弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人吉浦大蔵の上告趣意第一点について。
 論旨は、原判決が被告人Aの判示所為に対し公職選挙法二二一条一項一号、三項
を適用したのは所論引用の最高裁判所判例に違反するというのである。しかし、原
判決は右Aの所為に対し公職選挙法二二一条一項一号を適用しているだけであつて、
同条三項を適用してはいないから、所論判例違反の主張は前提を欠くものであり、
採るを得ない
 同第二点(一)について。
 論旨は、原判決が、略式命令を発した裁判官のした事件併合及び移送の各決定は、
刑訴二〇条にいう除斥せらるべき職務の執行に包含されないとしたのは、刑訴法に
違反し、憲法三一条に違反するというのである。
 武雄簡易裁判所の裁判官植村武雄が、被告人Cに対する本件公職選挙法違反事件
につき略式命令を発し、正式裁判の申立があるや、これを被告人Aに対する本件公
職選挙法違反被告事件に併合し、さらにこれを刑訴三三二条により佐賀地方裁判所
武雄支部に移送する決定をしたことは所論のとおりである。
 しかし右の如き併合及び移送の決定は、ただ単に形式的裁判であるにとどまり、
審判の実質的内容に影響を及ぼすものでないことが明らかであるから、刑訴二〇条
にいう除斥せらるべき職務の執行に包含されないものと解するのが相当である。
 さればこれと同趣旨の原判決には所論法令の違反はなく、所論違憲の主張は前提
を欠くものである。
 同第二点(二)について。
 論旨は、刑訴二二七条に引用されている同二二三条の被疑者以外の者とは、必要
的共犯の関係にある共同被疑者を含まないとして、原判決の刑訴法違反及び憲法三
一条違反を主張する。
 しかし、刑訴二二三条一項にいわゆる被疑者とは、当該被疑者を指称し、これと
必要的共犯関係にある他の者を含まないと解すべきであるから、所論のような共同
被疑者であつても、当該被疑者以外の者は、すべて被疑者以外の者として、当該被
疑者に対する関係において刑訴二二三条による取調べができ、同二二七条の証人尋
問を許すべきである。
 されば原判決には、所論法令違反はなく、所論違憲の主張は前提を欠くから採る
を得ない。
 同第二点(三)について。
 論旨は要するに原判決は、証拠の評価につき経験則及び論理の法則に違背し、訴
訟法に違反し、従つて憲法三一条に違反するというに帰するところ、原判決には所
論経験則及び論理の法則に違反のかどは認められないから違憲の主張は前提を欠く
ものであり、論旨は採用しがたい。
 同第三点について。
 論旨は、被告人らの所論供述調書はいずれも脅迫による虚偽の自白を記載したも
のであるから、これを証拠とした原判決は憲法三八条二項に違反する旨主張するが、
所論脅迫等の事実を認めるに足るべき資料は記録上発見できないから、所論違憲の
主張は前提を欠き採用しがたい。
 同第四点について。
 論旨は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当
らない。
 被告人Aの弁護人大坪保雄被告人Cの弁護人野方寛の各上告趣意第一点について。
 論旨は憲法三一条違反をいうが、実質は単なる法令違反の主張であつて、刑訴四
〇五条の上告理由に当らない。(所論請求書が記録に編綴されていないからといつ
て適法な請求がなかつたとみるのは早計であるし、疎明の有無に関する原判示にも
失当ありとは認められない)。
 同第二点について。
 論旨は、原判決は除斥せらるべき江口裁判官がなした証拠能力のない調書を証拠
として事実を認定しているから憲法三七条一項に違反する旨主張するのであるが、
記録によれば、佐賀地方裁判所武雄支部裁判官江口彌一は、被疑者Aにつき、検察
官の刑訴二二七条による請求によつてCの証人尋問を行ない、かつA、D両名に対
する被告事件につき第一回から第五回まで一審公判を行ない、第五回公判は弁護人
から不公平な裁判をするおそれがあるとして忌避の申立があり、右忌避申立に対す
る裁判を待つため続行され、第六回公判は延期され、第七回公判以後は裁判官松本
敏男が干与し、江口裁判官はそれ以後全然干与していない事実を看取することがで
きる。ところで、右の如く刑訴二二七条による証人尋問をした裁判官は、当該被告
事件の審判から除斥されるものでないことは当裁判所の判例とするところ(昭和二
九年(あ)一三九六号、同三〇年三月二五日第二小法廷判決、刑集九巻三号五一九
頁参照)であり、しかも所論裁判官は、忌避の申立があつた後は、全然本件訴訟手
続に干与していないのであるから、所論調書を以て法令により除斥さるべき裁判官
のなした調書ということはできない。されば、所論違憲の主張は前提を欠き採るを
得ない。
 よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三六年二月二三日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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