弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成14年(行ケ)第15号 審決取消請求事件(平成14年5月15日口頭弁論
終結)
          判         決
   原      告   株式会社オースリー
訴訟代理人弁護士佐   藤   恒   雄
       被      告   特許庁長官 太 田 信一郎
指定代理人   前   山   る り 子
同          宮   川   久   成
          主         文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   特許庁が不服2000-17425号事件について平成13年11月20日
にした審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
  原告は、平成11年7月12日、別添審決謄本写しの別掲本願商標記載の商
標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を商標法施行令別表の区分に
よる第1類「化学品,植物成長調整剤類,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のも
のを除く。),高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,原料プラスチック,パルプ,
工業用粉類,肥料,写真材料,試験紙,人工甘味料,陶磁器用釉薬」として商標登
録出願(商願平11-61401号)をしたが、平成12年9月1日、拒絶査定を
受けたので、同月28日、これに対する不服の審判の請求をした。特許庁は、同請
求を不服2000-17425号事件として審理した結果、平成13年11月20
日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年12
月12日、原告に送達された。
2 審決の理由
  審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、原査定において、本願商標の拒絶
理由に引用した、「SILK」の欧文字と「シルク」の片仮名文字を上下2段に書して
なり、指定商品を大正10年農商務省令第36号商品類別による第50類「紙及他
類に属せざる其の製品」とし、現に有効に存続している登録第524498号商標
(昭和32年11月8日登録出願、昭和33年7月29日設定登録)、「しるく」
の文字を書してなり、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第299号による改
正前のもの)別表(以下「旧別表」という。)の区分による第33類「穀物、豆、
粉類、飼料、種子類、その他の植物および動物で他の類に属しないもの」とし、現
に有効に存続している登録第2057397号商標(昭和59年2月22日登録出
願、昭和63年6月24日設定登録)、「シルク」の片仮名を書してなり、指定商
品を旧別表の区分による第31類「調味料,香辛料,食用油,乳製品」とし、現に
有効に存続している登録第2692309号商標(平成元年10月6日登録出願、
平成6年8月31日設定登録)及び「SILK」の欧文字を書してなり、指定商品を旧
別表の区分による第10類「写真材料、その他本類に属する商品、但し、印画紙を
除く」とし、現に有効に存続している登録第270199号商標(昭和60年1月
29日登録出願、平成7年7月31日設定登録。以下、これらを「引用各商標」と
いう。)について、いずれも「シルク」の称呼を生じ、本願商標も「シルク」の称
呼を生ずる点で相紛らわしく、かつ、指定商品についても、引用各商標のそれぞれ
の指定商品中には、本願商標の指定商品「工業用粉類,試験紙,人工甘味料」を含
むものであるから、外観及び観念の点を考慮してもなお、両者は商品の出所混同を
生ずるおそれのある類似の商標というべきであるとして、本願商標は、商標法4条
1項11号に掲げる商標に該当するから、本願商標の登録出願は拒絶されるべきも
のとした。
第3 原告主張の審決取消事由
1 審決は、本願商標が引用各商標に類似するとの誤った判断をした(取消事
由)結果、本願商標が商標法4条1項11号に掲げる商標に該当するとの誤った判
断をしたものであるから、違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(類否判断の誤り)
  (1) 本願商標の一体性
    本願商標は、文字とデザインが全体としてまとまりよく一体的に表示さ
れ、文字の大きさや形態にも大きな差異はなく、全体としてことさら冗長ではな
く、一連に称呼される。需要者が本願商標から「シルク」の文字のみを切り離して
認識することはあり得ない。
    被告は、「シルク」の文字部分と下段の「100円ショップ」の文字部分
とは、視覚上おのずと分離して看取されると主張するが、視覚上分離して看取され
ることがあっても「シルク」の称呼が生じないことは、特許庁が第4類で本願商標
と同一の構成の商標と「SILKROOM」を非類似と判断して登録査定をしたことからも
明らかである。また、「タウンアンドカントリーサーフデザインズ」から一連の称
呼を生ずると判断する裁判例があり、本願商標全体から生ずる「シルクヒャクエン
ショップ」の称呼が冗長であるとはいえない。
  (2) 100円ショップの著名性
    本願商標は、「シルク」及び「100円ショップ」からなり、「シルク」
という名称の100円ショップを指し、また、本願商標の付された商品が100円
ショップの「シルク」で売られていることを示す。100円ショップとは、日用雑
貨から食品まで、様々なものをすべて100円という均一価格で販売する店のこと
であり、従前の単に均一価格商品を扱う店と異なり、100円では買えない商品を
幅広く100円で扱うというもので、ここ10年で急速に成長してきた独自性を有
する業態である。100円ショップは、チェーン展開する企業が国内に20社以上
あり、既に、全国各地に4万店以上存在し、流通、小売業の中で一つの業態として
広く消費者に認識されている。原告も、他の100円ショップ企業も、直営店又は
フランチャイズ店を通じて100円ショップを経営し、どの店舗もその全体が10
0円ショップである。
    上記100円ショップの業態に加え、原告の店舗が直営店及びフランチャ
イズ店を合計すると全国で128店を数え、その店舗数及び来店者数が多数である
こと、テレビコマーシャルを含む原告の宣伝広告がされていること等を総合考慮す
るならば、「100円ショップ」は、指定商品の取引者、需要者に著名というべき
である。
    一般に、著名な標章と識別力の弱い標章からなる商標においては、識別力
の弱い標章は、著名な標章に引きずられて両者一体のものと認識されるため、識別
力の弱い標章のみが単独で認識されることはない。本件において、「100円ショ
ップ」の標章は、その言葉自体も業態も極めて特徴的で、看者に強烈な印象を与え
る。他方、「シルク」はありふれた普通名詞であり、識別力の弱い語であるから、
本願商標に接する者は、「100円ショップ」の部分を強烈に認識し、「シルク」
のみを取り出して認識することはあり得ない。
    審決は、「100円ショップ」は業種を示す言葉であるから識別標識とは
なり得ず、「シルク」のみが識別標識になると判断するが、識別力の強い語である
「100円ショップ」は、「シルク」と一体的に用いられることにより、「シルク
ヒャクエンショップ」又は「100円ショップのシルク」と認識され、識別標識と
なり得る。
  (3) 取引の実情
    現在、100円ショップで販売されている商品の多くは、100円ショッ
プ用に製造されたものであり、この傾向は、ますます顕著になりつつある。100
円ショップで販売される商品は、製造業者から直接仕入れられ、他の業態で販売さ
れる商品とは販売経路を異にし、他の業態においても、他の100円ショップにお
いても販売されることはない。本願商標の付された商品は、元々100円ショップ
用に製造されたものであり、他の商品と流通過程で競合することはあり得ない。ま
た、原告の店舗がショッピングセンター内にある場合であっても、他の店舗との境
界は明確であり、商品の販売場所の競合もあり得ない。
    このような取引の実情を考慮するならば、本願商標と引用各商標がその商
品出所につき混同を生ずるおそれはない。
  (4) 審査例及び拒絶理由通知
    本願商標と構成を同一にする商標が、第4類において、指定商品が類似
し「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」など「シルク」又は「SILK」を構成要
素とする商標が多数存在するにもかかわらず、登録されている。このことは、本願
商標が「シルク」の称呼を生ずることがないため、「シルク」又は「SILK」を構成
要素とし「シルク」の称呼を生ずる他の商標と類似しないことを示している。ま
た、特許庁は、商標登録出願を拒絶する場合には、拒絶理由のすべてを出願人に通
知するが、本願商標と構成を同一にする商標で登録を拒絶されたもののうち、指定
商品が類似し「シルク」又は「SILK」を構成に含む商標が登録されているにもかか
わらず、拒絶理由がこれらの商標に言及していないものがある。このこともまた、
本願商標が「シルク」の称呼を生ずることがないため、「シルク」又は「SILK」を
構成要素とする商標と類似しないことを示すものである。
  (5) 全体的考察の必要性
    商標の類否判断において、外観、観念及び称呼の各要素は、飽くまで全体
的考察の1要素にすぎず、1要素が近似するからといって、直ちに、商標が類似す
るとの判断に至ることは許されない。
第4 被告の反論
 1 本願商標と引用各商標が類似するとの審決の判断は正当であり、原告主張の
審決取消事由は理由がない。
2 取消事由(類否判断の誤り)について
  (1) 本願商標の一体性
    本願商標は、横長矩形輪郭内の上部に「シルク」の片仮名文字を書し、そ
の下段に黒塗りの横長矩形内から、「100円」の文字及びその上に重ねるように
「ショップ」の片仮名文字を白抜きしてなるものであるから、「シルク」の文字部
分と下段の「100円ショップ」の文字部分とは、視覚上おのずと分離して看取さ
れる。また、本願商標全体から生ずる「シルクヒャクエンショップ」の称呼は冗長
であり、「シルク」の文字部分が「絹」の観念を想起する親しまれている語である
ことからすれば、取引者、需要者は、親しまれた「シルク」の文字部分により原告
商品の出所識別をする。
    原告の経営する100円ショップチェーン店の住所録に「シルク直営店」
と記載されていること、原告店舗の包装袋には「SILK」又は「シルク」の文字が顕
著に表示されていること、原告の社長が新聞のインタビューにおいて自ら「シル
ク」と称したり、原告を単に「シルク」として紹介する新聞記事が存在することに
照らすと、原告の店舗が単に「シルク」と称されていることは明らかであり、そう
すると、本願商標についても、「シルク」の文字部分が自他商品の識別標識という
べきである。
  (2) 100円ショップの著名性
    原告は、「100円ショップ」の語は、その言葉自体も業態も極めて特徴
的で、看者に強烈な印象を与えると主張するが、「100円ショップ」という語
は、商品の販売方法又は販売場所を示す普通名称として認識されているのであっ
て、需要者に強い印象を与えるものではない。
  (3) 取引の実情
    100円ショップでは、最初から100円ショップ用に製造されたものだ
けでなく、製造業者との直接取引で余剰品を安く買いたたいて仕入れた商品なども
販売されており、100円ショップ用に製造された商品以外のものも販売されてい
ることは、インターネットのホームページに掲載された原告の記事からも明らかで
ある。原告の店舗は、他の店舗も入っているショッピングセンター等にもあり、同
一施設内にある他の店舗との境界が明確でない場合もあると推認されるほか、スー
パーマーケットの店舗内にも原告の販売コーナーがあり、そのような場合には、商
品の販売場所の競合があり得る。そうすると、本願商標と引用各商標がその商品出
所を混同するおそれがあるというべきである。
  (4) 審査例及び拒絶理由通知
    原告は、本願商標と構成を同一にする商標が、第4類において、指定商品
が類似し「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」など「シルク」又は「SILK」を
構成要素とする商標が多数存在するにもかかわらず登録されていることを主張する
が、「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」などは、本件の引用各商標であ
る「SILK/シルク」「しるく」「シルク」及び「SILK」とは構成が異なる。また、原
告は、本願商標と構成を同一にする商標で登録を拒絶されたもののうち、指定商品
が類似し「シルク」又は「SILK」を構成に含む商標が登録されているにもかかわら
ず、拒絶理由がこれらの商標に言及していないものがあると主張するが、他の事件
の審査例が本件審決の判断に影響を及ぼすものではない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由(類否判断の誤り)について
  (1) 本願商標の構成
    当事者間に争いのない本願商標の構成によれば、本願商標は、横長矩形輪
郭内の上部に「シルク」の片仮名文字を書し、その下段に黒塗りの横長矩形内か
ら、「100円」の文字及びその上に重ねるように「ショップ」の片仮名文字を白
抜きしてなるものである。そうすると、本願商標は、横長矩形輪郭と黒塗りの横長
矩形を組み合わせた図形部分(以下「図形部分」という。)、横長矩形輪郭内上部
の「シルク」の片仮名文字部分及び黒塗りの横長矩形内に白抜きされた「100円
ショップ」の文字部分からなるものである。
  (2) 「100円ショップ」の文字部分の自他商品識別機能
   ア 原告は、100円ショップとは、日用雑貨から食品まで、様々なものを
すべて100円という均一価格で販売する店のことであり、従前の単に均一価格商
品を扱う店と異なり、100円では買えない商品を幅広く100円で扱うというも
ので、ここ10年で急速に成長してきた独自性を有する業態であると主張する。
     そこで、証拠を検討するに、平成6年5月24日付け読売新聞(東京
版)(乙第9号証)には「百円均一ショップ 雑貨、加工食品お任せ 流通コスト
省き高回転率で大量販売」の見出しの下に「百円均一商品コーナーは昭和三十年代
に東京でお目見えした。その後四十年代後半から、百貨店やスーパーの催し物で、
催事業者が店先などを数日間借りて、日用雑貨を中心に売る形で登場した。それが
常設の百円ショップとして独立、加工食品などが加わり品ぞろえも豊富になる。今
は百円ショップのチェーン店も登場している」との、平成5年9月21日付け日刊
スポーツ(乙第10号証)には「100円ショップは、1991年(平3)ごろに
全国に広がった、低価格で仕入れた商品を扱うディスカウントストアの一種。商品
すべてが100円という気軽さが人気を呼び全国で約200社がチェーン店展開を
しているという」との、平成14年3月6日付け日本経済新聞(甲第23号証)に
は「百円ショップ各社の品ぞろえが広がり・・・消費者を驚かすような商品が次々
と登場してきた」「推理小説を売り出したのは百円ショップ最大手の大創産業」と
の、平成12年1月11日付け流通サービス新聞の原告代表者に対するインタビュ
ー記事(乙第3号証)には「100円均一の催事販売を始める。81年(昭56)
衣笠商店を設立して独立、86年オースリーを設立。91年100円ショップ『シ
ルク』1号店を開設、催事販売から店舗販売に移行し、業績を伸ばす」との、平成
14年1月4日の原告ウェブページ(甲第7号証)には「長期化する経済不況の影
響で、特に百貨店やスーパーマーケットなどの小売業の業績が低迷する中にあっ
て、当社の属する『100円ショップ』といわれる新しい業態が注目されていま
す」との、原告取締役Aの陳述書(甲第24号証)には「当社は、いわゆる『10
0円ショップ』、つまりすべての商品を100円均一価格で販売する業務を行って
おり」との各記載がある。
   イ 上記各証拠の記載に加え、原告の上記主張など弁論の全趣旨を総合する
ならば、「100円ショップ」の語は、すべての商品を100円均一価格で販売す
るという、独特な小売業の業態を意味する普通名詞として認識、理解されるもので
あり、その業態は、平成3年ころから、一般消費者の間で広く知られるに至ったも
のであって、原告もこの業態により業績を伸ばしてきたことが認められる。そうす
ると、本願商標における「100円ショップ」の文字部分は、本願商標の使用され
た商品が100円ショップという業態の店において販売されることを示すものであ
り、自他商品識別機能の希薄な部分であるというべきである。
   ウ 原告は、100円ショップが流通、小売業の中で一つの業態として広く
消費者に認識されていると主張するが、小売業の一業態として広く知られていると
いうことは、むしろ、自他商品識別機能が希薄であることを意味するものにほかな
らないから、原告の主張は、本願商標における「100円ショップ」の文字部分の
自他商品識別機能が希薄であることと何ら矛盾するものではない。
  (3) 本願商標の要部
   ア 上記のとおり、本願商標における「100円ショップ」の文字部分は自
他商品識別機能が希薄であり、また、図形部分は、横長矩形輪郭と黒塗りの横長矩
形を組み合わせたものにすぎず、ありふれた図形であるから、この部分も自他商品
識別機能は希薄である。これに対し、「シルク」の文字部分については、指定商品
の普通名称であるとか、指定商品の品質等を記述するものであるなど、その自他商
品識別機能が希薄であるというべき事情はうかがわれない。原告は、「シルク」が
ありふれた普通名詞であり識別力が弱い旨主張するところ、確かに、「シルク」が
「生糸。絹糸。絹布。」(広辞苑第5版)の普通名詞であることから、それ自体と
しては、それほど強い自他商品識別機能を有するとはいえないとしても、「100
円ショップ」の文字部分及び図形部分のように、自他商品識別機能が希薄であると
までいうことはできない。そうすると、本願商標の要部は「シルク」の文字部分で
あるというべきである。
   イ 原告は、本願商標が全体としてまとまりよく一体的に表示され、全体と
してことさら冗長ではなく一連に称呼されることから、需要者が本願商標から「シ
ルク」の文字部分のみを切り離して認識することはあり得ないと主張する。しかし
ながら、本願商標は、一体的に表示されているとはいえ、上記のとおり、「シル
ク」の文字部分、「100円ショップ」の文字部分及び図形部分の3部分からなる
構成であることは一見して明らかであり、これら3部分のうち、「100円ショッ
プ」の文字部分及び図形部分の自他商品識別機能が希薄である以上、これらを除い
た「シルク」の文字部分が本願商標の要部であることは、否定することができな
い。原告は、「シルクヒャクエンショップ」が冗長でないことも主張するが、この
ように一連に称呼されるのは、「100円ショップ」の文字部分が「シルク」の文
字部分と同程度の自他商品識別機能を有する場合であって、本件はその前提を欠
く。
   ウ 原告は、また、著名な標章と識別力の弱い標章からなる商標において、
識別力の弱い標章が著名な標章に引きずられて両者一体のものと認識される旨主張
するが、そのような場合には、むしろ、著名な標章が商標の要部として看者の注意
をひき、識別力の弱い標章とは独立して認識されることが通常であるというべきで
あるから、原告の主張は失当である。
     原告は、本件において、本願商標に接する者が「100円ショップ」の
文字部分を強烈に認識し、「シルク」の文字部分のみを取り出して認識することは
あり得ないと主張するが、「100円ショップ」の文字部分が特徴的な業態を表す
ものであっても、業態を表す語である以上、自他商品識別機能が希薄であるから、
原告の主張は、採用することができない。
     原告は、他方で、「100円ショップ」の文字部分は業種を表す言葉で
あるから識別標識とはなり得ず、「シルク」の文字部分のみが識別標識になるとす
る審決の判断を非難し、識別力の強い語である「100円ショップ」が「シルク」
と一体的に用いられることにより、「シルクヒャクエンショップ」又は「100円
ショップのシルク」と認識され識別標識となり得るとも主張する。しかしながら、
「100円ショップ」が業態を表す語であり自他商品識別機能が希薄であることは
上記のとおりであるから、原告の主張は、その前提を欠く。
  (4) 取引の実情
    原告は、100円ショップで販売されている商品の多くが100円ショッ
プ用に製造されたものであること、100円ショップで販売される商品が他の業態
で販売される商品とは販売経路を異にすることなど、取引の実情において本願商標
と引用各商標がその商品出所につき混同を生ずるおそれはないと主張する。しかし
ながら、本願商標の指定商品は、100円ショップだけでなく、他の業態の流通、
小売業の業者によっても販売されていることは明らかであるから、その指定商品に
本願商標が使用された場合において、本願商標と引用各商標がその商品出所につき
混同を生ずるおそれがあるというべきである。原告が100円ショップの業態によ
り本願商標の指定商品を販売していても、原告が通常の仕入先とは異なる業者から
余剰品を仕入れることはあり得ることであり、現に、インターネット情報「100
円SHOPグッズ」(乙第12号証の1)には、原告が他社と同一の商品を販売し
ている旨の記載がある。
  (5) 類否の判断
    本願商標の要部は「シルク」の文字部分であり、この部分から「シルク」
の称呼を生じ、これは引用各商標から生ずる「シルク」の称呼と同一である。そし
て、本願商標の「シルク」の文字部分と引用各商標は、観念においても、上記「生
糸。絹糸。絹布。」という同一の観念を想起させる。他方、外観においては、本願
商標の「シルク」の文字部分と引用各商標の間に、称呼及び観念の同一をしのぐよ
うな顕著な差異はなく、取引の実情においても、類否の判断を左右するような特段
の事情はうかがわれない。そうすると、本願商標の要部である「シルク」の文字部
分は、引用各商標と同一ないし類似であり、全体的に観察して、本願商標と引用各
商標は類似するというべきである。
  (6) 審査例及び拒絶理由通知
    原告は、さらに、審査例等を主張するが、本願商標に係る審決が他の商標
の審査例に拘束されるものではないことはいうまでもない。また、原告の主張す
る「SILKROOM」「SILKCOAT/シルクコート」などの商標は、確かに「シルク」又
は「SILK」を構成要素とするが、「ROOM」「COAT/コート」の文字部分は、本願商標
における「100円ショップ」の文字部分と異なり、一定の自他商品識別機能を有
する場合が多く、「SILK」「SILK/シルク」の部分と一体のものとして「シルクルー
ム」「シルクコート」の称呼を生ずることは自然である。そうすると、これらの商
標が登録を受けていることは、本願商標が登録を受け得ないことと何ら矛盾するも
のではないし、拒絶理由通知に係る原告の主張も、同様に、本願商標が登録を受け
得ないことと何ら矛盾するものではない。原告の主張は、失当である。
  (7) 全体的考察の必要性
    原告は、商標の類否判断において、外観、観念及び称呼の各要素は、飽く
まで全体的考察の1要素にすぎず、1要素が近似するからといって、直ちに、商標
が類似するとの判断に至ることは許されないと主張し、この主張それ自体として
は、商標の類否判断の一般的手法として正当なものであるが、本件においては、上
記のとおり、全体的考察も行った結果、本願商標は引用各商標と類似するというべ
きであるから、原告の主張は本件の結論に影響を及ぼさない。
 2 以上によれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消す
べき瑕疵は見当たらない。
 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の
負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決
する。
   東京高等裁判所第13民事部
       裁判長裁判官  篠  原  勝  美
          裁判官   岡  本     岳
裁判官    長  沢  幸  男

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