主文
刑事訴訟法316条の14の規定により検察官が開示すべきA,B,C及びDの各供述調書に
ついて,弁護人の謄写に際し,それらの謄写物及びその写しを正当な理由なく,被告人以外の
者に閲覧させ,又は交付してはならない,との条件を付する。
理由
第1請求の趣旨及び理由
検察官作成の平成21年3月26日付け刑事訴訟法316条の25の決定を求める請求書記載の
とおりである(ただし,Eに関する請求は撤回した。)から,これを引用する。
第2当裁判所の判断
1刑事訴訟法316条の14は,検察官請求証拠のうち証拠書類について,検察官は,弁護人に
対しては,閲覧だけでなく謄写する機会を与えなければならない旨規定しているが,それは,
弁護人にとって,検察官の請求証拠の謄写は,防御の準備を行うため重要であり,その必要性
が高いからである。特に,本件のように関係者多数の事件においては,関係者の供述調書の
内容を詳細に検討する必要があり,弁護人に謄写を認める必要性は一層高い。もっとも,弁
護人に謄写まで認めると,目的外使用の禁止にかかわらず,開示された供述調書の写しが外
部に流出するおそれがあるが,閲覧に限定すれば,罪証隠滅や証人威迫等の弊害を防止でき
るという場合には,例外的にそのような方法を指定することも考えられる。
しかし,弁護人に謄写を認める前記のような必要性に照らすと,裁判所が,弁護人に対し,
検察官請求証拠の謄写を許可しないとの開示の方法を指定するためには,証拠を弁護人が
謄写することによって生じるおそれのある弊害の内容及び程度と,前記のとおりの謄写を
認める必要性等とを比較考量した上で,なお謄写を認めるべきではないといえることが必
要である。
2(1)検察官は,本件は暴力団組織内部での抗争事件であるところ,本件の弁護人であるE
弁護士(以下単に「弁護人」という。)が,検察官が証拠調請求しているA,B,C及びDの各供述
調書(以下「本件各供述調書」という。)を謄写した場合,その写しが暴力団関係者に渡り,暴
力団関係者が,その情報を利用して,組織防衛目的で共犯者の隠避を図り,また,共犯者等が
公判廷において組織に不利な供述をするのを阻止するため,共犯者の家族等の生命身体等
に危害が加えられるおそれが極めて高く,生じうる弊害は大きいため,弁護人に対して謄写
を許可しない措置を採る必要がある旨主張している。そして,弁護人が本件各供述調書を謄
写した場合,その写しが暴力団関係者に渡るおそれが高いといえる根拠として,①自白して
いる共犯者のうちC及びBはいずれも本件の弁護人が接見に行っていた間は本件について
否認していたが,両名はいずれも被疑者国選弁護人選任後,自白に転じていること,共犯者A
及びEはいずれも本件あるいは別件殺人予備事件について私選弁護人に選任していた本件
の弁護人を解任したことなどから,弁護人は暴力団組織の利益のために動いている者であ
るといえること,②弁護人は,別件殺人予備事件についてAの私選弁護人に選任されていた
間に,検察官が謄写を許可した同事件の共犯者Fの供述調書の写しを,Aが暴力団組員であ
ることに配慮せず,勾留中の同人にそのまま差し入れたこと,③弁護人は,検察官が平成21
年3月4日までに本件各供述調書を検察庁内で閲覧する機会を与える旨連絡したにもかか
わらず,これらの調書を閲覧せず,謄写を強く要求していることを指摘して,弁護人が謄写を
求める目的は未検挙の共犯者に謄写した調書の写しを読ませて,その隠避を図ることであ
ると考えられると主張している。
(2)本件は,暴力団組織内部の抗争事件である上,殺人という重大事案であるから,暴力団
関係者が本件各供述調書の内容を知った場合,その内容の如何によっては,共犯者の隠避を
図り,また,共犯者が組織に不利な供述をするのを阻止するため共犯者の家族等の生命身体
等に危害が加えられるなどの罪証隠滅や証人威迫等の行為が行われるおそれがあることは
否定できない。しかし,そういうおそれは暴力団関係者が共犯者らの供述内容を知った場合
に一般的に認められるのであって,供述調書の写しを入手した場合だけに限定されるもの
ではない。
また,本件において,弁護人が本件各供述調書を謄写した場合に,その写しが外部に流出す
るおそれがあるといえる具体的事情や,暴力団関係者が本件各供述調書の写しを入手した
場合に,前記のような罪証隠滅や証人威迫等の行為がされるおそれが高いといえる具体的
事情については十分疎明されていない。
すなわち,検察官は前記のとおり主張しているところ,本件の各共犯者が前記①のような
態度を取ったことは認められるが,そのことから,弁護人が供述調書を謄写した場合,その写
しが暴力団関係者に渡るおそれがあり,前記のような罪証隠滅や証人威迫等の行為がされ
るおそれが高いとまでいうことはできず,前記②については訴訟の準備のため共犯者の供
述調書の写しを被告人に差し入れることは弁護活動として通常行われている行為であり,
弁護人が供述調書の写しをそのまま差し入れたことに直ちに問題があるとはいえず,前記
③についても,前記1で述べたとおり本件のように関係者多数の事件については関係者の
供述内容を詳細に検討する必要性は高く,本件各供述調書の謄写を請求するのは通常の弁
護活動の範囲内であり,その態度から弁護人の謄写の目的が被告人の弁護以外に使用する
ための目的外使用であるということはできない。
(3)以上のとおり,本件において,弁護人が本件各供述調書を謄写した場合,それが外部に流
出して大きな弊害が生じるおそれが高いとはいえず,前記のとおり弁護人に謄写を認める
必要性が高いことを考慮すれば,弁護人に対し検察官請求証拠の謄写を許可しないとの開
示の方法を指定するのは相当でない。もっとも,前記したように,暴力団関係者が本件各供
述調書の写しを入手した場合や閲覧した場合の罪証隠滅や証人威迫等の行為が行われる一
般的なおそれに鑑みると,謄写に際しては,弁護人に対し,主文の条件を付するのが相当であ
る。
(裁判長裁判官・佐野哲生,裁判官・五十嵐浩介,裁判官・中田ひろみ)
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