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平成10年(行ケ)第199号審決取消請求事件(平成11年7月7日口頭弁論終
結)
         判     決
原      告    ジェネラル インストラメントコーポレーション
代表者    【A】
訴訟代理人弁理士    【B】
被      告    特許庁長官 【C】
指定代理人    【D】
同           【E】
同           【F】
同           【G】
      主     文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
 1 原告
 特許庁が、平成6年審判第4048号事件について、平成10年2月10日にし
た審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
 主文1、2項と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 原告は、1989年5月25日にアメリカ合衆国でした特許出願に基づく優先権
を主張して、平成2年5月24日、名称を「ケーブルテレビジョンにおけるコンバ
ータ遠隔制御方法とケーブルテレビジョンコンバータ、ケーブルテレビジョンヘッ
ドエンド装置」とする発明(以下「本願特許発明」という。)につき、特許出願
(特願平2-132779号)をしたが、平成5年10月4日に拒絶査定を受けた
ので、平成6年3月7日、これに対する不服の審判の請求をした。
 特許庁は、同請求を、平成6年審判第4048号事件として審理した上、平成1
0年2月10日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本
は、同年3月2日、原告に送達された。
2 本願特許発明の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の要

 ケーブルテレビジョンヘッドエンドからダウンロードされたファームウエアの受
信手段と、この受信手段にファームウエアを記録するために設けられた格納手段
と、ファームウエアの完全性の確認手段と、ファームウエアによって指令された1
以上の機能をコンバータに付与するために、ファームウエアにアクセスし実行する
ため前記格納手段に結合されたプロセッサと、コンバータのためのデフォルト機能
ソフトウエアを記憶させておくため、プロセッサに結合された持久性メモリーと、
ファームウエアの完全性証明のない場合に、前記プロセッサがファームウエアの替
わりにデフォルト機能ソフトウエアを実行させるために設けられる前記確認手段に
対する応答手段と、からなることを特徴とする遠隔操作による機能変更可能なケー
ブルテレビジョンコンバータ。
3 審決の理由
 審決は、別紙審決書写し記載のとおり、本願発明が、特開昭59-15348号
公報(以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用例発明」とい
う。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるか
ら、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
第3 原告主張の取消事由の要点
 審決の理由中、本願発明の要旨の認定、引用例の記載事項の認定、本願発明と引
用例発明との相違点の認定、この相違点に関する判断は、いずれも認める。
 審決は、本願発明と引用例発明との一致点についての認定を誤り(取消事由1~
4)、この結果、本願発明に関する進歩性の判断を誤ったものであるから、違法と
して取り消されなければならない。
1 一致点の誤認1(取消事由1)
 審決が、引用例発明の「データ取得回路」を、本願発明の「ファームウエアの受
信手段」に対応すると認定した(審決書6頁2~7行)ことは誤りである。
 すなわち、「ファームウエア」とは、システムに恒久的にインストールされた状
態のコンピュータ・プログラム(日経BP社発行「マグロウヒル パソコン百科事
典」甲第13号証)、あるいは、プログラムを固定記憶装置等の中にあらかじめ組
み込んでハードウエア化したもの(オーム社発行「OHM電気電子用語事典」甲第
14号証)を意味し、ソフトウエアとハードウエアとの中間に位置するものとされ
ていて、技術的概念としてソフトウエアとは明らかに峻別される位置付けがなされ
ている(日外アソシエーツ発行「コンピュータ用語大事典」甲第15号証、日本経
済新聞社発行・日経文庫「コンピュータ用語事典」甲第16号証、共立出版株式会
社発行「コンピュータ・通信小事典」甲第17号証及びオーム社発行「先端ソフト
ウェア用語事典」甲第18号証、以下、これらの甲第13~第18号証の事典及び
事典を総称して「本件各事典」という。)。
そして、「恒久的にインストールされる」あるいは「固定記憶装置などの中にあら
かじめ組み込まれた」とは、具体的には、ROM(リードオンリーメモリ:読み出
し専用メモリ)にインストールすることを意味している。
そうすると、本願発明の「ファームウエア」は、プログラムとして有する機能は
引用例発明の「ソフトウエア」と同様であるものの、「ROM等の非揮発性記憶装
置に恒久的に固定されたコンピュータ・プログラム又はコンピュータ・プログラム
の書き込まれたROM等の非揮発性記憶装置」を意味することが明らかであり、一
般的な意味でのソフトウエアとは技術的に明確に区別される特別な意義を有する用
語である。
 他方、引用例発明の「データ取得回路」は、「ファームウエア」を受信しておら
ず、代わりに、コンバータのスイッチのオン、オフの度毎に伝送ネットワークから
復帰させねばならない「ソフトウエア」を受信するようになっている。そして、こ
のソフトウエアは、非揮発性メモリーに永く記録されているものではないから、フ
ァームウエアとはいえない。
この点に関し、被告は、朝倉書店発行「マイクロコンピュータの事典」(乙第1
号証、以下「本件事典」という。)に基づいて、「ファームウエア」が、「マイク
ロプログラム」を意味し、ダイナミックプログラム方式の場合は通常のRAMを使
用することがあるから、本願発明における「ファームウエア」は、上記のような意
味の用語ではないと主張するが、本件事典における上記のRAMは、ダイナミック
プログラム方式という限定された条件下において言及されるにすぎず、一般的に認
識される「マイクロプログラム」の適用形態ではない。
 また、被告は、本願発明の「ファームウエア」と引用例発明の「ソフトウエア」
とは、その機能から見れば対応すると主張するところ、「ファームウエア」と「ソ
フトウエア」とのプログラムとして有する機能が同様であっても、本願発明では、
「ファームウエア」を使用することにより、コンバータの電源投入の度毎にソフト
ウエアをダウンロードする必要はないから、必要最小限の帯域幅で対応でき、しか
も、高品質のプログラムアクセスが実現できるという効果があり、この点において
引用例発明と相違する。
2 一致点の誤認2(取消事由2)
 審決が、引用例発明の「メモリの『ダウンロードされたソフトウエアを蓄積する
領域』」を、本願発明の「ファームウエアを記憶するために設けられた格納手段」
に対応すると認定した(審決書6頁3~8行)ことは誤りである。
 すなわち、「ファームウエア」と「ソフトウエア」とは、前示のとおり、構成や
作用効果も異なるものであるから、引用例発明の「ダウンロードされたソフトウエ
アを蓄積する領域」が、本願発明の「ファームウエアを記憶するために設けられた
格納手段」に対応するものではない。
3 一致点の誤認3(取消事由3)
 審決が、引用例発明の「CRC回路」を、本願発明の「ファームウエアの完全性
の確認手段」に対応すると認定した(審決書6頁4~9行)ことは誤りである。
 すなわち、引用例発明の「CRC回路」が、多項式を使用して個々のパケットを
チェックするものであることは認めるが、多数のパケットからなるファームウエア
パッケージ全体をチェックすることはない。
 これに対し、本願発明においては、ファームウエアのパッケージが、多数のセグ
メントの形で受信されるので、ファームウエアの完全性の証明もセグメント数をカ
ウントすることによりなされる。例えば、本願発明に係る第5図フローチャートで
は、114,116,118におけるタイムアウト過程が、ヘッドエンドからのフ
ァームウエア検索要求(112)によるタイムアウト期間内にファームウエアが完
全にダウンロードされていることを要求している。しかも、セグメントの計数(手
段)は、セグメント数がヘッドエンドからのファームウエア検索要求による範囲内
にあることを必要としている。
 したがって、本願発明では、ダウンロードされた全ファームウエアにつき、それ
ぞれ違った過程で完全性の証明がなされることになり、この点において引用例発明
と相違する。
4 一致点の誤認4(取消事由4)
 審決が、引用例発明の「CPU」を、本願発明の「ファームウエアによって指令
された1以上の機能をコンバータに付与するために、ファームウエアにアクセスし
実行するための前記格納手段に結合されたプロセッサ」に対応すると認定した(審
決書6頁4~12行)ことは誤りである。 すなわち、引用例発明のCPUは、ケ
ーブルテレビジョンヘッドエンドからダウンロードされたファームウエアを実行す
るものではなく、また、本願発明で開示されるように、1又はそれ以上のコンバー
タ機能を提供するファームウエアを実行するプロセッサでないことも明らかであ
る。
第4 被告の反論の要点
 審決の認定判断は正当であって、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、引
用例発明の「データ取得回路」、メモリの「ダウンロードされたソフトウエアを蓄
積する領域」、「CRC回路」及び「CPU」が、それぞれ本願発明の「ファーム
ウエアの受信手段」、「ファームウエアを記憶するために設けられた格納手段」、
「ファームウエアの完全性の確認手段」及び「ファームウエアによって指令された
1以上の機能をコンバータに付与するために、ファームウエアにアクセスし実行す
るための前記格納手段に結合されたプロセッサ」に対応すると、審決が認定した
(審決書6頁2~15行)点に誤りはない。
1 取消事由1について
 原告は、「ファームウエア」が、「ROMあるいは非揮発性RAMのような持久
性メモリーで永く記録して多く使用されるコンピュータプログラム類あるいはコン
ピュータ命令に言及する場合に、当業者で使用される限定された意味の用語」であ
ると主張するが、本願明細書の記載を参照しても、ファームウエアが上記限定され
た意味の用語であるとする根拠は見出せない。
 また、本件事典には、ファームウエアに関して、「マイクロプログラムが一般の
プログラムのもつ基本的性質を持っていること」、「マイクロプログラムはハード
ウエアとソフトウエアの両方の性質をもち、両者の中間に位置するので、ファーム
ウエア(firm ware)と名づけて独立の領域に分類されている」こと、そ
して、マイクロプログラムは、プロセッサLSI内蔵ROM、外部ROM、外部R
OM/RAMにそれぞれ格納される適用形態があること、この外部ROM/RAM
として、「ダイナミックマイクロプログラム方式のときは書きかえのできる不揮発
性RAMまたは通常のRAMなどを使用する」ことが記載されており、当該「通常
のRAM」が、揮発性を有し、電源投入時に書込みの必要なメモリを示しているこ
とは明らかであるから、ファームウエアとは、原告の主張する限定された意味の用
語ではない。
 他方、引用例発明の「ソフトウエア」は、ケーブルテレビジョンのヘッドエンド
からダウンロードされ、有料テレビアンスクランブラサービス、情報、コンピュー
タゲーム、ソフトウエアサービスなど1以上の機能をコンバータに付与するもので
あり、当該機能は、本願発明の「ファームウエア」が奏する機能と同様のものであ
り、両者に差異は認められない。
2 取消事由2について
 原告の主張は、本願発明の「ファームウエア」が、引用例発明における「ソフト
ウエア」に対応しないことを根拠とするものであって、前提において失当である。
3 取消事由3について
 引用例発明の「CRC回路」は、「データをチェックしてパケットにエラーがな
いこと、およびプロトコルも正しいことを確かめる」もので、ここにいう「プロト
コル」が通信に関する種々の制御情報について、情報の表現形式や授受のタイミン
グなどを厳密にした「通信規約」を意味することは明らかである(乙第2号証)。
 一方、原告が本願発明について主張する「タイムアウト期間内にファームウエア
が完全にダウンロードされるか否か」、「セグメント数がヘッドエンドからのファ
ームウエア検索要求による範囲内にあるか否か」は、いずれもプロトコルが正しい
ことを確かめるものであり、そうすると、引用例発明の「CRC回路」は、本願発
明の「ファームウエア」に対応するソフトウエアのエラーの有無及びプロトコルが
正しいことを確かめることによって完全性を確認している点で、本願発明の「ファ
ームウエアの完全性の確認手段」と差異はない。
 しかも、本願発明の特許請求の範囲の記載である「ファームウエアの完全性の確
認手段」には、「セグメントの数をカウントする」との限定はなされておらず、当
該主張は特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって失当である。
4 取消事由4について
 原告の主張は、本願発明の「ファームウエア」が、引用例発明における「ソフト
ウエア」に対応しないことを根拠とするものであって、前提において失当である。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1、2及び4(一致点の誤認1、2及び4)について
 審決の理由中、本願発明の要旨の認定、引用例の記載事項の認定、本願発明と引
用例発明との相違点の認定、この相違点に関する判断は、いずれも当事者間に争い
がない。 原告は、本願発明の「ファームウエア」が、プログラムとして有する機
能としては引用例発明の「ソフトウエア」と同様であることは認めるものの、これ
は、「ROM等の非揮発性記憶装置に恒久的に固定されたコンピュータ・プログラ
ム又はコンピュータ・プログラムの書き込まれたROM等の非揮発性記憶装置」を
意味するものであり、他方、引用例発明の「データ取得回路」は、コンバータのス
イッチのオン、オフの度毎に伝送ネットワークから復帰させねばならない「ソフト
ウエア」を受信するものであり、このソフトウエアは、非揮発性メモリーに永く記
録されているものではないから、本願発明の「ファームウエア」とは異なると主張
する。
 ところで、本願明細書(甲第5号証)には、[発明の背景]として、「本発明は
ケーブルテレビジョン装置、特にダウンロードが可能なファームウエアにより、遠
隔操作にて機能変更が出来るコンバータに関するものである。」
(同号証明細書7頁9~11行)、「ケーブル局によって端末のファームウエア機
能の一部またはすべてを実質的に変更出来れば非常に便利である。」(同9頁3~
4行)、「本発明によれば、ヘッドエンド10によりダウンロードされた異なるフ
ァームウエアパッケージに対し、コンバータ40は異なる機能を備えることにな
り、サービスのレベルが高くなるとコンバータの機能も増加することになる。」
(同14頁6~8行)、「ファームウエアダウンロードプロセスは常時更新され
る。コンバータが新しいパッケージを受けると、古いファームウエア(もしあれ
ば)は効果的に消され、実行できない。」(同23頁17~19行)と、[発明の
効果]として、「ケーブルテレビジョンシステムにおいて、ケーブル局のヘッドエ
ンドからユーザーのコンバータにコントロールプログラムを送り、遠隔操作でコン
バータの機能を変更するシステムである。送出されたプログラムが完全に受信され
たか、もし不完全に受信されたときはそれを取り繕い、またコンバータに記憶され
た後も、常時その完全さを確認する手段が整っている。このためヘッドエンド側に
とっては、ユーザーの希望でコンバータの機能を変更するに当たり、装置の改善及
び置替え等のため、ユーザー宅に出張する手間がはぶけ、また盗視聴を実質的に不
可能にする様プログラムが組み込まれているメリットがある。」(同26頁29行
~27頁8行)と、それぞれ記載されている。
 これらの記載及び前示本願発明の要旨によれば、本願発明は、遠隔操作による機
能変更をすることが可能なケーブルテレビジョンコンバータに関するものであり、
視聴サービスの内容を変更するためコンバータ機能に変更を加える場合であって
も、ユーザー宅に出張する手間が省略できる等の作用効果を達成したものと認めら
れるところ、ケーブルテレビジョンヘッドエンドからダウンロードされたファーム
ウエアは、ファームウエアによって指令された1以上の機能をコンバータに付与す
るために、常時更新される必要があるから、記憶された「ファームウエア」は、当
然、その機能として「書換え可能」なことを要件として具備しなければならないも
のと認められる。
 したがって、本願発明の「ファームウエア」が、「ROM等の非揮発性記憶装置
に恒久的に固定されたコンピュータ・プログラム又はコンピュータ・プログラムの
書き込まれたROM等の非揮発性記憶装置」を意味するものであるとする原告の主
張は、前示のような本願発明の要旨及び本願明細書の記載に基づかないものであっ
て、到底採用することができない。
 原告は、本件各事典(甲第13~第18号証)に基づいて、「ファームウエア」
が、システムに恒久的にインストールされた状態のコンピュータ・プログラムであ
って、固定記憶装置等の中にあらかじめ組み込んでハードウエア化したものを意味
し、ソフトウエアとハードウエアとの中間に位置するものとされており、具体的に
は、ROMにインストールすることを意味していると主張する。
 しかし、「ファームウエア」の一般的な講学上の意味が、原告主張のとおりであ
るとしても、本願発明における「ファームウエア」が、その機能として書換え可能
なことを要件としており、ROM等の非揮発性記憶装置に恒久的に固定されたもの
に限定されるものでないことは、前示のとおりであるから、原告の主張は、それ自
体失当なものといわなければならない。
 また、原告は、「ファームウエア」と「ソフトウエア」とのプログラムとして有
する機能が同様であっても、本願発明では、「ファームウエア」を使用することに
より、コンバータの電源投入の度毎にソフトウエアをダウンロードする必要はない
から、必要最小限の帯域幅で対応でき、しかも、高品質のプログラムアクセスが実
現できるという効果があり、この点において引用例発明と相違すると主張する。
 しかし、原告の主張する上記効果は、ダウンロードされた「書換え可能なプログ
ラム」を記憶する装置の種類により生じるものと解されるところ、この点に関する
本願発明の要旨は、前示のとおり、「ダウンロードされたファームウエアの受信手
段・・・にファームウエアを記録するために設けられた格納手段」と規定されるの
みであって、その記憶の態様については特定されていないから、上記の作用効果
も、本願発明がその要旨に基づいて常に達成されるものとはいえず、また、引用例
発明においても、記憶装置を適宜選択することにより達成し得る設計的事項である
と認められるから、いずれにしても原告の主張を採用する余地はない。
 以上のとおり、本願発明の「ファームウエア」は、書換え可能なプログラムであ
り、前示当事者間に争いのないとおり、引用例発明の「ソフトウエア」と、プログ
ラムとして有する機能が同様である点を考慮すれば、引用例発明の「ソフトウエ
ア」に対応するものといわなければならない。
 したがって、本願発明の「ファームウエア」が、引用例発明の「ソフトウエア」
と異なることを前提とする、原告の前記取消事由1、2及び4(一致点の誤認1、
2及び4)に関する主張は、いずれも採用できないことが明らかであり、引用例発
明の「データ取得回路」、メモリの「ダウンロードされたソフトウエアを蓄積する
領域」及び「CPU」が、それぞれ本願発明の「ファームウエアの受信手段」、
「ファームウエアを記憶するために設けられた格納手段」及び「ファームウエアに
よって指令された1以上の機能をコンバータに付与するために、ファームウエアに
アクセスし実行するための前記格納手段に結合されたプロセッサ」に対応するとす
る審決の認定(審決書6頁2~15行)に誤りはない。
2 取消事由3(一致点の誤認3)について
 引用例発明の「CRC回路」が、多項式を使用して個々のパケットをチェックす
るものであることに関しては、当事者間に争いがなく、また、引用例(甲第3号
証)の「加入者局がパケツトを受信する毎に、データ取得回路はCRC回路(後で
第8図を参照して説明する)においてそのデータをチエツクしてパケツトにエラー
がないこと、及びプロトコルも正しいことを確かめる。」(同号証12頁右下欄1
2~16行)との記載も参照すると、引用例発明の「CRC回路」は、データすな
わちコンピュータプログラムであるソフトウエアにエラーがないことを確かめる機
能を奏するものと認められる。
 他方、本願発明の、「ファームウエアの完全性の確認手段」に関しては、本願明
細書(甲第5号証)に、「ファームウエアが原形のままであるかを確かめる手段」
(同号証明細書9頁16~17行)、「ファームウエア送信サイクルの終了時点
で、記憶手段に格納されたファームウエアパッケージが完全であるかどうか判断す
る。」(同12頁3~4行)と記載されており、本願第5図(甲第12号証の1)
フローチャートにおいて、タイムアウト過程(114、116、118)で、ヘッ
ドエンドからのファームウエア検索要求によるタイムアウト期間内にファームウエ
アが完全にダウンロードされていることを要求しているとともに、セグメントの計
数手段は、セグメント数がヘッドエンドからのファームウエア検索要求による範囲
内にあること(120)を必要としている。
 これらの記載及び図面によれば、本願発明の「ファームウエアの完全性の確認手
段」は、ダウンロードされたコンピュータプログラムであるファームウエアが原形
のままであることを確かめる手段と認められる。
 原告は、引用例発明の「CRC回路」が、多項式を使用して個々のパケットをチ
ェックするのに対し、本願発明においては、ファームウエアのパッケージが、多数
のセグメントの形で受信されるので、ファームウエアの完全性の証明もセグメント
数をカウントすることによりなされるから、ダウンロードされた全ファームウエア
につき、それぞれ違った過程で完全性の証明がなされることになり、この点におい
て引用例発明と相違すると主張する。
 しかし、ファームウエアの完全性の確認に関して、本願発明の特許請求の範囲に
は「ファームウエアの完全性の確認手段」と記載されるのみであって、その具体的
手段は限定されていないから、原告が主張する「ファームウエアのパッケージは、
多数のセグメントの形で受信されるので、ファームウエアの完全性の証明もセグメ
ント数をカウントすることによりなされる」構成は、特許請求の範囲の記載に基づ
くものではなく、主張自体失当であって、これを採用する余地はない。
 したがって、審決が、引用例発明の「CRC回路」が本願発明の「ファームウエ
アの完全性の確認手段」に対応すると認定した(審決書6頁4~9行)ことに誤り
はない。
3 以上のとおり、原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく、その他審決に取
り消すべき瑕疵はない。
 よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用
の負担並びに上告及び上告受理の申立てのための付加期間の指定につき、行政事件
訴訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第13民事部
    裁判長裁判官  田中康久
        裁判官  清水 節
        裁判官  鶴岡稔彦

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