弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人松本乃武雄の上告理由について。
 論旨は要するに、原審において上告人らが本件事故の被害者であるDの将来の得
べかりし利益の証拠として援用した経済企画庁調査局国民所得課長並びに総理府統
計局調査部長の各回答書の証拠力を過少に評価した違法がある、というに帰する。
 しかし、原審が、本件において右D(本件事故による死亡当時三才二月の男子)
が生存していたとして何時ごろから少くともどれだけの純收入を得るか、それを同
人の死亡当時に評価してどれだけの数額になるかを算定することはきわめて困難な
問題であるところ、控訴人(上告人)ら提出、援用の証拠によつては、まだこれら
の事実を適確に推認することはできない、旨判断して右Dが本件事故により将来得
べかりし利益を喪失したことにもとづく上告人らの請求を認容しなかつたのは首肯
するに足り、右証拠判断には経験則違背は認められない。論旨は、ひつきよう原審
の専権に属する証拠判断を非難するにすぎず、採用するをえない。
 よつて、民訴三九六条、三八四条一項、九五条、八九条、九三条一項本文に従い、
主文のとおり判決する。
 この判決は、池田裁判官、奥野裁判官の少数意見を除き、全裁判官一致の意見で
ある。
 裁判官池田克の少数意見は、次のとおりである。
 いわゆる「得べかりし利益」の算定には、不法行為当時、生命を害された者が現
に収益を取得していた事実あることを必要としないし、その年令の如何をも問わな
いのであつて、ただ、その当時の事情から判断し、経験則上若しなお生存していた
ならば将来收益を取得する蓋然性があるものと認め得べきを以て足りると解すべき
である。けだし、事物の通常の成行きによれば蓋然性を以て期待し得る利益、これ
がいわゆる「得べかりし利益」に外ならないからである。この見地に立つてみると、
或る年令にあつた者が今後生存すると期待される年数としては、平均余命という具
体的指標が順調な確率を示していると共に、幼児であつても、周知のように保健衛
生の向上普及その他幼児の健全育成のための施策の拡充等により保健環境が改善さ
れつつある経過に徴すると、普通の健康児であれば、通常の生育過程を歩んで九年
の義務教育(教育基本法四条)を修了し、就職の上いわゆる可働年令の間は、收益
を得ることを期待することが十分可能というべきであり、その職業が何であれ、少
くとも小規模企業経営における義務教育修了者の初任給を基準として最低收益を算
定することができ、收益の蓋然性が認められる基準としては、これを以て妥当とす
るし、また、いわゆる可働年令の間の平均最低收益も推計算定することが可能であ
るというべきであろう。
 しかるに、原審は、上告人等の提出援用にかかる証拠資料によつても、「本件被
害幼児が生存していたとして、いつ頃から少くともどれほどの收益を得るか、それ
を同児の死亡当時に評価してどれだけの数額になるかを適確に推定することができ
ない」旨判示する。なるほどそれらの証拠資料のみで前記の数額を判定することは
妥当でないとしても、本件事案の特質にかんがみ、裁判所のになう後見的役割の運
用により上告人等に立証をつくさしめても、それは公正の原則に合致こそすれ、釈
明権の不当な行使とはいえなかつたのではないか。要するに、原判決には、経験則
を過少評価し、審理不尽の違法があつて、破棄を免れないものと思料する。
 裁判官奥野健一の反対意見は次のとおりである。
 およそ不法行為に因り生命を害せられた者は、不法行為なかりせばなお生存して
得べかりし收益を失いたるものと認むべきことは経験則上当然であつて、これがた
め不法行為当時、現に收益を取得し居れる事実あることを必要とせず(大審院昭和
七年一二月二三日判決参照)、また、被害者が幼児であると成熟者であるとで区別
すべき何らの理由もない。
 本件について考えるのに、原審は被害者の平均余命が六一、一七年であることを
推定し居り更に上告人は経済企画庁調査局国民所得課長の回答書により昭和三〇年
三一年度の国民所得一人当り平均額を、総理府統計局調査部長の回答書により昭和
三〇年度給料所得者一世帯当り平均月收と生活費とを立証したほか、上告人(原告)
Aの供述により被害者Dの生活環境、健康状態、性格等を立証しているのである。
 従つて、被害者が若し生存して居たとしても全然收益を得ることができなかつた
者であるというような特段の事情の明らかでない本件においては、原審は被害者の
平均余命と右証拠を綜合して亡Dの最少限度の得べかりし利益を推計算定すること
が必しも不可能でなかつたのにかかわらず「原審ならびに当審における控訴人提出
援用の証拠によつてもいまだこれらの事実を適確に推認することができない」とし
て得べかりし利益喪失による損害賠償の請求を全面的に排斥したことは、証拠の取
捨判断における経験則違背若くは審理不尽のそしりを免れない。よつて、原判決を
破棄し本件を原裁判所に差し戻すべきである。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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