弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は,主任弁護人磯田丈弘及び弁護人長谷川英
二連名作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は,検察官大橋
充直作成の答弁書に,それぞれ記載されているとおりであるか
ら,これらを引用する。
1刑訴法378条2号の控訴趣意について
論旨は,要するに,本件は,被告人がほぼ19歳2か月の
ときの事件であるが,検察官の家庭裁判所への事件送致は,事
件から9か月を経てなされており,このような事件送致の著し
い遅延により,被告人は少年法による保護処分を受ける機会を
不当に奪われたものであるから,本件公訴提起は無効であり,
原審は,刑訴法338条4号に基づき,公訴棄却の判決をすべ
きであったのに,これをしなかった点で同法378条2号の不
法に公訴を受理した違法がある,というのである。
そこで検討するに,関係証拠によれば,本件は,平成15
年9月7日に発生した自動車事故に端を発し,警察官は同日中
に被告人が身代わり犯人ではないかとの疑いをもち,捜査が開
始されたことがうかがわれるところ,検察官が札幌家庭裁判所
に事件を送致したのは平成16年6月11日であるから,家裁
送致までに9か月を要したことが認められる。しかし,この事
故により2名の者が死亡しており,その運転者には業務上過失
致死罪の嫌疑がかけられていたところ,その車の生存同乗者は
被告人を含めて3人いた上,当初,被告人らは,Aの酒気帯び
運転が発覚すると都合が悪いとして口裏を合わせ,被告人が運
転していた旨虚偽の事実を警察官に述べていたものであり,上
記のとおり,事故当日には身代わりとの疑いがもたれたが,A
が運転するに至った経緯,状況,その場合の被告人らの刑事責
任の存否を究める必要があることなどの事情に照らすと,本件
は,被告人を含む関係者に対する詳細な事情聴取や実況見分,
引き当たり捜査等慎重な捜査が求められる事案であり,実際に
被告人に対しては,その供述等により酒気帯び運転の教唆及び
犯人隠避の非行があったとして,家庭裁判所に事件を送致した
ものである。以上によれば,本件においては,捜査を遂げて送
致するまでに相当の期間を要したものと認められ,これに上記
の期間を要したことをもって直ちに遅延があったということは
できない。加えて,本件において,捜査官が,家庭裁判所の審
判の機会を失わせる意図をもってことさら捜査を遅らせ,ある
いは,特段の事情もないのにいたずらに事件の処理を放置する
などの重大な職務違反があったことをうかがわせる事情もない。
そして,家庭裁判所への事件送致は,被告人が成年に達する約
1か月前であるが,家庭裁判所の裁判官は,その間に,上記の
とおり,少年法20条1項による検察官送致の決定をしており,
この点でも少年審判の機会が不当に奪われたということはでき
ない。
結局,論旨は理由がない。
2法令適用の誤りの控訴趣意について
論旨は,要するに,被告人が酒気帯び運転の犯人であるA
の身代わりとなり,警察官に自ら運転していた旨虚偽の事実を
述べた時点で,Aはすでに死亡していた,そして,刑法103
条にいう「罪を犯した者」に死者は含まれないと解すべきであ
るから被告人は犯人隠避罪について無罪であるのに,死者も犯
人隠避罪の客体になるとして被告人に同罪の成立を認めた原判
決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りが
ある,というのである。
そこで検討するに,関係証拠によれば,所論のとおり,被
告人が警察官に虚偽の事実を述べた時点で犯人であるAはすで
に死亡していた可能性が高く,その時点では犯人は死亡してい
たと推認される。そうすると,同条の犯罪が成立するかどうか
は,同条にいう「罪を犯した者」に死者を含むかどうかによる
こととなる。ところで,同条は,捜査,審判及び刑の執行等広
義における刑事司法の作用を妨害する者を処罰しようとする趣
旨の規定である。そして,捜査機関に誰が犯人か分かっていな
い段階で,捜査機関に対して自ら犯人である旨虚偽の事実を申
告した場合には,それが犯人の発見を妨げる行為として捜査と
いう刑事司法作用を妨害し,同条にいう「隠避」に当たること
は明らかであり,そうとすれば,犯人が死者であってもこの点
に変わりはないと解される。なるほど,無罪や免訴の確定判決
があった者などは,これを隠避しても同条によって処罰されな
いが,このような者はすでに法律上訴追又は処罰される可能性
を完全に喪失し,捜査の必要性もなくなっているから,このよ
うな者を隠避しても何ら刑事司法作用を妨害するおそれがない
のに対し,本件のような死者の場合には,上記のとおり,なお
そのおそれがあることに照らすと,同条にいう「罪を犯した者
」には死者も含むと解すべきである。結局,論旨は理由がない。
3酒気帯び運転幇助に関する事実誤認の控訴趣意について
論旨は,要するに,被告人は,自動車の運転をAと替わっ
た際,同人の酔いがさめていると思っていたのであり,同人の
酒気帯び運転について確定的な認識はなかったから,被告人に
はこれを幇助する意思がなく無罪であるのに,幇助犯の成立を
認めた原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤
認がある,というのである(なお,弁護人は法令適用の誤りも
主張するが,結局は事実誤認の主張と判断される。)。
そこで,原審記録を調査して検討するに,原判決挙示の証
拠によれば,被告人に酒気帯び運転を幇助する意思があったと
してその幇助犯の成立を認めた原審の判断は正当であり,原判
決に事実の誤認は認められない。
すなわち,関係証拠によれば,Aは平成15年9月7日午
前0時25分ころの事故により死亡したが,その体内に血液1
ミリリットル中0.4ミリグラムのエチルアルコールを保有し
ていたこと,同人は,事故前日の午後7時から午後9時ころま
での間,B,C及びDらとすすきのの居酒屋で飲食し,同人自
身500CC入りのビールを5杯位飲んで相当酔っていたこと,
被告人は,同日午後11時50分ころ,当別駅でAら4人と会
ったが,その際,Aらから「すすきので飲んできた」と告げら
れていること,車内でAらはいわゆるハイテンションで,大騒
ぎをし,CDの音量を高め,後部座席のDが被告人のアクセル
ペダルを踏んでいる右足の膝あたりを手で押したり,Aが「も
っとスピードを出せ」と言ったりしていたこと,Aに運転を替
わったのは翌7日午前0時20分ころで,飲酒後約3時間半程
度しかたっていなかったことの各事実が認められる。これらの
事実によれば,それだけでも,被告人は,Aに運転を替わった
とき,同人の運転が飲酒運転となる旨認識していたことを強く
推認させている。加えて,Aは運転を替わった直後から急発進
や蛇行運転を繰り返すなど異常な運転をしていること,事故直
後,被告人,B及びCは,Aの飲酒運転の発覚を恐れ,被告人
が運転していたことにしようと相談し,現に被告人は自分が運
転していた旨警察官に述べていること,Bは,原審公判廷にお
いて,Aが,街に入るまでは自分が運転する,警察がいるとま
ずいという話をしており,それを酒気帯び運転が警察にばれる
ことを心配した言葉と受け取った旨供述していることが認めら
れ,これらの事実も被告人が上記の認識をもっていたことと符
合し,裏付けている。なお,被告人は,原審公判廷において,
それまで一貫して,当別駅で会ったとき酒の臭いがした,飲酒
運転になることを知りながら運転を替わったと述べていたのを
覆し,酒の臭いに気が付かなかった,もう酔いがさめていると
思ったなどと供述を変遷させたが,変遷について合理的な説明
がないのみならず,原審公判廷においても,Aの体にアルコー
ルが残っているのは分かっていたと述べるなど矛盾する供述を
していることなどに照らすと,被告人の上記否認供述は信用で
きない。そうすると,被告人は,Aが酒気を帯び飲酒運転にな
ることを認識していたことは明らかである。その他弁護人がる
る主張する点を考慮しても,被告人にAの酒気帯び運転につい
て幇助犯の成立を認めた原判決の認定に誤りはなく,論旨は理
由がない。
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,
主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官長島孝太郎裁判官川本清巌裁判官
市川太志)

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