病院の産婦人科医師は,宿日直勤務以外に,自主的に
「宅直」当番を定め,宿日直の医師だけでは対応が困難な場合に,宅直医
師が奈良病院に来て宿日直医師に協力し診療を行っていた(甲25,証人
I)。
()原告らの宿日直回数3
原告らは,平成16年1月1日から平成17年12月31日までの期間中,
別紙1(乙858)〈省略〉記載の回数にわたり,宿日直を行った。
()原告らの給与額等4
原告Aの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで
47万0204円,同年4月1日から同年11月31日まで48万0298
円,同年12月1日から同月31日まで48万0586円であった。
原告Bの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで
49万9310円,同年4月1日から同年11月31日まで50万7444
円,同年12月1日から同月31日まで50万7843円であった。
原告らは,給料のほかに扶養手当,調整手当,住居手当,初任給調整手当,
通勤手当,月額特殊勤務手当,超過勤務手当,宿日直手当,期末手当,勤勉
手当,休日勤務手当を受給していた。平成16年及び平成17年における諸
手当の金額は,別紙2(乙857)〈省略〉記載のとおりである。
()条例等の定め5
ア奈良県では,職員の勤務時間,休暇等に関する条例(平成7年3月奈良
県条例第29号。以下「勤務時間条例」という。)9条1項において,
「任命権者は,人事委員会の許可を受けて,第3条から第6条までに規定
する勤務時間(以下「正規の勤務時間」という。)以外の時間において職
員に設備等の保全,外部との連絡及び文書の収受を目的とする勤務その他
の人事委員会規則で定める断続的な勤務をすることを命ずることができ
る。」と規定されている(甲3)。
イ勤務時間条例9条1項を受けて,職員の勤務時間,休暇等に関する規則
(平成7年3月奈良県人事委員会規則第16号。以下「勤務時間規則」と
いう。)7条1項には,「勤務時間条例9条1項の人事委員会規則で定め
る断続的な勤務は,次に掲げる勤務とする。」と規定され,同項3号(6)
に「県立医科大学付属病院又は県立病院における入院患者の病状の急変等
に対処するための医師又は歯科医師の当直勤務」と規定されている(甲
4)。
ウ宿日直手当に関する規則(昭和46年3月奈良県人事委員会規則第12
号)3条1項4号は,勤務時間規則7条1項3号(6)の勤務に関し,その
勤務1回につき,2万円の宿日直手当を支給すると規定している(甲5)。
(6)消滅時効
平成16年1月1日から同年10月25日までの間の,原告らの被告に対
する時間外・休日割増賃金債権については,消滅時効期間が経過した(労働
基準法115条)。
被告は,平成20年7月16日の第4回弁論準備手続期日において,上記
消滅時効を援用した。
(7)既払いの宿日直手当額
被告は,平成16年10月26日以降の宿日直手当として,原告Aに対し
て246万円,原告Bに対して260万円を支払った(乙42,858)。
3争点及び当事者の主張
()勤務時間規則7条1項3号(6)は,労働基準法41条3号に違反するか。1
ア原告らの主張
勤務時間規則7条1項3号(6)は,労働基準法41条3号に違反し無効
である。
同号は,「監視又は継続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許
可を得たもの」につき,労働時間や休日に関する労働基準法の適用を除外
すると規定している。この「監視又は断続的労働に従事する者」について,
監視労働とは一定部署にあって監視するのを本来の業務とし,常態として
身体又は精神的緊張の少ない労働をいい,断続的労働とは,実作業が間欠
的に行われて手待ち時間の多い労働をいう。同号を受けて,勤務時間条例
9条1項も,監視又は断続的労働に従事する者について例外的な時間外割
増賃金の支払義務がないとしているのである。しかし,医師は継続的に医
療という高度な専門知識を要する労働に従事する労働者であり,監視又は
断続的労働に従事する者には当たらないから,勤務時間規則7条1項3号
は,労働基準法41条3号に違反する。
すなわち,原告らは産婦人科医師であり,産婦人科の性質上,宿日直勤
務でも,分娩に対応せねばならないし,ハイリスク妊娠患者に対する診療
行為も行う必要があるし,入院患者のみならず救急外来患者に対する診療
行為をも命じられ行っている。このような原告らの時間外・休日の勤務実
態からすれば,これらは監視又は断続的労働とはいえず,通常の労働時間
内勤務と同等の労働が時間外,休日にも行われているといえる。
イ被告の主張
原告らは地方公務員であるから,給与を含む勤務条件につき勤務条件法
定(条例)主義が適用される。本件では,中立的かつ専門的な機関である
奈良県人事委員会が,勤務時間規則において,県立病院における入院患者
の病状の急変等に対処するための医師の当直勤務を「断続的な勤務」と捉
えることを許可しているのである。そして,原告らが宿日直勤務において
行っている業務内容は,全て勤務時間規則7条1項3号(6)に該当する。
原告らの宿日直勤務における救急外来受診患者数及び異常分娩件数は多
くなく,正常分娩において医師が実際に診療を行う時間も多くないから,
宿日直勤務は断続的勤務といえる。
(2)割増賃金の対象たる労働時間
ア原告らの主張
原告らの宿日直勤務及び宅直勤務は,その勤務時間全てが,労働基準法
37条1項にいう時間外又は休日勤務に当たる。
(宿日直勤務について)
原告らは産婦人科医師であり,産婦人科の性質上,夜間・休日を問わず
分娩に対応せねばならないが,宿日直勤務中の原告らの分娩立会いは常態
的なものであり,通常勤務の延長にほかならない。また,そもそも救急外
来患者の診察は勤務時間規則7条1項3号(6)に規定されておらず,原告
らは宿日直勤務において救急外来患者の診療に当たる法的義務はないのに,
救急外来患者の診療に当たっている。異常分娩や異常妊娠等に対する診療
も昼夜を問わず多い。平成16年1月1日から平成17年12月31日ま
での間に,原告らは宿日直時間の4割程度の時間,現実に就労していると
考えられる。このような原告らの時間外勤務実態からすれば,宿日直勤務
に関し,通常の労働時間内勤務と同等の労働が時間外,休日にも行われて
いるといえる。そして,原告らの宿日直勤務の労働時間は,待ち時間を含
む宿日直勤務の時間帯全てと考えるべきである。
(宅直勤務について)
奈良病院は一次救急(入院を必要としない程度)から三次救急(高度医
療を必要とする程度)までの救急患者を受け入れているため時間外の救急
外来患者数は少なくなく,宿日直医(1名)の負担が重いこと,急変した
入院患者への対応と救急患者の診療が重なれば対応が不可能であること,
異常分娩等の場合には一名の宿日直医のみでは対応できないことから,被
告の命じた勤務を可能ならしめるために,原告らは自主的に応援医師を確
保するための宅直当番を決めているのであって,宿日直と宅直は一体の制
度である。奈良病院も宅直の存在を認識した上で,それを前提とした産科
医療を運営していた。宅直当番は自宅で待機し,呼び出されれば病院に急
行するが,呼び出されて行う職務は患者に対する診療行為であって原告ら
の職務そのものといえるし,宅直当番のときに呼び出される頻度も稀では
ないから,宅直勤務でも労働からの解放が保障されていないというべきで
あるし,実質的に役務提供が義務付けられていないと認められる特段の事
情はなく,奈良病院の指揮命令下に置かれていたといえる。したがって,
宅直当番の時間も全て割増賃金の対象となる労働時間と考えるべきである。
イ被告の主張
争う。
(宿日直勤務について)
割増賃金の対象となる労働時間は,原告らが現実に診療を行っている時
間をいい,診療の合間の待機時間は労働時間に含まれない。原告らが宿日
直勤務において救急外来受診患者及び異常分娩へ対処した場合の割増賃金
の支払は,社会通念上の一定の線引きの元に必要と判断される所要時間を
もって,労働基準法37条にいう割増賃金を支払う対象となる労働時間と
考えるべきである。
(宅直勤務について)
宅直は,原告ら奈良病院の産婦人科医師らが自主的に行っているもので
あり,被告が命じているわけではないから,宅直時間は給与の支給の対象
となる労働時間ではない。
(3)割増賃金の額
ア原告らの主張
原告ら主張の割増賃金は,別紙3(訴状添付の割増賃金計算書)〈省
略〉のとおりである。
割増賃金算定に関して,一般職の職員の給与に関する条例(昭和32年
9月奈良県条例第33号,乙856。以下「給与条例」という。)が労働
基準法37条4項,労働基準法施行規則(以下「施行規則」という。)2
1条に反する場合は,違反する限りで無効である。
原告らは,給与のほかに諸手当を受給していたが,このうち調整手当,
初任給調整手当,月額特殊勤務手当,期末手当,勤勉手当は,労働の対価
たる性格を有するから,割増賃金の算定の基礎とされなければならない。
住居手当も施行規則21条により除外される住宅手当には当たらず,割増
賃金の算定の基礎とされるべきである。
イ被告の主張
争う。職員の勤務1時間当たりの給与額の算定は,給与条例23条に基
づいて行わなければならず,割増賃金の算定に関する原告らの主張は争う。
第3当裁判所の判断
1争点1(勤務時間規則7条1項3号(6)は,労働基準法41条3号に違反す
るか。)について
(1)前記前提事実に加え,証拠(甲1,2,8∼10,27,28,乙33
∼56,58,59,61∼791,844,845(枝番号含む),原告
A本人,証人I)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア奈良病院は,1次,2次,3次救急全てを取り扱う総合病院であり,産
婦人科医師が複数人在籍し,麻酔科医師もおり,救命センターや新生児の
NICU施設があるため,奈良県北部だけでなく,奈良県全域及び京都府
南部からの救急患者が運ばれてくる病院である(証人I)。
イ原告らは,奈良病院から宿日直勤務を命じられており(甲1,2の1,
2の2,乙33∼56),宿日直勤務において命じられている業務は,入
院患者の急変に対応するほか,やむを得ぬ事情がない限り救急外来患者の
診療にも従事することであり,宿直勤務の際は奈良病院に宿泊して業務を
行い,日直勤務においても奈良病院で業務を行い,宿日直勤務中は勤務位
置をできる限り明確にして常時ポケットベルを携帯し,呼出しに速やかに
応答することが義務付けられている(甲2の1及び2)。また,産婦人科
という診療科目の特質上,宿日直勤務時間中に分娩に立ち会うことも少な
くなく(乙58,59),宿日直勤務時間中に,帝王切開術実施を含む異
常分娩や,分娩・新生児・異常妊娠治療その他の診療も行っていた。平均
分娩時間は初産婦で約15時間,経産婦で約5時間であり(甲8),宿日
直医師は助産師や看護師と協力して分娩に当たるが,分娩には必ず医師が
立ち会い,異常分娩の場合には分娩前や後にもさまざまな医療行為等を行
い,助産師や看護師は,異常があればすぐに宿日直医師に連絡することに
なっている(証人I)。また,異常分娩は結果的に正常分娩でなかったも
のをいい,さまざまな類型があるが,奈良病院では異常分娩の割合が高く
(証人I),それらに対しては医師が診断を行い,処置や診療,手術を行
うことになる(甲9,10)。これらに対処する産婦人科の宿日直医師は,
1名であった(乙33∼56)。
ウ奈良病院には宿直勤務者が睡眠するための施設が備えられているが(乙
863),宿直勤務中に睡眠時間を十分に取ることは難しい(証人I,原
告A本人)。被告が,奈良病院産婦人科における,平成19年6月1日か
ら平成20年3月31日までの宿日直勤務中における通常業務(原則とし
て,外来救急患者への処置全般及び入院患者にかかる手術室を利用しての
緊急手術等)の割合を調査したところ,原告ら奈良病院産婦人科医師は,
宿日直勤務時間中24%の時間,通常業務に従事していた(乙855)。
(2)労働基準法は労働条件(勤務条件)の最低基準を定めることを目的とす
るものであり(同法1条2項),同法が適用される限りにおいて,地方公務
員の勤務条件はこれを条例で定める場合においても労働基準法で定められた
基準以上のものでなければならない。原告らは,一般職の地方公務員であり
(地方公務員法3条),一部の規定を除き労働基準法が適用され(同法58
条),同法37条,41条の適用をも受ける。したがって,原告らが地方公
務員であって勤務条件条例主義の適用を受けるとしても,それは同法37条,
41条で定める基準以上のものでなければならないと解される。
時間外又は休日労働の割増賃金支払義務に関する労働基準法37条の規定
は,監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が労働基準監督署長の許可
を受けた者については,適用しないこととされているが(同法41条3号),
同法41条3号にいわゆる「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは,正規
の勤務時間外又は休日における勤務の一態様であり,本来業務を処理するた
めのものではなく,構内巡視,文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機
するもの等であって,常態としてほとんど労働する必要がない勤務をいうも
のと解される(平成14年3月19日厚生労働省労働基準局長通達基発第0
319007号,甲13)。そして,同法41条3号にいう行政官庁たる労
働基準監督署長は,①常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみであ
ること(原則として通常の労働の継続は認められないが,救急医療等を行う
ことがまれにあっても一般的にみて睡眠が十分とりうるものであること),
②相当の睡眠設備が設置され,睡眠時間が確保されていること,③宿直勤務
は週1回,日直勤務は月1回を限度とすること,④宿日直勤務手当は,その
勤務につく労働者の賃金の一人一日平均額の3分の1を下らないこと,とい
う許可基準をみたす場合に,医師等の宿日直勤務を許可するものとされてい
る(前記通達(甲13)の別紙「労働基準法第41条に定める宿日直勤務に
ついて」)。
ところで,勤務時間条例9条1項は,職員に断続的な勤務を命じることが
できるとし,勤務時間規則7条1項3号(6)は,県立病院の入院患者の病状
の急変等に対処するための医師又は歯科医師の当直勤務が断続的な勤務に当
たると規定する。しかし,前記認定のとおり,原告らは,産婦人科という特
質上,宿日直時間に分娩への対応という本来業務も行っているが,分娩の性
質上,宿日直時間内にこれが行われることは当然に予想され,現に,その回
数は少なくないこと,分娩の中には帝王切開術の実施を含む異常分娩も含ま
れ,分娩・新生児・異常分娩治療も行っているほか,救急医療を行うことも
まれとはいえず,また,これらの業務はすべて1名の宿日直医師が行わなけ
ればならないこと,その結果,宿日直勤務時間中の約4分の1の時間は外来
救急患者への処置全般及び入院患者にかかる手術室を利用しての緊急手術等
の通常業務に従事していたと推認されること,これらの実態からすれば,原
告らのした宿日直勤務が常態としてほとんど労働する必要がない勤務であっ
たということはできない。
以上のような実情に鑑みると,本件においては,原告らの宿日直勤務につ
いて,これを断続的な勤務とした勤務時間規則7条1項3号(6)に該当する
ものとすることは,労働基準法41条3号の予定する労働時間等に関する規
定の適用除外の範囲を超えるものというべきである。
(3)被告は,原告らの宿日直勤務における救急外来受診患者数及び異常分娩
件数は多くなく,正常分娩において医師が実際に診療を行う時間も多くない
から,労働基準法41条3号の断続的勤務にあたると主張する。しかし,前
記(1)で認定した,奈良病院産婦人科における宿日直勤務の実情に照らすと,
宿日直勤務において行わなければならない本来業務(通常業務)の発生率が
低く,一般的に見て睡眠が十分とりえ,労働基準法37条に定める割増賃金
(過重な労働に対する補償)を支払う必要がない勤務であるとは到底いえな
い。
また,被告は,奈良県人事委員会が医師の当直勤務を断続的な勤務ととら
えることを許可しているのだから,労働基準法41条3号に反しないと主張
する。しかし,労働条件の最低基準を定めるという同法の目的に照らせば,
行政官庁の許可も同法37条,41条の趣旨を没却するようなものであって
はならず,そのために上記通達等(甲13)が発せられ医師等の宿日直勤務
の許可基準が定められているのである。そうすると,奈良県人事委員会の許
可も上記許可基準と区別する理由はなく,上記許可基準を満たすものに対し
て行われなければならないと解されるから,被告の主張は採用できない。
2争点2(割増賃金の対象たる労働時間)について
(1)宿日直勤務について
ア労働基準法上の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれて
いる時間をいい,仮眠時間であっても労働者が実作業に従事していないと
いうだけでは使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,
当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者
が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができるとさ
れている。
前記1(1)で認定したような原告らの宿日直勤務の態様・内容によれば,
原告らは奈良病院から宿日直勤務を命じられ,宿日直勤務の開始から終了
までの間,場所的拘束を受けるとともに,呼出しに速やかに応じて業務を
遂行することを義務付けられている。したがって,原告らは,実際に患者
に対応して診療を行っている時間だけでなく,診療の合間の待機時間にお
いても労働から離れることが保障されているとはいえず,宿日直勤務の開
始から終了までの間,医師としてその役務の提供が義務付けられていると
いえ,奈良病院の指揮命令下にあるといえる。
イこの点,被告は,割増賃金を支払う対象となる労働時間を,社会通念上
の一定の線引きのもとに必要と判断される所要時間と考えるべきであると
主張するけれども,そのように解すべき法律上の根拠はなく,採用するこ
とができない。
(2)宅直について
ア前記前提事実に加え,証拠(甲1,2,11,25,27,28,証人
I,原告A本人,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
宅直勤務は,奈良病院の産婦人科医師の間で自主的に定められている制
度である。奈良病院は一次救急から三次救急までの救急患者を受け入れて
いるため救急外来患者数も多い(証人I)。本件請求に係る期間には奈良
病院の産婦人科医師は5名しかおらず,宿日直医師として1名しか置けな
いため,同時に対応しなければならない患者が複数いる場合や,医師1名
では対応できない分娩(帝王切開術を行う分娩)等の場合には,宿日直医
師の求めに応じてそれに協力する医師を確保する必要があるとして,宅直
勤務制度ができたものである(甲11,25,証人I)。本件請求に係る
期間においては,原告Aが奈良病院の産婦人科医師の宅直当番を決め,カ
レンダーに記入して産婦人科医師に知らせていた(原告A本人)。奈良病
院の内規では宅直制度について触れられておらず(甲1,2,証人I),
宅直当番について,産婦人科医師が奈良病院に届け出る等はしていなかっ
た(証人I)。上記のように1名の宿日直医師で対応できない場合が生じ
れば,宿日直医師から宅直医師へ連絡がとられ,宅直医師は奈良病院に来
て宿日直医師に協力し診療を行っていた(甲25,証人I)。宅直医師は
自宅にいることが多いが,待機場所が指定されているわけではなかった
(証人I)。
なお,奈良病院の他の診療科には宅直制度はない。
イ上記宅直勤務が,割増賃金の請求できる労働基準法上の労働時間といえ
るか否かは,宅直勤務時間が「労働者が使用者の指揮命令下に置かれてい
る時間」に当たるか否かによる。
本件の宅直勤務制度は,救急外来患者も多い奈良病院における産婦人科
医師の需要の高さに比べて,5名しか産婦人科医師がいないという現実の
医師不足を補うために,産婦人科医師の間で構築されたものである。しか
しながら,原告らも認めるように宅直勤務は奈良病院の産婦人科医師の間
の自主的な取り決めにすぎず,奈良病院の内規にも定めはなく,宅直当番
も産婦人科医師が決め,奈良病院には届け出ておらず,宿日直医師が宅直
医師に連絡をとり応援要請しているものであって,奈良病院がこれを命じ
ていたことを示す証拠はない。また,宅直当番の医師は自宅にいることが
多いが,これも事実上のものであり,待機場所が定められているわけでは
ない。
このような本件の事実関係の下では,本件の宅直勤務時間において,労
働者が使用者の指揮命令下に置かれていた,つまり,奈良病院の指揮命令
下にあったとは認められない。
したがって,宅直勤務の時間は,割増賃金を請求できる労働時間とはい
えない。
ウこの点,原告らは,宅直制度は宿日直制度と一体の制度であって,奈良
病院は宅直制度を認識した上で,それを前提とした産科医療を運営してお
り,宅直勤務について実質的に役務提供が義務付けられていないと認めら
れる特段の事情はなく,奈良病院の指揮命令下に置かれていたと主張する。
前記認定のとおり,宅直制度は宿日直医師の負担を軽減しこれを補うた
めにできたものである。しかし,奈良病院において産婦人科のみが救急外
来患者が多いことを示す証拠はなく,他の診療科目においても,宿日直の
医師1名では対応できない場合があると考えられるが,産婦人科だけでな
く他の診療科目においても宿日直医は1名である(乙33∼56の2)。
確かに,産婦人科という診療科目の特質上,夜間に分娩等に対処しなけれ
ばならないことが多いとしても,それが常に2名以上の医師を必要として
おり,宅直制度がなければ宿日直制度が成り立たないと断定することは困
難である。
また,奈良病院の産婦人科部長Iは,平成15年11月と平成17年2
月の2回にわたり,奈良病院や被告に対して産婦人科医の増員や労働環境
の改善を求め,その中でその時点での産婦人科医の労働の現状を説明する
に当たって宅直勤務についても言及しており,奈良病院は,宅直勤務の存
在を認識していたといえる(甲19,20,証人I)。しかしながら,こ
れに対して奈良病院が宅直勤務に関する指揮命令を行った事実は,本件全
証拠によっても認められない。そして,前述のように他の診療科目でも医
師1名では対応できない場合が考えられるのに宿日直医が1名であること
からすれば,奈良病院が,産婦人科のみにある宅直制度を利用することを
前提として,産婦人科医師に過大な負担を負わせる運営を行っていたとま
で認定することはできない。
したがって,原告らの主張は採用できない。
3争点3(割増賃金の額)について
(1)割増賃金の計算方法
被告は,割増賃金の算定の基礎となる勤務一時間あたりの賃金額は給与条
例23条(乙856)に基づいたものでなければならないと主張する。確か
に,一般職の地方公務員の給与は条例で定めることとなっており(地方公務
員法24条6項),その条例に基づかずに金銭を支給することはできない
(同法25条1項)。
一般職の地方公務員の場合,割増賃金の一時間あたりの額も条例で定めら
れるけれども,労働基準法が労働条件(勤務条件)の最低基準を定めること
を目的とするものであることを考えると(同法1条2項),条例で定める割
増賃金の一時間あたりの額は同法で定める基準を下回ってはならないと解さ
れる。したがって,割増賃金の算定根拠たる一時間あたりの賃金額,時間外
・休日労働における割増率も,同法で定める基準を下回ってはならない。
給与条例23条の定める勤務一時間あたりの賃金額は,月額の給料及び地
域手当を基礎とするものであるが,これはそれ以外の諸手当は算定の基礎と
しないという趣旨であると解され,労働基準法37条,施行規則21条より
も勤務一時間あたりの給与額の基礎となるべき諸手当を絞り込んでおり,同
法の定める基準を下回っている。したがって,本件における割増賃金の算定
の基礎となる勤務一時間あたりの賃金額は,同法37条,施行規則21条に
よるべきである。
原告らは,給料のほかに扶養手当,調整手当,住居手当,初任給調整手当,
通勤手当,月額特殊手当,超過勤務手当,宿日直手当,期末手当,勤勉手当,
休日勤務手当を支給されている。通勤手当は同法37条4項により算定の基
礎とすることはできず,扶養手当は同項の家族手当に当たり,住居手当は施
行規則21条3号に当たり,勤勉手当,期末手当は同条5号に当たり,算定
の基礎とすることはできない。また,超過勤務手当,宿日直手当,休日勤務
手当は,正規の勤務時間以外の労働に対する対価であるから,割増賃金の算
定の基礎となる一時間あたりの給与額算出に当たっては,これを除外して考
えるべきである。したがって,上記以外の手当であって,労働者の個人的事
情で左右されず,労働の内容や量と関係する手当である,調整手当,初任給
調整手当,月額特殊勤務手当を算定の基礎に加えるのが相当である。
(2)1時間あたりの賃金額
ア前記前提事実に加え,証拠(乙857)によると,以下の事実が認めら
れる。
(ア)原告Aの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31
日まで47万0204円,同年4月1日から同年11月30日まで48
万0298円,同年12月1日から同月31日まで48万0586円で
あった。
原告Aは,平成16年に調整手当を60万3666円,初任給調整手
当を191万5200円,月額特殊勤務手当を14万円支給され,平成
17年に調整手当を61万5950円,初任給調整手当を189万65
00円,月額特殊勤務手当を12万円支給されていた。これらを12か
月で除すると,平成16年の月額の調整手当は5万0305.5円,初
任給調整手当は15万9600円,月額特殊勤務手当は1万1666.
6円(小数点以下第1位まで記載)となる。同様に平成17年の月額の
調整手当は5万1329.1円,初任給調整手当は15万8041.6
円,月額特殊勤務手当は1万円となる。
(イ)原告Bの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31
日まで49万9310円,同年4月1日から同年11月30日まで50
万7444円,同年12月1日から同月31日まで50万7843円で
あった。
原告Bは,平成16年に調整手当を62万6919円,初任給調整手
当を186万0600円,月額特殊勤務手当を14万円,平成17年に
調整手当を63万9129円,初任給調整手当を182万8900円,
月額特殊勤務手当を12万円支給されていた。これらを12か月で除す
ると,平成16年の月額の調整手当は5万2243.2円,初任給調整
手当は15万5050円,月額特殊勤務手当は1万1666.6円とな
る。同様に平成17年の月額の調整手当は5万3260.7円,初任給
調整手当は15万2408.3円,月額特殊勤務手当は1万円となる。
イ原告らは月によって定められた賃金を支給されており,月により休日数
が異なるので,施行規則19条1項4号により,一時間あたりの賃金額は
月額の賃金を一年間における1か月の平均所定労働時間数で除した金額と
なる。
被告における休日は,土曜日,日曜日,国民の祝日,年末年始であり
(甲1,33∼56の2),原告らの一年間の出勤日は,243日となる。
一日の所定労働時間8時間に243日を乗じ,12か月で除すると,1か
月の平均労働時間は162時間となる。
原告Aにつき,月額の給料額に,月額の調整手当,初任給調整手当,月
額特殊勤務手当を加え,それを162時間で除すると,一時間あたりの賃
金額は次のようになる。
①平成16年10月26日から同年12月31日まで,4270.2円
②平成17年1月1日から同年3月31日まで,4256.6円
③同年4月1日から同年11月30日まで,4318.9円
④同年12月1日から同月31日まで,4320.7円
原告Bにつき,同様に計算すると,一時間あたりの賃金額は次のように
なる。
①平成16年10月26日から同年12月31日まで,4433.7円
②平成17年1月1日から3月31日まで,4413.4円
②同年4月1日から同年11月30日まで,4463.6円
③同年12月1日から同月31日まで,4466.1円
(3)割増賃金を請求できる労働時間の時間数につき,前記前提事実及び証拠
(乙42∼56(枝番号含む))から検討する。
ア上記2(1)(2)で述べたように,割増賃金を請求できる労働時間は,原告
らの宿直及び日直勤務時間である。そして,前記前提事実記載のとおり,
原告らの宿直時間は午後5時15分から翌朝8時30分までの15時間1
5分であり,日直時間は午前8時30分から午後5時15分までの8時間
45分である。
前記前提事実(6)によれば,平成16年1月1日から同年10月25日
までの間の,原告らの被告に対する時間外,休日割増賃金債権は,時効消
滅している。同年10月26日から平成17年12月31日までの間に原
告らが宿日直勤務を行った回数は別紙4〈省略〉記載のとおりであり,原
告Aの宿直勤務時間は合計1372時間30分,日直勤務時間は合計27
1時間15分,原告Bの宿直勤務時間は合計1418時間15分,日直勤
務時間は合計297時間30分である。
イ午後10時から午前5時までの労働は,深夜労働にあたる(施行規則2
0条1項)。したがって,宿直勤務のうち,休日の午後10時から午前5
時までの勤務は休日労働かつ深夜労働(A)であり,休日のそれ以外の宿
直勤務時間は休日労働(C)である。休日以外の宿直勤務時間のうち午後
10時から午前5時までの勤務は時間外労働かつ深夜労働(B)であり,
それ以外の宿直勤務時間は時間外労働(D)である。
また,日直勤務時間は,休日労働(C)である。
ウしたがって,原告Aの宿日直勤務時間のうち,
①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,28時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,70時間
C休日労働に当たる時間数は,68時間(宿直33時間,日直35時
間)
D時間外労働の時間数は,82時間30分
②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,49時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,84時間
C休日労働に当たる時間数は,119時間(宿直57時間45分,日
直61時間15分)
D時間外労働の時間数は,99時間
③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,119時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,238時間
C休日労働に当たる時間数は,289時間(宿直140時間15分,
日直148時間45分)
D時間外労働の時間数は,280時間30分
④平成17年12月1日から同月31日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,21時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,21時間
C休日労働に当たる時間数は,51時間(宿直24時間45分,日直
26時間15分)
D時間外労働の時間数は,24時間45分
エ原告Bの宿日直勤務時間のうち,
①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,49時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,56時間
C休日労働に当たる時間数は,119時間(宿直57時間45分,日
直61時間15分)
D時間外労働の時間数は,66時間
②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,49時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,91時間
C休日労働に当たる時間数は,119時間(宿直57時間45分,日
直61時間15分)
D時間外労働の時間数は,107時間15分
③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,119時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,231時間
C休日労働に当たる時間数は,289時間(宿直140時間15分,
日直148時間45分)
D時間外労働の時間数は,272時間15分
④平成17年12月1日から同月31日までの間の,
A休日の深夜労働に当たる時間数は,21時間
B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,35時間
C休日労働に当たる時間数は,51時間(宿直24時間45分,日直
26時間15分)
D時間外労働の時間数は,41時間15分
(4)時間外,休日割増賃金の額
ア労働基準法は,時間外,休日労働について,深夜労働に当たるか否かに
ついても区別して,次のような割増賃金の支払を義務付けている。
A休日労働と深夜労働が重なるときは,通常の労働時間の賃金の6割以
上(施行規則20条2項)
B時間外労働と深夜労働が重なるときは,5割以上(同条1項)
C休日労働は,3割5分以上(労働基準法37条1項,割増賃金令)
D時間外労働は,2割5分以上(同法37条1項,割増賃金令)
イ原告Aについて,上記の最低割合での割増賃金を計算すると,以下のよ
うになる。
①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4270.2円×28時間×1.6=19万1304.9円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4270.2円×70時間×1.5=44万8371円
C休日労働の時間に対して
4270.2円×68時間×1.35=39万2004円
D時間外労働の時間に対して
4270.2円×82時間30分×1.25=44万0364.3

②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4256.6円×49時間×1.6=33万3717.4円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4256.6円×84時間×1.5=53万6331.6円
C休日労働の時間に対して
4256.6円×119時間×1.35=68万3822.7円
D時間外労働の時間に対して
4256.6円×99時間×1.25=52万6754.2円
③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4318.9円×119時間×1.6=82万2318.5円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4318.9円×238時間×1.5=154万1847.3円
C休日労働の時間に対して
4318.9円×289時間×1.35=168万5018.8円
D時間外労働の時間に対して
4318.9円×280時間30分×1.25=151万4314.
3円
④平成17年12月1日から同月31日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4320.7円×21時間×1.6=14万5175.5円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4320.7円×21時間×1.5=13万6102円
C休日労働の時間に対して
4320.7円×51時間×1.35=29万7480.1円
D時間外労働の時間に対して
4320.7円×24時間45分×1.25=13万3671.6

上記の合計額は,982万8598.2円となる。
ウ原告Bについて,上記の最低割合での割増賃金を計算すると,以下のよ
うになる。
①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4437.7円×49時間×1.6=34万7915.6円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4437.7円×56時間×1.5=37万2766.8円
C休日労働の時間に対して
4437.7円×119時間×1.35=71万2916.5円
D時間外労働の時間に対して
4437.7円×66時間×1.25=36万6110.2円
②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4413.4円×49時間×1.6=34万6010.5円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4413.4円×91時間×1.5=60万2429.1円
C休日労働の時間に対して
4413.4円×119時間×1.35=70万9012.7円
D時間外労働の時間に対して
4413.4円×107時間15分×1.25=59万1671.
4円
③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4463.6円×119時間×1.6=84万9869.4円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4463.6円×231時間×1.5=154万6637.4円
C休日労働の時間に対して
4463.6円×289時間×1.35=174万1473.5円
D時間外労働の時間に対して
4463.6円×272時間15分×1.25=151万9018.
8円
④平成17年12月1日から同月31日までの間の,
A休日の深夜労働時間に対して
4466.1円×21時間×1.6=15万0060.9円
B時間外労働で深夜労働の時間に対して
4466.1円×35時間×1.5=23万4470.2円
C休日労働の時間に対して
4466.1円×51時間×1.35=30万7490.9円
D時間外労働の時間に対して
4466.1円×41時間15分×1.25=23万0283.2

上記の合計額は,1062万8137.1円となる。
(5)既払額
前記前提事実記載のとおり,被告は,平成16年10月26日から平成1
7年12月31日までの原告らの宿日直勤務につき,原告Aに対して246
万円,原告Bに対して260万円を支払った(別紙4〈省略〉)。
上記(4)イで算出した原告Aの割増賃金合計額から既払額246万円を引
くと,未払割増賃金額は736万8598円(一円未満切捨て)となる。
また,上記(4)ウで算出した原告Bの割増賃金合計額から既払額260万
円を引くと,未払割増賃金額は802万8137円(一円未満切捨て)とな
る。
4結論
以上のとおりであるから,原告らの請求は,原告Aが被告に対して736万
8598円の未払割増賃金及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成18
年12月15日から支払済みまで民法所定年5分の割合の遅延損害金の支払を
求める部分,原告Bが被告に対して802万8137円の未払割増賃金及びこ
れに対する訴状送達日の翌日である平成18年12月15日から支払済みまで
民法所定年5分の割合の遅延損害金の支払を求める部分に限り理由があるから
認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行
政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条,65条1項を,仮執行宣言に
つき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法259条1項を適用して,主文のとおり
判決する。
奈良地方裁判所民事部
裁判長裁判官坂倉充信
裁判官齋藤憲次
裁判官伊藤昌代

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