弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人両名弁護人林円力上告趣意第一点について。
 しかし裁判所は公判廷において被告人に対し刑訴応急措置法第一一条本分の書類
の供述者又は作成者を訊問する権利のあることを告知しなかつたからといつて同条
に違反するものではないと解すべきことは当裁判所の判例とするところである。(
昭和二二年(れ)第二〇四号同二三年三月九日大法廷判決参照)それ故論旨前段は
理由がない。
 次に弁護人は本件記録を見るに被告人が証人の訊問を請求したのに原審はこれを
容れなかつたのであるか、それとも全然請求しなかつたのかということが判明しな
い。しかもこれを明確にすることは被告人の権利擁護に不可欠の重要事であるから、
この点を調書に明確にしないのは憲法第三七条及び刑訴応急措置法第一二条に違反
するものだと主張するのであるが、被告人が訊問の請求をした場合にはその旨を調
書に記載すべきことは旧刑訴第六〇条の規定に照していうまでもないことである。
されば公判調書に訊問の請求をした旨の記載がないのは訊問の請求をしなかつたも
のであること明白で、所論のように訊問の請求はしたが裁判所がこれを容れなかつ
たものであるか否か不明であると解することはできない。それ故この点に対する論
旨も理由がない。
 同点の二について。
 被告人Aに対し予審判事の勾留訊問がなされたのは昭和二二年二月二七日である
こと、原審が被告人A、同B外一名と共謀して犯した窃盗の事実(判示第一の一の
事実)と被告人A外数名が共謀した窃盗未遂の事実(判示第一の二の事実)を認定
した証拠の中に、被告人C外八名に対する窃盗同未遂強盗予備強盗傷人公務執行妨
害等被告事件(以下甲事件と略称する)の第一審第二回公判調書中の被告人A、原
審相被告人D同E同F第一審相被告人Gの供述記載の存在することは所論のとおり
であるが、記録によれば右甲事件の第一審第二回公判期日は昭和二二年九月二二日
であつて、被告人A、原審相被告人D、同E、同F、第一審相被告人Gはいずれも
昭和二二年四月一八日予審判事に対してそれぞれ前示甲事件の第一審第二回公判廷
におけると同旨の供述をしている。そしてこの供述は被告人A以下五名が勾留され
た同年二月二七日から二月足らずの後になされているのである。しかのみならず、
被告人Aの事件は同人と共犯の関係にある数人の者が他の者と共犯にかかる強盗、
強盗傷人、強盗予備、公務執行妨害等の事件と併合して審理された結果第一審の被
告人の数が九名に上り他の逃亡中の共犯者数名があつて、ただに事件の内容が複雑
多岐に亘るばかりでなく事件の審理に多大の手数を要したことは記録に徴して容易
に窺知することができる。
 されば原審が証拠として採用した被告人A以下四名の甲事件第一審第二回公判廷
における自白をもつて刑訴応急措置法第一〇条第二項にいわゆる不当に長く抑留若
しくは拘禁された後の自白に該当しないものと認めるのが相当であるから原判決に
は所論のような違法は存しない。論旨は理由がない。
 同第二点の一について。
 しかし論旨は結局事実審たる原裁判所の裁量権に属する証拠の取捨乃至事実を非
難するに帰し上告適法の理由とはならぬ。
 同点の二、三について。
 しかし論旨にいずれも、その理由のないことは前示第一点の一、二について説明
したとおりである。
 同点の四について。
 しかし旧刑訴第三五二条によれば被告人が心神喪失の状態に在るか、疾病に因り
公判廷に出頭することができない場合には裁判所は公判手続を停止しなければなら
ないのであるがさもない場合には公判の手続を停止しなくとも違法でないのである。
そこで所論の東京拘置所医師Iの病状回答書及び同所医師Jの診断書によれば被告
人Bは昭和二二年一〇月一五日公判廷において発作的に意識の溷濁を来したのであ
るが、同二三年六月一二日には意識清明となりその後同年一二月六日当時まで漸次
軽快に向ひつつあつたことが認められるからこれ等の書類だけでは原審第一回公判
期日たる昭和二四年二月一一日当時被告人が心神喪失の状態に在つたものとは認め
られないし、被告人は同公判期日及びその後の公判期日にも現に出廷していたもの
であるから、原審が被告人に対する公判手続を停止しなかつたからといつて原判決
を違法なりとはいえない。論旨は理由がない。
 同点の五について。
 一九四六年二月一九日附朝鮮人その他の国人に対し科せられた判決の再審査に関
する覚書に従ひ被告人等は日本裁判所の確定判決について連合軍最高司令官又は第
八軍司令官に対し、再審査を請求する権利のあることは所論のとおりであるが原判
決言渡しの際被告人等に対しその請求権のあることを告知すべき義務を原審に負担
せしめる趣旨の規定は前示覚書には勿論いかなる法令にも存在しないのであるから、
原審が被告人等に右請求権のあることを告知しなかつたからといつて原判決にはい
ささかの違法もない。論旨は理由がない。
 被告人B上告趣意について。
 しかし、所論縷述するところは結局事実審たる原裁判所の裁量権に属する事実の
認定を非難するにとどまり上告適法の理由とはならぬ。よつて旧刑訴四四六条に従
い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 竹原精太郎関与
  昭和二四年八月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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