弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人神道寛次上告趣意第一点について。
 しかし、被告人等が本件ガソリン(ドラム罐入一六本)埋設の貯蔵所を発掘した
程度は原判示のとおりであることは、原判決が証拠に採つている被告人等の原審公
判廷における供述記載中「それは東西二米五〇糎南北五米一〇糎深さ九〇糎に亙つ
たと言うが怎うか」との裁判長の問に対し、被告人等は「その位だつたでせう」(
記録三六一丁裏五行目以下、同三六七丁表四行目以下)と答えているところに依つ
て明白であり、そして此ことは亦原審採証の検証調書中の記載とも一致するところ
である。所論毀棄の程度に関する以上に反する主張は全く独自の主張であつて採る
を得ない。次に刑法二六一条に謂う損壊とは物質的に物の全部一部を害し又は物の
本来の効用を失わしむる行為を言うものであるが、A炭鉱が本件ガソリンを埋設貯
蔵したのは盗難及び火災予防のためであるから(原判決後段判示)、上示原判示認
定程度の毀棄行為は右貯蔵施設本来の効用を喪失するに至らしめたものであること
は明白である。又所論原状回復の難易如何は本罪の成立に影響あるものではないの
である。次に所論末段の権限あるものが貯蔵物を掘出す為め土壌を排除する行為は、
勿論その権内の行為であるから、此適法行為と本件行為とを比較判示する必要のな
いことは喋言を要しないところである。要するに各所論は原審が証拠に採つていな
い他の資料又は独自の想像を基としての立論であつて、畢竟原審の証拠の取捨判断
事実の認定を非難するに帰するものであつてすべて採用に値いしない。論旨何れも
理由なし。
 同第二点について。
 しかし、原判示の如き強要毀棄の方法をもつて本件ガソリンを摘発することは仮
令該物件が隠匿物資であつたにせよ、所論炭鉱労働組合にその争議権乃至争議行為
として右物資摘発の権限のないことは論議を要しないところである。しからば仮令
被告人等の行為は個人の意思に出でず総て当該労働組合の決議の結果の執行行為で
あつたとしても、之を正当適法化する謂われはなく、従つて本件強要及び毀棄行為
にはすべて所論憲法及び労働組合関係法条の適用のないものであること寔に明らか
である。そして被告人等の原判示の行為はその挙示証拠に依つて之を十分に認める
ことができるのである。論旨は理由がない。
 仍つて、刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条に従ひ、主文のとおり判決する。
 此判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。
 検察官 田中已代治関与
  昭和二五年四月二一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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