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平成16年6月24日宣告
平成16年(わ)第8号,第36号
詐欺,殺人,死体遺棄,窃盗被告事件
主文
被告人を懲役17年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,
第1A(当時57歳)を殺害しようと企て,平成15年12月19日午前1時こ
ろ,北海道瀬棚郡a町字bc番地所在のdアパートe号室同人方において,ド
,,,ライヤーの電源コードを同人の頸部に巻き付けて絞め付けよってそのころ
同所において,同人を絞頚による窒息により死亡させ,
第2同日午前1時30分ころ,前記dアパート敷地内に駐車中の普通乗用自動車
の後部トランク内に前記Aの死体を積載した上,同車を走行させて同死体を札
幌市内まで運搬し,同月26日午後零時24分ころ,同市f区南g条西h丁目
i番地所在の「駐車場j」において,警察官に発見されるまでの間,同死体を
同車両後部トランク内に隠匿放置し,もって死体を遺棄し,
第3第2記載の日時ころ,前記dアパート敷地内において,前記Aが所有し,管
理していた現金約20万7000円在中の財布及びクレジットカード2枚ほか
5点(時価合計7100円相当)並びに前記普通乗用自動車1台(時価75万
円相当)を窃取し,
第4窃取した前記A名義のクレジットカードを使用して商品購入名下に物品を詐
取しようと企て,同月22日午前11時48分ころ,札幌市k区北l条西m丁
目n番o号所在の株式会社B札幌p店において,同店店員C(当時33歳)に
対し,被告人がAであってクレジットカードの正当な使用権限を有する者のよ
うに装い,同人名義のクレジットカードを呈示してパーソナルコンピューター
2台の購入方を申し込み,同店員をしてその旨誤信させ,よって,そのころ,
同所において,同人からパーソナルコンピューター2台(販売価格合計35万
9600円相当)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ
たものである。
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為は刑法199条に,判示第2の所為は同法190条に,
判示第3の所為は同法235条に,判示第4の所為は同法246条1項にそれぞれ
該当するところ,判示第1の所為について所定刑中有期懲役刑を選択し,以上は同
法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第1の
罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役17
年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中100日をその刑に算入すること
とし,訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させな
いこととする。
(量刑の事情)
殺人,死体遺棄の事案について
被告人は,被害者方居室で隣の布団で寝ていた被害者の首にドライヤーの電源コ
ードを二重以上巻き付け,仰向けに寝た状態の同人の上に馬乗りになって,電源コ
ードの端を両手で握り,ドライヤー本体が同コードから外れて飛ぶほどの力を込め
て同コードを左右に引っ張り,ドライヤー本体が外れるや,今度は同コードの両端
を手のひらと甲の部分に巻き付けて同コードが手のひらから滑り抜けないようにし
てその首を絞め続けた。さらに,被告人は,被害者を殺害したと認識した後,同人
,「」,を居室外に搬出しようとした際同人のグーという息が漏れるような音を聞き
同人が息を吹き返さないようその鼻口部に透明ビニールテープを幾重にも巻き付け
た。かかる被告人の行為からは,被害者殺害に向けた被告人の意思がいかに強固か
つ確定的なものであるか,その態様が被害者を確実に死に至らしめる冷酷かつ残忍
なものであるかが如実に看て取れる。
被告人は,殺害動機について,被害者方で二人で飲酒後被害者と布団を並べて寝
ていたところ,被害者に股間を触られたので,キレてしまい「ふざけんなこの野,
郎」という気持ちになったからである旨供述する。しかしながら,被告人自身,被
害者がわざと触ったのか分からないと認識していたのであるから,被告人の述べる
ところをもってしても,被害者を殺害しなければならない理由とはなり得ず,にも
かかわらず,かかる凶行に及んだ被告人は厳しい非難に値する。
被告人は,被害者の両手首にもビニールテープを巻き付けた上,同人が所有して
いた車両の後部トランクに死体を押し込み,同車両で札幌市内まで運搬し,トラン
クオープナーではトランクが開閉できないよう施錠し,日々異常がないかを確認す
るとともに駐車場所を変えるなどして1週間同死体を隠匿放置したのであって,周
到な遺棄行為である。
被害者は,被告人が以前調査補助者として都合1か月近く働いたa統計・情報セ
ンターのセンター長であり,被告人が働いていた際には,労いの言葉を掛けたり,
昼食の弁当購入に当たって車に被告人を同乗させたり,歓送迎会を催すなど被告人
を気遣い接していた。また,被害者は,殺害される前にも,被告人を自宅に招き入
れ,酒食を振る舞い,遅くなったことから泊まっていくよう勧めた。このように被
害者は被告人に感謝されこそすれ恨まれる事情は一切認められず,ましてや殺害さ
れるような落ち度も見当たらない。被害者は,定年後の悠々自適の生活に思いを巡
らせ,なお幸福で有意義な人生を歩めたであろうに,殺害される理由も分からない
まま,突如として,被告人によって人生の幕を閉ざされたのであって,その無念さ
は筆舌に尽くせない。
被害者の遺族らの悲嘆は察するに余りあり,かけがえのない被害者の生命を無惨
にも奪われたその心情にかんがみれば,被告人に対する極刑を望むのも無理からぬ
ところである。
窃盗,詐欺の事案について
被害金品額は多額であり,被害弁償の目処も立っていない。加えて,被告人は,
札幌市内の歓楽街において,ゲームセンターやいわゆるソープランド等で遊興に耽
るなどして,車両とともに窃取した現金20万円余を,わずか数日で使い果たし,
更なる遊興費を工面すべく,窃取した被害者名義のキャッシュカード等を利用して
現金を引き下ろそうとしたが,失敗するや,被害者のクレジットカードを使用して
電化製品を購入しこれを転売することによって現金を手に入れようと考え,リサイ
クルショップに電話して転売可能な商品を確認した上,詐欺の犯行に及び,得た現
金で引き続き遊興に耽っていたのであり,犯情悪質である。
,,そうすると被告人が計画的に被害者の殺害に及んだとまでは認められないこと
被害者に対し死をもって償いたいと述べていること,前科がないこと,その他被告
人のために酌むべき事情を十分考慮しても,被告人の刑事責任は非常に重いという
ほかなく,被告人は主文の刑を免れない。
(求刑懲役20年)
平成16年6月24日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官園原敏彦
裁判官伊藤聡
裁判官深野英一

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