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平成25年10月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官上原啓司
平成24年(ワ)第8053号損害賠償請求事件
(口頭弁論の終結の日平成25年9月24日)
判決
大韓民国ソウル特別市龍山区〈以下略〉
原告株式会社ジーピーシーコリア
同訴訟代理人弁護士岩瀬吉和
同石井昭仁
同訴訟復代理人弁護士地康文
同訴訟代理人弁理士金山賢教
東京都品川区〈以下略〉
被告楽天株式会社
同訴訟代理人弁護士高橋雄一郎
同訴訟代理人弁理士望月尚子
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,10億円及びこれに対する平成24年3月31日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,発明の名称を「Web-POS方式」とする特許権の専用実施権者
である原告が,被告の提供するサービスに係るシステムが上記特許権を侵害し
ている旨主張して,被告に対し,民法709条及び特許法102条3項に基づ
く損害賠償(一部請求)並びにこれに対する不法行為日以降の日である平成2
4年3月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
支払を求める事案である。
1前提事実(当事者間に争いがないか,各項目掲記の証拠(枝番号の記載は省
略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事
実)
(1)当事者
ア原告は,ソフトウェア事業,特許の管理・行使,電子商取引の構築及び
運営,決済端末機販売,インターネットを利用した決済代行等を目的とす
る大韓民国の株式会社である。
イ被告は,エレクトロニック・コマース事業,クレジットカード事業,電
子マネー事業,銀行事業,ポータル・メディア事業,トラベル事業,証券
事業,プロスポーツ事業,通信事業等を業とする株式会社である。
(2)原告の特許権
ア原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許出願の願書
に添付された明細書を「本件明細書」という。)について,特許権者であ
る訴外ジーピーシーアジアパシフィックアソシエイツインク(米国法
人)から,地域を日本国内全域,期間を本件特許権の存続期間中とする専
用実施権の設定を受け,平成23年1月17日付けでその登録を受けた
(甲1,2)。
特許番号特許第4579336号
発明の名称Web-POS方式
出願番号特願2010-43641
出願日平成22年2月28日
分割の表示特願2000-331569の分割
原出願日平成10年1月9日
登録日平成22年9月3日
イ本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりであ
る(以下,当該発明を「本件発明」といい,本件発明に係る特許を「本件
特許」という。)。
「ハイパーテキスト転送プロトコルを用いてハイパーテキストマークアッ
プ言語で記述された初期フレーム表示制御クライアント・プログラム,カ
テゴリーリスト表示制御クライアント・プログラム及びPLUリスト表示
制御クライアント・プログラムを含むHTMLリソースを供給するWeb
-POSサーバ装置を備えた,販売時点情報管理を行うためのWeb-P
OSネットワーク・システムの制御方法であって,
該Web-POSサーバ装置からWeb-POSクライアント装置に対
して送信された,初期フレーム表示制御クライアント・プログラムが,該
Web-POSクライアント装置において実行されることにより,少なく
とも,
1)該Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ
装置に対して,カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムのダ
ウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される過程,
2)該要求に基づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体か
らカテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムを読み出し,上記
Web-POSサーバ装置から該Web-POSクライアント装置に対し
て,上記カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムが送信され
る過程,
3)上記Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサー
バ装置に対して,PLUリスト表示制御サーバ・プログラムの実行を指示
するHTTPメッセージが送信されると,上記Web-POSサーバ装置
が,PLU表示サーバ・プログラムを起動して,PLUリスト表示制御ク
ライアント・プログラムを生成し,上記Web-POSクライアント装置
に対して,PLUリスト表示制御クライアントプログラムが送信される過
程,
4)及び,商品情報の入力毎に,それに対応するPLU情報が上記We
b-POSサーバ装置に問い合わされる過程,
からなり,
前記Web-POSサーバ装置のPLUマスタDB内の商品カテゴリー
に対応するレコード情報に基づくPLUリスト及び同PLUマスタDB内
の商品情報に対応するレコード情報に基づくPLUリストが,それぞれ,
前記Web-POSクライアント装置における商品カテゴリーが変更され
る毎に,また前記Web-POSクライアント装置における商品識別情報
が入力(選択)される毎に,前記Web-POSサーバ装置から前記We
b-POSクライアント装置にダウンロードされると共に,
該Web-POSクライアント装置においては,前記Web-POSサ
ーバ装置から受信した商品基礎情報をタッチパネル,キーボード,または
マウスからなる入力手段を有する表示画面に表示し,該入力手段により上
記表示された商品を特定する商品に関する識別情報である商品識別情報を
入力(選択)し,前記Web-POSサーバ装置から受信した商品基礎情
報から上記入力(選択)した商品識別情報に対応する商品基礎情報のレコ
ードを取得して,該商品基礎情報と上記入力(選択)した商品識別情報と
に基づいて注文商品明細情報を上記表示画面に出力する,汎用のコンピュ
ータとインターネットを用い,ハイパーテキスト転送プロトコルに基づい
て通信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザ
のみでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムにおいて,
商品カテゴリー,メーカー,商品名及び価格からなる商品基礎情報が記
憶されている前記PLUマスタDBが前記Web-POSサーバ装置のみ
に設けられて,前記すべての商品基礎情報が前記Web-POSサーバ装
置のみによって管理されると共に,前記タッチパネル,キーボード,また
はマウスからなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーに
対応するPLUリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と,該
カテゴリー内の商品名が表示される,商品情報に対応したPLUリストを
表示する部分(第2フレーム)の表示過程と,前記商品基礎情報と前記入
力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表
示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て,前記Web-POSクラ
イアント装置における上記注文商品明細情報が該Web-POSクライア
ント装置から前記Web-POSサーバ装置に送信されることで,販売時
点情報管理が行われることを特徴とするWeb-POSネットワーク・シ
ステムの制御方法。」
ウ本件発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下,各構成要
件を「構成要件A」などという。)。ただし,以下,構成要件中の次の左
欄記載の用語については,括弧中において引用する場合も含め,右欄記載
の略称を用いる。
構成要件中の用語略称
ハイパーテキスト転送プロトコルHTTP
ハイパーテキストマークアップ言語HTML
Web-POSサーバ装置サーバ装置
Web-POSクライアント装置クライアント装置
初期フレーム表示制御クライアント・プ
ログラム
初期フレームプログラム
カテゴリーリスト表示制御クライアント
・プログラム
カテゴリーリストプログラム
PLUリスト表示制御クライアント・プ
ログラム
PLUリストプログラム
PLUリスト表示制御サーバ・プログラム,
PLU表示サーバ・プログラム
PLUリストサーバプログラム
商品カテゴリーに対応するレコード情報
に基づくPLUリスト
カテゴリー対応レコードリスト
商品情報に対応するレコード情報に基づ
くPLUリスト
商品情報対応レコードリスト
商品カテゴリーに対応するPLUリスト商品カテゴリーリスト
商品情報に対応したPLUリスト商品PLUリスト
AHTTPを用いてHTMLで記述された初期フレームプログラム,カ
テゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムを含むHTML
リソースを供給するサーバ装置を備えた,
B販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワーク・システ
ムの制御方法であって,
C該サーバ装置からクライアント装置に対して送信された,初期フレー
ムプログラムが,該クライアント装置において実行されることにより,
D少なくとも,
1)該クライアント装置から上記サーバ装置に対して,カテゴリーリス
トプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信さ
れる過程,
2)該要求に基づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体か
らカテゴリーリストプログラムを読み出し,上記サーバ装置から該ク
ライアント装置に対して,上記カテゴリーリストプログラムが送信さ
れる過程,
3)上記クライアント装置から上記サーバ装置に対して,PLUリスト
サーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信される
と,上記サーバ装置が,PLUリストサーバプログラムを起動して,
PLUリストプログラムを生成し,上記クライアント装置に対して,
PLUリストプログラムが送信される過程,
4)及び,商品情報の入力毎に,それに対応するPLU情報が上記サー
バ装置に問い合わされる過程,
からなり,
E前記サーバ装置のPLUマスタDB内のカテゴリー対応レコードリス
ト及び同PLUマスタDB内の商品情報対応レコードリストが,それぞ
れ,前記クライアント装置における商品カテゴリーが変更される毎に,
また前記クライアント装置における商品識別情報が入力(選択)される
毎に,前記サーバ装置から前記クライアント装置にダウンロードされる
と共に,
F該クライアント装置においては,前記サーバ装置から受信した商品基
礎情報をタッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を
有する表示画面に表示し,該入力手段により上記表示された商品を特定
する商品に関する識別情報である商品識別情報を入力(選択)し,前記
サーバ装置から受信した商品基礎情報から上記入力(選択)した商品識
別情報に対応する商品基礎情報のレコードを取得して,該商品基礎情報
と上記入力(選択)した商品識別情報とに基づいて注文商品明細情報を
上記表示画面に出力する,
G汎用のコンピュータとインターネットを用い,HTTPに基づいて通
信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザの
みでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムにおいて,
H商品カテゴリー,メーカー,商品名及び価格からなる商品基礎情報が
記憶されている前記PLUマスタDBが前記サーバ装置のみに設けられ
て,
I前記すべての商品基礎情報が前記サーバ装置のみによって管理される
と共に,
J前記タッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を有
する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示する部分(第1フ
レーム)の表示過程と,該カテゴリー内の商品名が表示される,商品P
LUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と,前記商品基
礎情報と前記入力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の
注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て,
K前記クライアント装置における上記注文商品明細情報が該クライアン
ト装置から前記サーバ装置に送信されることで,販売時点情報管理が行
われることを特徴とする
LWeb-POSネットワーク・システムの制御方法。
(3)被告の行為(甲3~7,乙1~5)
ア被告サービス及び被告システム
被告は,業として,インターネット上において「楽天市場」と称するシ
ョッピングモール(以下「被告サービス」という。)を提供している。
イ別紙1の第1(1)画面ないし第1(5)画面について(実施態様1)
第1(1)画面(別紙1の表題に「第1(1)画面」との記載がある画面。以
下,別紙1及び別紙2のその余の画面又はソースコードにつき同じ。)な
いし第1(5)画面は,被告が被告サービスにおいて採用しているシステムの
挙動の一例であり,原告は,このシステム及び第2(1)画面ないし第2(6)
画面に係る挙動を示すシステム(以下,これらを併せて「被告システム」
という。)の制御方法が本件発明の構成要件を充足する旨主張している。
被告システムの別紙1に係る商品の表示及び購入の流れ(以下「実施態
様1」という。)は,次のとおりである。
第1(1)画面は,被告システムのトップページである。左上部には,被告
サービスにおいて取り扱われている商品が,ファッション,家電・パソコ
ン・通信,食品・飲料・お酒,インテリア・日用雑貨,スポーツ・アウト
ドア,美容・健康,キッズ・ベビー・玩具,ペット・花・DIY,本・音
楽・ゲーム及び車・バイク・サービスの10のカテゴリー(以下「リスト
1(1)」という。)に区分して表示されている。その上部には,「最近チェ
ックしたジャンル」というリストが表示されているところ,このうち,
「ゴルフ用品」をクリックすると,第1(2)画面に移行する。
第1(2)画面の左上部には,「このジャンル内の商品」というリスト(以
下「リスト1(2)」という。)が表示され,クラブ(メンズ),クラブ(レ
ディース),クラブ(中古)等のカテゴリー及びそのサブカテゴリーが表
示されている(例えば,「クラブ(メンズ)」には,ドライバー,フェア
ウェイウッド,アイアン,ウェッジ,パター等のサブカテゴリーが表示さ
れている。)。このうち,「クラブ(メンズ)」をクリックすると,第1
(3)画面に移行する。
第1(3)画面は,広告等の表示領域を除くと,大きく,左側のカテゴリー
の表示領域と右側の個別商品の表示領域とに分かれ,右側の個別商品の表
示領域の上部には,「ドライバーを探す,フェアウェイウッドを探す,ア
イアンを探す,パターを探す」及びそのサブカテゴリーを表示したリスト
が表示されている。カテゴリーの表示領域には,「ジャンルで絞り込む」
というフレーム(第1(3)画面の赤枠部分)があり,ゴルフ及びクラブ(メ
ンズ)というカテゴリーが表示され,このうちクラブ(メンズ)のカテゴ
リーの下には,ドライバー,フェアウェイウッド,アイアン,ウェッジ,
パター等のサブカテゴリーが表示されている(以下,このカテゴリーリス
トと上記の「ドライバーを探す」等を含むリストを併せて「リスト1(3)」
という。)。他方,個別商品の表示領域(第1(3)画面の青枠部分)には,
「[PR]2012年2月発売の新製品★オデッセイプロタイプツアーシ
リーズ♯6パター」,「※【送料無料】3000本突破!4/25付楽天
デイリーランキング第9位!Larouge-HTフェアウェイウッド...」
等の商品リスト(以下「リスト1(4)」という。)が表示されている。この
うち,後者の商品をクリックすると,第1(4)画面に移行する。
第1(3)画面ソースは,第1(3)画面のソースコードの抜粋である。この
うち,紫色部分のコード(以下「本件プログラム1①」という。)には,
及び
というタグが含まれるところ,このタグは,これに
より挟まれた部分をひとまとまりの段落として表示するものであることか
ら,第1(3)画面ソースのプログラムの実行過程において,他のファイルが
適宜参照されるなどして,第1(3)画面の赤枠部分の領域の位置及び幅を確
保することに関与しているものと認められる。また,第1(3)画面ソースの
うち橙色部分のコード(以下「本件プログラム1②」という。)は,上記
赤枠部分の中のリスト1(3)を表示するコードであると認められる。さらに,
第1(3)画面ソースのうち青色部分のコード(以下「本件プログラム1③」
という。)は,第1(3)画面の青枠部分の中のリスト1(4)を表示するコー
ドであると認められる。ただし,その冒頭のというタグ及び末
尾の
というタグは,上記と同様に,上記青枠部分の領域の位置及び
幅を確保することに関与しているものと認められる。
第1(4)画面には,上記「※【送料無料】3000本突破!4/25付楽
天デイリーランキング第9位!Larouge-HTフェアウェイウッ
ド」という商品のイメージ及び説明(製造直販価格,在庫の有無等)があ
り,その下部にある「買い物かごに入れる」というボタンをクリックする
と,第1(5)画面に移行する。
第1(5)画面は,このような過程を経て買い物かごに入れられた商品の最
終的な注文確認画面であり,商品のイメージ,名称,単価,注文個数等が
表示され,下部にある「ご購入手続き」というボタンをクリックすると,
注文手続の画面に移行する。
ウ別紙2の第2(1)画面ないし第2(6)画面について(実施態様2)
他方,被告システムの別紙2に係る商品の表示及び購入の流れ(以下
「実施態様2」という。)は,次のとおりである。
第2(1)画面は,被告システムのトップページである。左上部には,被告
サービスにおいて取り扱われている商品が,上記イと同様に,ファッショ
ン,家電・パソコン・通信,食品・飲料・お酒等の10のカテゴリー(以
下「リスト2(1)」という。)に区分して表示されている。その上部には,
「最近チェックしたジャンル」というリストが表示されているところ,こ
のうち,「ゴルフ用品」をクリックすると,第2(2)画面に移行する。
第2(2)画面の左上部には,「このジャンル内の商品」というフレーム
(第2(2)画面の赤枠部分)があり,その中にクラブ(メンズ),クラブ
(レディース),クラブ(中古)等のカテゴリー及びそのサブカテゴリー
(上記イのリスト1(2)と同様のもの)が表示されている(以下,これらの
リストを「リスト2(2)」という。)。このうち,「クラブ(メンズ)」を
クリックすると,第2(3)画面に移行する。
第2(2)画面ソースは,第2(2)画面のソースコードの抜粋である。この
うち,紫色部分のコード(以下「本件プログラム2①」という。)は,上
記イと同様に,上記赤枠部分の領域の位置及び幅を確保することに関与し
ており,これがリスト2(2)を表示するプログラムと同時に実行されること
で,上記の赤枠部分にリスト2(2)が表示されるものと認められる。
第2(3)画面は,広告等の表示領域を除くと,大きく,左側のカテゴリー
の表示領域と右側の個別商品の表示領域(以下,後者の領域に表示された
リストを「リスト2(4)」という。)とに分かれている。カテゴリーの表示
領域には,「ジャンルで絞り込む」というフレーム(第2(3)画面の赤枠部
分)があり,ゴルフ及びクラブ(メンズ)というカテゴリーが表示され,
このうちクラブ(メンズ)のカテゴリーの下には,ドライバー,フェアウ
ェイウッド,アイアン,ウェッジ,パター等のサブカテゴリーが表示され
ている(以下,このカテゴリーリストを「リスト2(3)」という。)。この
うち,「ドライバー」をクリックすると,第2(4)画面に移行する。
第2(3)画面ソースは,第2(3)画面のソースコードの抜粋である。この
うち,橙色部分のコード(以下「本件プログラム2②」という。)は,上
記赤枠部分の中のリスト2(3)を表示するコードであるところ,その冒頭の
というタグ及び末尾のというタグは,上記赤枠部分の領
域の位置及び幅を確保することに関与しているものと認められる。
第2(4)画面は,広告等の表示領域を除くと,大きく,左側のカテゴリー
の表示領域と右側の個別商品の表示領域とに分かれている。個別商品の表
示領域(第2(4)画面の青枠部分)には,「※★6周年祭大特価★【50%
OFF!!】【送料無料】番手不揃いのためワケあり大特価!50%オフ曲
がらな...」等の商品のリスト(以下「リスト2(5)」という。)が表示さ
れている。このうち,上記商品をクリックすると,第2(5)画面に移行する。
第2(4)画面ソースは,第2(4)画面のソースコードの抜粋である。この
うち,青色部分のコード(以下「本件プログラム2③」という。)は,第
2(4)画面の青枠部分の中のリスト2(5)を表示するコードであるところ,
その冒頭のというタグ及び末尾のというタグは,上記青
枠部分の領域の位置及び幅を確保することに関与しているものと認められ
る。
第2(5)画面には,上記商品のイメージ及び説明(製造直販価格,在庫の
有無等)があり,その下部にある「買い物かごに入れる」というボタンを
クリックすると,第2(6)画面に移行する。
第2(6)画面は,このような過程を経て買い物かごに入れられた商品の最
終的な注文確認画面であり,商品のイメージ,名称,単価,注文個数等が
表示され,下部にある「ご購入手続き」というボタンをクリックすると,
注文手続の画面に移行する。
2争点
原告は,被告システムの実施態様1及び2が本件発明の構成要件を充足する
根拠を別紙3のとおり主張している。これに対し,被告は,主として次の(1)な
いし(4)の点を争い,その余の点については積極的に争っていない。
したがって,損害論を含めた本件の争点は,次の5点である。
(充足論)
(1)構成要件B,G,K及びLの「販売時点情報管理」,「Web-POSシ
ステム」又は「Web-POSネットワーク・システム」の充足性等(構成
要件A,C,D,E,F,H,I及びKのサーバ装置及びクライアント装置
が「Web-POS」に関するものであるかを含む。)
(2)構成要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行
内容並びに第1ないし第3フレームの表示過程に関する充足性
(3)構成要件E及びHの「PLUマスタDB」並びに構成要件F及びIの商品
基礎情報の管理方法の充足性
(4)構成要件Fの「商品基礎情報」の充足性
(損害論)
(5)損害額
3争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(構成要件B,G,K及びLの「販売時点情報管理」,「Web
-POSシステム」又は「Web-POSネットワーク・システム」の充足
性等)について
(原告の主張)
POSシステムにおいて,クライアントの端末を操作する主体は,小売業
者に限られるものではなく,本件発明は,インターネット技術と共に発達し
たネットショッピングシステム,オンラインショッピングシステムなどと称
されるECサイトシステムを排除するものではない。被告システムは,PO
S技術を,専用回線を用いずに,汎用のパソコン及びインターネットを用い
て実現するWeb-POSネットワーク・システムの制御方法に関するもの
であるから,Web-POS(ネットワーク・)システムに該当する。
また,POSにおいては,販売時点データを仕入れデータと結び付けるこ
とが必要とされているにとどまり,在庫情報等を販売時点においてリアルタ
イムで取得することは,その定義に含まれていない。
よって,被告システムは,構成要件B,G,K及びLの「販売時点情報管
理」,「Web-POSシステム」又は「Web-POSネットワーク・シ
ステム」を充足する。
(被告の主張)
「POS」とは,少なくとも,小売業者が扱うPOS端末と情報の集中管
理を行うサーバーを有しており,小売業者が必要な販売情報,在庫情報等を
POS端末で販売時点においてリアルタイムで取得することにより,販売活
動全体の合理化を図ることができるようにしたものであって,かつ,POS
端末とサーバーとをインターネット回線で接続したものをいうと解される。
これに対し,被告システムは,被告と契約した出店者による物品等の販売
を支援するシステムであって,顧客は小売業者ではない。また,小売業者が
必要な販売情報,在庫情報等を販売時点においてリアルタイムで取得するこ
とができるようにもなっていない。
したがって,被告システムは,構成要件B,G,K及びLの「販売時点情
報管理」,「Web-POSシステム」又は「Web-POSネットワーク・シ
ステム」を充足しない。
(2)争点(2)(構成要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手
順及び実行内容並びに第1ないし第3フレームの表示過程に関する充足性)
について
(原告の主張)
ア各プログラムの実行手順及び実行内容について
(ア)被告システムに係る実施態様1及び2が,いずれも構成要件A,C,
D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足する
ことは,別紙3の1及び2の各(1),(3),(4)及び(10)のとおりである。
(イ)構成要件Cは,初期フレームプログラムがクライアント装置におい
て「実行されることにより」という文言を含むが,この文言は,構成要
件Dの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべきであるか
ら,初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプログラムの
ダウンロードとの間には,厳密な前後関係は要求されておらず,前者が
後者に先行しなければならないものではない。また,上記の文言は,因
果関係を示すものでもなく,構成要件Dの1)ないし4)の過程が初期
フレームプログラムの実行なしには行われないという程度の関係を示す
ものにすぎないと解すべきである。
なお,構成要件Cに「少なくとも」と記載されていることなどに鑑み
ると,構成要件Dの1)ないし4)に相当する過程の前後又は間に,こ
れに対応しない過程が存在したとしても,それは,いわゆる付加にすぎ
ず,これによって,本件発明の構成要件C及びDの充足が妨げられるも
のではない。
したがって,被告システムにおいて,構成要件Dの1)ないし4)の
過程の一部が初期フレームプログラムの実行開始に先行したとしても,
これらの過程全体は,初期フレームプログラムが「実行されることによ
り」行われているものと解される。
(ウ)なお,仮に,構成要件Cの過程とDの1)ないし4)の過程との間
に時間的な前後関係があることを要するとしても,少なくとも実施態様
2については,そのような前後関係が存在している。すなわち,初期フ
レームプログラムである本件プログラム2①は,第2(2)画面ソースに含
まれており,第2(2)画面から「クラブ(メンズ)」がクリックされるこ
とで,第2(3)画面ソースの送信を要求するHTTPメッセージが送信さ
れる。そして,カテゴリーリストプログラムである本件プログラム2②
は,第2(3)画面ソースに含まれている。したがって,実施態様2におい
ては,初期フレームプログラムの実行よりも後に,カテゴリーリストプ
ログラムの送信を指示するHTTPメッセージが利用者端末から被告サ
ーバ群に送信されている。
イ各フレームの表示過程について
(ア)文言侵害
被告システムに係る実施態様1及び2が,いずれも構成要件A,C,
D及びJに記載された第1ないし第3フレームの表示過程を充足するこ
とは,別紙3の1及び2の各(1),(3),(4)及び(10)のとおりである。
なお,構成要件Jにおいては,第1ないし第3フレームの各表示とい
う流れが記載されているにとどまり,これらの各フレームがブラウザの
一つのウィンドウを分割して同時に表示されることは記載されておらず,
本件明細書においても,そのようなことは示唆されていない。したがっ
て,第1ないし第3フレームがブラウザの一つのウィンドウを分割して
同時に表示されないものであっても,構成要件A,C,D及びJを充足
し得るというべきである。
(イ)均等侵害
仮に,第1ないし第3フレームがブラウザの一つのウィンドウを分割
して同時に表示されるものであると解された場合であっても,①これら
が異なるウィンドウに表示されても,Webサーバ・クライアントシス
テム上においてPOS機能を実現することに影響はないこと,②Web
ブラウザ上に表示する情報を,同一ウィンドウの内部を区切って表示す
るか,異なるウィンドウとして表示するかは,デザイン上の問題でしか
ないこと,③これらの表示態様は,本件発明の効果の実現とは関係がな
く,その課題やその解決手段とも無関係であることなどに照らせば,被
告システムは,これらが同一のウィンドウに表示される場合と均等な構
成を有しているから,被告システムの制御方法は,本件特許の侵害を構
成する。
(被告の主張)
ア各プログラムの実行手順及び実行内容について
構成要件C及びDには,「初期フレームプログラムが,該クライアント
装置において実行されることにより,少なくとも,1)該クライアント装
置から上記サーバ装置に対して,カテゴリーリストプログラムのダウンロ
ードを要求するHTTPメッセージが送信される過程」と記載されており,
特許請求の範囲の文言上,両者の間に時間的な前後関係が存在することが
要件とされている。また,構成要件Dの2)及び3)においては,カテゴ
リーリストプログラムが送信される過程とPLUリストプログラムが送信
される過程が別々に書き分けられおり,これらが異なる過程として実行さ
れることが要件とされている。
しかるに,原告の主張を前提としても,実施態様1においては,本件プ
ログラム1①及び1②がいずれも第1(3)画面ソースに含まれており,それ
が一括して被告のサーバ装置から利用者端末に送信され,利用者端末のブ
ラウザで実行されるのであるから,上記のような時間的前後関係が存在し
ない。加えて,第1(3)画面は,一つの第1(3)画面ソースによって表示さ
れ,それが1回だけクライアント装置に送信されるものであり,カテゴリ
ーリストプログラムが送信される過程とPLUリストプログラムが送信さ
れる過程が別個のものとして実行されていない。
また,実施態様2については,第2(2)画面ソースと第2(3)画面ソース
は,それぞれ別のWebページを表示させるためのものであるから,本件
プログラム2①によって確保された領域に本件プログラム2②によって表
示されるリストが表示されるものではない。したがって,本件プログラム
2①は,「初期フレームプログラム」には当たらず,構成要件C及びDに
記載された時間的前後関係も存在しないこととなる。
よって,被告システムは,構成要件A,C,D及びJに記載された各プ
ログラムの実行手順及び実行内容を充足しない。
イ各フレームの表示過程について
(ア)文言侵害
「フレーム」は「枠」を意味し,一つのWebページ中に複数の表示
領域を確保するものであるところ,第1フレームはカテゴリーリストプ
ログラムを割り当てて商品カテゴリーリストを表示させる「部分」であ
り,第2フレームはPLUリストプログラムを割り当てて商品PLUリ
ストを表示させる「部分」であり,第3フレームは注文商品明細情報を
表示させる「部分」である(構成要件J)。したがって,本件発明にお
いては,一つのWebページ中に第1ないし第3フレームを確保する初
期フレームプログラムが重要な構成要件となっている。
しかるに,被告システムにおいては,一つのWebページ中に第1な
いし第3フレームを確保する処理を行うソースコードは用いられていな
いから,被告システムは,構成要件A,C,D及びJに記載された各フ
レームの表示過程を充足しない。
(イ)均等侵害
第1ないし第3フレームを一つの表示画面で一覧することができるこ
とは,発明の本質部分であり,それが別の画面に表示される場合と作用
効果を同じくすると解することはできない。
したがって,被告システムについて均等侵害は成立しない。
(3)争点(3)(構成要件E及びHの「PLUマスタDB」並びに構成要件F及
びIの商品基礎情報の管理方法の充足性)について
(原告の主張)
被告システムにおいて,PLUマスタDBが被告のWebサーバ(利用者
端末とのやり取りを主に担当するサーバ)とは別のサーバに保存されている
としても,PLUマスタDBに記憶された商品基礎情報が利用者端末の画面
に表示されることから明らかなとおり,WebサーバとPLUマスタDBを
保存するサーバとは,連動して被告システムの一部を構成しているはずであ
るから,両者は一体となって本件発明の「サーバ装置」に該当するものであ
る。
したがって,被告システムは,「サーバ装置のPLUマスタDB」を有し
ており,構成要件E及びHの「PLUマスタDB」並びに構成要件F及びI
の商品基礎情報の管理方法を充足する。
(被告の主張)
構成要件Fには,「クライアント装置においては,……サーバ装置から受
信した商品基礎情報から上記入力(選択)した商品識別情報に対応する商品
基礎情報のレコードを取得して」とあり,文言上,①商品基礎情報をWeb
-POSサーバ装置から受信し,②入力した商品識別情報に対応する商品基
礎情報のレコードを取得することが要件とされている。このように,上記①
及び②の過程には時系列が記載されているのであるから,クライアント装置
が入力に対応するレコードを取得するためには,サーバ装置において,複数
レコードからなる商品基礎情報群を保持しなければならないこととなる。
被告システムは,被告と契約した出店者による物品等の販売を支援するシ
ステムであるから,原告が「PLUマスタDB」に対応させている商品情報
と商品価格が含まれた商品データベースは,被告のサーバ装置に設けられて
いない。また,商品に関する情報も,被告のサーバ装置によって管理されて
いない。
よって,被告システムは,構成要件E及びHの「PLUマスタDB」並び
に構成要件F及びIの商品基礎情報の管理方法をいずれも充足しない。
(4)争点(4)(構成要件Fの「商品基礎情報」の充足性)について
(原告の主張)
被告は,下記のとおり,「商品基礎情報」の意義を限定的に解釈しようとするが,
本件明細書に,本発明は,PLUマスタDB内の全レコードがPLUリストとして
一括してクライアント装置にダウンロードされる構成に限られず,クライアント装
置における商品情報の入力ごとに,それに対応するPLU情報がクライアント装置か
らサーバ装置に問い合わされてもよい旨が記載されていることから,被告の主張は
失当である。
(被告の主張)
構成要件Fの文言上,「受信した商品基礎情報」は「レコードを取得」す
る対象なのであるから,配列形式(データベース)になっていなければなら
ない(レコードとはデータベースの行要素である。)。本件明細書にも「受
信した商品基礎情報」に対応するPLUリストとしてデータベース形式のも
のが記載されている。
これに対し,被告システムにおいては,クライアント装置において商品基
礎情報に係る配列形式のデータベースは展開されず,「受信した商品基礎情
報から上記入力(選択)した商品識別情報に対応する商品基礎情報のレコー
ドを取得」させるような処理も行われていない。
したがって,被告システムは,構成要件Fを充足しない。
(5)争点(5)(損害額)について
(原告の主張)
原告は,平成23年1月17日以降,日本国内において本件特許権に係る
専用実施権を有しており,被告システムの使用により専用実施権を侵害され
ている。被告は,被告システムを使用した被告サービスにより,平成22年
に約1441億円の売上を計上しており,平成23年に入ってからも,同額
ないしそれ以上の売上を計上しているものと考えられる。したがって,原告
の損害は,同年1月17日以降,本件提訴日までの429日間に得られた,
売上の3%に相当する実施料相当額である50億8100万円(1441億
円×3%÷365日×429日)を下らない。
また,原告は,本件訴訟追行に当たって弁護士費用500万円を支出した。
したがって,原告の損害額は,50億8600万円を下らず,その一部と
して,10億円を請求する。
(被告の主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1争点(2)ア(構成要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手順
及び実行内容に関する充足性)について
まず,争点(2)アから判断する。
(1)特許請求の範囲の解釈
ア本件発明の構成要件C及びDの1)ないし3)においては,カテゴリー
リストプログラム及びPLUリストプログラムの送信及び実行が,①サー
バ装置からクライアント装置に対して初期フレームプログラムが送信され
る(構成要件Cの前段),②送信された初期フレームプログラムがクライ
アント装置において実行される(同後段),③クライアント装置からサー
バ装置に対して,カテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求する
HTTPメッセージが送信される(構成要件Dの1)),④この要求に基
づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリス
トプログラムを読み出す(同2)前段),⑤サーバ装置からクライアント
装置に対して,上記カテゴリーリストプログラムが送信される(同2)後
段),⑥クライアント装置からサーバ装置に対して,PLUリストサーバ
プログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると,サーバ
装置が,PLUリストサーバプログラムを起動して,PLUリストプログ
ラムを生成する(同3)前段),⑦クライアント装置に対して,PLUリ
ストプログラムが送信される(同3)後段)ことが記載されている。そし
て,上記①及び②の過程と,③ないし⑦の過程とが,「ことにより」とい
う語により結び付けられている。
また,構成要件Jには,「タッチパネル,キーボード,またはマウスか
らなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示
する部分(第1フレーム)の表示過程と,該カテゴリー内の商品名が表示
される,商品PLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程」
と記載されているところ,ここには,「初期フレームプログラム」に用い
られているのと同じ「フレーム」という語が用いられていることから,商
品カテゴリーリストを表示する第1フレームは,カテゴリーリストが上記
③ないし⑤の過程を経て利用者端末の表示装置に表示されるようにするた
めのフレームであり,また,商品PLUリストを表示する第2フレームは,
PLUリストが上記⑥及び⑦の過程を経て利用者端末の表示装置に表示さ
れるようにするためのフレームであると解される。そうすると,初期フレ
ームプログラムは,このようなカテゴリーリスト及びPLUリストを表示
する枠ないし領域としてのフレームを表示するために初期の段階で作動す
るプログラムであるということができる。
さらに,ブラウザの機能の一つである「フレーム」は,一般的には,ウ
ィンドウをいくつかの領域に分割し,それぞれに別の内容を表示させるW
ebページの表現技法であるところ,フレームの中に文字等の情報を表示
するためには,このフレームをターゲットとして,文字等の情報を表示す
るためのプログラムを実行する必要があることが認められる。
これらのことに,日本語において,「ことにより」という語は,一般的
に,物事の間に時間的な前後関係のみならず因果関係があることを意味す
る語として用いられていることを併せ考慮すれば,構成要件Jにいう商品
カテゴリーリスト及び商品PLUリストについては,それぞれ次のような
手順を経て表示されたカテゴリーリスト及びPLUリストを意味し,また,
構成要件C及びDにいう初期フレームプログラム,カテゴリーリストプロ
グラム及びPLUリストプログラムも,このような手順を経てカテゴリー
リスト及びPLUリストを表示させるようなプログラムを意味するものと
解するのが相当である。
すなわち,商品カテゴリーリストについては,上記①及び②のとおりの
手順で初期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装
置に第1フレームの表示領域が確保され,この第1フレームの表示領域を
ターゲットとして,③ないし⑤のとおりの手順でカテゴリーリストプログ
ラムが実行されることにより,第1フレーム内に表示されたカテゴリーリ
ストを意味するものと解するのが相当である。
また,商品PLUリストについては,上記①及び②のとおりの手順で初
期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装置に第2
フレームの表示領域が確保され,この第2フレームの表示領域をターゲッ
トとして,⑥及び⑦のとおりの手順でPLUリストプログラムが実行され
ることにより,第2フレーム内に表示されたPLUリストを意味するもの
と解するのが相当である。
イ上記の解釈は,本件明細書及び図面を検討することによっても裏付けら
れる。
(ア)すなわち,本件明細書及び図面には,本件発明を実施するための最
良の形態として,次のとおりの記載がある(引用に当たり,記載を一部
省略し,又は表現を改めた部分がある。)。
(初期フレームプログラムの動作)
【0042】
まず,利用者が,クライアント装置において,表示装置の表示画面に
表示されている所定のアイコンの位置でタッチパネルにタッチすること
によりWebブラウザプログラムを起動すると,サーバ装置のネットワ
ークアドレスを示すURLが自動的に指定され,CPUからネットワー
クインタフェース部及びそれに接続されるインターネット等を介してサ
ーバ装置に,後述する図3の動作フローチャートで示される初期フレー
ムプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され
る。
【0043】
サーバ装置のCPUが実行する周知のWebサーバプログラムは,ネ
ットワークインタフェース部を介して上記要求メッセージを受信すると,
HDDからHTML形式の初期フレームプログラムを読み出し,それを
ネットワークインタフェース部及びそれに接続されるインターネット等
を介してクライアント装置に送信する。
【0044】
クライアント装置のCPUが実行する周知のWebブラウザプログラ
ムは,ネットワークインタフェース部を介して上記初期フレームプログ
ラムを受信すると,それを実行する。
【0045】
図3は,初期フレームプログラムの動作を示す動作フローチャートで
ある。
まず,図3のステップ301において,表示装置に表示される表示画
面内のWebブラウザウィンドウ上で,図17に示されるように,上下
方向に例えば20%程度の表示面積を有する最上段の第1フレームが確
保されるとともに,サーバ装置に,後述する動作フローチャートで示さ
れるカテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求するHTTPメ
ッセージが送信される。
【0046】
図3
図17
サーバ装置のWebサーバプログラムは,上記要求メッセージを受信
すると,HDDからHTML形式のカテゴリーリストプログラムを読み
出し,それをクライアント装置に送信する。
【0047】
クライアント装置のWebブラウザプログラムは,上記カテゴリーリ
ストプログラムを受信すると,このプログラムを,表示画面の第1フレ
ームをターゲットとして実行する。この結果,図18に示されるように,
表示画面の第1フレームに,見出し“商品カテゴリー”と,カテゴリー
リストが表示されるとともに,カテゴリーリストの選択状態の変化に応
答して後述する第2フレームのPLUリストの表示状態の制御処理が実
行される。
【0048】
次に,図3のステップ302において,表示装置に表示される表示画
面内のWebブラウザウィンドウ上で,図17に示されるように,上下
図18
方向に例えば30%程度の表示面積を有する中段の第2フレームが確保
されるとともに,サーバ装置に,後述する動作フローチャートで示され
るPLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージ
が送信される。
【0049】
サーバ装置のWebサーバプログラムは,上記指示メッセージを受信
すると,HDDからメモリにPLUリストサーバプログラムを読み出し,
それを実行する。このプログラムは,HDDに記憶されているPLUマ
スタDB上の全レコードを読み出して,それらのレコード情報が含まれ
るPLUリストプログラムを生成し,それをクライアント装置に送信す
る。
【0050】
クライアント装置のWebブラウザプログラムは,上記PLUリスト
プログラムを受信すると,このプログラムを,表示画面の第2フレーム
をターゲットとして実行する。この結果,図18に示されるように,表
示画面の第2フレームに,見出し“注文商品”と,PLUリストと,見
出し“数量”と,数量入力フィールドが表示されるとともに,PLUリ
ストの選択状態と数量入力フィールドの入力状態の監視と,スキャナ装
置の入力状態の監視と,それらの監視結果に基づく後述する第3フレー
ムの明細フォームの記入状態の制御処理が実行される。
(カテゴリーリストプログラムの動作)
【0053】
図4(省略)は,前述した図3のステップ301において,サーバ装
置からダウンロードされクライアント装置において第1フレームをター
ゲットとして実行されるカテゴリーリストプログラムの動作を示す動作
フローチャートである。
【0054】
このプログラムの実行により,図18に示されるように,表示画面の
第1フレームに,見出し“商品カテゴリー”と,カテゴリーリストが表
示されるとともに,カテゴリーリストの選択状態の変化に応答して第2
フレームのPLUリストの表示状態の制御処理が実行される。
(PLUリストプログラムの動作)
【0072】
図6(省略)は,上述の送信処理に基づいて,サーバ装置からダウン
ロードされクライアント装置において実行されるPLUリストプログラ
ムの動作を示す動作フローチャートである。
【0073】
図3のステップ302の説明で前述したように,このプログラムは,
表示画面のWebブラウザウィンドウ上の第2フレームをターゲットと
して実行される。この結果,図18に示されるように,表示画面の第2
フレームに,見出し“注文商品”と,PLUリストと,見出し“数量”
と,それに続く数量入力フィールドが表示されるとともに,PLUリス
トの選択状態と数量入力フィールドの入力状態の監視と,スキャナ装置
の入力状態の監視と,それらの監視結果に基づく第3フレームの明細フ
ォームの記入状態の制御処理が実行される。
(イ)以上によれば,本件明細書に記載されている実施の形態の構成の下
では,前記アに説示したとおりの手順で各プログラムが実行され,その
結果,第1及び第2フレームにそれぞれ商品カテゴリーリスト及び商品
PLUリストが表示されることが明らかである。
すなわち,まず,クライアント装置からサーバ装置に初期フレームプ
ログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され
(【0042】),これを受けたサーバ装置は,HTML形式の初期フ
レームプログラムを読み出し,これをクライアント装置に送信し(【0
043】,前記アの①の過程),クライアント装置においてこれを実行
する(【0044】,同②の過程)。この時点でクライアントの表示装
置に表示されるのは,上下方向に例えば20%程度の表示面積を有する
最上段の第1フレームの枠のみであり,その内容はブランクの状態とな
っている(【0045】,図17)。
そして,クライアント装置からサーバ装置に,カテゴリーリストプロ
グラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され(【0
045】,同③の過程),これを受信したサーバ装置は,HDDからH
TML形式のカテゴリーリストプログラムを読み出し(同④の過程),
これをクライアント装置に送信する(【0046】,同⑤の過程)。ク
ライアント装置のWebブラウザプログラムは,受信したカテゴリーリ
ストプログラムを,表示画面の第1フレームをターゲットとして実行し,
その結果,表示画面の第1フレームに商品カテゴリーリストが表示され
る(【0047】,【0053】,【0054】,図18)。
他方,表示装置に表示される表示画面内のWebブラウザウィンドウ
上で,上下方向に例えば30%程度の表示面積を有する中段の第2フレ
ームが確保されるが,この時点では,その内容はブランクの状態となっ
ている(【0048】,図17)。そして,クライアント装置からサー
バ装置に,PLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメ
ッセージが送信されると(【0048】),サーバ装置のWebサーバ
プログラムは,HDDからメモリにPLUリストサーバプログラムを読
み出し,これを実行し,HDDに記憶されているPLUマスタDB上の
全レコードを読み出して,これらのレコード情報が含まれるPLUリス
トプログラムを生成し(【0049】,同⑥の過程),これをクライア
ント装置に送信する(【0049】,同⑦の過程)。クライアント装置
のWebブラウザプログラムは,受信したPLUリストプログラムを,
表示画面の第2フレームをターゲットとして実行し,その結果,表示画
面の第2フレームに商品PLUリストが表示される(【0050】,
【0073】,図18)。
ウ以上のとおり,本件発明にいう商品カテゴリーリスト及び商品PLU
リストは,前記アに説示したとおりの意味に解するのが相当である。
したがって,クライアント装置の表示画面に,形の上でカテゴリーリ
ストや個別商品のPLUリストが表示されるものであっても,上記ア及
びイの過程を経て表示されたとはいえないものは,本件発明にいう商品
カテゴリーリスト又は商品PLUリストには当たらず,また,このよう
なカテゴリーリストやPLUリストを表示するためのプログラムを構成
要件A,C及びDにいう初期フレームプログラム,カテゴリーリストプ
ログラム又はPLUリストプログラムに当たるということもできないも
のと解される。
(2)被告システムの実施態様1について
以上の検討を踏まえ,被告システムの実施態様1が,構成要件A,C,D
及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するか否か
について検討する。
アまず,初期フレームプログラムとカテゴリーリストプログラムの実行過
程について検討する。
原告は,被告システムにおいては,利用者が,第1(2)画面の「ゴルフ用
品」に属するカテゴリーのうち,「クラブ(メンズ)」をクリックすると,
利用者端末から被告サーバ群に対して,本件プログラム1①及び②を含む
第1(3)画面ソースのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信さ
れ,その要求に基づき,被告サーバ群が,本件プログラム1①及び②を含
む第1(3)画面ソースを作成し,それが被告のサーバ装置から利用者端末に
送信され,第1(3)画面の赤枠部分にカテゴリーリストであるリスト1(3)
が表示されると主張する。
このように,原告は,カテゴリーリストが表示される第1(3)画面のソー
スコードである第1(3)画面ソースには,本件プログラム1①及び②が含ま
れていることを自ら認めている。そして,前記第2の1(3)イのとおり,本
件プログラム1①は,第1(3)画面ソースの実行過程において,利用者端末
の表示画面に上記の赤枠部分の領域の位置及び幅を確保することに関与す
るプログラムであることが認められる。すなわち,利用者端末の表示画面
に第1(3)画面が表示されるに当たっては,第1(3)画面ソースという一つ
のHTML文書の実行過程において,上記表示画面にカテゴリー領域が確
保されるとともに,この領域をターゲットとして,リスト1(3)が表示され
るものと認められる。そうすると,被告システムにおいては,第1(3)画面
のカテゴリーリストの表示領域を確保することに関与するプログラムと,
これにより確保された領域をターゲットとして上記カテゴリーリストを表
示するプログラムが,一つのHTML文書の表示過程において,論理的な
前後関係はあり得るとしても,同時に実行されているということができる。
これに対し,本件発明においては,まず,前記(1)アの①及び②の初期フ
レームプログラムがクライアント装置において実行されて,カテゴリーリ
ストの表示領域が表示装置に第1フレームとして表示された上で,引き続
き,クライアント装置からサーバ装置に対し,第1フレームをターゲット
としてカテゴリーリストを表示するためのカテゴリーリストプログラムを
送信するよう要求するHTTPメッセージが送信され(同③),これを受
けてサーバ装置が読み出したカテゴリーリストプログラムがクライアント
装置に送信され(同④及び⑤),これが実行された結果,カテゴリーリス
トがWebブラウザに表示されるという過程を経て商品カテゴリーリスト
が表示されるというものである。被告システムは,上記のとおり,これに
対応する過程を欠くものであるから,被告システムにおいて利用者端末に
表示される第1(3)画面の赤枠部分のリスト1(3)は,構成要件A,C,D
及びJに記載されたプログラムの実行手順及び実行内容とは異なる手順を
経て表示されたといわざるを得ないものである。
したがって,第1(3)画面のリスト1(3)が構成要件Jにいう商品カテゴ
リーリストに当たるということはできず,被告システムにおいて,構成要
件A,C及びDにいう初期フレームプログラム及びカテゴリーリストプロ
グラムが実行されたということもできないと解される。
イ次に,初期フレームプログラムとPLUリストプログラムの実行過程に
ついて検討する。
前記第2の1(3)イのとおり,実施態様1においては,第1(3)画面の右
側の個別商品表示領域(青枠部分)に,「[PR]2012年2月発売の新
製品★オデッセイプロタイプツアーシリーズ♯6パター」,「※【送料
無料】3000本突破!4/25付楽天デイリーランキング第9位!La
rouge-HTフェアウェイウッド」等の商品が表示されている。そし
て,この商品リストを表示するソースコードは,第1(3)画面ソースの本件
プログラム1③であり,ここには,上記青枠部分の領域の位置及び幅を確
保することに関与するプログラムが含まれているものと認められる。そし
て,第1(3)画面ソースは,上記アと同様,被告のサーバ装置が,利用者に
よる送信要求を受け,本件プログラム1③に係るソースコードを含む一つ
のHTML文書として読み出して送信したものであり,これが利用者端末
のブラウザにより実行されて,その表示画面に表示されるものである。す
なわち,第1(3)画面の個別商品表示領域は,その画面を表示する一つのH
TML文書の実行過程において確保されるとともに,この領域をターゲッ
トとして,それぞれの個別商品リストが表示されるものである。
これに対し,本件発明においては,まず,前記(1)アの①及び②の初期フ
レームプログラムがクライアント装置において実行されて,個別商品の表
示領域が表示装置に第2フレームとして表示された上で,引き続き,クラ
イアント装置からサーバ装置に対して,PLUリストサーバプログラムの
実行を指示するHTTPメッセージが送信され(同⑥),上記サーバ装置
がPLUリストサーバプログラムを起動して生成したPLUリストプログ
ラムがクライアント装置に対し送信され(同⑦),これが実行された結果,
個別商品リストがWebブラウザに表示されるという過程を経て商品PL
Uリストが表示されるというものであるから,被告システムにおける個別
商品リストの表示過程は,これとは異なるものといわざるを得ない。
したがって,第1(3)画面の青枠部分に表示された個別商品リストが,構
成要件Jにいう商品PLUリストに当たるということはできず,被告シス
テムにおいて,構成要件A,C及びDにいう初期フレームプログラム及び
PLUリストプログラムが実行されたということもできないと解される。
ウよって,被告システムの実施態様1は,構成要件A,C,D及びJに記
載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するとはいえないも
のと解するのが相当である。
エこれに対し,原告は,構成要件Cの「実行されることにより」という文
言は,構成要件Dの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべ
きであるから,初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプロ
グラム及びPLUリストプログラムのダウンロードとの間には,厳密な前
後関係は要求されておらず,また,上記の文言は,因果関係を示すもので
もなく,構成要件Dの1)ないし4)の過程が初期フレームプログラムの
実行なしには行われないという程度の関係を示すものにすぎないと解すべ
きであると主張する。
しかしながら,構成要件Cにいう「より」は,因果関係等を意味する自
動詞「よる」の連用形であって,動詞等に連なる語法において用いられる
ものであるから,構成要件Cの「ことにより」が,構成要件Dの1)ない
し3)の「送信される」及び4)の「問い合わされる」の各動詞にそれぞ
れ係っていることは文法上明らかであり,これと異なる読み方をすべき根
拠は見当たらない。
また,仮に,構成要件Cの「実行されることにより」を原告の主張のよ
うに解したとしても,前記ア及びイのとおり,被告システムにおいては,
カテゴリーリスト及び個別商品リストの表示領域を確保するプログラムと,
その内容を表示するプログラムとが,それぞれ一つのHTML文書のプロ
グラムの実行過程において同時に実行されており,構成要件C及びDに記
載された手順を順次実行するという形では実行されていないのであるから,
いずれにせよ,上記ウの結論を左右するには足りないというべきである。
オよって,原告の主張は理由がなく,被告システムの実施態様1が,構成
要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容
を充足すると認めることはできない。
(3)被告システムの実施態様2について
次に,被告システムの実施態様2について検討する。
アまず,初期フレームプログラムとカテゴリーリストプログラムの実行過
程について検討する。
原告は,利用者が第2(1)画面の「ゴルフ用品」をクリックすると,被告
サーバ群が本件プログラム2①を含む第2(2)画面ソースを読み出して利用
者端末に送信し,利用者端末はこれを実行して第2(2)画面を表示し,利用
者が第2(2)画面の「クラブ(メンズ)」をクリックすると,利用者端末か
ら被告サーバ群に対して,本件プログラム2②を含む第2(3)画面ソースの
ダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され,その要求に基づ
き,被告サーバ群が本件プログラム2②を含む第2(3)画面ソースを作成し,
それが被告のサーバ装置から利用者端末に送信されるから,被告システム
は構成要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実
行内容を充足すると主張する。
しかしながら,利用者端末の表示画面に第2(2)画面が表示されるのは,
利用者端末のブラウザにおいて第2(2)画面ソースという一つのHTML文
書が実行されることによるものであるところ,前記第2の1(3)ウのとおり,
第2(2)画面ソースには,第2(2)画面の赤枠部分の領域の位置及び幅を確
保することに関与する本件プログラム2①が含まれており,これがリスト
2(2)を表示するプログラムと同時に実行されることで,上記の赤枠部分に
リスト2(2)が表示されるものである。
また,第2(3)画面についても,利用者端末の表示画面にそれが表示され
るのは,利用者端末のブラウザにおいて第2(3)画面ソースという一つのH
TML文書が実行されることによるものであるところ,前記第2の1(3)ウ
のとおり,第2(3)画面ソース中の本件プログラム2②には,第2(3)画面
の赤枠部分の領域の位置及び幅を確保することに関与するプログラム及び
リスト2(3)を表示するプログラムが含まれており,それが同時に実行され
ることで,上記の赤枠部分にリスト2(3)が表示されるものである。
すなわち,第2(2)画面のカテゴリー領域を確保するプログラムは,第2
(2)画面のカテゴリーリストを表示するためのプログラムであって,第2
(3)画面のカテゴリーリストを表示するためのプログラムではない。また,
第2(3)画面のカテゴリー領域を確保するプログラムは,第2(3)画面のカ
テゴリーリストを表示するためのプログラムであって,第2(2)画面のカテ
ゴリー領域を確保するプログラムを使用しているものではない。
そうすると,被告システムにおいては,第2(2)画面のカテゴリーリスト
の表示領域を確保するプログラムと,これにより確保された領域をターゲ
ットとして上記カテゴリーリストを表示するプログラムが,一つのHTM
L文書の表示過程において,論理的な前後関係はあり得るとしても,同時
に実行されているということができる。第2(3)画面のカテゴリーリストに
おいても,これと同様である。
これに対し,本件発明におけるカテゴリーリストの表示過程は,上記(2)
アのとおりのものであるから,実施態様2において利用者端末に表示され
る第2(2)画面及び第2(3)画面のカテゴリーリストは,いずれも,構成要
件A,C,D及びJに記載されたプログラムの実行手順及び実行内容とは
異なる手順を経て表示されたといわざるを得ないものである。
したがって,第2(2)画面及び第2(3)画面の赤枠部分に表示された各カ
テゴリーリストが,構成要件Jにいう商品カテゴリーリストに当たるとい
うことはできず,被告システムにおいて,構成要件A,C及びDにいう初
期フレームプログラム及びカテゴリーリストプログラムが実行されたとい
うこともできないと解される。
イ次に,初期フレームプログラムとPLUリストプログラムの実行過程に
ついて検討する。
原告は,利用者が,第2(3)画面の「ドライバー」をクリックすると,利
用者端末から被告サーバ群に対して,本件プログラム2③を含む第2(4)画
面ソースのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され,被告
サーバ群において,当該カテゴリーに該当する商品を検索し,HTMLソ
ースコードに変換した上で,それが被告のサーバ装置から利用者端末に送
信されると主張する。
しかしながら,利用者端末の表示画面に第2(4)画面が表示されるのは,
利用者端末のブラウザにおいて第2(4)画面ソースという一つのHTML文
書が実行されることによるものであるところ,第2(4)画面ソース中の本件
プログラム2③には,第2(4)画面の青枠部分の領域の位置及び幅を確保す
ることに関与するプログラム及びリスト2(5)を表示するプログラムが含ま
れており,これが同時に実行されることで,上記の青枠部分にリスト2(5)
が表示されるものと認められる。すなわち,上記アと同様に,第2(4)画面
の青枠部分は,その画面を表示する一つのHTML文書の実行過程におい
て確保されるとともに,この領域をターゲットとしてリスト2(5)を表示す
るプログラムが実行されることにより表示されるものである。
これに対し,本件発明におけるPLUリストの表示過程は,上記(2)イの
とおりのものであるから,被告システムにおける個別商品リストの表示過
程は,これとは異なるものといわざるを得ない。
したがって,第2(4)画面の青枠部分に表示された各個別商品リストが,
構成要件Jにいう商品PLUリストに当たるということはできず,被告シ
ステムにおいて,構成要件A,C及びDにいう初期フレームプログラム及
びPLUリストプログラムが実行されたということもできないと解される。
ウよって,被告システムの実施態様2は,構成要件A,C,D及びJに記
載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するとはいえないも
のと解するのが相当である。
エこれに対し,原告は,構成要件Cに「少なくとも」と記載されているこ
となどに鑑みると,構成要件Dの1)ないし4)に相当する過程の前後又
は間に,これに対応しない過程が存在したとしても,それは,いわゆる付
加にすぎず,これによって,本件発明の構成要件C及びDの充足が妨げら
れるものではないとも主張する。この主張は,第2(2)画面の赤枠部分が,
初期フレームプログラムによって確保された第1フレームであり,これを
ターゲットとしてカテゴリーリストプログラムが実行された結果,第2(3)
画面の赤枠部分のリスト2(3)が表示されたのであって,第2(2)画面の赤
枠部分に表示されているリスト2(2)は,本件発明との関係では無意味な付
加的記載にすぎないことをいうものと解し得る。また,少なくとも実施態
様2については,構成要件Cの過程とDの1)ないし4)の過程との間に
時間的な前後関係が存在しているとの原告の主張も,同様の理解を前提と
するものと解される。
そこで判断すると,前記アのとおり,第2(2)画面のカテゴリー領域を確
保するプログラムは,第2(2)画面のカテゴリーリストを表示するためのプ
ログラムであって,第2(3)画面のカテゴリーリストを表示するためのプロ
グラムではない。また,第2(3)画面のカテゴリー領域を確保するプログラ
ムは,第2(3)画面のカテゴリーリストを表示するためのプログラムであっ
て,第2(2)画面のカテゴリー領域を確保するプログラムを使用しているも
のではない。したがって,第2(3)画面のカテゴリーリストは,第2(2)画
面において確保されたカテゴリー領域をターゲットとして,構成要件C及
びDに記載された手順どおりに表示されたものということはできないと解
される。
原告の主張は,第2(2)画面及び第2(3)画面を表示させているプログラ
ムの意味及び内容を考慮することなく,構成要件C及びDに表面上適合す
るよう,その記載を恣意的に結び付けたものにすぎず,失当である。
オよって,原告の主張は理由がなく,被告システムの実施態様2が,構成
要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容
を充足すると認めることはできない。
2結論
以上によれば,被告システムがそもそもWeb-POSシステムに関するも
のであるかなどその余の争点につき判断するまでもなく,本件請求は理由がな
いから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用
して主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官長谷川浩二
裁判官清野正彦
裁判官植田裕紀久



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