弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人が負担する。
         理    由
 上告代理人久保田美英の上告理由第一点、第三点、第四点及び第五点について。
 原判決の確定した事実によれば、被上告人B農業委員会の前身たるD農地委員会
は昭和二三年一二月一六日自作農創設特別措置法一五条に基き本件買収計画を樹立・
公告したが、買収令書の交付される前に買収申請の取下があつたため、昭和二七年
五月二八日本件買収計画を取り消す旨の決議をし、その頃これを公告したというの
である。してみると、本件買収計画は、買収申請の取下により瑕疵を帯びるに至り、
右瑕疵を理由とする取消により、初めに遡りその存在を失うに至つたものと解すべ
きであるから、上告人は、右計画の無効確認を求めるにつき法律上の利益を欠くに
至つたものと解すべきである、右と同旨の結論をとる原判決は正当であり、所論は、
右に反する独自の見解の下に原判決を非難するものであるか、又は原判決の結論に
影響しない、その表現の不適切な部分をとらえてこれを攻撃するものであつて、す
べて採用のかぎりでない。
 同第二点について。
 本件買収計画の無効確認を求めるにつき法律上の利益を欠く以上、所論の点につ
いては審理・判断する必要がないから、原判決に所論の違法があるということはで
きない。所論は採用し得ない。
 同第六点の第一について。
 原審は、本件買収計画の無効確認請求に関する控訴については、一審判決を是認
し、控訴棄却の判決をし、控訴審において追加された新訴については、訴の利益を
欠くものとして却下の判決をしたものである。そして、控訴審における訴の変更に
より新訴が追加された場合には、新訴については事実上一審として判決をなすべき
ものであることは、当裁判所の判例とするところである(昭和二五年(オ)第一二
八号、同三一年一二月二〇日第一小法廷判決、民集一〇巻一二号一五七三頁)。所
論は、右に反する独自の見解を主張するものであつて、採用のかぎりでない。
 同第六点の第二について。
 買収の要件を定めた自作農創設特別措置法の規定が強行法規であることは所論の
とおりであるが、強行法規の違背が常に行政処分の当然無効の原因となるものと解
すべきではなく、その違背が重大かつ明白と認められる場合にかぎつて当然無効の
原因となるものと解すべきことは当裁判所の判例とするところである(昭和三二年
(オ)第四八一号、同三五年六月一四日第三小法廷判決、民集一四巻八号一三四二
頁)。右に反する所論は、独自の見解あつて、採用に値しない。また、行政処分が
違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政
処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではないから、本訴
が被上告人委員会の不法行為による国家賠償を求める目的に出たものであるという
ことだけでは、本件買収計画の取消後においても、なおその無効確認を求めるにつ
き法律上の利益を有するということの理由とするに足りない。よつて、所論は、す
べて採用しない。
 同第七点について。
 請求の基礎と請求自体とは別個の概念であり、原審において追加された新訴は、
一審における請求と請求の基礎においては同じであることは所論のとおりであるが、
請求自体は別個のものと解すべきことは原審の判断するとおりである。所論は、右
に反する独自の見解を前提とするものであつて、採用し得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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