弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人谷口一長および被告人両名の弁護人高畑二郎の各上告趣意は、
末尾に添えた別紙記載の通りである。
 (一) 谷口弁護人の論旨第一点および高畑弁護人の論旨第一点の要点は、原判
決は被告人らがB方で雇人Cを脅迫して強盗を働いたと言うが、CはBの雇人でな
い別世帯の者であるから、被告人らの行為はC方における強盗未遂とB方における
窃盗とである、というのである。しかしながら原判決が証拠によつて認定したとこ
ろによれば、被告人らは当初からB方を目指しており、C方の物を盗むことは考え
ておらず、そしてCが住んでいたのはB方と別家屋ではなく、母屋から二間きり離
れていない附属建物なのである。それゆえたといCが正確な意味でのB方の雇人で
ないにしてももし盗賊の侵入に気附いたならばそれを妨げまた母家に急を報ずべき
位置に在つた者であるから、それを脅迫してその抵抗を封じ障害を除いた上でB方
の金品を奪つたのであつて、C方では強盗未遂、B方では窃盗、という観方をしな
かつた原審の判断はむしろ自然である。高畑弁護人は原審においても同趣旨の主張
を為し、原判決はその主張を排斥する判断を示しているが、その判断は示された証
拠に合致している。要するに両弁護人の所論は結局原判決の事実認定を非難するに
帰し、論旨は理由がない。
 (二) 高畑弁護人論旨第二点は、原判決は「B方に到り同人不在中同家雇人C
に対し」と説示したが、当時同家には他の家人が居たのであるから、右の説示は事
実および証拠に副わない、と非難する。しかし原判決はC以外の家人が居なかつた
と説示しているわけでもないし、また他の家人の在不在は本件犯罪の成否には何ら
の影響もないことであつて、論旨は理由がない。
 (三) 高畑弁護人論旨第三点は、原判決が証人CおよびBの供述そのものでな
く調書の記載を証拠に採つていることを非難する。しかし原審の最終の公判期日は
昭和二四年九月八日の第五回公判であるが、その期日において公判手続が更新され
ているのであつてCの証言は第四回公判期日に述べられたものであり、またBの証
言は検証現場におけるものであるから、いずれも調書上の記載が証拠となる。従つ
て最終回の公判期日ではそれらの公判調書や証人訊問調書について証拠調をしてい
るのであつて、原判決が証人の供述そのものでなくその記載を援用したのは当然で
あり、論旨は理由がない。
 (四) 谷口弁護人の論旨第二点は、被告人Aが違法に所持したとされる本件の
短剣につき、被告人の供述は「私が所持した」というのではなく「私方にあつた」
というのであり、同人は未成年者なのであつて問題の短剣はその母が親権者として
管理していたものだ、と主張する。しかし本件は正当の事由なくして刀剣を事実上
支配したことを問題とするのであつて、親権者による未成年者の財産の管理とは別
間題であり、また原審が援用している被告人Dの供述は、被告人Aがその短剣を自
由に処分し得る関係にあつたことを示すものであつて、論旨は理由がない。
 (五) 高畑弁護人の論旨第五点は、被告人らの刀剣所持と強盗行為とは手段結
果の関係に在るのだから牽連犯として取扱うべきであるのに原判決がこれを併合罪
として処断したのは法令の適用を誤つたものだ、というのである。しかし被告人ら
の刀剣所持は犯行の前後にわたるものであつて、強盗の手段として所持したのでは
なく、かつ刀剣の所持と強盗行為との間に通常手段結果の関係があるというわけで
はないのであるから、原審が本件に刑法第五四条を適用せずして第四五条を適用し
たのは適法であり、論旨は理由がない。
 (六) 高畑弁護人の論旨第六点は、原判決は被告人Aの所持した刀剣を没収す
の旨を言渡したが、その刀剣の所有権が被告人以外の者に属しないとは断定出来な
い、と主張する。しかし右の刀剣はAの亡父の遺品だというのであるから、その所
有権はAに存することが認められるのであつて、原審も証拠によつてこれを認めた
ものと思われる。論旨は結局原審の事実認定を争うものであつて、上告の理由にな
らない。
 (七) 谷口弁護人の論旨第三点および高畑弁護人の論旨第四点ならびに同第六
点後段は、いずれも量刑不当の主張であつて、上告の理由にならない。高畑弁護人
の論旨は、原判決が被告人両名に対し刑法第二五条を適用しなかつたのは憲法第一
四条違反であると非難するが、犯情の類似した犯人間の処罰に差異があるからとい
つて憲法第一四条に違反するものでないことは、昭和二三年(れ)第四三五号同年
一〇月六日当裁判所大法廷判決に示すところである。
 よつて、旧刑訴法第四四六条に従い、主文の通り判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二五年五月二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    穂   積   重   遠
 裁判官河村又介差支につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎

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