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平成14年(ネ)第3263号損害賠償等請求控訴、平成15年(ネ)第179号損害
賠償等請求附帯控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成11年(ワ)第10931号)
         判    決
   控訴人兼附帯被控訴人(1審原告) 日本臓器製薬株式会社(以下「原告」
という。)
   訴訟代理人弁護士         新 堂 幸 司
同                品 川 澄 雄
同                吉 利 靖 雄
   同                飯 塚 卓 也
   同                野 口 祐 子
同                小野寺 良文
補佐人弁理士           村 山 佐武郎
同                藤 井 郁 郎
被控訴人兼附帯控訴人(1審被告)株式会社フジモト・ダイアグノスティ
ックス                         (以下「被告フジモ
トD」という。)
被控訴人(1審被告)      藤本製薬株式会社
                    (以下「被告藤本製薬」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士    山 本 忠 雄
同                安 部 朋 美
同              中 橋 紅 美
主    文
1 本件控訴及び被告フジモトDの附帯控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は原告の、附帯控訴費用は被告フジモトDの各負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨等
 1 原告(控訴人)
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 被告らは、原告に対し、連帯して17億6311万9960円及びこれに
対する平成11年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
(3) 被告フジモトDは、原告に対し、11億9230万円及びこれに対する平
成11年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 訴訟費用は、1、2審とも被告らの負担とする。
(5) 仮執行宣言
2 被告フジモトD(附帯控訴人)
(1) 原判決中、被告フジモトD敗訴部分を取り消す。
(2) 原告の被告フジモトDに対する請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は、1、2審とも原告の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は、後記特許権を有する原告が、医薬品を製造している被告フジモトD
と同被告から医薬品の譲渡を受けてこれを販売している被告藤本製薬に対し、被告
フジモトDが同医薬品の品質規格の検定のために行ってきた確認試験の方法は上記
特許権に係る発明を実施するものであり、上記特許権(ただし、出願公告後登録ま
では仮保護の権利)を侵害したとして、平成8年11月1日から平成11年3月3
1日までの被告藤本製薬による販売分につき、共同不法行為に基づく損害賠償とし
て、連帯して17億6311万9960円及びこれに対する平成11年10月24
日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告
フジモトDに対し、平成4年3月11日から平成8年10月31日までの被告藤本
製薬による販売分につき、不当利得の返還として、実施料相当額11億9230万
円及びこれに対する平成11年10月24日から支払済みまで年5分の割合による
遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原審は、原告の請求のうち、被告フジモトDに対する請求中、5万0129
円及びこれに対する平成11年10月24日から支払済みまで年5分の割合による
遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容し、その余の請求をいずれも棄却した
が、原告がその敗訴部分の取消しを求めて控訴し、被告フジモトDもその敗訴部分
の取消しを求めて附帯控訴した。
2 基礎となる事実、争点、争点に関する当事者の主張は、次のとおり付加、訂
正するほかは、原判決「事実及び理由」中の第2の2、3及び第3(3頁5行目か
ら40頁21行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 5頁13行目の「別紙物件目録1」から同16行目の「「被告医薬品」と
いう。)」までを「原判決別紙物件目録1記載の抽出液(以下、被告フジモトDが
製造する同抽出液を「被告抽出液」という。商品名「FN原液『フジモト』)及び
これを有効成分とする原判決別紙物件目録2記載の製剤(以下、被告らが製造販売
する同製剤〔商品名「ローズモルゲン注」〕を「被告製剤」といい、被告抽出液と
被告製剤をまとめて「被告医薬品」という。)」と、同末行の「別紙被告方法目録
1」を「原判決別紙被告方法目録1」と、6頁1行目から2行目にかけての「別紙
被告方法目録2」を「原判決別紙被告方法目録2」と各改める。
(2) 8頁23行目の「別紙物件目録1」を「原判決別紙物件目録1(以下、単
に「別紙物件目録1」という。)」と、同24行目の「別紙物件目録2」を「原判
決別紙物件目録2(以下、単に「別紙物件目録2」という。)と各改める。
(3) 9頁7行目から8行目にかけての「製造承認事項一部変更申請」の次に
「(以下「原告一変申請」という。)」を、同頁10行目末尾の次に改行の
上,次のとおり各加える。
「 具体的には、その方法は、本判決別紙「イ号方法とKPI法の試験方法
の比較」のKPI法の欄に記載のようなものであった(以下「原告方法」とい
う。)。(甲第164号証添付の「血漿カリクレイン様物質産生阻害能を評価する
in vitro測定法」〔原告生物活性科学研究所豊巻芳男他、基礎と臨床第2
0巻第17号所収。以下「豊巻論文」という。〕、第192号証、乙第26号証、
弁論の全趣旨)」
(4) 9頁11行目の「別紙物件目録1記載の抽出液」を「原告抽出液」と改
め、同頁18行目の「平成元年4月4日、」の次に「原告一変申請について
審査中であった」を、同20行目の「指導され、」の次に「急きょ本件発明の元と
なった豊巻論文等を参考にして後記イ-3方法を設定し」を各加え、同25行目の
「別紙被告方法目録3記載のとおり」を「原判決別紙被告方法目録3記載のとおり
(ただし、100頁本文5行目の「混和」を「混合」と改める。)」と改め、同末
行末尾に「(甲第3、第4号証、弁論の全趣旨)」を加える。
(5) 10頁1行目から同7行目までを次のとおり改める。
「 イ-3方法は、イ-2方法とは、第1次反応後、反応液に阻害剤である
LBTIを加えて反応を停止させる点が異なるだけで、判定法、すなわち、試料吸
光度(At)から試料ブランク吸光度(Atb)を引いた値と、カリジノゲナー
ゼ標準溶液吸光度(As)からカリジノゲナーゼ標準溶液ブランク吸光度(Asb
)を引いた値とを比較し、前者の値が後者の値より小さいときは規格に適合したも
のとする点でも共通するものであるが、上記のように、LBTIを加えて反応を停
止させる点で、イ-1方法をそのまま含み、本件発明の技術的範囲に属するもので
あった。(弁論の全趣旨)
 なお、本件発明は被検物質のカリクレイン生成阻害能の測定法であるの
に対し、原告方法、イ-3方法及びイ-2方法は、被検物質の阻害活性の有無を判
定する検査方法である(原告方法及びイ-3方法にあっては同測定法をそのまま利
用する。)。そして、そのための判定法は、イ-3方法及びイ-2方法が上記のと
おりのものであるのに対し、原告方法は、本判決別紙「イ号方法とKPI法の試験
方法の比較」のKPI法の欄に記載のとおり、被検物質添加群の吸光度(At。上
記「試料吸光度」と同じ。)から被検物質非添加群の吸光度(Ac。上記「試料ブ
ランク」が試料のみならずカオリン懸濁液も加えないのに対し、カオリン懸濁液を
加える点で「試料ブランク」とは異なる。)を引いた値が0.10(P-NA標準
溶液の吸光度)より大きいときは規格に適合したものとするものである。(甲第1
92号証、弁論の全趣旨)」
(6) 14頁9行目の「確認試験方法」の次に「(イ-3方法。以下「原承認方
法」ともいう。)」を、同行目の「本件特許方法」の次に「を含むもの」を各加
え、同12行目の「イ-1方法」を「イ-3方法(原承認方法)」と改める。
(7) 20頁22行目及び同25行目の各「イ-1方法」をいずれも「イ-3方
法」と改める。
(8) 25頁8行目の「「血漿」から同10行目の「論文」までを「豊巻論文」
と、同13行目から14行目にかけて及び同24行目の各「イ-1方法」をいずれ
も「イ-3方法」と各改める。
(9) 26頁3行目の「イ-1方法」の次に「又はイ-3方法」を加える。
(10) 31頁3行目の「H501」を「H-501」と改める。
(11) 34頁11行目の「原承認に係る確認試験方法とイ-2方法の同一性」
を「原承認方法(イ-3方法)とイ-2方法との同一性」と改める。
(12) 38頁3行目の「原告製剤」の前に「本件請求期間中に市販されてい
た」を加える。
(13) 40頁21行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「9 当審における当事者の付加主張
(原告)
(1)(一変申請に係る方法の一変承認前の実施について)
 製造承認事項については、「その変更が当該医薬品等の品質、有効性
及び安全性と関連性を持たず変更により当該医薬品等の同一性が損なわれないとみ
なされる場合」には一変承認を得ることなく、製造承認事項を変更することも認め
られないではないが(甲第56号証)、厚生省が定める医薬品の製造管理及び品質
管理に関する基準(GMP)の公定解説書である厚生省薬務局監視指導課監修「医
薬品GMP解説 医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準解説 1987年
版」(甲第39号証)には、「製造承認書又は公定書で定められている規格及び試
験方法よりもより厳格な規格及びより精度の高い試験方法を用いる場合には、その
規格及び試験方法並びにその根拠を製品標準書に記載しなければならない」旨記載
され、その解説として「製造承認書記載の試験方法より精度の高い新しい試験方法
を用いる場合・・・」と記載されている。
 したがって、本件確認試験方法を一変承認を得ることなく変更するた
めには、①変更後の方法の方がより正確、精密かつ迅速な試験方法であることが学
問的に確立されていること、②変更前後の方法によるデータの平均値に差がなく、
標準偏差が同等又はより小さいこと、③変更前後のデータに十分な相関性があるこ
との3要件が満たされる必要がある。
 医薬品製造業者は、このような要件をすべて満たす例外的な場合を
除き、承認を待ってから変更実施を行うのが常態である(甲第37号証)。まして
や、本件確認試験方法の変更は、上記3要件をことごとく充足せず、後記のとお
り、厚生省等からもその同等性の有無、変更前後のデータの平均値の不一致、相関
性の有無につき長年にわたって指摘され続けたケースであるから、かかる状況下に
おいて、被告フジモトDが、医薬品製造業の許可取消し等の重大な結果に至ること
を考慮せず、一変承認を得ないまま、一変申請に係る方法を実施することなどあり
得ない。
 また、弁護士法23条の2による原告代理人の照会(甲第509号証
の1)に対し、厚生労働大臣(同省医薬局審査管理課長)は、平成15年2月20
日付けで「薬事法上、医薬品の製造承認を受けた者は、製造承認書記載の「規格及
び試験方法」のうち「確認試験」の方法(確認試験方法)を、厚生労働大臣による
製造承認事項の一部変更承認を得ることなく別の試験方法に変更して実施すること
はできない。但し、承認されている試験方法を変更することなく、あわせて品質保
持のための検査において製品の一部を取り出して品質の適否を判定するような場合
には別の試験方法を実施することはありうる。」と回答しており(同号証の2)、
このような公式見解に鑑みれば、一変承認が得られていない段階でも確認試験方法
を変更できる場合が広く存在するかのような見方は誤りであって、例外的に変更が
許容されることがあるとしても、それは、上記のような極めて例外的な場合に限ら
れることが明らかである。
(2)(イ-2方法の同等性について)
 一般的に確認試験方法が特異性の有無を判定するものであることは争
わないが、前記のGMP解説には、「精度・特異性・感度等についての根拠を目的
に応じて確認する必要がある。例えば、特異性が同一の場合には、平均値に差がな
く、標準偏差が同等又はより小さいことを確認する必要がある。」と記載されてお
り、確認試験方法としての同等性が認められるためには、変更前後のデータの平均
値、標準偏差及び相関性が問題となるのであり、厚生省等も一変申請の審査におい
て同様の点を問題にしていたのである。
 イ-2方法の場合、一変申請書(甲第85号証、第92号証)添付の
「規格及び試験方法」に関する資料に記載の測定結果(以下「一変申請データ」と
いう。)によれば、変更前後の試料吸光度の値(At-Atb)とカリジノゲナー
ゼ標準溶液吸光度の値(As-Asb。いずれも、3ロットの各3回測定)の平均
値は、カリジノゲナーゼ標準溶液吸光度の値が変更前後でほぼ同様の値を示してい
るのに、試料吸光度の値(At-Atb)のみ、阻害剤を用いない変更後の方が阻
害剤を用いた変更前よりもかえって低い数値となっている。また、相関性の点で
も、ロットごとに変更前後の差の値にばらつきが見られ、逆に高めに測定されるロ
ット(1209M)もあるなど、変更前後の吸光度の値の間に、ロットの相違に依
存しない一定の関係を見出すこともできない。
 殊に、試料吸光度の値のみが低く測定される傾向がある点は、一変申
請に係るイ-2方法の致命的欠陥である。なぜなら、本件確認試験方法は、イ-3
方法、イ-2方法とも、試料吸光度の値(At-Atb)とカリジノゲナーゼ標準
溶液吸光度の値(As-Asb)を比較して、前者が後者よりも小さければ規格に
適合すると判定されるものであるから、試料吸光度の値(At-Atb)のみが低
く測定されるということは、原承認方法(イ-3方法)によれば規格に合格しない
試料であっても、イ-2方法によれば規格に適合すると判定される場合がある結果
となり、規格及び試験方法として、変更後のイ-2方法の方が甘い規格になってし
まうからである。
 なお、被告らは、乙第59号証の「確認試験」においては、「特異性
(2)」のパラメータは通例評価する必要があるが、精度等その他のパラメータは
通例評価する必要がない旨の記載を引用した上、確認試験では特異性のパラメータ
がバリデーションの要件とされている旨主張するが、平成8年4月1日から我が国
のGMPに導入された「バリデーション」は、ある製造手順等を採用した場合にお
いて、それが期待される結果をもたらすことについて科学的な検証を行い記録する
作業を指す用語にすぎず(甲第26号証、第510号証)、他方、一変承認なくし
て製造承認書記載の確認試験方法を他の方法に変更するための要件を示したGMP
解説(甲第39号証)の記載は、我が国のGMPにバリデーションという考え方が
導入された平成8年4月以降においても何ら変わっていない(甲第511号証)。
(3)(一変申請について)
ア 審査経過
 一変申請に係るイ-2方法においては、試料吸光度の値のみが原
承認方法(イ-3方法)に比べて低く測定される傾向がある点は、原承認方法とイ
-2方法との同等性を審査する場合の重要な問題点であり、一変申請データにその
問題があったからこそ、以下のとおり、審査の過程でも、厚生省ないしは医薬品食
品衛生研究所医薬品医療機器審査センター(以下「審査センター」という。)の担
当者から、この点が指摘され続けてきたのである。特異性を確認するための確認試
験方法といっても、このような規格の適否に関する重大な事態が想定される以上、
平均値が一致すること、すなわち、定量的にも同等の値が測定できることを担当者
が要求するのはむしろ当然である。
イ 審査過程における厚生省等の指摘
(ア) 平成6年6月29日付け申請書(返送)送付書(被告抽出液
につき乙第72号証、甲第86号証、被告製剤につき乙第77号証、甲第93号
証)の返送理由によれば、厚生省担当者は、変更前後の方法においては、At-A
tb/As-Asbの平均値が3ロットすべてにおいて大きく異なっていることを
問題にしたものであるが、被告フジモトDの回答(甲第87号証、第94号証)
は、この指摘に対して直接答えていない。
(イ) 平成9年3月31日付け厚生省による申請書(返送)送付書
(被告抽出液につき乙第73号証、甲第89号証、被告製剤につき乙第78号証、
甲第95号証)の返送理由によれば、厚生省担当者は、本件確認試験方法におい
て、適合判定の基準とされるカリジノゲナーゼ標準溶液吸光度の値(As-As
b)は変更前後で差がないのに、試料吸光度の値(At-Atb)のみが変更後に
おいて低くなっていることを問題としたものである。
(ウ) 被告フジモト製薬Cに宛てた平成10年12月2日付けフア
ックス(被告製剤に関し甲第97号証)によれば、審査センターの担当者は、イ-
2方法において阻害剤を入れないことの影響(質問事項1)、原承認方法とイ-2
方法の希釈率の差異が実験系に与える影響(質問事項2)、変更前後の試料吸光度
の値の差異(質問事項3)、一変申請の必要性(質問事項4)、推奨案についての
意見(質問事項5)に関して質問をしており、これらの指摘は、質問という形で上
記のような問題点を指摘した上、原承認どおりの方法(イ-3方法)の実施を強く
求めたものであり、被告フジモトDの一変申請の取下げを暗に求めたものである。
各質問事項について具体的にみると、次のとおりである。
 質問事項1は、第2次反応で継続して産生されるカリクレイン
およびFXⅡaの活性まで測定されてしまうため、産生されたカリクレインを特異
的に測定するという本件確認試験方法の特異性すら害されるのではないか、との疑
念を呈したものである。
 質問事項2は、原承認方法においては、第1次反応液0.2m
lにLBTI懸濁液0.1mlを加えたものを第1次反応停止液とし、この第1次
反応停止液0.3mlのうち0.1mlを第2次反応で使用するものであるから、
第1次反応液はLBTI懸濁液によって希釈されている(甲第3、第4号証)のに
対し、イ-2方法においては、LBTI懸濁液を加えず、第1次反応液0.1ml
をそのまま第2次反応で使用している(乙第1、第2号証)から、被検物質非添加
群(Ac)の第2次反応終了時の吸光度を同じ約0.4にするためには、イ-2方
法にあっては原承認方法の場合より試料の血漿希釈率を高くする必要がある。他
方、規格合否の判定基準であるカリジノゲナーゼ標準溶液吸光度の値(As-As
b)は、カリジノゲナーゼ標準品を用い血漿を使用しないため、血漿希釈率の影響
を全く受けず、原承認方法においてもイ-2方法においても変わらない。したがっ
て、以上のような試料の血漿希釈率の違いから、原承認方法とイ-2方法との同一
性が保たれなくなるのではないかと危惧しているのである。
 質問事項3は、イ-2方法のカリジノゲナーゼ標準溶液吸光度
の値(At-Atb)が低めに出る傾向があることに対する前記の問題点を指摘し
たものである。
 質問事項4は、「試験方法の簡素化は一変しなくとも、バリデ
ーションの範囲で実施可能である。」との記載部分もあるが、その全体の趣旨は、
一変する必要性の意義自体に疑念を呈する点にあり、上記バリデーションに関する
言及部分は、単に逆説的に一般論を述べているにすぎず、本件確認方法をバリデー
ションの範囲で任意に変更できるとするような趣旨ではない。
ウ 以上のとおり、被告フジモトDは、当局から平成6年に返送、平
成8年に回答指示、平成9年に返送を受け、これらに回答した後の平成10年末に
至っても、いまだ上記審査センターからの指摘(甲第97号証)を受けているので
あり、このような状況の下で、被告フジモトDが、厚生省の見解にあえて反してイ
-2方法を実施できたとは考えられない。
 なお、本件一変申請手続期間中(平成4年ないし平成11年)に
は「返戻」という取扱いは存在せず、一変申請に重大な問題がある場合であって
も、返送が行われた上で申請者に対して一変申請の取下げを促す運用であった(甲
第512、第513号証)。
エ なお、一変承認は、平成11年2月に差し換えられたデータを前
提としているのに対し、本件で問題となっている一変承認前のイ-2方法の実施の
可否については、平成4年の一変申請時に添付されたデータ(一変申請データ)の
評価が問題とされるべきである。また、一変申請が承認されるか否かは最終的に結
論が出るまで不確定であるから、結果的に一変承認がなされた事実が過度に重視さ
れるべきではないし、このような事後の事情を一変承認前の事実認定に用いること
は許されない。
(4)(イ-3方法とイ-2方法との間の実験条件〔血漿希釈率等〕の相違
について)
 変更前後の方法においては、いずれも、本試験に先立って、被検物
質添加群(At)における血漿希釈率を決めるために被検物質非添加群(Ac)の
吸光度が測定される。そして、この被検物質非添加群の吸光度の値は、変更前後の
方法のいずれにおいても同じく約0.4に設定され、これと同一希釈率の血漿を被
検物質添加群の吸光度の測定に使用することが試験の前提とされているところ、イ
-2方法においては、原承認方法(イ-3方法)と異なり、LBTIによる第2次
反応におけるカリクレイン産生の阻害はないから、被検物質添加群の血漿希釈率の
決定に当たって測定される被検物質非添加群の吸光度の値約0.4は、第2次反応
においてカリクレイン産生が継続した結果増加した分も含んだ数値であり、イ-2
方法において用いられる被検物質添加群の血漿は、少なくとも原承認方法のそれと
比べて第2次反応において余分に測定されるカリクレイン分濃度の低いもの(希釈
率の高いもの)が使用されていることになる。
 このようにイ-3方法とイ-2方法とでは、用いられる被検物質添
加群の血漿希釈率等の実験条件が大きく異なるため、カリクレイン様物質の産生を
阻害剤で停止しないイ-2方法の方が、被検物質添加群の吸光度の値(At-At
b)がより高くなるとは到底いえない。つまり、血漿希釈率を変えて原承認方法と
イ-2方法における被検物質非添加群の吸光度を共に約0.4と設定したことによ
って、イ-2方法において測定される被検物質添加群の吸光度の値は、LBTIを
用いて第1次反応で産生されるカリクレイン量のみを測定する原承認方法で測定さ
れる被検物質添加群の吸光度の値よりも見かけ上小さくなるのであり、イ-2方法
等の理解に当たっては、この点も考慮される必要がある。
(5)(イ-2方法の実施可能性について)
 原審において、被告らから、イ-2方法の詳細を記載した標準作業
手順書(乙第19号証)が明らかにされ、実験の一挙手一投足を撮影したビデオテ
ープ(検乙第1、第2号証)も提出されたので、原告は、改めて上記標準作業手順
書に基づきイ-2方法を忠実に再現することとし、株式会社東レリサーチセンター
(以下「東レリサーチ」という。)に委託して実験を行ったところ、市販されてい
る被告製剤の2ロットについて、その規格に適合しないという実験結果が得られた
(甲第504号証)。このことからも、イ-2方法の実施可能性が認められないこ
とが裏付けられたものといえる。
 なお、甲第504号証及び第506号証の各実験で使用された血漿
につき、Baxter製のものとDade製のものは製造元が変更しただけの全く
同一品であることから、「Baxter製」と表記したにすぎず、実際に使用され
た「Ci-Trol Level1」はDade製のものであり、その使用期限は
2004年(平成16年)4月24日であった(甲第507、第508号証)。
(6)(平成11年2月に提出された差換えデータ〔甲第91号証及び第9
8号証の各2〕について)
ア 厚生省は、製造承認申請及び一変申請の審査に当たって、追試等
の検証を行うわけではなく、申請者から提出されたデータが真実であることを前提
とした書面審査を行うのみである。被告らは、平成11年2月に至って、これまで
変更前後の平均値が同等でないことが6年にもわたって問題とされてきた一変申請
データを、全く別のデータに差し換えたが、甲第91号証及び第98号証の各2か
ら明らかなとおり、差し換えられたデータにおいては、変更前後の被検物質添加群
の吸光度(At-Atb)は不自然なほど同等な値を示している。一変承認は、こ
のような差換えデータが提出された結果認められたものにすぎず、それまでの間
は、変更前後の方法に同等性があることを示すデータは一切存在していなかった。
 イ 同一条件により実験を行っているにもかかわらず、平成11年2
月の差換えデータは、平成4年12月の一変申請データにおける変更後の方法(イ
-2方法)の方が被検物質添加群(At)の吸光度が低く測定されるという、厚生
省が再三指摘していた最大の問題点が突如として解消される結果となっている。
ウ 被告フジモトDは、上記差換えの理由について、一変申請データ
は、異常なLBTI(ロット番号129F8235)を用いていたためデータがお
かしかったためとしている(甲第91号証の1、第98号証の1〔平成11年2月
18日付け各差換え理由書〕)が、被告製剤の一変申請データと平成11年の差換
えデータを比較しただけでも、ロット番号129F8235のLBTIの品質が何
ら不良なものでなかったことは明らかである。
 エ さらに、被告フジモトDは、平成4年の一変申請の時に既に、L
BTIにロットによって品質にばらつきがあることをその理由としていた(甲第8
5号証、第92号証の各別紙(2)の「変更理由」)。もしもこの理由が事実であ
れば、被告フジモトDは、平成4年当時からLBTIにはロットによって異常なも
のが混在しているという認識を有していなければならないから、平成4年当時にお
いても、被告フジモトDにとって極めて重要な一変申請の技術的裏付けをなす添付
資料を作成するための実験に、異常なLBTIを使用することなど到底考えられな
い。
 ところが、被告フジモトDは、一変申請から6年以上が経過した
平成11年2月の差換え理由書において、突如として、一変申請時の実験に用いた
LBTIに問題があったから不適切なデータが出たのであるとの説明を行ってい
る。
オ LBTIが、カリクレイン産生を促進するという、平成11年の
データ差換えの理由は、一般的な科学的見解と明らかに矛盾する。
すなわち、まず、LBTIがカリクレイン産生反応を促進するなどという現象につ
いて報告した論文、学会発表は皆無であり、到底信用できるものではない。そし
て、原告は、3人の国内外の専門家に対して、上記で被告フジモトDが説明してい
るような現象を直接体験し又は見聞したことがあるか問い合わせたが、その回答結
果を見ても、一様にかかる事実はこれを否定されている(甲第501ないし第50
3号証)。
 以上のとおり、このようなデータの差換え理由と現実の一変申請
データ(Atbの値)とは明らかに矛盾しており、被告フジモトDが、平成11年
のデータ差換えに当たって説明したデータ差換えの理由が不合理なことは明らかで
ある。
(7)(乙第32号証付属書面の信用性について)
 乙第32号証付属書面には、Sigma社製のLBTI(ロット番
号129F8235)ではイ-2方法の吸光度が高く出て、「0.04以下」の規
定を満たせない旨の記載があり、乙第34号証にも、同ロット番号のLBTIがハ
ーゲマン因子(FXⅡa)の活性を全く阻害せず、逆にカリクレインの生成を促進
している旨の記載があるから、被告らは、平成4年12月22日の一変申請の段階
で、既にロット番号129F8235のLBTIが異常なものであることを十分認
識していたはずであるが、平成11年2月18、19日付け一変申請の差換え理由
書(甲第91号証及び第98号証の各1)には、最近になって同ロット番号のLB
TIの品質に問題があることが判明したかのような記載をしている。
 また、上記のとおり、乙第32号証付属書面は、ロット番号129
F8235の試料ブランク吸光度が高く出て、0.04以下の規定を満たせないと
の試験結果を示しているが、一変申請書に添付された原承認方法のデータを見る
と、同じロット番号の試料ブランク吸光度(Atb)はいずれも0.04以下の規
定値にとどまっており、乙第32号証付属書面のいう試験結果と齟齬が生じてい
る。
 また、原告は、乙第32号証付属書面や乙第34号証に記載された
実験結果の信憑性を確かめるため、被告フジモトDが一変申請データで使用してい
る129F8235と一変申請の差換えデータで使用している10H8035とい
う2種のロットのLBTIを用いて追試実験を行ったが、ロット番号129F82
35のLBTIにおいてもカリクレイン産生を促進させるような異常な現象は全く
観察されなかった(甲第506号証)。
 以上によれば、ロット番号129F8235のLBTIが異常ロッ
トであるという試験結果などそもそも存在しないのであり、その意味で、乙第32
号証及び第34号証(乙第37ないし第42号証も同様)は、いずれも、本訴が提
起された後にねつ造されたものであることは明らかというべきである。
(8) なお、被告らは、原告において被告医薬品の承認を妨害するために
原告一変申請をしたかのごとき主張をしているが、原告一変申請は、厚生省の指導
に基づき、かつ薬効を追加する目的もあって申請したもので、本件医薬品に係る承
認申請とは何らの関係もない。
(被告ら)
(1)(本件の背景事情について)
 被告らは、被告製剤について昭和62年に製造承認を申請した時点
では、既に先発医薬品の原告製剤(ノイロトロピン特号3cc)の製造承認から3
4年を経ており、被告製剤につき特許侵害訴訟が発生する可能性があるとは全く考
えていなかったが、原告は、被告フジモトDの製造承認申請又は承認に合わせ、そ
れまで全く必要とされていなかった確認試験方法である本件特許方法をひそかに追
加した。その意図は、後発医薬品として競合品が出現した場合に、隠された確認試
験方法を利用してこれを妨害し、更に長きにわたる市場独占を図ろうとするもので
あった。仮に、原告がいうように本件特許方法が本件医薬品自体の製造に不可欠な
ら、原告自身、品質が保証できない医薬品を30年以上も製造販売し続けていたこ
とになる。
(2)(一変申請の審査の経緯について)
 一変申請の審査期間中、約6年間は申請書類が厚生省側に置かれた
ままであったことは、平成13年1月12日付のCの陳述書(乙第43号証)のと
おりである。途中、2回にわたる厚生省の機構改革があり(乙第51号証)、担当
官も入れ替わった。複数の担当官から別々に期間を置いて指示が出されたが、それ
らはいずれも一変申請に係る方法が原因となって生じた疑問ではなく、LBTIを
使用した変更前の方法に起因したものか、あるいはLBTIの問題点に関する質問
であった。
 平成6年の返送の返送理由①に対しては、本来この試験が確認試験
で阻害率(%)を求めるように設けられていないことを説明した上で、指示に従
い、変更前後の被検物質の阻害率(%)を求める方法での相関性を示す分析結果を
報告し、返送理由②に対しては、LBTIを使用することなく簡便な方法で確認す
ることができるため、LBTIを用いる必要性はないことへの了解を求めた(甲第
86、第87号証、第93、第94号証)。
 平成8年の指示は、指示①は一変申請に係る方法の証明とは無関係
な質問であり、指示②は単なる語句の説明、指示③は既に回答していたことが見落
とされたために指示となった(甲第88号証)。
 平成9年の返送は、4項目の指示のうち1)、3)及び4)は、い
ずれも意味説明を求めたものか、LBTIの問題に関する指示で、2)だけが一変
申請に係る方法自体に関する指示である。2)で求められた再現性試験は、実際と
は異なる濃度で、しかも判定方法も異なる阻害率(%)に基づく方法であるため、
厳密には一変申請に係る方法そのものとは相違するが、LBTIを使用する必要が
ないことを証し、同方法の妥当性を支持する実験として提出した。なお、1)にお
いて、平成6年の返送理由であった変更前後の相関性が示されたことを認めなが
ら、更にAt-Atbの値が全て低値を示す理由を求められたため、被告フジモト
Dは、直ちにLBTIを使用した変更前の方法の吸光度が上昇したものである旨を
説明した。
 被告フジモトDでは、一変申請等で必要となった場合にのみLBT
Iを購入して実験に使用していたため、入手できたロットは少なかったことは否め
ないが、その数少ないロットでの経験においても、LBTI試薬の影響は明らかで
あったので、LBTIを使用しない方法の必要性を重ねて厚生省に伝えた(甲第8
7号証、第90号証、第94号証、第96号証)。
 平成10年の審査センターのファックスでは、「今まで提出された
資料によると、カリクレイン様活性(At-Atb)は、変更前と変更後で相関性
が認められるのは確かである」(質問事項3)として、その質問事項3を含む全部
で5つの質問がなされている。これらの質問はいずれもコメント又は説明を求めた
もので、推奨案があるもののそれに関してもコメントを求めるに止まり、一変申請
に係る方法を否定したものではない。また、質問事項4において、一変申請に係る
方法を指して「試験方法の簡素化は一変をしなくとも、バリデーションの範囲で可
能である。」と述べられている(甲第97号証)。
 以上のように、厚生省等が、変更前後の方法に相関性があることを
認めながら疑問を抱いた点も、その原因はLBTIにあり、LBTIを用いた変更
前の方法の吸光度が実際よりも上昇したからであるが、その点も確認試験において
同等又はそれ以上の方法であることに何ら妨げとはならず、最終的には、この点は
厚生省等でも理解された。
 平成11年には、厚生省の疑問が全て解消され、もはや不要となっ
た資料や回答などを整理する意味を含め、差換え指示書に基づいて差換えを行った
(甲第91号証及び第98号証の各1、2、乙第75号証、第80号証)。
 一方、LBTIがカリクレイン生成に変動を与えるということは、
主体である定性反応を危うくする。すなわち、被検物質以外に変動を与える試薬を
同時に反応系に存在させることは、得られたカリクレイン生成への影響が被検物質
自体によるものか否かを不明確にし、量的な精度を云々する以前に、定性に関する
基本的な問題を生じさせるおそれがある。
 以上のとおり、一変承認には6年4か月を要したが、被告フジモト
Dは出された指示等に対して、いずれの場合も直ちに回答している。仮に厚生省等
が本当に一変申請に係る方法に同一性なし又は根本的な問題があると判断していた
のであれば、一変申請は返送ではなく正式の申請却下として処理されたはずである
が、厚生省等が一変申請に係る方法を否定する判断を被告フジモトDに示したこと
は全くなく、平成4年に申請した方法のとおり、一言一句変更もなく承認されてい
るのである。
(3)(原告の新主張について)
 原告は、LBTIを使用しない方が、LBTIを使用した場合より
被検物質非添加群(Ac)と被検物質添加群(At)の吸光度の差がより拡大する
と主張しているが、このような主張は、従前の原告の主張を覆し、LBTIを使用
しない方が被検物質のカリクレイン様物質産生阻害活性の確認がより明確になると
いうことを意味しているものと解され、仮にそうであれば、LBTIを使用する必
要性がないことを原告自身が認めたことにほかならない。
(4)(甲第501号証ないし第503号証について)
  上記各書証は、LBTIそのものに関する3人の専門家の回答であ
ることが認められるが、市販されているLBTIの品質に関する言及は全くなされ
ていない。通常、試薬メーカーは定められた用途以外の使用に対しては何ら製品の
保証を行っておらず、試薬メーカーが保証できないことを専門家といえども保証で
きるはずもない。
(5)(甲第504号証及び第506号証の各実験について)
  上記各実験に用いられたヒト正常血漿Ci-Trol(使用期限は
製造後23か月)は、いずれも「Baxter製」と記載されているが、ヒト正常
血漿Ci-Trolは1990年代には「Dade製」の製品となっているから、
当該実験では、使用期限を超過した血漿が使用されているものである。
(6)(附帯控訴の理由)
被告フジモトDは、平成4年2月21日の原承認後、直ちに製品標
準書の策定作業に入った。その約半年後の同年7月10日薬価基準への収載が告示
されたが、その後、本格的に製造及び販売に向けた作業を開始し、乙第32号証が
作成された。ところが、そのような作業をしていた平成4年7月ころ、原承認方法
(イ-3号方法)につきLBTIによるばらつきの問題が浮上し、製薬会社として
上記告示後3か月以内での市場供給義務が課されている被告フジモトDとしても、
時間的制約の中で緊急にLBTIの問題を解消する必要に迫られたため、以前から
カリクレイン・キニン系について研究実績がある被告藤本製薬のCに応援を求め、
急きょ代替方法の確立作業に着手し、平成4年8月初めころまでに、LBTIを使
用しないイ-2号方法を開発した。
  他方、たまたまではあるが、平成4年8月20日過ぎに被告フジモ
トDに対する前訴の訴状が送達されたため、被告らは初めて本件特許権の存在を知
り、これによって被告医薬品の確認試験方法としてイ-2号方法を採用することが
絶対的に必要となり、その旨決定された。そして、最初の被告製剤であるロット番
号1208につき、同月末から9月にかけて各種の規格試験が実施され、そのうち
の一つとして、同年9月19日、イ-2号方法による確認試験が実施された(乙第2
9号証の3、第43号証、第67号証)。
  以上のとおり、被告フジモトDは、上記ロット番号1208の被告
製剤製造の際から既に、確認試験としてイ-2号方法を実施していたものである
が、仮にこの点についての被告らの主張が認められないとしても、少なくとも、同
年12月10日に実施されたロット番号1211の被告製剤についての確認試験
(乙第30号証の2)がイ-2方法によるものであることは認められるべきであ
る。けだし、被告フジモトDは、他の変更事項に追加して確認方法の変更として一
変申請を行ったものであるところ、実際の医薬品の製造承認の過程においては、試
験方法の変更は瞬時に行われるものではなく、申請のかなり以前から実験が繰り返
され、問題性がないとして確立した段階で申請しているのが通常であって、申請日
のわずか12日前においてすら確立・実施されていなかったような方法が、その
後、申請どおりにそのまま承認されるようなことは、およそあり得ないからであ
る。」
第3 当裁判所の判断
当裁判所も、原告の本件各請求は、被告フジモトDに対して5万0129円
及びこれに対する平成11年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金
員の支払を求める限度で理由があり、被告フジモトDに対するその余の請求及び被
告藤本製薬に対する請求はいずれも理由がないものと判断する。
 その理由は、次のとおり付加、訂正等するほかは、原判決の「事実及び理
由」中の「第4 当裁判所の判断」1ないし9(40頁23行目から95頁9行目
まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 47頁17行目から18行目にかけての「したがって、」から48頁7行目
末尾までを次のとおり改める。
「したがって、医薬品製造業者は、製造承認を受けた医薬品については製造承
認に係る方法によってこれを製造するのが通常であり、被告医薬品においても、既
にみたとおり、その原承認書に添付された承認申請書に確認試験方法としてイ-3
方法が記載されている以上、被告フジモトDは、一変申請前はもとより、一変申請
後も一変承認が得られるまでの間は、同方法によって被告医薬品に係る確認試験を
行っていたものとみるのが経験則に適うところである。そして、この経験則は、国
民の健康に直接かかわる医薬品の製造についてのものであり、上記のとおり刑事罰
等の対象ともされているのであるから、相当強度のものということができる。
しかし、そうであるからといって、次にみるような事情の存する本件にお
いては、原告主張のように、原承認書に添付された承認申請書に確認試験方法とし
てイ-3方法が記載されている事実のみで、被告フジモトDによるイ-3方法の実
施(イ-3方法が本件発明の技術的範囲に属することは前示のとおりであるから、
本件特許方法の実施)の立証としては十分であって、被告らにおいて、イ-3方法
以外の方法(本件ではイ-2方法)の実施についての立証に成功しない限り、被告
フジモトDがイ-3方法を実施していたものと推認するのが相当であるとまではい
えない。
原告の主張は、医薬品製造業者は、製造承認書に添付された承認申請書記
載のとおりの確認試験方法を実施していることが事実上推定されるから、その方法
と異なる方法を実施していると主張するのであれば、これを主張する側(本件にお
いては被告ら)にその点の立証責任を負わせるべきであるというものと解されると
ころ、一般論としてはこれを肯認し得ないではないとしても、本件においては、前
記第2の2(9)で認定した経緯及び弁論の全趣旨からうかがわれるように、イ-3方
法の設定は、被告フジモトDが自発的に行ったものではなく、先発医薬品について
原告がした確認試験方法の追加(原告一変申請)に端を発した厚生省の行政指導に
よって追加されたものである上、同被告は、薬価基準への収載の告示後3か月以内
の市場供給義務が課された(乙第28号証)状態下に、原告から被告医薬品の製造
差止め等を求める前訴の訴状を受け取ったものであり、したがって、その段階で、
被告らとしては、イ-3方法をそのまま使用した場合は、被告医薬品の製造差止め
等の判決を受けるおそれがあり、他方、イ-3方法と異なる方法によった場合には
前記のような薬事法上の制裁を受ける可能性があり、また、そのいずれをも避けよ
うとすれば、上記市場供給義務に違反してその製造を取りやめざるを得ないという
立場に陥っていたものであることが認められる(原告から本件特許方法についての
実施許諾を得るための努力を試みる選択肢も考えられないではないが、原告がこれ
を許諾する見込みがなかったことは、不当利得返還請求に係る原告の主張や甲第5
17号証の記載に照らしても明らかである。)。
このような事情の下において被告らがどのような選択をしたかというのが
本件の具体的な問題であり、この問題について、原告主張のような一般論のみか
ら、被告らにおいて、原承認書に添付された承認申請書記載のイ-3方法以外の方
法(具体的にはイ-2方法)を実施していたことの立証に成功しない限り、被告フ
ジモトDがイ-3方法を実施していたものと推認することが相当であるとは考えら
れず、この点に関する原告の主張は採用することができない。
 したがって、本件の具体的な問題については、原告主張の経験則を十分考
慮に入れつつも、立証責任の本来の原則に従って、本件全証拠に照らして、一変承
認の前の本件請求期間中に、被告フジモトDによる本件特許方法の実施、具体的に
は原承認方法(イ-3方法)の実施の事実が認定又は推認できるか否かという観点
から検討すべきところ、本件においては、製造承認に係る確認試験方法と同等又は
それ以上の方法であれば(場合によれば一変申請をしないままでも)、製造承認に
係る確認試験方法と異なる確認試験方法を採用し得ないではないことがうかがわれ
る(甲第39号証、第60号証、乙第64、第68号証及び弁論の全趣旨)上、そ
のような前提の下に、被告らにおいて原承認方法(イ-3方法)と異なるイ-2方
法を用いていた点の主張立証を行い、原告もそれに対する主張立証を行う形で攻撃
防御がなされているので、以下、それらについて順次検討することとする。」
2 51頁7行目から8行目にかけての「非生成資料」を「非生成試料」と、同
9行目の「標準資料」を「標準試料」と、同10行目の「標準ブランク資料」を
「標準ブランク試料」と、同13行目の「測定対象資料」を「測定対象試料」と各
改め、同22行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
「 以上のとおり、製造承認申請に係る確認試験において求められているのは
被検物質の同定(被検物質にカリクレイン様物質産生阻害活性があることの確認)
であるから、その目的からすれば、イ-2方法は、定量が求められている場合と比
較して量的な精度において多少劣ることがあるとしても、LBTI等の阻害剤を用
いなくても同定の目的を阻害することがない限り、より簡易に同定の目的を達成し
得るものとして、確認試験としての適格がないことにはならない。
 もっとも、甲第85号証及び第92号証によれば、一変申請データにおけ
る変更前後の試料吸光度の値(At-Atb)とカリジノゲナーゼ標準溶液吸光度
の値(As-Asb)をみると、カリジノゲナーゼ標準溶液吸光度の値は変更前後
でほとんど異ならないのに、試料吸光度の値(At-Atb)のみ、阻害剤を用い
ない変更後の方が阻害剤を用いた変更前よりもかえって低い数値となる傾向がある
ことがうかがわれるところ、この点は、原告も主張するように、原承認方法(イ-
3方法)及び一変申請に係るイ-2方法とも、試料吸光度の値(At-Atb)と
カリジノゲナーゼ標準溶液吸光度の値(As-Asb)を比較して、前者が後者よ
りも小さければ規格に適合すると判定されるものであるから、理論上は、試料吸光
度の値(At-Atb)のみが低く測定されるということは、原承認方法に比べれ
ば規格及び確認試験方法の規格として緩和傾向になることは否めないとしても、被
検物質非添加群の吸光度の値(Ac)とカリジノゲナーゼ標準溶液吸光度の値(A
s)との間には0.1程度の安全率が確保されていることや、一変申請データで
は、被告抽出液のうちのロット番号1209Mの測定値は逆に変更前の方が低い数
値が出ているし、また、試料吸光度の値の平均値も被告抽出液及び被告製剤とも3
ロット中の1ロット〔被告抽出液は1210M、被告製剤は1211〕の影響が大
きく出たものであること、そして、後のデータではあるが平成11年の差換えデー
タには、上記のような傾向はみられないことに照らすと、現実には、そのために確
認試験としての目的が阻害されることはないものと考えられる。
 さらに、原告は、いったん製造承認申請に記載された確認試験方法は、①
変更後の方法の方がより正確、精密かつ迅速な試験方法であることが学問的に確立
されていること、②変更前後の方法によるデータの平均値に差がなく、標準偏差が
同等又はより小さいこと、③変更前後のデータに十分な相関性があることの3要件
がすべて充足されない限り、一変承認を受けることなくこれを実施することは決し
て許されないし、現実にも、薬事法等の厳重な規制下にある医薬品製造業者が一変
承認を受けることなくこれを実施するようなこともあり得ないと主張しているが、
一変承認前に確認試験方法を変更するための要件につき原告主張のように解すべき
か否かの点はさておいても、この点に関して原告が掲げる証拠はいずれも行政庁の
運用基準等又はその解説、解釈にすぎないから、その趣旨に沿った運用がなされる
べきことが原則であるとはいえても、その事項、目的等のいかんにかかわりなく、
現実に、全く例外を許さないような運用がなされており、また、医薬品製造業者に
おいても、例外なくそのように対応しているもので、そうでないようなことはあり
得ないとまで断定できるか否かは疑問の残るところである。
 そして、実際には、本件確認試験の目的に直接かかわる判定方法の点で、
原告方法とは全く異なる原承認方法(並行審査に係るものではあるが、イ-3方
法。なお、判定方法の点ではイ-2方法も同じ。)が何らの異議もなく承認されて
いることや、また、データの差換えという事情があったにせよ(データが差し換え
られただけで方法まで変更されたわけではないし、差換え後のデータをもってねつ
造したものとまで認めるに足りる証拠もない。)、最終的には、厚生大臣によって
イ-2方法への変更が承認されていること、専門家の中にも「科学技術からみてよ
り良い方法や自己の品質管理により適した方法などが発見、開発された場合には、
その方法を代替試験方法として実施し、機会をみて一変申請を行い承認を受けるの
が一般的であった。」との意見もみられること(乙第64号証)、前訴の提起以来
10年以上にわたって、被告らは、一貫して、一変承認前から阻害剤を用いない点
で原承認方法と異なる方法を用いている旨主張してきているにもかかわらず、これ
まで、刑事罰(なお、乙第502号証)や行政処分の発動はもとより、行政上の警
告等の動きがあった形跡すら認められないことは、上記疑問を裏付けるものといえ
る。
 また、原告の主張は、薬事法等の運用、解釈がどうあるべきか又は被告フ
ジモトDが製造承認申請の際に記載した方法と異なる方法を採ることが、薬事法等
との関係で許されるか否かという点を強調するものであるが、もとより、本件の問
題は特許権侵害行為の有無の認定にあるのであるから、問題とすべきは、製造承認
申請の際に記載した確認試験方法と異なる方法を採ることについて、被告がどのよ
うに考えたか、一変申請をする前又は一変申請後一変承認を受けるまでの間にその
ような異なる方法の選択があり得たかという観点から検討すべきことは論を待たな
いところである。」
3 52頁末行の「皮膚抽出液」を「皮膚組織抽出液」と改め、55頁4行目の
「第19号証」の次に「、乙第25号証」を、同5行目の「第310号証」の次に
「、検乙第1号証」を各加える。
4 58頁末行の「被検物質」の次に「、ヒト血漿希釈液」を加え、59頁9
行目の「判定するものである。」から同25行目末尾までを「判定するものである
から、それほどの精度が要求されるものではなく、第2次反応に移行する時点で
は、第1次反応液が更に希釈されること、カリクレインの産生も飽和点に近づいて
いること等からすれば、阻害剤を用いる場合に比べて量的精度の点では多少劣ると
しても、被検物質非添加群の吸光度の値(Ac)とカリジノゲナーゼ標準溶液吸光
度の値(As)が適切に設定されている限り、なお、カリクレイン様物質産生阻害
活性の有無により被検物質を同定するための確認試験方法として不適格であるとま
でいうことはできない。」と改める。
5 61頁20行目の「イ-2方法において」を「原告方法とイ-2方法とで
は、被検物質非添加群の吸光度(Ac)を、被検物質のカリクレイン様物質産生阻
害活性を直接定量するために用いるか否かの点で異なるものの、イ-2方法におい
ても」と、同24行目から25行目にかけての「原承認に係る確認試験方法」を
「原承認方法」と各改める。
6 67頁17行目の「認められない」の前に「直ちには」を加え、71頁12
行目の「いずれの」から同13行目の「一変申請前に、」までを「昭和55年4月
からの大阪大学医学部第4内科に在籍中に」と改める。
7 74頁5行目から6行目にかけての「リママメトリプシンンヒビター」を
「リママメトリプシンインヒビター」と、同22行目の「乙第32号証は、」から
同24行目末尾までを「そのことのみから、乙第32号証(付属書面を含む。)、
第37ないし第42号証をもって、原告主張のように、真に存在した製品標準書で
ないとまでいうことはできない。」と、75頁8行目の「乙第32号証」から同1
2行目末尾までを「そのことのみから、乙第32号証、第37ないし第42号証が
真に存在した製品標準書でないとまではいえない。」と各改める。
8 76頁23行目の「できない」の次に「(ただし、乙第32号証付属書面の
内容は、確認試験方法の変更に関する記載としてはやや説明的に過ぎること、当時
の状況に照らせば極めて重大な変更であったと考えられるにもかかわらず、統括表
にその旨の記載がないことに照らすと、同号証1頁の「改訂年月日・平成4年11
月20日」欄の記入後に挿入されたものとも考えられ、したがって、その変更年月
日である「平成4年9月19日」なる記載はにわかに信じ難いものといわざるを得
ない。)」を加える。
9 77頁5行目及び同9行目の各「H501」をいずれも「H-501」と改
め、79頁1行目の「理由は、」の前に「一変申請手続上の」を加える。
10 81頁13行目の「ないとはいえず、」から同15行目末尾までを「ないと
まではいえない。」と改める。
11 82頁12行目冒頭から83頁9行目末尾までを次のとおり改める。
 「(6) 以上によれば、乙第32号証、第37ないし第42号証をもってねつ造
されたものとまでいうことはできないが、被告フジモトDにおいて、平成4年7月
にLBTIの問題点を見出し、同年8月1日までにイ-2方法による確認試験の有
効性を確かめ、同日、乙第32号証及び乙第310号証を作成した旨の被告らの主
張については、同年7月から8月1日までの1か月足らずの短期間に、イ-2方法
が現実に確認試験方法として採用し得るか否かを確認するに足りる実験等がなされ
たとは考えにくい上、そのような実験を行った点の証拠も十分に提出されていない
ことから、にわかに採用することはできない(乙第32号証付属書面に記載された
実験結果は、確認試験方法の変更の内容及び根拠を示すものとはいえても、上記の
ような意味での実施の可否を確認するための実験の記載としては十分なものとはい
い難い。)。
 そうすると、乙第32号証、第37ないし第42号証には、制定年月
日、施行年月日として、乙第310号証には、発効年月日、作製年月日、承認年月
日として、いずれも平成4年8月1日の日付けが記載されているものの、これらの
日付け部分を直ちに信用することはできず、その記載のとおりの平成4年8月1日
の時点でこれらの書面が作成されていたと認めることはできない(ただし、遅くと
も一変申請の日までには現状の形に整えられていたものと考えられる。)。また、
乙第32号証付属書面には、確認試験の変更年月日を平成4年9月19日とする旨
記載されてはいるが、この日付けのとおり同日から確認試験の方法がイ-2方法に
変更されたとする点も、にわかに信用し難いことは既にみたとおりである。」
 12 84頁10行目冒頭から85頁1行目末尾までを次のとおり改める。
「別紙経過表記載の認定事実によれば、被告フジモトDは、一変申請後、一変
承認が行われるまで、厚生省等の担当者から返送や指示を受けたが、これらの返送
や指示は、主として、一変申請データが、原承認方法による場合よりイ-2方法に
よる場合の方が、試料吸光度の値(At)がかえって低いことに疑問を呈するもの
であった。この点については、被告フジモトDの回答によっても、被告フジモトD
によるデータの差換えがなされるまでは、必ずしも厚生省等の側の疑問が解消しな
かったことがうかがわれるが、同被告の回答は、その理由としてLBTIの影響に
よるものであるとする点では一貫していたものといえるし、その余の同被告の回答
及び追加資料の提供はいずれも迅速かつ的確なものであったと評価できる。
イ 甲第512、第513号証によれば、原告主張のとおり、本件請求期間
にあっては、この種案件について「返戻」の措置が採られていなかったことが認め
られるが、別紙経過表記載のとおり、本件においては、一変申請に対して2回の返
送が行われたものの、最終的に一変申請のとおり一変承認が行われたものであり、
その間に、少なくとも明示で取下げを勧告されたり、正式の承認拒絶処分を受けた
りした形跡は認められないし、別紙経過表記載の経緯に照らすと、一変申請から一
変承認まで時間がかかったとしても、そのことから直ちに、被告フジモトDがイ-
2方法を実施していなかったものと推認することもできない。
  原告は、結果的に一変承認がなされた事実が過度に重視されてはならな
いとか、一変承認がなされたという事後的な事情が一変承認前の事実認定に使われ
てはならないなどと主張するが、被告が一変承認前にイ-2方法を実施していたか
否かが争点である本件において、結果的にせよ、イ-2方法への変更が承認された
ことが間接事実として極めて重要な意義を有することは論を待たないところである
し、一変承認がなされたという事実を、仮にそれが事後的な事情であるとしても、
被告フジモトDが一変承認前にイ-2方法を実施していたか否かを判断する上で考
慮してはならないとする根拠も見出し難い。
  また、原告は、厚生省等から返送等を繰り返されている状況の下に、被
告フジモトDが、厚生省等の見解にあえて反してイ-2方法を実施できたとは考え
られない旨主張するが、被告らとしては、その変更内容から、当初は比較的容易に
一変承認が得られるものと考えてイ-2方法の実施に踏み切ったとも考えられない
ではなく、それから1年以上も経過した後になって厚生省等から返送等の措置を受
けるようになったとしても、上記のとおり、明示の取下げ勧告等を受けたわけでも
ない以上、そのままイ-2方法の実施を続けることが不自然であるとまではいえな
い。」
13 85頁2行目の「当裁判所」を「大阪地方裁判所」と、87頁4行目を次の
とおり各改める。
 「(4) 以上によれば、一変申請の審査の経緯を考慮に入れても、被告フジモト
Dが一変承認前にイ-2方法を実施していたことがあり得ないとする原告の主張を
採用することはできない(なお、原告は、以上のように薬事法等の厳格極まる運用
を強調する一方で、厚生省の審査の実態は書面審理にすぎないなどとして審査の信
用性に疑問を呈した上、一変承認がなされたこと自体が誤りであると言いたいかの
ごとき主張までしているが、厚生大臣による一変承認の効力いかんが本件における
問題ではないことはいうまでもない。)。」
14 88頁8行目末尾に「なお、この点に関し、原告は甲第505号証を提出し
ているが、イ-2方法の操作が複雑で、安定した結果を出すためには熟練等を要す
るものと考えられるから、その内容は上記認定を左右するものではない。」を加え
る。
15 89頁22行目の「前記3のとおり」から同24行目の「あった。」ま
でを「以上によれば、イ-2方法は、被検物質(被告医薬品)にカリクレイン
様物質産生阻害活性があることを確認するための試験方法としては、原承認方法と
少なくとも同等のものであるということができ、原告の主張する薬事法等に基づく
行政上の運用、解釈に完全に適合するかどうかはともかくとして、前記のような状
況下に、被告フジモトDにおいて、一変申請後一変承認前に、一変承認が得られる
ことを見込んでその実施に踏み切ることもあり得ないではないものと認められ
る。」と、同行目の「時期が」から同25行目の「一変申請前、」までを「昭和5
5年4月からの大阪大学医学部第4内科に在籍中から」と、90頁8行目から9行
目にかけての「平成4年7月ごろ、又は」を「遅くとも」と各改め、同11行目の
「たこと、」から同12行目の「ついては」までを削る。
16 90頁13行目の「実験を」から91頁9行目末尾までを次のとおり改め
る。
「 原告は、被告フジモトDが一変申請の理由としているLBTIが不安定で
あった事実は認められないとして、るる主張しているが、LBTIの不安定が一変
申請の真の理由であったか否かについては疑問が残るとしても、いずれにせよ、被
告らが、本件特許権の侵害を避けるためにイ-3方法を変更する強い必要に迫られ
ていたことは明らかである。そして、実際に一変申請データが厚生大臣に提出され
ている(甲第85号証、第92号証)以上、一変申請時までにそのための実験がな
されたものと推認され(上記推認を妨げるに足りる証拠はない。)、被告らとして
も、一変申請時までには、イ-2方法をもってイ-3方法に替えることにつき相当
の裏付けを得ていたものと認められるから、遅くともその段階で、被告らにおいて
イ-2方法を実施するに至った可能性が高いものというべきであり、少なくとも、
それ以降、被告らがイ-3方法を実施していたものと推認することはできないもの
というべきである(他方、被告らは、少なくとも被告製剤における2番目のロット
については、イ-2方法による確認試験が実施されたものである旨主張するが、既
に認定説示したところに照らして採用できない。)。
 なお、被告抽出液については、製品標準書、標準作業手順書などは提出さ
れていないが、ほぼ同様であったものと推認できる。
 原告は、イ-2方法には実施可能性がないとも主張し、当審において甲第
504号証(東レリサーチ作成の2002年10月10日付け「結果報告書-カリ
クレイン様物質生成阻害活性測定(ローズモルゲン注)」)を提出しているが、実
験の重要な前提をなす使用試料に関し、ヒト正常血漿Ci-Trolを、既に製造
されておらず、したがって仮にこれを使用したとすれば使用期限切れの試料を使用
したことになる(争いがない。)「Baxter製」と記載している点で信憑性に
欠ける(原告は、旧製造元の名前を記載したにすぎない旨弁解しているが、東レリ
サーチによる実験の報告書である同号証のみでなく、原告従業員による別の実験の
報告書である甲第506号証にも同様の記載がされている。)上、その点をおいて
も、前記のように、イ-2方法は操作が複雑で熟練等を要するものと考えられるこ
とからすれば、上記各実験の結果からだけでは、イ-2方法によっては確認試験の
目的を達成することができないものと認めることはできず、ほかにこの点を認める
に足りる証拠はない。
 また、原告は、原承認方法(イ-3方法)とイ-2方法が同等とはいえ
ず、被告らもそのことを知悉していたとして、るる主張しているが、仮にそうであ
るとすると、被告らは、一変承認が得られないことを十分知りながら一変申請に及
んだことになり、前記のような状況の下に、何故に被告らがそのような行為に出た
のかが疑問となる。あえて説明するとすれば、イ-3方法を実施しながら特許権侵
害による差止め等を回避するためのカモフラージュとして、イ-2方法によっては
一変承認が得られないことを承知の上で一変申請に及んだとでも説明するほかない
ことになるが、仮にそのようなことをしたとしても一時逃れにしかならないことは
明らかであるし、医薬品の製造・販売業者である被告らがそのような行為にまで及
ぶと考えるのもいささか無理があるものといわざるを得ない。まして、原告の主張
を前提とすれば、被告らは、製造販売を開始した平成4年10月上旬から一変承認
を受けた平成11年4月13日までの6年半もの間、本件特許方法を実施し続けた
ということになるが、前訴から通算すれば既に10年以上もの間、訴訟事件が係属
しているにもかかわらず、被告らによる本件特許権の侵害行為の存在を直接うかが
わせしめるような証拠、例えば、本件特許方法を実施するためのLTBI納入に関
する証拠や元従業員らの目撃証言等が何ら提出されていない本件においては、事柄
の性質上、原告による直接の立証が困難であることを考慮に入れても、前記経験則
等、原告主張のような点だけから、被告らによる本件特許権の侵害行為の存在を推
認することは困難であるといわざるを得ず、本件全証拠を子細に検討しても、他に
この点を認めるに足りる証拠はない。」
17 94頁1行目の「イ-1方法」を「イ-3方法」と改める。
18 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照ら
し、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、引用に係る原判
決を含め、当審の認定、判断を覆すほどのものはない。
19 以上によれば、原告の本訴請求は、被告フジモトDに対して、不当利得とし
て実施料相当額である5万0129円の返還及びそれに対する請求の後である平成
11年10月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の
割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の請求はいずれも
失当であるから、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴及び被告フジモト
Dによる附帯控訴はいずれも理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
   (平成15年7月1日口頭弁論終結)
大阪高等裁判所第8民事部
    裁判長裁判官  竹  原  俊  一
              
              
         裁判官  小  野  洋  一
              
         裁判官  中  村     心
(別紙)
イ号方法とKPI法の試験方法の比較

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