弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年六月に処する。
         理    由
 本件控訴の趣意は検事竝びに弁護人小脇芳一提出の各控訴趣意書記載の通りであ
るから、ここにこれを引用する。
 検事の控訴趣意第一点事実誤認の主張について
 被告人が検事所論の通りAより納付した罰金三万円、Bより納付した罰金一万円
を受取つて業務上保管中、擅にその金額を着服横領したことは、副検事及び原審裁
判所の取調に対し、既に被告人の自白しているところであつて、検事の引用する証
第二、第三号各納付済原符綴及び監査報告書等は右自白の補強証拠としてその真実
性を担保するに十分である。従つて原判決が内山の納付した罰金の一部金一万円、
Bの納付した罰金の一部金二千六百円についてのみ、業務上横領罪を認定し尓余の
金額を不問に付したのは、事実の認定を誤つたものといわざるを得ない。しかしな
がら右認定の誤りは各一個の業務上横領罪の内部における横領<要旨>金額の誤認に
止まり、同罪、そのものの成否については何等の影響を及ぼすものでもなく、また
その誤認が回数において百五十数回、金額において七十数万円に達する多
数、高額の併合罪のうち、最も重い罪にも当らない一、二罪に関するものであるこ
とに想到するときは量刑上影響を及ぼすものともいえないので、右誤認を以つて、
判決に影響を及ぼすこと明らかなものとして原判決を破棄するわけにはゆかない。
論旨は結局理由がない。
 同第二点及び弁護人の控訴趣意量刑不当の主張について、
 被告人が多数回に亘り多額の罰金、科料、訴訟費用等を着服横領し、これを飲食
遊興に費消し、裁判の執行に関する威信を傷つけたことは、犯情においてまことに
重いものといわねばならない。しかし他面、被告人が本件犯行後被害弁償に払つて
いる異常の誠意と努力及び顕著な改悛の情その他諸般の事情を参酌するときは、原
判決の量刑は重きに過ぎるものと認められる。
 従つて右と主張を一にする弁護人の論旨は理由があり、これに反する検事の論旨
は理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十一条に従い原判決を破棄し、同法
第四百条但書によりつぎの通り自判する。
 原判決の認定した事実を法律に照すと被告人の各所為は刑法第二百五十三条に各
該当し、右は、刑法第四十五条前段の併合罪となるので、同法第四十七条、第十条
に従い、犯情の最も重い原判示第一の(二)の罪の刑に併合加重をした刑期の範囲
内において、被告人を懲役一年六月に処する。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 宮本誉志男 判事 幸田輝治 判事 浅賀栄)

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